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第55話 きな臭さ

お待たせしました。


1話から54話までの改稿作業が終了しました。


多少ストーリーが変更している箇所があるので、時間がある方、気になる方は第1話からの閲覧をおすすめします。

ストーリー上大した変更にはなっていないので、55話から継続して読まれても問題ありません。


大変長らくお待たせしてしまい申し訳ありません。


お楽しみください。



 

「ふぅ……大方片付いたか」


 刀を鞘に収め周囲を見渡す。

 シャドウウルフが出現した時はみんなテンパってしまったが、俺やアデル達の勢いでなんとか持ち直すことができた。

 いきなりBランクとは。


「ハイセ!そっちは大丈夫だったか?」


 戦闘を終えたアデルが俺の元に戻ってきた。


「ああ、問題ない。多少ダメージを受けたプレイヤーはいたが致命傷じゃない」


「そうか……」


 アデルは深く考え込む。

 最古参プレイヤーってだけあって今回のスタンピードについては思うことがあるんだろうな。

 ほぼビギナーの俺でもきな臭いと感じるほどだ。


「これは従来のスタンピード用の作戦じゃダメだろうな」


「スタンピードのシステムのままなら次はAランクだ。モンスターも増えるはず」


 Aランクのモンスターが50以上なんて考えたくないな。


「パーティーで固まろう。急造のパーティーよりも熟達したパーティーの方がいい」


 俺はギルドチャットで百花繚乱のメンバーを集めた。


「び、びっくりしましたよ……。まさかBランクが出てくるなんて」


 ハルはそう言いながらも無傷だ。もちろん他のメンバーも。


「次はどういう感じでくるんだろうな」


「何が来てもおかしくないわ。不測の事態に備えましょ」


「そうだな。シオリとスミレは後方の砦からサポートに徹してくれ。俺達に何かあった時にすぐに他の連中と連絡を取るように」


「「了解」」


『WAVE2が始まるぞ!!』


 俺たちの作戦が固まったところでアデルからの集合が掛かった。


「ハイセ、お前らが要だ。頼んだぞ」


「任せとけ」


 アデルのやつ、俺達のことを信頼してくれてるのは嬉しいが、俺達がまだ創立したばっかの新設ギルドってこと忘れてるよな。

 まぁ、やれるだけの事はやろう。


 俺達は次のWAVEに備えるために持ち場に就いた。


 俺達が任された場所は中央の前線。つまりは、この戦いにおける最前戦だ。


【WAVE2】


「始まったな。さて、次はどんなやつが……なんだありゃ」


 初めて見るモンスターだ。半魚人?


「はぁ……ここいらでAランクのモンスターとなるとコイツらだろうな……」


 アデルが頭を抱えている。


「サハギンとサハギン・キングだ!!」


【名称:サハギン 弱点:?? ランク:B】


【名称:サハギン・キング 弱点:?? ランク:A】


 水の都と言うだけあって水辺に生息するモンスターも出てくるだな。


「サハギンが10体、キングが2体か」


「幸い数は少ないですね」


「そうだな。キッド、サハギンのヘイトを全て集められるか?」


「はい!!」


『ヘイトコレクト』


 サハギンのヘイトが全てキッドに集まり、キッドに向かって一直線に走り出した。


「よし」


『豪炎天魔』

『覇剣』


 抜刀した刃に炎が宿る。


「あ、ハイセさ……!!」


『火神一文字』


 燃え盛る炎の斬撃は向かってくるサハギン達に完璧に直撃した。

 これで何体か減らせた……?


「な……!?」


 サハギン達は攻撃を受けたにも関わらず、止まらずキッドに向けて一直線に走り続けている。


「無傷って……」


「ハイセさん!下がって!」


 キッドの指示を受けて大きく後退する。


 〔ギギャギャギャギャ!!!〕


 サハギン達の猛攻がキッドを襲う。

 しかし、


『黒翼壁』


 展開された翼の形をした大きなバリアに阻まれる。そして、その攻撃は吸収され、キッドのステータスを上昇させた。


『黒刃覇閃』


 闇属性を纏った十字の斬撃がサハギン達に炸裂する。

 大きくHPを減らしたがまだ倒せていないようだ。

 しかしどういうことだ?キッドの攻撃は通じて、俺のは通じてない。


「すみません。説明不足でした」


「というと?」


「サハギンの能力で『火属性無効』っていうのがあるんです」


「なんじゃそりゃ。相性最悪じゃねぇか」


「でも、その代わり他の属性と無属性攻撃は普通のモンスターよりも有効です!」


「なるほどな」


 豪炎天魔が使えないのは痛いな……。豪炎天魔の効果にあるステータスの上昇も使えない。これはハルのバフに頼むしかないな。


「ハル、AGIとSTRのバフ頼む」


「はい!」


【AGI上昇】

【STR上昇】


『神速』


 〔ギギャ!?〕


 俺は1体のサハギンに肉薄する。


「鷹見流『風流舞』」


 1体目のサハギンを皮切りに連なるサハギンを舞う様に1体ずつ切り伏せていく。

 キッドがHPを大幅に削ってくれたお陰でそんなり倒せる。


 このまま全部……っと思ったがそう上手くはいかない。

 俺の頭上に影が指す。


 〔ドォォォォン!!!〕


「っとと……。槍?」


 空から槍が降ってきた。水色の三叉槍だ。


「ハイセ!!1体そっちに向かってる!!」


 アデル達が相手をしていた2体のうちの1体のサハギン・キングが俺に向かって物凄い勢いで迫っている。


 ちょっとヘイト買いすぎたか。


 残るサハギンは俺達パーティーをすり抜け、ローデイスに向かって一直線に走る。

 でも、あいつらのHP僅かだし、あとは後ろにいる奴らに任せよう。


「俺達の相手はこいつだな」


「サハギン・キング……。通常のサハギンと同じで火属性無効を持っています」


「だろうな。さて、どうするか」


 火属性無効だから奥の手である合技は使えない。


「キングは水属性の攻撃をしてくるんだよな」


「はい。水滴を飛ばしてきますが、その1粒が弾丸に匹敵するほどの威力です」


 とんでもねぇな。だが、やりようはいくらでもある。

 そんなことを考えていると、案の定キングは水滴を飛ばしてきた。


 〔キンッキンッキンッ!!!〕


「チッ……」


 迫る水滴を斬り落としたが、これも属性攻撃、刀の耐久値が減ってしまった。


「ハル!お前は右に展開してくれ!」


「はい!」


 ヘイトは俺に向いている。

 俺が左に逸れるとそれを追うようにキングは俺に絶えず攻撃を仕掛けてくる。


 一瞬隙ができれは、それでいい。


「今だ!!」


 俺の合図を聞き、ハルは全ての弾丸をキングに撃ち込む。


『弾速制御』×『紫電』


『パラライズボルト』


 〔ギギャァァアア!!!!〕


 水属性と言うだけあって雷がよく通る。

 大ダメージを与え、キングを麻痺させた。


「よっ」


 俺は強く跳躍し、4m程あるキングの頭上まで飛んだ。


「鷹見流『轟雷』」


 力強い真っ向切りがキングに炸裂し、額の角を折った。しかし、


 〔キィィィィ……〕


「クソ!削りきれなかった」


 キングは口を大きく開け、口の中で巨大な水の玉を生成している。


「ハイセさん!!」


 キッドか慌てて大盾を投げるが、間に合わない。これは、まずいな。


 グッと体に力を入れて防御の体制を取るが、キングの攻撃が俺に届くことは無かった。


 〔パァァァン!!〕


 キングのコメカミには1本の矢が刺さっていた。

 さすがスミレだ。

 チラッと見るとドヤ顔でブイサインしている。可愛いヤツめ。


 〔ギゲゲ……〕


 サハギン・キングは粒子となって消えた。


「こっちは片付いたが……」


 アデルの方を確認してみるか。


「おらぁあ!!!」


 アデルのグングニルがちょうどキングの脳天を貫いたところだった。

 向こうも片付いたみたいだな。


【WAVE CLEAR】


「ふぅ……。ちょっとヒヤッとしたな」


「最後の攻撃の瞬間にバフが切れてしまったみたいです……。ごめんなさい、師匠」


「ハルが謝ることじゃない。こればっかりはどうしようもない」


 落ち込むハルの頭を撫でて後方で待つスミレ達の元に戻った。


「お疲れ様」


「助かったぞスミレ。ありがとな」


「当たり前よ」


 WAVE2はSランク2体とAランク10体だけだった。

 これで確実に今回のスタンピードはおかしいと言うのがわかったな。


「こっからまた5分のインターバルか」


「時間が無いわね。早く次の動きを決めないと」


 WAVE2で既にAランクが出てしてしまった。てことは次はSランクってことになるな。順当に行けばボスはSSランクってことになる。


「なぁ、アデル。スタンピードでSSランクのボスって出たことあるのか?」


「無いな。スタンピードの難易度がSSなのは攻めてくるモンスターの数の多さと特殊な条件下であることからSSランクに分類されてる。今までのスタンピードのボスは最高でもSランクだ」


 確かに、スタンピードのモンスターは強化されてるんだよな。Sランクに分類されていたとしても、実際の強さはSランクよりも上だ。


 もしこのスタンピードのボスがSSだったなら、その強さは……。あんまり考えたくないな。


「そういや、ゴクウはまだこないのか?」


「まだ連絡がないなぁ……。もうWAVE3になるってのに」


 ゴクウの戦いを間近で見れるチャンスだったんだけどなぁ。

 レオルやアデルとも張り合うほどの強さらしいし。


「さて、もうそろそろか?」


「だな」


 WAVE3がもうすぐ始まりそうだ。


「ハイセ、何が起こるかわからねぇ。油断するなよ」


「お前もな」


 アデルは自分のパーティーに戻って行った。


「作戦はどうするの?」


「さっきと変わらずだ。臨機応変にな」


「りょーかい」


 俺の指示を聞いてスミレとシオリは持ち場に戻って行った。


「さぁ、いくぞ」


「「はい!!」」


 WAVE3が始まる。

 しかし、出現したモンスターのランクはWAVE2同様BランクとAランクだった。


 特に問題もなくWAVE3を終えた。


 このまますんなり終わればいいが……。


 そう思う俺を他所に、森の奥からは妖しい眼光が揺れていた。


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