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第35話 百花繚乱

 

「できたわよ」


 食卓には2種類のオムライスとサラダが並べられる。相変わらず美味しそうだ。

 俺のわがままでふわとろオムライスと普通の包んだオムライスの2種類を作ってもらってる。


「いただきまーす」


「召し上がれ。野菜もちゃんと食べてね」


「それは保証できないな」


 俺はオムライスだけを頬張っていく。


「あ、そういや。アリシアとまだギルドの話してないな」


「そうね、ギルドの鍛冶師になってもらうわけだし、色々決めないとね。はい、これ」


「おい!」


 スミレはオムライスを俺から取り上げ目の前にサラダを置いた。鬼だこいつは。


「それ食べないとオムライスも食べさせないし、ゲームもさせないから」


「えー」


「えーじゃない」


 仕方ない。食べるしかないか。

 俺はむしゃむしゃと緑の物体を口に運んでいく。苦いのは嫌いだ。甘いのがいい。

 ふと、ハルが言っていたことを思い出す。


「なぁ、俺って子供っぽいか?」


「子供っぽいっていうか子供ね。野菜食べないし、わがままばっかり。電話しないと起きないし、お昼ご飯も持ってこないときあるし……」


「わかった!もういいよ!」


 上げだしたらキリがないな。改めて言われるとスミレに甘えすぎか。


「すまんな。明日からは自分でやってみる」


「ちなみに、それもう10回は言ってるわよ」


「ぐっ」


「はぁ、どうせ三日坊主なんだから、無理しなくていいわよ。本気で治して欲しい所は言うから」


 そう言われてもなぁ。


「小学校卒業するまでは食生活はまともだったわよね?中学でなにがあったの?」


「小学生の間は家政婦が居たのは知ってるだろ?中学入ってからは自分で生活できるようにってじじいが家政婦解雇したんだよ」


「その結果が今ってことね」


「そゆこと」


 最初は俺だって頑張ったさ。でも、意外と俺は飽き性みたいで料理も頑張ってみたが結果1週間で出前かお菓子に変わり、その他家事も適当になってしまったのだ。

 じじいがたまに飯を用意してくれるが大体焼肉とかそういうのが多い。


「じじ様に頼まれた時はビックリしたけど、お母さんも許してるし、そこまで苦じゃないから。本当に気にしないで」


「そうか」


 そこまで言うならお言葉に甘えよう。

 俺は晩御飯を食べ終わり席を立つ。


「じゃ、俺先にWSO入っとくな」


「ええ、私もすぐ行く」


 俺達は再びWSOにログインした。


 ◇SA【始まりの街:アルガン】


「キッド、ギルド設立の申請はどこに行けばいいんだ?」


「その場でできますよ?メニューのギルド欄に【設立】っていうのがあるはずです」


 メニューのギルド欄……。あまりここら辺はいじったことないな。


「あー、あったあった。えっと、メンバー登録と入金か。300ゴールドってぼったくりじゃないか?」


「誰でも簡単にギルドを作れないようにしてるんだと思います。作るだけ作って全く活動しないってギルドもありますから」


「なるほどなー」


 こういったゲームではあるあるだよな。実際本気で活動しているギルドの方が少数だ。ほのぼのまったりやるギルドとかもあるけど。


「皆が集まったら設立しよう」


「はい!それで、どこに向かってるんですか?路地裏ですけど」


「ここにプレイヤーが運営する武具屋があるんだよ。そこの店主がメンバーだ」


「なるほど、鍛冶師ですか……。でも、始まりの街の鍛冶師って大丈夫ですか?」


「あー、そこは気にするな。腕は保証する」


 そんなことを話しながら錆びれた看板の店の扉を開けた。


「アリシアー、いるかー?」


「あら?ハイセ!久しぶり!」


「サラじゃないか。久しぶりだな」


 そこに居たのはアリシアではなくサラだった。

 かつてアデル達と一緒にパーティーを組んでフィールドボスを周回したフレンドだ。ハルと再会する前だったよな、なんだか懐かしい。


「なにしてんだ?」


「弓の耐久値の回復!後ろの人は?」


「ああ、新メンバーのキッドだ。これでちょうど5人揃ったからギルド作ろうと思ってな」


「5人?ハイセ、スミレ、ハルさん、キッドさん……。あと1人は?」


「私だよ!!」


 鍛冶場からここぞと言うタイミングでアリシアが出てきた。


「えー!?それズルくない!?新参ギルドがいきなりマスタースミス引き入れるって!」


「ズルくねぇよ、俺の人脈のおかげだ」


「たまたまでしょ」


 そうとも言う。


「はい、弓直したよ!ギルドには入るけど、サラの依頼なら喜んで受けるから遠慮なく言ってね!」


「おいおい、一応サラは敵ギルドだぞ」


「ハイセ、ケチケチ言わないの」


「やっと来たか」


 俺がブーブー言ってると、スミレとハルが合流した。これでギルドメンバーは揃ったな。


「じゃ、私はお暇するね!ギルドイベント、ボコボコにしてあげる」


 サラは舌を出して言ってきた。


「望むところだってアデルにも伝えとってくれ」


 手を振りながらサラは走っていった。


「さて、みんな揃ったなぁ。じゃあ各自自己紹介しとくか?まずは俺から」


【プレイヤー名:ハイセ 討伐P:176 使用武器:刀(へし切長谷部) 戦闘スタイル:自由】


 レオルやアデルみたいな初期からやってるトッププレイヤーの討伐Pは300を超えているらしい。俺もまだまだだな。


「次は私ね」


【プレイヤー名:スミレ 討伐P:170 使用武器:弓(大鷹和弓) 戦闘スタイル:ハイセの手網握り】


「おい!手網握りってなんだよ!」


「そのまんまでしょ?ハイセが暴走しないように手網を握るの。放っておいたら勝手に突っ込んで場を乱すんだから」


「むっ……」


 言い返せない。


「僕ですね!」


【プレイヤー名:ハル 討伐P206 使用武器:銃(リボルバー二丁:ピースメーカー) 戦闘スタイル:アタッカー兼サポーター】


 討伐P206か。俺とは確か1ヶ月くらい早く始めてたんだっけか。


「よ、よろしくお願いします!」


【プレイヤー名:キッド 討伐P316 使用武器:西洋剣(夕闇の盾剣) 戦闘スタイル:タンク】


「おお!316!さすがだな」


「一応初期からやってますので……」


 夕闇の盾剣ってことは、大盾とロングソードがセットの装備なのか。そんなのあるんだな。


「私ね!」


【プレイヤー名:アリシア 討伐P278 使用武器:ハンマー(水龍小槌) 非戦闘員(鍛冶師:マスタースミス)】


「やっぱ討伐Pは高いんだな」


「鍛冶スキルにも討伐Pは使うからねぇ。でも、第一線を退いて長いからあんまり戦えないかな」


「そこらへんは俺達に任せとけ」


 これで各自自己紹介は終わったな。


「よし、今からギルドを創る訳だが、1つ問題点がある」


「「「「問題点?」」」」


 そう、ギルド設立の通るべき鬼門。


「ギルド名が決まらない……」


 カッコイイギルド名がいいんだが、思いつかない。【円卓】とか【オーディン】みたいないい感じのが思いつけばいいんだが、難しいな。


「なんでもいいんじゃない?ハイセに任せるわ」


「俺じゃ決められないから言ってんだよ」


「はいはーい!!僕の案からいいですか?」


「はい、どうぞ」


 ハルは待ってましたと言わんばかりに立ち上がった。


「ハイセ旅団!!」


「却下」


「え!?なんでですか!?」


「そんな自己顕示欲の塊みたいな名前嫌だよ……」


 ハルは肩を落とし座った。


「アリシアはなんかあるか?」


「んー……【不遇武器's】とか!」


「ハルが不遇武器じゃないし、ダサい」


「ダサい……ごめんなさい……」


 アリシアも落ち込んでしまった。でもさすがに不遇武器"sはないだろ……。


「キッド!お前が頼みの綱だ……!!」


「えぇ……えっと……」


 キッドは深く考え込む。


「このギルドって、一人一人の個性が輝いているんですよね」


「おぉ、つまり?」


「【百花繚乱】とかどうでしょう?」


「おお!それらしい!」


 百花繚乱、色んな花が咲き乱れるみたいな意味合いだったよな。秀でた人物が多くいるって意味にも捉えれる。


「いいんじゃない?」

「ま、まぁ、やるじゃないですか」

「ダサい……ごめんなさい……」


「一応満場一致だな!」


 よし、これで決まりだ。


「俺達のギルド名は【百花繚乱】!!このギルドをNo.1にするぞ!!」


「「「「おぉー!!!!」」」」


 ◇◇◇


 ギルド【円卓】のギルドハウス。


「あちゃー……キッド入っちゃったのか」


 レオルは頭を抱えて項垂れる。ついさっき、ハイセからギルド設立の連絡が届いたのだ。


「レオル、ちょっとハイセに甘くないか?」


 隣に立ちそう言うのはハイセの幼馴染の吾郎。


「そう言うゴローも結構心配してたよね?」


「それはそれだ。キッドか……。手強くなったな。どうするつもりだ?」


 レオルは顎に手を当て考える。


「今回のギルドイベントの指揮は……そうだね。ゴロー、君に任せよう」


「いいのか?新参なのに」


「良いさ!文句は言わせない。まぁ、文句を言う人は居ないだろうけどね」


 レオルはゴローの肩に手を置く。


「入団して僅か数ヶ月で幹部の座に就いた実力者だ。頼むよ?"参謀"」


「ああ、任せておけ。ハイセとスミレ、2人の対策は容易だ」


「そうかい?それで、君はハイセ相手に"あれ"を使うのかな?」


 その言葉に吾郎はピクっと反応する。


「その為に、俺はこの道を選んだんだ」


 吾郎はレオルの手を払い、部屋を後にした。


「はぁ……さて、どうなるか。楽しみではあるけど、少し不安だな」


 レオンはそう言い残し、ギルドイベントの準備を始めるのだった。


ご閲覧ありがとうございます!


次回をお楽しみに!

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