表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/72

第47話 秘密とコンペと初デート

 

「よし、おかしくないよな」


 姿見の前で自分の格好を確認する。

 あまりファッションに対して興味が無いからクローゼットの中はガラガラだ。似たような服しか置いていない。

 スミレもそこら辺は期待してないだろう。

 すると、玄関が勢いよく開いた。


「ただいまーっと!お?ハイセ、どこか行くんかの?」


「おかえり。ああ、ちょっとな」


 じじいが帰ってきたみたいだ。約1ヶ月の長い旅行だったな。


「どこ行くんじゃ?」


「どこでもいいだろ。気にすんな」


「ほう、ふむ。そうか……まぁ、頑張るんじゃぞ」


 何を頑張るってんだ。

 じじいは何かを勘づいたようにニヤニヤしている。柄にもなく見た目に気を使ってるから察したのだろう。


「ん?武術連盟から手紙とは珍しいの」


 机の上にある手紙を手に取り、内容を確認する。すると、みるみるうちにじじいの顔が険しくなっていく。

 どうしたんだ?


「な、なぜじゃ……?なぜあいつの名前がある……?」


 じじいはクシャッと握り潰し、怒気を顕にする。


「あいつの継承権は破棄されたはずじゃ……」


「どうした?」


「なんでもない。ハイセよ、お前は集会に参加するな」


「いや、強制参加だろ」


「武術連とは儂が話をつける」


「でも……」


「いいから参加するな!!!」


 ビックリした。じじいが声を荒らげるなんて初めてじゃないか?


「儂はちょっと出かけてくる」


「お、おう」


 くしゃくしゃになった手紙を広げる。それには今回の集会の参加者の名前が記載されていた。


「んー、変なところは……ん?」


 毎年集会は開催されているが、こいつの名前は初めて見るな。


「イェン・リャオ……」


 じじいが怒りを顕にしたのはこいつが原因の可能性がある。


「帰ったら詳しく聞かねぇとな」


 俺は参加するな……か。

 じじいが俺に何かを隠してるのは確実だ。一応スミレにも聞いてみよう。

 そんなこと思いながら俺はスミレとの待ち合わせ場所に向かった。


 ◇◇◇


 待ち合わせ時間より早く着いてしまった。スミレは待たせるとうるさいんだが……。


「どうやら俺よりも早く着いた人がいるみたいだな」


「う、うるさいわね……」


 20分くらい早く着いたのにもう既にいるのか。一体何分前からここにいるんだか。


「しっかりお洒落してんだな」


「当たり前でしょ。私はデートのつもりで来てるのだから」


「そうか」


 スミレはいつもみたいなTシャツにジーパンとかじゃなくてしっかりお洒落している。メイクもしているからか、いつもよりも可愛く見える気がする。


「今日はどこ行くんだ?」


「私に聞くの?リードしてくれないの?」


「え、あー。いや」


「ふふっ、冗談よ!行きましょ!」


 スミレはイタズラな笑顔を浮かべながら俺の手を引いた。


 ◇


「んで、どこ行くんだ?」


 来たのは大きなショッピングモール。ここに来れば大体の物は売ってある。


「着物屋さんよ」


「なんで?なんかイベントでもあるのか?」


「ハイセの所には手紙届かなかったの?武術連の集会。今回強制参加よ」


「あー、そういやそうだったな」


「お母さんが、『ハーくんの着物も古いから一緒に新調してきなさい』って」


 着物の新調かぁ。最後に着物を着たのは中二の時だから確かに小さいな。

 武術連盟やそれに連なる団体から招待されたイベントは基本的に日本の継承者は正装として着物を着ていくのが普通だ。


「それでデートか。なるほどな」


 ややこしい言い方をしやがる。


「でも、俺今回の集会は参加しないかも知れないぞ?」


「え?強制参加でしょ?」


「なんかじじいが参加するなって。武術連にはじじいが話をつけるってさ」


「どうしてでしょうね」


「さあな。今までにないくらい怒ってた」


「じじ様が怒るなんて珍しいわね」


 そう言うとスミレは顎に手を当て考え込んだ。


「そう言えば……。お父さんも手紙の内容を見て顔を顰めてたわ。イェン家がどーのって」


「イェン家……。スミレは何か知ってるか?」


「知らないわ。ただ、イェン・リャオって名前は初めて見たわね」


「だよな」


 スミレも知らないのか……。

 スミレにも黙ってるなんて、余程俺には知られたくないみたいだな。

 無理に聞くべきか、気付かないふりをするべきか……。


「まぁ、必要な時が来れば話してくれるだろ」


「そうね」


 別にじじいや椿さんを疑ってる訳じゃないから、無理して聞くこともないだろ。ただ、あまりに2人が不自然だったら流石に聞こう。気付かないふりをするのにも限度があるからな。


「じゃあ着物選んでくる。また後でね」


「おう」


 スミレはそのまま女性物の着物のコーナーに行った。

 俺はいつも通り黒の着物だし、採寸終われば適当に時間を潰すか。


 ◇


 着物を選んだ後は楽しい時間を過ごした。

 スミレのショッピングに付き合ったり、スミレの行きたいところに行ったり、スミレが食べたい物を食べに行ったり。

 あれ?スミレがやりたいことしかやってないな。まぁ、楽しかったからいいけど。


 その後は終始楽しそうなスミレの横顔を眺めながら、家に帰るのだった。


 ◇◇◇


 ◇SA【始まりの街:アルガン】


 コンペ夏の陣第二部が始まる。

 今俺達はいつも通りアリシアの店で公式チャンネルの配信を見ながら始まるのを待っている。


「シオリ、いけそうか?」


「うん。大丈夫。ハイセが突っ込んでいくのをカバーすれば良いだけだよね」


「よくわかってるわねシオリ」


「さすが影の狙撃手ですね!」


「ハイセさんって意外と不憫な立ち位置なんですね」


 キッドの同情の目が逆に辛い。

 別にいいじゃねぇか。勝ってるんだし。


「始まったよ!」


 公式チャンネルの配信が始まったようだ。


『お待たせ!!ギルドコンペティティブ夏の陣!!第二部の開始だ!!!』


 いつも通り実況のレイナがテンション高めで進行していく。


『前置きなんて必要ないよね!!さっそく今回のバトル形式について説明するぞ!!!今回は……?』


 ゴクリと息を飲む。


『キングを倒せ!!!!ギルドウォーズゥゥゥウ!!!!』


「「「ギルドウォーズ?」」」


 ウォーズ?戦争ってことか?


『ルールを説明するぞ!!!ルールは至って簡単!!!敵の中にいるキングを倒すだけだ!!!…………え?あ、もっと詳しく?っと、運営からもっと詳しくというカンペが出たからもう少し詳しく説明するぞ!!』


 レイナは詳しいルール説明を始めた。


 ギルドウォーズ。

 限定エリアに用意された拠点から敵の拠点に攻め入り、敵ギルドのメンバーの中に居る"キング"を倒せば勝利となる。各ギルドには戦闘ボットが30体用意され、任意の場所に配置することが可能。しかし、戦闘ボットは決まった行動しかとれない。

 キングになれるのはプレイヤーのみ。ギルドメンバーであれば誰でもなることが可能。参加可能人数は5人まで。

 制限時間は20分。時間内に決着がつかなけれはその試合におけるキル数で決める。キル数には戦闘ボットも数に入る。

 なお、キング以外のプレイヤーは1分置きに蘇生が可能である。


「頭こんがらがってきた……。要するに、敵ギルドのキングを倒せばいいんだろ?見分け方は?」


「キングは王冠を被ってるって言ってたね。でも、そう単純じゃないよ。拠点の防衛に力を入れられれば簡単には懐に潜れないし、一気に攻められればキングを取る機会を逃しちゃう」


「それはそうだが、相手も同じだろ?」


「まぁ、そうだね」


「戦争シミュレーションゲームかぁ……。そう言えば昔のゲームでそんなんあったな」


 単純じゃないのはわかってる。でも、こういったゲームで意外と刺さったりするのが俺達みたいなチームなんだよな。


「作戦は……そうだなぁ……『特攻』で!!」


「そうだと思った」


「師匠はそれ以外考えられませんもんね」


 辛辣だなぁ。単純な特攻ではないんだが。


「作戦はこうだ」


 俺の作戦をメンバーに伝えた。


「なるほど、確かにそれならいけそうですね」


「いいんじゃない?やるだけやってみましょ。ダメなら全員倒せば良いだけよ」


 俺よりも脳筋な考えのやつがここに居たな。


「1試合目はどこだ?」


「えっと……『Be Cool』ってギルドだね。聞いたことないや」


「げっ……」


 ドン引きな顔をしたのはシオリだ。そういやこのギルドって。


「私が昨日まで所属してたギルド……」


 すごい確率だなぁ。シオリが居なくなってあのギルドは機能するんだろうか。


「大丈夫か?」


「うん、大丈夫。未練なんて微塵もないし、なんならボコボコにしてやりたいくらい」


「よく言った」


 意気込みは十分みたいだな。


「よし、やるぞ」


「頑張って!!」


 俺達はアリシアに見送られ、限定エリアへワープした。

ご閲覧ありがとうございます!


次回をお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ