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第58話 最大火力で

1話にまとめようと思ったんですが

ちょっと長すぎたんで、2話にしました

 

 ドヤ顔でカッコつけているこの男は、ギルド【サイユウキ】のギルドマスター。

 確か、レオルやアデルにも並ぶ強さを兼ね備えた棍棒使いだったよな。


「お、お待たせしました!!!」


 城壁からこっちに向けて聞きなれた声が聞こえる。

 この声はカスミだ、隣にはサラもいる。

 2人とも疲労困憊な様子だ。


「やっと来やがったかゴクウ」


「待たせたなアデル!」


「何してたんだ?」


「迷ってた!!」


「だと思ったよ……」


 曰く、ゴクウは超がつくほどの方向音痴で絶対道に迷ってるだろうからカスミとサラが迎えにいっていたらしい。どうりで2人とも見当たらないと思ったよ。


「ハイセさん!大丈夫ですか!タンクの俺がもっとしっかりしないと……」


「気にすんなキッド。お前の責任じゃない」


 キッドは肩を落としているが、こればっかりはどうしようもない。


「っと、談笑はこんぐらいにしよう」


 ドラゴン・オーガは立ち上がり、再び闇の剣を生成する。


「挑発系のスキルは効かない。めっちゃ素早くて強い。重力スキルを使う。以上だ」


「簡潔で助かる」


 ゴクウは即座に状況を理解し、スキルを解放する。


『砕波』『天上領域』


【スキル:砕波 SR 説明:相手に強烈な打撃ダメージを与える。当たった場所が弱点だった場合STRが上昇し、衝撃波を発生させ、周囲のモンスターにもダメージを与える】


【スキル:天上領域 UR 説明:この領域内では"移動制限系""五感制限系"のスキルを無効化し、STRとAGIを上昇させる。範囲は自身を中心に5m以内。継続的にMPを消費する】


「俺がボスの正面を常に陣取る!俺の半径5m以内からは出るなよ!」


 展開された領域に入ると、押し潰されそうなほどの重力から解放された。

 領域外は何倍もの重力に晒され、石や草が押しつぶされている。


 特定のデバフの無効化、ステータスの強化、流石はURと言うべきか、強力なスキルだ。


「よし、陣形はそのままで行くぞ。俺とハイセで左右から挟む。キッドはゴクウの補助に回ってくれ」


「あいよ」

「了解」


 アデルの指示を聞き、陣形を整える。

 俺達は同時にドラゴン・オーガへ肉薄し、各々の武器を振り下ろす。


 〔グオォ……〕


 キッドと俺の攻撃は防がれたが、ゴクウとアデルの攻撃はヒットした。


「まだまだぁあ!!」


「鴇亜流『覇連槍撃』」

「鷹見流『驟雨』」


 俺達の連撃がドラゴン・オーガを襲う。


「へぇ、おもしれぇ技だ」


 ゴクウはなぜかニヤリと笑い、敵の攻撃を受け流す。


「んじゃ俺も!!」


月砕(げっさい)


 ゴクウの強烈な振り下ろしがドラゴン・オーガの角に直撃した。そして、直撃した場所から衝撃波が発生する。


「お?弱点は額の角みたいだぞ」


「弱点はゴクウと遠距離部隊に任せる。俺とアデルは隙があればどんどん攻撃していくから」


「よし来た!!」


 すると、ゴクウの頭1つ横を猛スピードの矢が通過する。


 〔パァァン!!〕


「鶴矢流『業風剛穿』」


「びっくりしたァ……だが、いい腕だ」


 当たり前だ。スミレがミスってフレンドリーファイアワンパンヘッショなんてするはずが無い。


「それに……美しい……」


「はぁ!?」


 ゴクウがうっとりスミレに見蕩れている。


「おい!」


「なんだ?」


「い、いや、なんだ、集中しろ!」


「初対面なのに随分な物言いだなぁ。まぁ、その通りだけど」


 ゴクウは迫る闇の剣を棍棒で華麗に受け流し、ドラゴン・オーガの顎にカウンターを与える。

 それを皮切りに俺達は次々と攻撃を与えていく。


 ゴクウ1人加わるだけでここまで変わるのか。スキルが強力ってのもあるが、なによりこいつ自身の強さが場の有利を生み出している。


 気付くとドラゴン・オーガの残りHPは2割を切っていた。

 このまま押し切る!


 〔グギャォオオオオオ!!!〕


 耳を覆いたくなるほどの雄叫びをあげ、ドラゴン・オーガは両手を空に向けた。

 手に持つ闇の剣は形を変え、手のひらの上で球体となった、そしてそれは次第に大きくなり、この戦場を埋め尽くす程となった。


「そんなんありかよ……」


「これは、まずいな」


 回避する?でも、どこに。

 城壁はギリ範囲外だが、今から走っても間に合わない。

 どうする。


「迎え撃つしかねぇだろ」


 そう言うゴクウは棍棒を構える。


「なら、参加プレイヤー全員の最大火力で……」


 そう思い後ろを見るが戦場へ駆けつけようとしているのは僅か数人、オーディンのギルドメンバーだけだ。


「ま、そんなもんだろ」


「そうか。死にに行くようなもんだしな」


 それに、ボスの残りHPは2割以下だ。俺達が殺られても自分達が勝てれば良いって考えだろう。


「ハイセ、どうするの?」

「師匠!」


 後方で援護していたスミレと待機していたハルが前衛に合流した。


「ここにいるヤツらであのバカでかい球体を止める。各々の最大火力でいくぞ」


 アデルとゴクウも迎え撃つ準備を始めた。


『神槍:グングニル』


『覇撃』『氷気佩帯(ひょうきはいたい)


【スキル:覇撃 SR 説明:武器に属性を付与した場合、打撃を飛ばすことが出来る。適切な距離で攻撃を当てるとダメージが1.25倍になる。効果時間:30秒】


【スキル:氷気佩帯 UR 説明:自身と自身の武器に氷属性を付与、相手が火属性の場合、確定で追撃が発動する。STR.AGI.DEX+5。効果時間30秒】


 覇撃は覇剣の打撃バージョンって感じか。やっぱトッププレイヤーはこういうスキル構成がマストなのかな。


『覇剣』『豪炎天魔』


『紫電』『チャージショット』


「スミレ、合技でいこう」


「了解」


『大鷹の暴嵐』


「もしもに備えて自分は防御に回ります!!」


『黒翼壁』


 キッドは防御に徹し、俺達の前に漆黒の翼を展開した。


 ドラゴン・オーガは空中に浮き始め、俺達はドラゴン・オーガを見上げる形になる。

 禍々しい闇の球体は空を覆い、戦場に影を落とした。


「いくぞ!!」


神撃の槍(グングニル)

破天光芒(はてんこうぼう)

電磁砲(レールガン)


 3人の最大火力が闇の球体に直撃する。

 勢いは少し弱まったか?だが、消滅させるまでにはいかない。


「鷹見流『轟炎』」


 振り下ろされた真っ向斬りは豪炎を放出し、スミレが放った大鷹の暴嵐と融合する。


「「合技『豪炎鳥』」」


 巨大な豪炎を纏う大鷹は闇の球体を押し返すように勢いを増す。


「まだ足りない……」


 ハルはリボルバーを持ち上げ、もう一度チャージしようとするが、最大チャージの副作用で上手く動けていない。


「お前らはそこにいろ」


 俺はハルの肩に手を置き、後退するように言った。

 さて、ここからが正念場、意地の見せ所ってやつだ。


「なんか手があるのか?」


「まぁな」


「んじゃ、俺もお供しようか!」


 アデルとゴクウは俺の横に並び、武器を構えた。


「シオリ!!ありったけだ!!」


「え!?でも、ハイセのHPは……」


「気にすんな!どうとでもなる!」


「もう!知らないから!!」



『STR上昇・大』

『AGI上昇・大』

『属性ダメージ上昇・大』

『状態異常軽減』

『MP上限解放』

『攻撃範囲拡張』

『チャージ加速』

 その他2つのバフ。


「ぐっ……これは……効くな……」


 案の定オーバードース状態になってしまう。俺のHPはみるみる減っていく。

 時間は無い。


「まだ足りねぇ!!」


 俺の新スキル発動だ。


限界突破(リミットブレイク)


【スキル:限界突破(リミットブレイク) UR 説明:限界を超えた力を得ることができる。効果時間終了後、反動として全ステータスが大幅低下してしまう。全ステータス+15。効果時間60秒】


 溢れんばかりのオーラは俺を覆い、身体からは赤黒い稲妻のようなエフェクトが溢れ出てくる。


「とんでもねぇな……」


「お前らとのステータス差を埋めるための苦肉の策だよ」


「にしてもやりすぎだ。差を埋めるどころか遥か高みにいるぜ?」


 アデルは苦笑いするが、談笑している暇はない。このままじゃ俺のHPが先に尽きてしまう。


 MPを回復したアデルは再び暴嵐を纏う。


「最後の1発だ!!!」


神撃の槍(グングニル)


「俺も!もういっちょ!!!」


破天光芒(はてんこうぼう)


 2人の強烈な一撃を受け、闇の球体にピキピキとヒビが入る。


「おらぁあ!!!」


「鷹見流『火神一文字』」


 放たれた豪炎の斬撃はいつもの何倍もの威力だ。猛々しい炎の様子を見ればそれは一目瞭然。


 〔パァァァン!!!!〕


 豪炎を纏う横薙ぎの一閃は闇の球体を真っ二つに斬り裂き、強力な攻撃を受け続けた球体は霧散し、綺麗さっぱり消滅した。


 だが、これで終わりじゃない。俺が目指すのは高みの見物してやがるあのクソ偉そうなSSランクモンスターだ。


 グッと足に力を入れて、大きく跳躍する。

 だが、ドラゴン・オーガの位置は思ったよりも高い……。


「高さが足りない……!!」


 あと少しなのに……。


「ハイセさんこれを!!」


 キッドは自分の大盾を思いっきりぶん投げる。そこは丁度俺の足元だった。


「さすがだ」


 キッドの大盾を足場に俺は再び跳躍する。

 距離は十分。

 ドラゴン・オーガの頭上に飛び出した。


「中々楽しかったぜ?」


 チャンスは一度きり。

 全ての力を振り絞れ。


 豪炎を纏うへし切長谷部を振り上げる。

 纏う豪炎は猛々しさを更に増した。それはさながら天魔の劫炎。

 全てを焼き尽くさんと荒れ狂っている。


 これが、"俺"の最大火力だ。


紅焔天斬(こうえんてんざん)


【スキル:紅焔天斬(こうえんてんざん) UR 説明:スキル【豪炎天魔】と【限界突破】が同時発動した時のみ使用可能となる。全てを焼き尽くす豪炎は属性不利を無効化し、全ての属性に対し有利属性となる】

 ※有利属性の場合、与えるダメージは1.25倍となる。


 〔グルァ!!〕


 ドラゴン・オーガは防ごうと闇の双剣を生成するが、それも意味を成さない。

 豪炎はドラゴン・オーガを飲み込み、更に燃え広がる。後方の森林にまで届く勢いだ。


 上空からだとよく見える。


 俺の放った『紅焔天斬』は扇状に燃え広がり、フィールドの広範囲を焼き尽くしていた。


 〔グルァァァ……〕


 渾身の一撃を受け、ドラゴン・オーガのHPは0になった。


 いつものように粒子になり消えていった。だが、消える寸前ノイズを発していた。あれは一体……。


【DEFEAT THE BOSS】


 この文字を見るとホッとする……。


「勝ったぁ……けど……!!」


 約上空20mから俺は落下していく。


「残りHPも僅かだなぁ……。あと10秒ほどでそこを尽きるか?いや、それよりも落下ダメージで死ぬな……」


 俺はそのまま急降下。死を待つのみだ。


「ん?」


 なんだあのスライム。でかいな。

 俺の落下地点には巨大なスライムが出現していた。

 いや、あれはアイテムか?


 勢いそのままに落下した。


「うぉぉああああ!!!」


 〔ポヨンっ〕


「た、助かった……」


 なんと落下ダメージは0。素晴らしいアイテムだ。

 だが、オーバードースの副作用で俺のHPは残り5。詰みだ。


「ほら!食え!!」


「ングッ!?」


 アデルが俺の口になんか押し込みやがった!

 ガリッとそのアイテムを噛み砕くととんでもないほどの苦味が俺を襲う。


「おぇぇ……んだこれ……」


「秘薬だよ。今回のMVPへの労いだ」


「おお!全快だ!」


 底を尽きかけていたHPも満タン。オーバードースの副作用も綺麗さっぱり無くなっていた。

 絶対高価なアイテムだよな……?

 あとで請求されたりしないよな……?


「ありがとな!ハイセ!俺達の街はなんとか守れたぜ!」


 アデルに手を差し伸べられ、立ち上がる。


「馬鹿言え、俺だけじゃねぇよ」


「それもそうだな」


 スタンピードに参加したやつらみんなの力があってこそだ。

 まぁ、闇の球体を消す為に力を貸してくれなかったことは根に持つがな。


【STAMPEDE CLEAR】


 〔ウワァァァアア!!!!!〕


 参加者達の大歓声が聞こえる。


 フィールドにデカデカと映し出された文字に俺はホッと胸を撫で下ろした。


「終わったぁ……。まじでやばかった」


「今回はちょっとイレギュラーが多すぎた。本来はもっと余裕があるはずなんだが……」


 今回以外でスタンピードを経験したことがない俺にはわからないが、アデルの言う通り色々おかしかったのだろう。


「俺様が助太刀に来たお陰だな!!」


「お前がもっと早く来てればこんな苦労はしてねぇよ!」


「痛っ……」


 ゴクウの実力も凄かったな。さすがはトッププレイヤーだ。


「ハイセ!ゴクウ!そして、参加してくれた皆!!ありがとな!!今日は大宴会だ!!!」


 疲れた体を引き摺りながら、俺達は勝利を分かち合い、戦場を後にするのだった。


 こうして、初スタンピードは勝利という結果で幕を閉じた。


 ◇◇◇


【ローデイス:時計塔の頂】


「ふむ……。ドラゴン・オーガは殺られましたか」


 フードを深く被った男はスタンピードの結末を時計塔の頂きで見守っていた。


「反省点をあげるとすれば……、個体が少々弱かった事と、ドラゴンの血では些か役不足だったというとこでしょうか」


 ふむふむとメモを取り、フードの男はは勝利を喜ぶ1人のプレイヤーに注目した。


「あの冒険者、クフフ……中々やるようですね。次が楽しみです」


 そう言い残し、フードの男はどこかへとワープした。


 ◇◇◇


「うっ……」


「どうしたの?ハイセ」


「いや、なんかゾクッとして……。誰かに見られてた?」


 気のせいか?


「ほら!早く行くぞ!!」


「今行く!!」


 薄気味悪いが、今は宴会を楽しむか!


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