第9話 別れは突然に
アリシア武具店を出たあとは回復アイテムや消耗品を買い集め、旅の準備を終えた。そうこうしているうちに現実の時間は24時を超えていた。
「じゃ、また明日な」
「おやすみ!」
「おやすみー」
俺とスミレはログアウトし、そのまま眠りについた。
◇◇◇
翌日、いつもの時間いつもの場所で吾郎を待つがいつまで経っても来ない。寝坊か?
このままじゃ俺も遅刻してしまうので、1人で学校に向かった。
「あ?先来てたのか」
「まあな、色々あって」
吾郎は淡々と答えているが表情は暗い。何かあったのだろうか。
朝礼を始めるため担任の先生が教卓の前に立つ。
「えー、入学して1ヶ月とちょっとではあるが、皆にお知らせだ」
担任の男、山中先生はいつも通り連絡事項を話している。
「鷲土が来週から隣町の高校に編入することになった。突然だが、快く送ってやれ」
は?
「鷲土、なにか一言」
先生に話を振られ吾郎は立ち上がる。
「1ヶ月と短い間でしたが、楽しかったです。今までありがとうございました」
吾郎が転校?そんな話聞いていない。どうなってんだ…。
パチパチと教室内では拍手が起こり、その後いつも通り朝礼を終える。入学してたかが1ヶ月だとこんなものなんだろう。
「おい、吾郎。聞いてないぞ」
「……」
「なんで言わなかった。転校の話はいつから出てたんだ?」
「2週間程前だ」
「なんで黙ってたんだよ……!いくらでも話す機会はあっただろ!!」
吾郎の胸ぐらを掴む。
「突然で申し訳ないと思ってる」
冷静になれ……。吾郎も俺達には言えない悩みがあったんだろう。落ち着け。
掴んだ胸ぐらを離した。
「スミレには言ったのか?」
「昼飯の時に言う……」
「そうか。感情的になって悪かった……。ちょっとビックリしたんだ」
「ああ、すまない……」
気まずい空気の中午前を終え、昼食の時間が来る。屋上で昼飯を食おうと約束しているため俺達は屋上に向かった。そこには既にスミレが待っていた。
「なに暗い顔してるのよ」
「実は……」
吾郎は転校の話をスミレにした。
「そう、転校……」
スミレもショックなのか少し俯き暗い顔をした。
「でも、急にどうして?それなら最初から隣町の高校でもよかっただろ?」
「転校の話も急だったんだよ。実は、うちの親父と爺さんが仲直りしたんだ」
確か駆け落ちしたんだよな。それで勘当されたと。
「いい事じゃないか」
「まあな、鷲土家の本家が隣町にあるのは知ってるよな?」
俺も高校に上がる前までは隣町に住んでいた。鷲土家の近くには鷹見家の別宅がある。
「爺さんが帰ってこいって」
「急になんで」
「理由はわからん。最初は断わったさ、一人暮らしでもいいからこの高校に通うって。でも、俺がそう言うと爺さんは「帰ってこないなら再び"隆也"を勘当する」って言いやがった」
鷲土隆也。吾郎の父親だ。
「俺は家族仲良くしてほしいんだ……。だから、断れなかった。ごめんな、中々言い出せなくて……」
そうか。そんな理由が。
「理由はわかった。隣町だろ?会えない距離じゃない」
「そうよ!暇があれば会いに行ってあげるわ」
「ああ、ありがとう」
吾郎は少し涙ぐみ、笑った。
そうだ、山賊のコインの礼をしてなかった。
「そうだ、吾郎、鷹見家の人間は受けた恩を倍にして返すんだぞ」
「急に何言ってんだ?」
俺はスマホを取り出しWSOのアプリを開けた。このアプリは武器や防具、アイテムなどを管理できるアプリだ。もちろん、プレゼントやトレードもできる。
〔ピロンッ〕
吾郎のスマホが鳴る。
「これは」
【山賊のコイン×2】
「餞別だ。有効に使えよ?」
「ははっ、どうやって2枚も集めたんだよ」
アリシア武具店を出たあと、俺とスミレはあらゆるクエストをクリアしていった。金策でもあるが、ランダムボックスを手に入れる為だ。30個くらいランダムボックスを開封した結果、SRのアイテムが1つだけ当たったのだ。
そして、そのアイテムを山賊のコイン×2でトレードしてくれるプレイヤーが居たためトレードして貰ったのだ。
「スミレも頑張ってくれたんだ」
「2人ともありがとう」
「どういたしまして!」
「残り数日、よろしくな」
「おう!」
そして、あっという間に吾郎が転校する日を迎えた。
◇◇◇
「ハイセ、久しぶりだな」
「隆也さん、久しぶり。勘当解けてよかったね」
俺がそう言うと吾郎の父親隆也は申し訳なさそうに笑った。
「吾郎が気を使ってくれたおかげだ。お前達には申し訳ない……」
「気にしないでくれよ。別に今生の別れじゃないんだ」
「そう言って貰えると助かる」
俺と隆也は握手交わした。
「親父!準備できたぞ!」
「おう!今行く!」
隆也と入れ替わるように吾郎が俺の元に来た。
「それじゃ、行くよ」
「ああ、元気でな」
吾郎とも握手を交わす。
「ちょ、ちょっと!!」
やっとスミレが来た。このまま来ないのかと思った。
「ほら!これみんなで食べて!」
スミレはシュークリームの入った袋を吾郎に渡した。
「手作りよ!しっかり味わうように!」
「ありがとう」
吾郎はシュークリームを受け取り、俺達を見る。
「ハイセとは生まれてからずっと一緒で、スミレとは高校で再会したんだよな」
「そうだな。スミレは中学別だったからな」
「そうね」
吾郎の袋を持つその手にぎゅっと力が入る。
「また会おうな」
「ああ、またな」
「またね」
吾郎は車に乗りこみ、俺達に手を振る。涙は必要ない。また会えるから。
すると、吾郎が乗っている席の窓が開いた。
「ハイセ!!!親父さんのこといい加減許してやれよ!!俺みたいにな!!!」
何を言い出すかと思えば。
「余計なお世話だ!!!」
吾郎に向かって手を振る。
「スミレ!!!悪態ばっかついてないで素直にならないと誰かに取られるぞ!!」
何のことを言っているんだろうか。スミレは顔が真っ赤だ。
「余計なお世話よ!!!」
2人で手を振りながら、吾郎を見送る。車が見えなくなるまで。
「行ったわね」
「そうだな、寂しくなる……」
吾郎はずっと俺の味方で居てくれた。俺の境遇から友達が出来なくても、吾郎が居てくれたから平気だったんだ。
「これからは1人か……」
俺の一言にスミレがピクっと反応した。そして、おもむろにスミレは俺の手を握った。
「1人じゃないわ。私がいるから」
「そうだな、ありがとう」
夕日に照らされる顔を赤くしたスミレの横顔と、焼けてしまいそうな手の温もりがとても印象的だった。
「スミレ……」
「な、なに?」
「俺のシュークリームは……?」
「あるわよ……」
スミレは呆れたようにため息を吐き、苦笑いした。
シュークリームは俺の大好物だ。どうやら俺の分も用意してくれてたみたいだ。スミレも俺の良き理解者だ。
吾郎を見送ったあとはスミレと俺の部屋でスミレが作ってくれたシュークリームを頬張っている。
「ほんと、シュークリーム好きね」
「ふひへおふふうふーふひーふはへっひんはははは(訳:スミレの作るシュークリームは絶品だからな)」
「はいはい。全部飲み込んでから喋って」
スミレは料理上手だ。和食洋食中華なんでも作れるしかも絶品。最近はお菓子作りに凝っているらしいが、シュークリームは小学生の時から作ってくれてる。
「それで、今日はどうするの?アルガンからまだ出れてないけど」
「そうだなぁ」
吾郎の事もあり、中々WSOに身が入らなかった。だが、いつまでもクヨクヨしていると吾郎が先を突っ走ってしまう。俺達も頑張らないと。
「よし、今日は本格的に【ゼナルド山脈】目指すか!」
「そうね!私も早くSRの弓ほしいもの!」
「準備出来たら連絡してくれ。俺もすぐに行くから」
「うん!」
スミレは立ち上がり俺の部屋を出ようとする。扉の前に立ち、俺の方を見る。
「ハイセ、もう一度言うけど、あなたには私がいるわ。落ち込まないでね」
「ああ、もう大丈夫だ。ありがとう」
スミレにも大分気を使わせてしまったみたいだ。
「懐かしいなぁ、小学校卒業して、スミレが引っ越す時の大泣きは今でも鮮明に覚えてる」
「そんなこと忘れなさいよ!」
「あの時から俺の傍に居てくれるって何度も言ってたもんな」
「もぉ、恥ずかしい帰る……」
「おう、また向こうでな」
スミレは小学校卒業と同時にこの街に先に引越した。当時は俺にベッタリだったスミレは俺と離れたく無いからと大泣きしたのだ。
「親父が出ていった時も、スミレがそばに居てくれたんだったな……」
◆◆◆
『お父さんは僕が嫌いになったんだ!!だから捨てたんだ!!』
『ハイセ…違うんじゃ…』
『違うくない!!お父さんは…お父さんは…うぇぇん!!』
『これ待ちなさい!ハイセ!!』
俺は親父が大好きだった。常に笑顔で誰にでも優しく、そして親父の剣術は美しかった。だが、あいつはある日突然俺の元から消えた。鷹見家が貯蓄していた大金のほとんどを持って。
俺は公園で1人泣いていた。
『お父さんは裏切ったんだ……僕を、家族を、あんな奴……』
『ハイセ?まだ泣いてるの?』
『スミレ……』
俺がどこに居てもスミレはすぐに俺の居場所を探し当てる。
『あいつは僕を裏切ったんだ……。あんな奴大嫌いだ……!!』
『ハイセ……あんな奴なんて言ったらダメだよ?圭吾おじさんのこと大好きだったじゃん』
『うるさい!!お父さんもお母さんも居るスミレには分からないよ!!』
俺の母親は俺を産んですぐに死んだ。元々病弱だったから。
『僕は、もう1人ぼっちだ……』
『ハイセ…1人じゃないよ。私がずっと傍に居てあげるから』
◆◆◆
「そうか、あの時も同じような言葉を掛けてくれたんだったな」
吾郎もスミレも何かと俺を気にかけてくれたんだ。良い友人を持った。
あの頃のスミレは素直で可愛かったのに、今となっちゃあの頑固意地っ張り女だ。だが、やっぱ根元は変わっていない。スミレはスミレだ。
「さて、スミレのためにも早いことSRの弓ゲットしないとな」
サングラス型のハードを装着し、俺はWSOの世界に入った。
◇◇◇
◆BA【アルガン旧道:北東】
「北東だから、【ドラナ集落跡地】とは逆の方向よね」
「そうだな、北西のアルガン周辺は大体探索したし、欲しい物も手に入った」
WSOの世界は【始まりの街:アルガン】を要として扇状に世界が広がっている。始まりの平原はアルガンの真下に位置し、ビギナーは必ずアルガンを通るようにできている。アルガンで一通りのチュートリアルを終え、そこからは自由に世界を冒険できるのだ。
「流石に広いわね」
「この広さをマッピングするのは大変だ」
日本列島の面積程あると言われるこの広大なフィールドの移動手段は主にフィールドのあらゆる場所に置かれている『ワープポイント』だ。その名の通りワープポイントからワープポイントへワープすることができる。
世界マップは最初は雲がかかったようになっており、点在するワープポイントの位置だけわかる。
ワープポイントを解放すると周辺の詳細マップが表示されるようになるのだ。これがいわゆる『マッピング』だ。
【簡易ワールドマップ(南部)】
「よし、じゃあ呼ぶか」
「ねぇ、ほんとに乗るの……?」
「当たり前だ」
ワープポイントは解放しないと使えない。つまり、1度そこに訪れる必要があるのだ。ワープもなしにこの広大なフィールドをどう移動するのか、これで徒歩しかないようならこのゲームはクソゲーと言われていただろうな。
俺はインベントリから笛のアイテムを取り出した。
【名称:飛竜の呼び笛 R 説明:飛竜を呼び出す為の笛。飛竜の背に乗り大空を飛び回ることができる。最大搭乗人数2人】
この世界の移動手段は飛竜で空を飛ぶのだ。
アルガンに居るNPCから受けられる『大空を翔ける者』というクエストの報酬だ。内容は野生の飛竜を手懐け、空を飛ぶこと。
残念ながらスミレはこのクエストをクリア出来なかった。なぜなら…
「やだやだやだやだやだやだ!!!!!こわい!!助けて!!」
「おい!暴れるな!!」
「高所恐怖症なの知ってるでしょ!?殺す気!?」
そう、スミレは高所恐怖症なのだ。ゲームだから大丈夫だと言ってもこのザマだ。
飛竜を呼び出し、背に乗るがスミレが暴れて出発できない。心做しか飛竜も若干引いてるように見える、
「あーもう!お前だけ置いてくぞ!!」
「うぅ……」
スミレは今にも泣き出しそうだ。ちょっと強く言いすぎたか?と思ったが渋々飛龍の背に乗った。
俺は手網を握り飛竜に合図を送る。すると、心得たと言わんばかりに勢いよく飛竜が飛び出す。
「うぅ……助けて…助けて…死にたくない……」
スミレはガタガタと体を震わせながら俺の腰に手を回し、抱きついてくる。
むっ…この感触は…。俺の背中には幸せなぷにっとした感触が伝わる。スミレの豊満な胸が俺の背中に強く押し付けられている。確かスミレも"現実に限りなく近づける"を選んだんだよな。つまり、この胸の大きさと感触も……いや、これ以上はやめておこう。
「スミレさん……?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…。もう生意気言いません……悪態つきません……素直になります……なので突き落とさないでください……シュークリームもいっぱい作ります……お願いします……落とさないでください……」
こいつ、俺をなんだと思ってんだ。本当に突き落としてやろうか。まぁ、シュークリームの話は覚えておこう。
背中に当たる幸せな感触を味わいながら北東の街を目指すのであった。
◇SA【麓の街:ロザルド】
「大丈夫かー?」
「だ、大丈夫な訳ないでしょ……?」
「これからもっと乗ることになるんだ。慣れとけよ」
スミレは絶望の表情を浮かべ、トボトボと俺の後ろをついてくる。
「まずは、ゼナルド山脈について色々調べないとなぁ」
「ゼナルド山脈ってあれよね」
スミレが指さす方角にはドデカい山脈がある。この街はその麓の街。冒険者がゼナルド山脈に入る前に色々準備するための街でもあるのだ。
「しっかしでかい山だなぁ。やっぱ寒いのかな」
「雪も積もってるみたいだし、寒いんじゃないの?」
なら寒さ対策もしとかないと。とりあえず、防寒着を買うために武具屋に行こう。ビギナーは足りないものが多いから頻繁に武具屋に行かなければいけない。
俺達はNPCが経営する武具屋で防寒着を探すことにした。
しかし、
「防寒着売ってねぇじゃねぇか!!」
「どうやらプレイヤーが生産する物しかないみたいね」
一般的には寒さ対策として魔法を使えるプレイヤーが耐寒魔法を掛けてくれるらしい。だが、俺達はビギナーでしかも2人のパーティー……どうしようもない……。とりあえず、プレイヤーに作ってもらわないと。
ということでプレイヤーの店に立ち寄った。筋骨隆々と言った見た目のスキンヘッドのプレイヤーが経営している。
「ウルフの毛皮が5枚いるぞ?」
全部売っちゃったよ!!!
「ち、ちなみにここら辺にウルフっているか?」
「ここからだと少し離れるなぁ、飛竜で行けばすぐだから行ってきたらどうだ?」
チラッとスミレの方を見る。
ブンブンブンと首が飛んでしまいそうな勢いで首を振っている。
こりゃ無理だな。
「現物は売ってないのか?」
「現物はすぐに売れちまうよ。今日も10着は用意してたんだがな。あっという間に売れた」
「そうか……」
俺は肩を落とし、店を出ようとすると、1人の男が話しかけてきた。
「なんだ兄ちゃん。ゼナルド山脈に行きてぇのか?」
頭のてっぺんで髪を纏めツンと立たせている個性的な髪型だ。背中には長槍、どうやら槍使いのようだ。
「ああ、ゼナルド山脈で取れるモンスター素材が欲しくてな」
SR弓の情報はあまり出回ってないとアリシアが言っていた。情報は命だ、なるべく伏せておこう。
「ほー、モンスター素材ねぇ……」
槍使いの男は後ろにいるスミレをチラッと見た。背にある和弓を見て「ふむ」と頷いた。
「どうやら、お前達と俺達の目的は同じなようだ。こっちには魔法使えるやつがいるぞ。どうだ?一時的にパーティー組まないか?」
こいつらの目的もSR弓か。マスタースミスであるアリシアがこっそり教えてくれた情報を知ってるってことはこいつらもそこそこ出来るやつらなんだろう。
「俺達は何をすればいい?」
タダでついて行く訳にはいかない。何事も善意で動くハロルドみたいなやつばっかりとは限らないからな。
「欲しいのは戦力だ。元々一緒に行く予定だった2人が急用で来れなくてな。後方支援と前衛の戦力が欲しかったんだ。見た感じ、姉ちゃんは弓だろ?それに、あんたは日本刀だ」
この男は日本刀だからと蔑まないのか。珍しい事もあるもんだ。
「ちょっと!リーダー!日本刀だよ!?」
後ろにいた背の低い女性が声を上げた。これが普通の反応だな。背中には和弓、この子の弓が欲しいのか。
日本刀だと騒いでるのに自分も不遇武器じゃないか。
「こら、サラ。失礼なこと言うな。この兄ちゃんなら大丈夫だろ」
「だって!私の弓作るのに!」
「これが普通の反応だろ。なんで俺なら大丈夫なんだ?」
この男は初めて見る。俺の剣術は見ていないはずだが……。
「俺はな人を見る目には自信があるんだよ。あんたの隙のない歩き方、立ち振る舞い、一挙一動が猛者のそれだ。剣道か……?いや、もっと実践に近い武術を学んでるんじゃないか?」
こいつ…。マジで只者じゃない。たったそれだけの情報でここまで。
「凄いな。確かに"少し"武術はかじってる」
「奇遇だな。俺も"少し"武術をかじってんだ」
俺と槍使いの男はジッと互いの目を見る。
「「気が合いそうだ!!」」
「よろしくな!」
「おう!よろしくな!」
こいつとは何かと気が合いそうだ。楽しい冒険の予感がする。
互いに肩を組み合いパーティーを組むことを決定した。
「姉ちゃんも只者じゃねぇな」
「ふん、当たり前よ」
スミレもこの男が只者じゃないって事に気付いてるみたいだな。
「ちょっと待ってよ!!私は納得してないから!!」
弓使いの女サラは再び声を上げた。
「お前の納得どうこうの話じゃねぇよ。リーダーである俺が大丈夫だと言っているんだ」
「うっ……わ、わかったわよ」
すると、サラはキッと俺とスミレを睨みつける。
「足引っ張らないでよね!!」
「はいはい、頑張ります」
「気の強い子ね」
スミレが言えたことではないけどな。
【パーティー申請が届きました】
「自己紹介がまだだったな!」
槍使いの男は握手を求める手を出してきた。
「俺は、ギルド【オーディン】のリーダー、アデルだ!!よろしくな!!」
オーディンのアデル…!?確か、『槍のオリジン』を手に入れたって言う。
「あ、ああ……よろしくな。ハイセだ」
「スミレよ」
「んあ?どした?」
「リーダーがオーディンのアデルだってわかってビビってるのよ」
「たー、俺ってばそんな有名人?あの掲示板オリジン手に入れたら勝手に載るからなぁ……ありがた迷惑だな」
どうやら俺達はとんでもない男とパーティーを組んでしまったようだ。
ご閲覧いただきありがとうございます!
次回をお楽しみに!