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第14話 デュエル・コロッセオ

 

「ハイセさん、おはようございます」


「おはよう、先輩。なんで先輩がここに?」


 俺はいつも通り1年1組の教室に登校したはずだ。しかし、教室に入ると四条が俺の机で待っていた。クラスメイトの視線が痛い。


「付き合ってる……のか?」

「まさか…、四条先輩だぞ?」


 先輩が教室で待ってるからってなんで付き合ってるとかそういう話になんだよ……。しょうもない。

 これはさっさと要件を聞いた方が良さそうだ。


「大した用ではないのですが、ハイセさんの記事が完成しまして、確認を……」


「いや、もうなんでもいいから。嘘を書かなければ好きにしていい」


「本当に確認しなくてよろしいのですか?」


「ああ、いい」


「では!この記事でいかせていただきます!」


 そんな確認の為にわざわざ教室で待っていなくても良いだろうに。


 そんなこんなで午前中の授業は終わる。そして昼食前、なぜ四条がわざわざ確認に来たのかその理由を理解することになる。


「なん……だ、この記事……」


 新聞部の作った新聞が掲載されるのは校舎の中央に位置し、誰しもが目を通す掲示板。特に、新聞部部長である四条が書いた記事は飛び抜けて人気で掲示板の前にはいつも人だかりができているのだとか。

 そんなこと俺が知るはずもない。記事の内容を確認しなかった俺にも落ち度がある。だがこれは……。


【特集!!日本刀を振るう貴公子!!鷹見ハイセを直撃インタビュー!!】


「き、貴公子……?」


【若くして文化遺産、鷹見流剣術の継承者となった若き侍!その眉目秀麗、文武両道な彼!!私達新聞部は彼本人に直撃インタビューすることに成功しました!!】


「眉目秀麗……?これは一体何を書いているんだ……?」


 文武両道はわかる。実際今回の入試は1位合格だ。運動神経も悪くなく体育の成績も常に上位だ。だが、眉目秀麗ってのは言い過ぎじゃないか?

 そして、極めつけはこの写真だ。俺が袴姿で道場で刀を振り下ろした瞬間を捉えたもの。自分でいうのもなんだがかっこよく撮れている。……この写真はいつ撮ったんだ?いや、この時は確か……。


「スミレ……やりやがったな」


【Q.あなたは刀で人を斬ったことがありますか?】

【A.あります。ですが、あれは正当防衛、目の前で大切な幼馴染が暴漢に襲われ、俺は怒りに心を支配されました…!!この命に変えても、例え俺の手が血に染まろうとも幼馴染を守ってみせる。そう心に誓っています。(情報提供:幼馴染S)】


「おいおいおいおい……」


 偏向報道も程があるぞ!!いや、間違ってはいない、大方間違ってはいないがこの書き方は無いだろ。

 俺は真っ先に3年の教室に向かった。


「四条先輩!あの記事はなんだよ!!」


 俺は勢いよく扉を開け、叫んだ。


「なんだよとはなんですか?ハイセさんもアレで良いと言ったでは無いですか。私は確認しましたよ?」


「うぐっ……」


 ごもっとも。


「なのにハイセさんからクレームを入れられるのは筋違いではありませんか?」


「ぐぬぬっ……」


 言い返せない。


「見て見てハイセ君がぐぬぬしてる……!」

「かわいい……!」


 外野がうざい。


「それに、私は"情報提供者"から聞いたことを"そのまま"記事にしただけです」


 情報提供者。あいつか。


「わかった。突っかかって悪かった」


「いえいえ」


 俺は3年の教室を後にした。向かう先はもちろん屋上。


「スミレ!!」


「あら、遅かったわね」


 スミレはのんびり弁当を食ってやがる。人の気も知らないで。


「お前!なんだよあの記事!」


「ハイセも見た?よく出来てるわよね」


「あることないこと言うなよ」


「何言ってんの。本当にあったことしか言ってないわよ」


「そ、そうだけど……ちょっと美化しすぎじゃないか?」


「まぁ、確かにハイセはあんなにキラキラしたこと言うような人じゃないわね」


 他人事だと思ってやがるなこいつ。


「ほら、言ってみて?『大切な幼馴染が暴漢に襲われ心が怒りに震えました……』って!……ぶふっ!!」


 こいつ……。


「お前……。もう知らん」


「拗ねないでよ」


「知らん」


「拗ねちゃった」


 悪いのはスミレだ。他人事だと思って。だが、記事を確認しなかった俺にも非はある。 かといってここで許すのも俺のプライドがなんとなく許せない。

 俺は不機嫌なまま午後の授業を終えるのだった。


 ◇◇◇


 ◇SA【始まりの街:アルガン】


【アリシア武具店】


「それで、ハイセはなんでそんなに拗ねてるの?」


「さぁ?」


「スミレがいけないんだよ」


 WSOにログインしても俺は拗ねている。


「はい!修理終わったよ!加州清光!」


「ありがと、お代は?」


「耐久値5回復しただけだからいらないよぉ。ハイセは気にしすぎなんだよ、5なんて修理する範疇じゃないよ?」


「なんか50じゃないと気になってムズムズすんだよ」


「日本刀で50キープするハイセが異常だと思うよ」


「アリシア、何か情報ないの?」


 スミレが藪から棒に聞いた。


「私、情報屋じゃないんだけど……」


「でも私達より沢山のこと知ってるでしょ?」


 アリシアは顎に手を当てて深く考え込んだ。


「ああ、そうだ。情報って言えるかわかんないかど【デュエル・コロッセオ】にはエントリーした?」


「「デュエル・コロッセオ??」」


「知らないの……?運営のお知らせとか見てる?」


「「見てない」」


 デュエル・コロッセオなんてイベントがあるんだな。初耳だ。


「【デュエル・コロッセオ】っていうのは年に一度開かれる決闘大会だよ」


「全プレイヤーが参加できるんだろ?大変なことになりそうだが」


「大丈夫!今はまだ予選期間だから」


 年に一度開かれるPVPの大会か。予選期間は1ヶ月らしい。その間の戦績を集計し上位16名を選出する。そして、本戦はトーナメント式で行われ、PVPの頂点を決める。

 予選期間での戦績の決め方は主に決闘(デュエル)と呼ばれるPVPシステムで決める。

 決闘とは互いの了承を得て行われる戦闘であり、決闘中は他のプレイヤーの介入を許さない。


「それで、決闘した戦績で本戦出場を決めるんだけど、エントリーした瞬間から色んなプレイヤーから決闘を申し込まれるから戦う相手は慎重に選んでね」


「へー、面白そうじゃねぇか」


「スミレは弓だけどやるの?」


「当たり前でしょ?私は1人でも戦えるわ」


 スミレもやる気満々みたいだな。PVPの大会か、WSOは色んなイベントやってんだな。時期的にPVPの大会が終われば、ギルドイベントが始まるって感じか。


「じゃ、エントリーするぞー」


「あ、ちなみにたけど、デュエル・コロッセオでは"スキルの使用は禁止"だからね!自分のプレイヤースキルに自信があればエントリーしてね!」


 スキルの使用禁止だと……?そんなの、俺達にもってこいじゃねぇか!!


 イベントフォームからエントリーのボタンを押した。


「エントリーしたの?プレイヤースキルに自信があるんだね」


「まあな。それなりにできる方だと思うぞ?」


 そんなことを話していると、


「うわっ、すっげぇ勢いで挑戦状がくる」


 すっごい勢いで通知が。みんなそんな決闘に飢えてるのか?


「まぁ、2人はね……」


「なるほど、不遇武器だからか」


「そ、迷い込んできた鴨って思われてるはずだよ」


 アリシアは少し呆れ気味に言っている。そうか、アリシアはまだ俺達の戦いを見たことがないのか。


 丁度いい、鴨はどっちか思い知らせてやるのも悪くない。

 PVPの頂点を決める戦いか。わくわくしてきた!!


 ◇◇◇


「ん?日本刀のプレイヤーがエントリーしてる」


「そうですねリーダー。丁度いい鴨ですぜ。俺が貰ってもいいですかい?」


 リーダーと呼ばれるプレイヤーは少し考え込み、そのプレイヤーを見る。


「"ハイセ"、"日本刀"……」


「リーダー?」


「いや、このプレイヤーは僕が貰う。君は弓の人を相手にしなよ」


「リーダーも卑しいっすね!じゃ、俺は弓の方貰いやす」


 ◇◇◇


 〔ピコンッ〕


【プレイヤー:ハルから決闘の申し込みが来ました】


「ん?ハル…?」


 新たな戦いが幕を開ける。


ご閲覧いただきありがとうございます!


次回をお楽しみに!

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