第67話 化け物共が
いつも不遇武器でも最強ですをご愛読頂きありがとうございます!
今回、WSOというゲームのゲーム内の表記について少し変更しましたのでお知らせします!
今までは『防御系スキルまたはアイテムの硬度』は"色"で示していました!ですが、分かりずらい!作者自身が覚えられないという事も考慮し『硬度等級:下級、中級、上級、超級、超越級』という表記にしました!
これまでの話で硬度等級が出てきた場面は既に改稿してあります!
「直ってないよ!」という場面があれば、誤字報告にて教えてください!
以上、お知らせでした!
それでは、楽しんで!
「さて、どうするか」
相手は恐らく100を超える軍勢、それも盗賊ギルドとなればどんな手を使ってでも俺達の命を狙ってくるだろう。
一番危険なのは建物から出た瞬間だ。
そう考えるとタンクのキッドをシオリと行かせたのはまずかったか……。
「防御スキルなら、全方位ガードできるバリアのスキル使えるよ」
「そりゃいい。流石アリシアだ」
「硬度等級は中級だから、そこまで耐えられないけど」
「十分だ。ギルドハウスから出た瞬間にバリアを張ってくれ」
アリシア様様だ。
戦闘においてもこんなに有能だとは思わなかった。
このまま鍛冶師としてやっていくには勿体無い気もするが……本人の希望だもんな。仕方ない。
「聞いてたと思うが、ここから出たら大群に襲われるからそのつもりで」
「それはわかるんですけど、作戦とかはどうするんですか?」
作戦か……。
「スミレは範囲技でなるべく敵を減らしてくれ。倒しきれなくても行動を制限してくれるだけで十分だ」
「わかったわ」
「アリシアはとにかく迎撃だ。あんまり前には行くなよ」
「うん!」
「ハルは俺と一緒に暴れ回るぞ」
「もちろんです!」
こんなもんか。
相手は100人以上、どうせ乱戦になるから作戦なんてあってないようなものになるはずだ。
「んじゃ、いっちょ暴れますか」
各々の武器を手に取り、俺達はギルドハウスを出た。
◇
◆SBA【龍の都:ドラゴニア】
「ガルドさん!!出てきましたぜ!!」
「殺れ」
〔ドガァァァァァン!!!!〕
弾丸の雨、遠距離スキルの嵐。本当に容赦ねぇな。
「ハイセ……やばいかも……!!」
「十分だ」
〔パリンッ〕
アリシアが張った水属性のバリアが割れる。
『豪炎天魔』『覇剣』
「オラァア!!!!!」
放たれた豪炎は迫り来る弾丸の雨を飲み込み、スキルを弾いた。
くそ……流石に全弾防ぐことはできなかったか。HPが3分の1ほどが削れた。
「この程度じゃ死なねぇか」
王猿のリーダーと思わしきプレイヤーはギルドハウス前にある建物の屋上を陣取っている。
「【王猿】だっけか?初めましてなのに随分な歓迎じゃねぇか。もっと優しくしてくれよ」
「おもしれぇこと言うじゃねぇか色男」
日焼けしたように色黒でドレッドヘアーのイカついおっさん……こいつの名前は確かガルドだっけ。
チョコレート菓子みたいな名前だな。
「いいか?二度は言わねぇぞ。四宝玉を置いていけ、そしたらてめぇらを殺しはしねぇ」
「いかにも盗賊らしいセリフだ。欠伸が出る」
「この人数を見てもその態度とはな……度胸だけは買ってやる。精々足掻けよ、新生」
その言葉を合図に再度一斉射撃を始めた。
「させるか!」
『黒翼壁』
俺達の目の前に大きな漆黒の翼が展開される。
翼に直撃した攻撃は中央にある水晶玉に吸収された。
「チッ……黒騎士か」
ガルドは見下しながら舌打ちをしている。
あいつは出張ってこないんだな。
「よく間に合ったな」
「はい、シオリさんが人数が増え始めた段階で送り出してくれて」
「助かったよ」
シオリのナイス判断に救われた。
〔バァン!!〕
ガルド目掛けて銃弾が迫るが、対狙撃用のバリアに阻まれる。
「スナイパー……影の狙撃手か。流石は百花繚乱。一人一人が他所のギルドでもエースを張れる程の実力者だ」
「そりゃどーも」
「黒騎士がいる時点で遠距離での一斉射撃で崩すのは厳しくなったか。仕方ない」
くるか。
「野郎共、一斉にかかれ」
〔うぉぉおおおお!!!!!〕
まぁ、そうくるよな。
ご丁寧にタイマンなんてやらせてくれるはずがない。
「隠密系のスキルに気をつけろよ!迎え撃つぞ!」
「「「「了解」」」」
迫り来るは100人のプレイヤー。
この乱戦、どう切り抜けるか……。
「ぼーっとしんてんじゃねぇ!」
「考え事か!?」
「D.C優勝者の首いただきー!!」
「黙れ」
「「「はぇ……?」」」
俺は目にも止まらぬ早さで3人の首を切り落とす。
「ほう……」
俺の様子を見てガルドが感嘆の声を漏らす。
あの野郎、高みの見物とはいい度胸だ。
引きずり下ろしてやる。
「オラオラ!!黒騎士さんよ!籠ってないで出てこいよ!!」
数人のプレイヤーがキッドの盾にいくつもの攻撃を仕掛けている。
次第にキッドの盾は黒い輝きを放ち始め、その輝きはキッドの持つロングソードに収束した。
「邪魔だ」
『黒刃覇閃』
「「「ぐぁぁぁあ!!!!」」」
放った巨大な黒い斬撃にプレイヤー達は飲み込まれ、粒子となって消えていった。
一人一人は大したことねぇな。
「っ!?」
〔キンッ!!〕
「あれ?完全な不意打ちだと思ったんだが」
「隠密系スキルか」
こいつはガルドの隣にいたプレイヤーか。
主力も中には混じってるらしい。
「ぐぁぁぁあ!!!!」
「ぐへぇ……」
ハルもスミレも大丈夫そうだな。
主力が来ても問題なさそうだ。
問題は……。
「うわっ!!」
「チッ!ちょこまかと」
「うわぁ!!ハ、ハイセ!ごめん!私PvPはちょっと……」
アリシアのスキル構成や立ち回りは対モンスターを想定しているものだ。
素材を求める鍛冶師らしいというかなんというか……。
「今行く!待ってろ!」
「舐められたもんだ」
迫る短剣を躱し、体勢を整える。
しかし、俺の背後から独りでに短剣が襲いかかってきた。
「なんだ?短剣が浮いてる」
短剣使いの男は両手に持つ短剣を浮かせ、新しく両手に短剣を装備した。
「面白いスキルだな。盗賊なんかやめて大道芸人にでもなったらどうだ?」
「減らず口を。圧倒的手数に押されろ!」
四方八方から短剣が襲いかかってくる。
正面からは短剣使いの男の攻撃、背後からは浮いている短剣の攻撃。
極めつけは俺の首を取らんとする有象無象の攻撃。
第六感がなければ苦戦しただろうな。
「思ったよりも鬱陶しいな」
「なんで一撃も当たらないんだよ……!!」
物珍しい技だが、結局はこの程度か。
2本の短剣を弾き落とし、肉薄する。
ん?
僅かな違和感。
この動き、視線、息遣い、今から殺られるプレイヤーのそれとは少し違う……焦りの中に僅かに感じる余裕。
「っ!!」
眼前に現れるナイフ。
その距離僅か2cm。
俺は勢いそのままに体を捻って躱した。
「なんでこれを躱せるんだよ……」
首を一刀両断し、男は粒子となって消えた。
今のは危なかった。
じじいから弱点について指摘される前だったら殺られてたかもしれないな。
「アリシア、大丈夫か?」
「うん、なんとかね」
「初撃を切り抜けれたのはデカかった、ありがとなアリシア。あとは任せろ」
「うん!任せる!」
迫る敵をなぎ払い、アリシアを西風連合のギルドハウスに送り届けた。
「っと……」
「ひゃっはー!!」
「攻めろ攻めろ!!!」
「クソが」
次から次へとキリがない。
「口悪くなってるわよ」
「スミレ、合技で一気に削るぞ」
「いいけど、どこを狙うの?」
一気に削りたいが、配置が疎らすぎる。
どうにか1箇所にまとめたいが……。
「1箇所にまとめるなら俺に任せてください」
そう言い残しキッドは襲い来る集団のど真ん中に陣取った。
「バカかこいつ!」
「余程防御力に自信があるらしいな!」
「袋叩きにするぞ!」
『アイアンボディ』
キッドはアイアンボディを発動し、物理攻撃の一切を受け付けない。
そして、大盾の水晶玉が再び黒く輝く。
『ブラックホール』
【スキル:ブラックホール UR 説明: スキル【黒翼壁】で蓄積したダメージを解放して発動可能。大盾を中心としてモンスタープレイヤー関係なく引き寄せる。大盾に接触したプレイヤーまたはモンスターはHP回復効率低下のデバフを受ける】
「うぉ!!」
「なんだこれ!」
「引き寄せられる……!!」
「すげぇな。これである程度1箇所にまとまった」
だが、アイアンボディは物理攻撃の無効化だ。俺達が今から放つ合技は炎の特殊技、キッドにもダメージが入ってしまう。
「ハイセさん!俺は大丈夫です!黒翼壁で吸収した残りのエネルギーをDEFに振りました!多分耐えれると思います!」
たぶんかよ……。
まぁ、もしもの時は四宝玉の恩恵の効果で蘇生してやろう。
仲間ごと攻撃するのは気が引けるが、キッドの覚悟を無駄にする訳にはいかないな。
「ハル、ヒールの準備をしておいてくれ」
「はい!!」
『大鷹の暴嵐』
『豪炎天魔』『覇剣』
「「合技:豪炎鳥」」
燃え盛る大鷹はキッドごと飲み込み巨大な炎の竜巻を作り出す。
まとまった10数人のプレイヤー達のHPはみるみる減っていき、底を尽きた。
「キッドー、生きてるかー?」
「はい……なんとか……」
ほんと大したやつだよ。
辺りを見回すと、特攻を仕掛けてきたプレイヤー達はたじろぎ、数歩後ずさった。
大体半分は減ったか?
「そろそろ降りてこいよ。お山の大将さん」
「……チッ、使えねぇ雑魚共が」
ガルドは巨大なハンマーを肩に担ぎ、目の前の味方を弾き飛ばしながら俺の目の前に立つ。
デカイな。
身長は2mとほどか?
筋骨隆々な見た目で威圧感が増している。
「ふっ……てめぇもそっち側の人間か」
ガルドはフッと笑い、そんな事を呟く。
「?」
そっち側?
「"騎士王"レオル。"槍の神"アデル。"斉天大聖"ゴクウ。"双剣姫"リエラ。こいつらはこの世界で強者と呼ばれる奴らの更に上の真の強者だ。スキルを使わずとも、持ち前のプレイヤースキルで蹂躙しちまう程の化け物共だ」
え……。
騎士王?槍の神?斉天大聖?双剣姫?
あいつらそんなカッコイイ2つ名あったのかよ……。羨ましい。
「ハイセ、スミレ、てめぇらもその化け物共と同類だったと確信したところだ」
「戦うのやめとくか?」
まさか戦意喪失したとか言わないよな?
「……ぷっ、くはは……だっはっはっはっは!!!」
「何がおかしい」
「いやぁ……揃いも揃っててめぇらは……」
「っ!!」
ガルドが一瞬で俺に肉薄してくる。
速い……!!
〔ガンッ!!!!〕
巨大なハンマーをまるで棒切れのように……。
どんなSTRしてんだよこいつ……。
『剛力』『ヘビースマッシュ』
2つのスキルを重ね掛けしやがった。
「ぐっ……」
なんて力だ……押し潰される……!!
「舐めるなよ、化け物。この世界では俺達のようなパンピーでさえ上にいける。スキルの使い方1つでてめぇらを倒すことだってできんだよ」
くそ。
ジリジリと押されていく。
俺の足元のコンクリートが陥没し始めた。
このままじゃ俺の刀が先に折れてしまう。
なんとか受け流して……。
『ソーンバインド』
「なっ……」
俺の足元から茨の蔓のようなものが伸び、俺の体を縛り付けた。
「ハイセ!!」
「師匠!!」
「ハイセさん!!」
「おーっと、アンタらの相手は俺達だぜ?」
「くっ……邪魔!!」
スミレ達が援護しようとしたが、他のプレイヤー達が足止めをしている。
このドレッド野郎……。
強い……。