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第70話 混沌として

作品タイトル変わっちゃいました(´>∀<`)ゝ

 

 〔妾の名はファナトリア。なに……悪意に呑まれた弱き龍よ〕


 ファナトリア!?

 いや、ファナトリアは狂って俺達と戦ってて……ああもう!ギリギリの状況で思考が定まらない!


 〔混乱しておるようだが、目の前の危機を脱するのが先決ではないのか?〕


 あ、ああ……そうだった。

 俺の最大火力で相殺してやる!


 〔張り切っているようだが、それでは貴様の武器が死ぬぞ?〕


「なんだよさっきから!これしか方法がないだろ!」


 〔はぁ……〕


 ため息!?


 〔妾がだだの冷やかしで貴様に語りかけたとおっておるのか?少しは考えることを覚えよ。その頭は何のために付いておる。1から10まで説明せねばならんのか?これだから人間族は……〕


 偉そうな龍神様だな!


 〔妾は貴様が気に入った。龍神の力の一端をお主に貸し与えてやる〕


 力の一端を俺に?

 ファナトリアの力……こいつの言うことを信じるべきか?

 そうこう言ってられない。

 信じるしかない。


「どうしたらいい!!」


 〔妾を呼べ〕


 闇の咆哮に押される中、俺は龍神の名を叫んだ。


「こい!!ファナトリア!!!」


 名を叫んだ瞬間、豪炎を纏うへし切長谷部は雷鳴が迸り神々しく輝きを放つ。


 ◇


「ハイセ!?」

「これは……」


 スミレは驚きシオリはゴクリと喉を鳴らす。

 雷鳴を纏い神々しい輝きを放つ刀はこの場における何よりも特異であり目を引くものである。

 その様子を見ていたシオリは1人混乱していた。


「ね、ねぇ……ハイセってテイマーじゃないよね?」


「テイマーって、モンスターを仲間にするやつ?そんな素振りは見てないけど」


「だよね。でもあれってリンクスキルに見えるけど……」


「リンクスキル?」


「モンスターと意思疎通を交し、友好関係を築いて仲間をすることを"テイム"。そのテイムしたモンスターの力を武器に宿して放つスキルを"リンクスキル"って言うの」


 だが、ハイセがモンスターと意思疎通を交わしているとこなんて見たことがない。

 そう思いスミレとシオリは首を傾げる。

 なんせあの男はモンスターを見かけると言葉よりも先に刀が出るタイプだから。


「そもそもこのゲームでのテイム成功率は10%にも満たない……。一体どうやって……」


 そんなことを考えながらシオリは前衛の援護を続けていた。


 ◇


【龍神:ファナトリアとのリンクを確認】


【リンクスキル(絆Lv1)を解放します】


【リンクスキル奥義:天上之雷(インドラ)

【リンクスキル:渦雷滅魔(からいめつま)

【リンクスキル:炎雷之神(ほのいかづちのかみ)

【リンクスキル:龍牙一閃】

【リンクスキル:龍迅】


「ちょちょちょちょ!!!多い多い!!リンクスキル!?なんだこれ!!」


 〔早うスキルを放たんか馬鹿者!死ぬぞ!〕


 そうだった……!!

 えっと……!!

 1番強そうな奥義……。


 〔奥義はならん!それを使えばリンクが解けるぞ!〕


 注文が多いな!

 ならこれだ!


炎雷之神(ほのいかづちのかみ)


 へし切長谷部の刀身から炎雷が吹き荒れる。

 炎雷は刀身を飲み込み、猛々しいエフェクトは更に肥大化していく。

 その光景はさながら1柱の神が降臨したかの如く、神々しくも畏ろしいものであった。


【リンクスキル:炎雷之神(ほのいかづちのかみ) -- 説明:炎雷を纏う神の一撃。対象に極大ダメージを与え、20秒の間STRとAGIを上昇させる。【龍迅】状態の場合多重攻撃となり、ダメージ判定が2回となる。【龍迅】状態でない場合スキル使用後3秒間硬直状態となる。リキャストタイム25秒】


「こんのぉぉぉぉぉぉおあああああ!!!!!」


 闇と炎雷が激しくぶつかり合う。


 闇の咆哮とせめぎ合っているが、威力は同じくらいに見える。

 押し切れるか?

 いや、なにがなんでも……。


「押し切る!!!!」


 このスキルの効果にはSTR上昇も含まれている。

 そして、ファナトリアとリンク?したことによる効果なのか知らないが俺のステータスも上昇している。

 これならいける……!!


「おらぁぁぁあ!!!!!」


 猛々しい炎雷が均衡を崩し、闇を飲み込む。

 飲み込まれた闇は霧散、押し出された炎雷はファナトリアへと到達し、スキルの効果にもある通り、極大ダメージを与えた。


 さすがの火力だな……。

 神と名前がついているだけはある。


「はぁ……はぁ……」


 スタミナの概念なんてないはずだが、流石に全身に力を入れまくると精神的にも疲労が蓄積するし……息も切れる……。


「んぐっ!?」


 なんだ……!?


 ステータスを見ると硬直状態のアイコンが表示されている。


 〔スキルのデバフ効果だ。あのタイミングならば炎雷之神よりも渦雷滅魔を使うべきであったな〕


「うるせぇ!そんなんあの一瞬で判断できるかよ!」


 〔やかましい人間だ〕


 って、んなこと言ってる場合じゃねぇ!

 たった3秒の硬直……だが、既に放たれていた闇のホーミング弾が俺に迫っている。

 俺に到達するまで体感あと1.5秒……。

 硬直解除は残り2秒……。


 間に合わない……!!


『エピックガーディアン』


 俺の眼前にキッドらしき人型の影が現れた。


「キッド!?」


 ホーミング弾はキッドらしき影に直撃。

 大盾を構えていたが、恐らくあの影自体がバリアみたいな役割なのだろう。

 ホーミング弾を全て受けきったあと、キッドらしき影はノイズと共に消滅した。


「ぐっ……」


 俺とは離れた位置にいたキッドが片膝を着く。

 なるほど、今のスキルは影が受けたダメージの何割かは本体に還元されるスキルなのか。

(闇の咆哮が来た時にも使ってくれよ)って思ったが、あの咆哮を影が食らったら本体もタダでは済まない。


「サンキュー、キッド」


 〔ピロンッ〕


【プレイヤークエストをクリアしました】


 俺達パーティの前にウィンドウが表示された。

 どうやらハルはしっかりギルバートに四宝玉を届けてくれたようだ。


 〔無事届けました!〕


 〔ナイスだハル。今回のMVPは間違いなくお前だ。報酬のうち1つ選んでいいぞ〕


 〔いいんですか!?遠慮なく頂きますね!〕


 〔まぁ、報酬は後として戦線復帰してくれると助かる〕


 〔はい!すぐに戻ります!〕


 そういや白昼堂々と街のど真ん中で戦ってる訳だが、俺達以外戦闘に参加するプレイヤーが居ないな。


「ハイセさん!大丈夫ですか?」


「キッド、なんで他のプレイヤーは戦闘に参加しないんだ?」


「あー、それは敵の対象が俺達だからですね。アイテムによって引き起こされる戦闘は全てフィールドボスと同じ扱いになるんです」


「マジかよ。ファナトリアってレイドバトルで挑むようなモンスターだろ」


「そもそも挑むモンスターでは無いんですけどね……」


 〔おい、妾の存在を無視するな〕


「無視してねぇよ」


「え!?あ、あの……」


 キッドが不審な目で見てくる。

 あれ、もしかしてこれファナトリアの声って俺にしか聞こえてないのか?


「あ、なるほど、リンク先のモンスターと会話しているんですね」


 察しの良い事で。

 流石は古参プレイヤー。


「それにしても、いつの間にモンスターをテイムしたんですか?それに、さっきのリンクスキルとてつもなかったですけど……とても強力なモンスターをテイムしたみたいですね」


 〔ほう、この黒騎士は見る目がある〕


「モンスターをテイム?え?俺、ファナトリアをテイムしたってこと?」


「ファナッ!?!?!?」


 〔何をぬかす、妾が貴様になんぞ従属するものか〕


「は?ならなんなんだよこれ」


 〔知らん。妾が認めた。それだけのこと〕


「ならそれをキッドに説明してやってくれ」


 〔面倒くさい〕


 ったく、なんなんだよこの状況は。

 まぁ、とりあえず俺達に得な状況であることは変わりない。

 上手く活用していこう。


「キッド、おーい。戻ってこい」


「はっ!?ハ、ハイセさん!ファナトリアって!」


「話は後だ。来るぞ」


「は、はい!!」


 体勢を立て直したファナトリアが咆哮し、俺達に迫る。


 ファナトリアの攻撃パターンは変わらない。躱すのは用意だ。

 なら一旦現状俺に起きている事を整理しようか。

 まずはキッドが言っていた"テイム"だ。

 だが、当の本人であるファナトリアは"テイムされてない"という。

 まぁ、これに関してはさほど重要ではないか。ファナトリアのプライドがテイムされてないと言っているだけの可能性もあるしな。


 〔むっ。今なにか馬鹿にしたか?〕


「……してねぇよ」


 んでもって、ファナトリアとリンクしたことで使用可能となった【リンクスキル】。

 解放されたのは5つのリンクスキルだ。

 ファナトリアが言うには"奥義"を使ってしまうと今のリンク状態が解除されてしまうらしい。


「てことは、奥義さえ使わなければずっとリンク状態でいれるってこと?」


 〔阿呆め。リンク状態でおると自身の体力を回復することができん。他者からの回復スキルも無効化される。ついでに、バフスキルもな〕


 やっぱデメリットは有りか……。

 体力を回復できないのは大問題だ。

 リンクを解除するタイミングを見極めないとな。


「よっと」


 迫る爪を躱し、僅かな隙を突きリンクスキルを放つ。


『龍牙一閃』


【リンクスキル:龍牙一閃 -- 説明:龍神の鋭き反撃の一閃。斬撃ダメージを与える。対象の攻撃動作後、一定のタイミングで発動した場合、ダメージが2倍になる。また、パリィ効果も含まれているため特定のタイミングで攻撃を弾くことが可能。パリィが成功した場合、ダメージは2.5倍となる。リキャストタイム20秒】


 うーん、控えめに言って強い。

 ダメージに補正が掛かるタイミングは結構シビアだが、そこは俺のプレイヤースキルでなんとかなるな。

 それにしても、リンクスキル……個々の性能が段違いに強い。だが、リンクスキルは通常のスキルのようにMP消費がない代わりにリキャストタイムがある。


「乱発はできねぇってか……よく考えられてる」


 リンク状態だとへし切長谷部のアクティブスキルを使用することができない。

 良い事づくめって訳じゃないが、リンクスキルやステータス上昇効果然り、強力であることに変わりは無い。


「今のHPは……7割ってとこか。まだいけそうだ」


「お待たせしましたー!!」


 ファナトリアの背後からハルが走ってきている。無事戦線復帰できたらしい。

 戻ってこれたってことはどうやらギルバートがいる街門より外も戦闘区域範囲内ってことか。


「よし、ガンガン攻めるぞ!」


 ◇◇◇◇◇


 場所は変わり、百花繚乱が龍神と戦闘を開始した頃に時を遡る。


 SBA【海底都市:スピルス】


 美しい海底の都市では黒を基調とした装備を纏う一行が巨大な蛇と相対していた。


「これマジ……?ハロルド……どうする?」


 双剣姫と呼ばれるプレイヤーは冷や汗をかきながら後退る。


「マジみたいだね。これは……困った」


 ハロルドは額に手を当て数秒考え込む。

 この巨大な蛇は蛇神と呼ばれている龍神同様本来であれば非敵対モンスターであるはずだった。

 しかし、先のスタンピードで自身が庇護しているはずの海底都市へと牙を向いた。

 海底都市スピルスは蛇神自らの手によって蹂躙されたのだ。


「まさか……。今回スタンピードが起こった各エリアで同じことが起こっているとしたら……」


 1つ頷き、剣を抜く。


「本気……?」


「ふっ、ハイセくんなら逃げないだろうね」


 "ハイセ"。そのプレイヤーの名前を聞いた瞬間、双剣姫リエラの表情が変わる。


「ぶっ倒してやるわ」


「ははっ……君は本当に単純だね……」

(ハイセくんは一体彼女に何をしたのだか……)


「ほら、ハロルド!やるわよ!」


 パーティ全員が臨戦態勢となり、【蛇神ナルフェム】へ立ち向かうのだった。


 ◇◇◇◇◇


 SBA【火山都市:カルラ】


「はぁ……予想はしていましたけど……」


 ギルド:オーディンのサブマスであるカスミは唖然とした様子で目の前に現れた火の鳥を眺める。


「よっしゃー!!!!!」


「ちょ、アデルさん!?ま、まって!」


「どーせやらなきゃいけないんだよ!ほら、ボケっとすんな!」


 ギルド:オーディンのギルマスであるアデルは臆することなく【鳥神カルレイア】に立ち向かっていった。


 ◇◇◇◇◇


 SBA【天空島:アマト】


「キリン?」

「馬だろ」

「鹿じゃね?」


 神々しい光を放つその哺乳類は堂々たる風格で闊歩する。


「麒麟……だね」


「レオル、どうする?」


「ゴローはどう思う?」


「やるしかないだろ。明らかにワールドクエスト関連だ」


「だね」


 ゴローは腰に挿す三日月宗近を抜き取る。

 ギルド:円卓は【幻神:アヴァリス】への攻撃を開始した。


 ◇◇◇◇◇


 そして……。


 SBA【精霊の森:サラディン】


 〔ギャー!!!〕

 〔うわぁぁぁあ!!!!〕

 〔だ、誰か……助け……〕


 このエリアで活動していたプレイヤーの尽くが蹂躙された。調査に来ていたギルド【牙狼】も含めて。

 立ち向かう(プレイヤー)はもういない。


 〔もう……お終いだ……〕


 〔ギャォォォオオオオ!!!!〕


 虎は咆哮する。

 生きとし生きる生命体を滅ぼさんと。

 虎は吹き捲る。

 この森の全てを破壊し尽くさんと。

 虎は狂気に染る。

 自我は無く、ただ狂気に身を任せて。


【虎神:ラグーザ】はただ蹂躙する。

 この世の全てを憎き(あだ)として。


 その日【精霊の森:サラディン】は『特殊戦闘区域(SBA)』から『戦闘区域(BA)』へと変化した。


 NPCの阿鼻叫喚と共に。


一方その頃……。


ゴクウ「あぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!」


オリジンダンジョンにて巨大な二足歩行の牛の怪物に追いかけ回されていた。

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