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第4話 不遇武器

 

 ◆BA【ドラナ集落跡地】


「オーガ多いな」


「そうね、人型のモンスターは初めてだけどどうってことないわ」


 オーガを凝視する。


【名称:オーガ 弱点?? 討伐P条件:武器スキルを使用せずにとどめを刺す】


 討伐Pも簡単に稼げそうだ。

 相手の動きを観察する為、オーガの攻撃を全て躱していく。こういうモブは単純な動きだが、フィールドボスになるとまた変わってくるんだろうな。


 〔ピロンッ〕

『パッシブスキル【転身】を獲得しました』


「お?なんかパッシブスキルゲットしたぞ。【転身】だってさ。パッシブは討伐Pいらないんだな」


「さっそくか。【転身】は日本刀を扱うプレイヤーが敵の攻撃を一定回数回避すると得られるスキルだ」


 パッシブスキルは 討伐Pを使わず、その武器種の一定条件を満たすと獲得できるらしい。

 詳しい獲得方法は公開されていない。吾郎が一定回数と言ったのは実際に何回回避すればいいか分かっていないからだ。


「効果はっと……」


【転身:500以下のダメージを無条件で回避する。クールタイム:120秒】


 俺のHPは初期の1000だから半分のダメージを回避してくれるのか。ビギナーには強力なスキルだが、HPが多くなると強力とは言えなくなるな。

 ちなみに、HPを増やす方法は装備の効果やアクセサリーの効果で増える。基礎HPを増やすには特定のアイテムが必要らしい。

 基礎HPが1500で装備の効果に【HP10%UP】ってのがあると、HPは1650になるって感じだ。


「基礎HPを上げるアイテムはレアなのか?」


「ああ、物によるが1000以上増えるアイテムもある。逆に50しか増えないってのもあるがな」


 ピンからキリまでってやつだな。


「私も新しいスキル欲しいー」


「そればっかりはやってみないとわからねぇよ。ただでさえ攻略の進んでない日本刀と弓なんだ。その2つのパッシブ条件なんかわからん」


 スミレは頬を膨らましながらオーガを狩っていく。すると、


「やった!!私にもスキル!!【弱点攻撃】だって!」


【弱点攻撃:モンスターの弱点を攻撃した際、5回まで攻撃倍率が1.25倍になる。クールタイム:120秒】


「モンスターの弱点……?」


 俺は再度オーガを凝視する。すると、??だった弱点のところに【弱点:頭部】と出ていた。

 スミレはひたすらヘッドショットしてたから、このスキルが手に入ったのか。こういう偶然で得られるスキルもあるのがこのゲームのやり込み要素でもあるんだろう。


「倍率が上がるのかぁ、いいなぁ。敵が強くなればなるほど効果が大きくなるな」


「いいでしょー」


 スミレはドヤ顔で胸を張るが、たかだか1.25倍だ。使い道は少ないな。

 武器スキルを使用せずオーガを5体狩ったことで、討伐Pを5P獲得した。変わらずAGIにステータスを振る。スミレもDEXに振ったみたいだ。


「吾郎はサポートメインなんだろ?ステータスはどうしてるんだ?」


「俺はINTとSTRを均等に振ってる。サポート系の魔法は結構MP使うからな。INTでMP総量を上げないといけないんだ」


「なるほどなー」


「ほら、ついたぞ。オーガキングがいるSBA(特殊戦闘区域)だ」


「SBA?」


「『special battle area』の略で、その名の通り『特殊戦闘区域』って意味だ。フィールドボスが居座る区域の事をそういう。ボスは基本その区域から出ることは無いぞ」


 オープンワールドゲームでよく見る、モンスターが自分の居た元の場所に戻っていくあれか。


「ちなみに、プレイヤーが戦闘中に10秒以上区域外に出たら無条件で敗北になるから気をつけろ」


「はーい。しっかし凄い人だなぁ」


 SBA付近には所狭しとプレイヤーが居る。冒険者協会とは違ってしっかりした装備の人も多くいる。


「緊急クエストは報酬が美味い上にランク条件なしだからな、腕に自信があるやつは挑むんだよ」


 オーガキング自体はこの世界に山ほど居るらしい。その内の1体がこいつらしい。だから、緊急クエストを発行しても、1億人のプレイヤーが1つのエリアに集まることはないようだ。


「しばらく俺達の番は来そうにないな」


「そうでもないぞ。どうやらここにはレイド部隊が3部隊いるみたいだ。すぐに回ってくる」


 レイドって言えば、複数のパーティーでボスモンスターを討伐するやつか。


「Cランクのボスだろ?そんな束になってどうすんだよ」


「まぁ、あそこの演説を聴いてみろ」


 今からオーガキングに挑もうとするレイド部隊の中心には如何にも騎士!って感じの優男がなにか喋っていた。その周囲には俺達と似たような装備をしたビギナープレイヤー達が群がっている。


「今回はこのレイドに参加してくれてありがとう!!僕はこのレイドのリーダーを務めるハロルドだ!!今この場には多くのビギナーが居る!!初のフィールドボスで緊張するだろうが安心して欲しい!!君達の背中には僕達『漆黒の翼団』がいる!!」


「し、漆黒の翼…?」


 聞いててなんか、こう、むずむずしてくるな…。


「このレイドでどうか自信を付けて欲しい!!そして、我々の様なギルドがあるということを知って欲しい!」


「あー、なるほどな。ギルドの勧誘ね」


「そゆこと、ビギナープレイヤーを狙ったギルドの勧誘だ。ビギナーは強い奴に惹かれるからな。特に規模のデカいギルドになるとそれなりに恩恵もある。余ったレアな武器とか防具とかな、手っ取り早く強くなりたいならそれなりのギルドに入るのもありだ」


「せっかくの冒険なのに、そんな焦ってどうするんだろうな。強くなる過程も楽しまないと」


「その通りね」


 自分の腕が上がっていく嬉しさは何か努力をした事がある人はみんな知っているはずなのに。


 漆黒の翼団がSBAに入っていく。総勢20人ほどか。その内ビギナーが15人、黒い翼が描かれた鎧を来てるやつが漆黒の翼団の団員か。


「待ってる人皆に見られるのね」


「恥ずかしいのか?スミレ」


「そんな訳ないでしょ。目線が鬱陶しいってだけよ」


「それもそうだな」


 だが、オーガキングの動きを観察できるのはありがたい。全くの初見じゃ色々きついしな。


 漆黒の翼団+αVSオーガキングの戦闘が始まる。漆黒の翼団5人が中心となり、オーガキングを取り囲む。そして、あらゆる方面から一斉に攻撃を開始する。見た感じロングソードが多いな、あとは双剣と銃もそれなりに居る。

 すると、オーガキングの拳が1人のビギナーを捉えた。ビギナーは吹き飛ばされ大きく後退する。


「ヒーラーが慌てて回復に行ったな。てことは、もう1発くらえば不味いってことだ」


「じゃあ、オーガキングのあの殴り攻撃は500以上のダメージがあるのね」


 殴られたビギナーは俺達と全く同じ装備だ。体力が増えるパッシブとか持っていない限りは間違いないだろう。

 俺とスミレの会話を吾郎はニコニコしながら見ている。


「な、なんだよ」


「いやぁ、ちゃんとしてるなぁってさ。やっぱこのゲームお前らに紹介して正解だ」


「そうか?まぁ、教えてくれてありがとな」

「吾郎にしては役に立ったわね」


 そんな他愛もない会話をしていると、オーガキングの動きが変わった。


「背中の金棒取り出したな。よくある第2形態ってやつか」


「そう、体力が半分になると第2形態だ」


 ハロルドに鼓舞されながら、ビギナー達も必死に食らいつく。ギルドの名前はあれだが、ハロルドは根っからのリーダー気質だな。ああいう奴に人は着いていく。

 そして、


「「「「勝ったー!!!!」」」」


 漆黒の翼団+αは1人も殺られることなく無事勝利を収めた。

 次にオーガキングがリポップするのは5分後だ。

 ビギナー達はやり切った顔でSBAから出てくる。


「強かったなオーガキング!」

「でも、漆黒の翼団のお陰で勝てた!」

「ハロルドさん強かったよなぁ!!俺、漆黒の翼団に入るよ!!」

「俺も俺も!!」


 どうやらビギナー勧誘は上手くいったみたいだな。ハロルドの強さを見る限り、それなりに剣を振ってきてるようだ。動きは剣道に近いだろうか……。それか、ゲームでひたすら剣を振って鍛えたかだな。どっちにしろ、ハロルドは強い。


 そして、続々とレイドバトルは進んでいく。次のレイドもその次のレイドも無事勝利を収めた。


「まぁ、オーガキング自体レイドを組むほどのモンスターではないからな」


「そうなのか?」


「まぁな、これはビギナー用のセミナー兼ビギナー勧誘ってとこだ」


 確かに今までの戦闘を振り返るとオーバーキルだったか。


「次は俺達の番だな。頑張ろうぜ」

「余裕よ」

「死ぬなよー」


 俺達は意気揚々とSBAに足を踏み入れようとする。


「ちょっと待って!!」


 聞き覚えのある声に止められた。


「えっと……ハロルドだっけ?」


「僕の名前を知ってるってことは、どうやら演説を聴いてくれていたみたいだね」


 漆黒の翼団のリーダーハロルドに止められた。


「なにかようか?」


「君達は見た感じビギナーだろう」


「そうだが」


「だったら君達も僕のレイドに参加するといい!漆黒の翼団の2部隊目が次のレイドをやるんだ!」


 これは俺達を思ってなのか、勧誘の為なのかわからないな。だが、止められた事でスミレがイライラしている。手短に終わらして欲しいものだ。


「はぁ」


「それに、君とお嬢さんは『不遇武器』じゃないか……。あ、不遇武器っていうのはね」


 ハロルドはさっき吾郎から聞いた不遇武器についての説明を始めるが、俺とスミレは不遇武器と聞くだけでムッとしてしまう。


「おすすめは西洋剣……


「結構だ」


「え?あ、いや、現実的な話、日本刀と弓じゃ……」


「変更が必要だと感じたなら始まりの平原でとっくに変えているさ。それともなんだ?このゲームは他人のプレイスタイルをとやかく言うのはマナー違反にはならないのか?」


 俺の言葉にハロルドはハッとする。


「あっ、す、すまない!そういうつもりじゃないんだ!先輩冒険者として、これからこのゲームを始めるならとアドバイスのつもりで……」


 どうやらハロルドは悪い奴ではないみたいだ。


「レイドの話もお断りする。俺達は3人で挑むよ」


 その言葉を聞いてハロルドは少し黙った。


「そうか……。まぁ、現実を知るのも悪くないことだ」


「そうだな。もし、負けたならあんたらのお世話になるよ。誘ってくれてありがとな」


「いやいや!礼を言われることじゃないよ。君達の健闘を祈る」


 そう言うとハロルドはギルドメンバーの元に戻って行った。


「意外と話わかる人ね」


「お前がキレなくて良かったよ」


「よし、やるぞ!」


 俺達3人は今度こそSBAに足を踏み入れた。


 ◆SBA【フィールドボス:オーガキング】


「戦闘の指揮はハイセが取ってくれ」


「え?吾郎の方が経験豊富だろ」


「いや、こういうことはお前の方が適任だ」


 面倒臭いこと押し付けただけじゃねぇか。


「パーティー戦闘のセオリーはどのゲームも一緒だ」


「まぁ、わかった。やるよ」


「なにコソコソ話してんの!早くやろうよ!」


 スミレが痺れを切らしてるようだ。


「スミレ、弱点探すために色んなとこに攻撃してくれ」


「なるほど、パッシブが発動したらそこが弱点ってことね」


「理解が早くて助かる」


 スミレも頭は良いからな、俺の言葉の意図をすぐに理解してくれるからやりやすい。


「吾郎はバフと俺達のHP管理を頼む。ヒールのタイミングは完全にお前任せになるが大丈夫か?」


「問題ない」


「それじゃ、やるぞ」


 5分が経過し、SBAにはオーガキングが出現する。


「ねぇ、あの人日本刀だよ…」

「弓もいる…」

「しかもビギナーだぜ。こりゃダメだな。まだ夢を見てんだろうな」


 SBA外ではヒソヒソと俺達の話をしている。この場にいる60人程の視線を俺達は浴びている。


「外野がうるさいな」


「無視よ。どうせ直ぐに黙るんだから」


「バフかけるぞー」


 吾郎の魔法で俺達のステータスが強化される。

 バフが掛かったのを確認しスミレは矢を番える。初めの一撃はスミレの剛射だ。狙いを定め放つ。

 限界まで溜められた矢は凄まじい勢いでオーガキングの頭部を捉える。


 〔パーン!!〕


 会心の一撃だ。最早当たり前のように会心攻撃だ。強力な攻撃を浴びて、オーガキングはふらつく。


「デカイな…」


 5m程ある巨体が体勢を立て直す。


 〔グオオオオオオ!!!!〕


 オーガキングはスミレに向かって拳を放つ。迫る拳を見てもスミレは微動だにしない


「あーあ、これで1人は終わりだな」


 外野の言葉が俺達の耳に入った。

 オーガキングの拳とスミレの間に俺が入る。


「終わる訳ないじゃない。だってこっちには、ハイセがいるんだもの」


 俺は迫る拳を日本刀で流れるように軌道を逸らし、上手く受け流した。

 受け流したが完全に威力を抑えた訳じゃない。僅かにダメージが通るはずだが、【転身】が発動し、自動で回避した。

 スミレにもダメージはない。


 オーガキングは動きが遅い。俺はオーガキングが放った拳を橋にして、走って渡る。


「顔面がガラ空きだ……ぞ!!!」


 一瞬の間に3つの斬撃を放つ。AGIが強化されている事から、現実では有り得ないスピードだ。


 〔パーン!!パーン!!パーン!!〕


 3つとも全て会心。


【パッシブスキル:心眼 発動】


 AGIが強化され、さらにスピードが上がる。俺を引き離そうと、オーガキングはもう1つの手で俺を払い除けようとする。


「おっと」


 俺はそれを跳んで回避し、スミレの目の前に着地する。


「弱点は?」


「へそよ」


「了解」


 俺が攻撃している間もスミレは絶えず矢を放っていた。あらゆる部位を正確に狙い、弱点になりうる場所を完璧に捉えていた。


「吾郎、足を狙う。お前も前に出ろ」


「りょーかい」


 吾郎は自身に強化の魔法をかけ、バトルメイスを構える。

 俺は右足、吾郎は左足に肉薄する。


「よいしょ!!!」


 重さの乗ったバトルメイスの一撃がオーガの膝に炸裂する。


「おらっ!!」


 鋭い太刀筋はオーガキングの膝を容易に切り裂いた。


【部位破壊:左足】

【部位破壊:右足】


 〔グオオオ…!!〕


 オーガキングは膝をつき、力無く肩を落とした。


「お?」


「"ダウン"だ!!畳み掛けろ!!」


 本来ならここで色んなスキルを駆使して大ダメージを与えるところだが、残念ながら俺達には攻撃スキルはない。ただひたすら攻撃するだけだ。


「へそ狙ってね!」

「おーう」


 スミレは剛射を5発弱点に当てる。大ダメージだ。


「次は俺だ」


 俺は刀を鞘に収めオーガキングに瞬時に肉薄する。

 日本最古にして、最後の剣術"鷹見流剣術"の真髄、それは"自由"。

 あらゆる局面に対応する為、鷹見流の型は代を重ねる毎に進化していく。


「日本刀が不遇武器?刀の使い方ってのを教えてやるよ」


 オーガキングの弱点目掛けて抜刀する。


「鷹見流『驟雨(しゅうう)』」


『驟雨』この型は本来、抜刀してから3つの斬撃を繰り出す高速の抜刀術。抜刀してからの横薙ぎの一閃、そこから切り返し逆袈裟斬り、そして、再度切り返し左袈裟斬り。その流れを3秒以内に全て終わらす事で『驟雨』は完成する。


「な、なんだ今の…」

「スキルだよな…?」

「でも、あんなスキル見たことない…」


 俺が放った技に外野はざわつき始める。

 自分でも驚いた。ここはゲームの世界、自分の身体能力も有り得ないほど上昇している。特にAGIを上げたのが良かったみたいだ。

『驟雨』は、【心眼】によるAGIの上昇によって抜刀の早さは異常なまでに強化された。僅か3秒の間に3つの斬撃を繰り出す型は、"6つ"の斬撃を繰り出すことに成功したのだ。


「流石ね!!」


 スミレは目を輝かして嬉しそうにしている。なぜかスミレは俺の剣術を見ると嬉しそうにするんだよな。


「ははっ……化け物が余計化け物になりがった」


 吾郎は若干引き気味だが気にしない。

 オーガキングの第2形態が来る!!


 〔グオオオオオオ……〕


 オーガキングは粒子になって消えた。

 あれ、これってモンスター倒した時のエフェクトだよな?


【DEFEAT THE ENEMY】


「あ?第2形態は?」


 目の前にウィンドウが現れ、今回の討伐の報酬が表示される。


「ん?討伐Pが10P…?条件は…」


【敵の体力の半分以上を10秒以内に削る】


 これってつまり……。


「スミレの剛射5発とお前の剣術で残り半分だった体力を削りきったんだよ」


「あと半分だったのか?」


「ああ、ダウンした時点でな」


 まじか。全く気付かなかった。戦闘に夢中でボスの体力見てなかった。てか、弱すぎないか?


「オーガキングはフィールドボスの中でも最弱だ。こういう事もたまにある。討伐Pの獲得条件になってる時点で可能性はあるってことだからな」


「そうだな。大したこと無かった」


「私はハイセの剣術見れたから満足よ」


「いくらでも見る機会あるだろ」


「あんた人前で剣術披露しないでしょ!」


 そういえばそうだったな。

 楽しく3人で談笑している光景を外野で見ていたプレイヤー達は唖然としていた。


「俺達が20人かけて討伐したオーガキングをたった3人で……」

「しかも、その内2人は不遇武器だぞ?日本刀ってあんなことできるのか…?」

「弓も凄かった!放った矢は1発も外してないし、正確に当ててる……」

「あのメイスのサポートも完璧だった。本当にビギナーかよ…」


 日本刀と弓の圧倒的火力を目の当たりにしたビギナー達は1つの決断へと辿り着く。


「俺……日本刀に変えてくるわ!!!」


 近接武器を使っていたプレイヤーは日本刀に、遠距離武器を使っていたプレイヤーは弓へ変更したのだった。


 しかし、現実は厳しく結局元に戻したのは言うまでもない。ハイセとスミレの戦いに毒されたプレイヤーは3回のうちの2回を無駄にしたのだった。


「いい時間だし、今日はこんぐらいにしとくか」


 気付けば時刻は24時を回っていた。


「じゃあまた明日学校で」


 スミレがログアウトした。そして、俺もメニュー欄に目を向ける。


「う、嘘だろ…」


「え?どうした?」


 俺は目を見開き固まった。


「ログアウトボタンが……。無い…痛っ…」


 真顔で吾郎に殴られた。冗談じゃん……。俺はそのまま黙ってログアウトした。


 ◇◇◇


 ハイセとスミレがログアウトして少し経った。始まりの街アルガンのベンチでは吾郎が座っていた。


 〔ピロロロ…ピロロロ…〕


 ゲーム内通話の呼出音だ。


 〔ガチャッ〕

「指示通りあの2人をWSOに誘いましたよ。気に入ってくれたみたいです」


『だろうな。あいつらならハマると思ってた』


「親父さん、いい加減ハイセと会ったらどうですか?」


 電話の相手はハイセの父親"鷹見圭吾"だ。


『いや、俺はあいつに嫌われてるからな。まだ会うには早えよ』


「そうですか。親父さんの目的はわかりませんけど、しっかりしてくださいね」


『ああ、ありがとうな吾郎。あとは好きにしてくれ』


 そう言い残し、通話を終えた。吾郎はそのままゲームからログアウトした。


 ◇◇◇


「あー、楽しかったなぁ。明日早起きしてインしよ」


 しかし、あの日本刀の再現度は凄かったな。誰がデザインしたんだろう。

 ゲームのパッケージを手に取り、開発者一覧を見る。


【プロデューサー兼武器種日本刀開発総括:ファルケ】


「ファルケ……?」


 この名前……。いや、まさかな。


 なにか引っかかるが、気にせず俺は眠りについた。


ご閲覧いただきありがとうございます!


次回をお楽しみに!

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