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閑話 名作は廃れない

 

 これは、ハイセがワールド・シーク・オンライン 通称【WSO】に出会う少し前の話。


 ◆◆◆


「これが儂のイチオシじゃ!!」


 そう言ってじじいが渡してきたのは1本のゲームソフト。30年程前に大流行したMMORPGだ。


「30年前のMMOって。まだプレイしてる奴いるのか?」


「この前ログインしたらチラホラおったぞ?それにこのゲームはソロでも十分楽しめるぞい」


「まぁ、暇潰しにはなるか。借りるぞ」


 俺はゲームソフトを自分の部屋に持って帰りディスクをハードにセットした。


「Amaterasu Onlineか。まんまだな」


 このゲームは和を基調としたゲームらしい。和風な建物やモンスターそして情景が海外でも人気となり、爆発的人気を誇ったという。


「セーブデータが2つ」


 1番上にある1番やり込んであるデータの名前は【ハイセ】。じじいだな。

 その下にあるのは【KG】。……親父か?そこそこやり込んでるみたいだが途中でやめたようだ。


 鷹見家の人間はなぜかゲームが大好きだ。ゲームをしている親の背中を見て育つからなのかもしれないが。実際に俺も親父がゲームばっかしてる背中を見て育ってきた。


「さてさて、面白いかなぁ」


 新規データを作成し、俺はAmateras Onlineの世界に足を踏み入れた。


 ◇◇◇


「おーい、ハイセ。飯じゃぞー。お?」


 俺は時間を忘れ画面にかぶりつく様に夢中になっていた。

 空腹も忘れただひたすらにそのゲームをプレイしていた。


「全く、明日は入学式じゃろうて。大概にしとかんと取り上げるぞ」


「おー」


「ハイセ、シュークリームあるぞ」


「おー」


「あ、スミレちゃんが遊びに来たの」


「おー」


「……大概にせい!!!」


 じじいの手刀を片手で受け止める。


「ぬっ」


「わかってるよ。もう終わるから」


「な、なら良いが……」


 気付いたら俺はそのゲームにどハマりしていた。


 次の日も入学式を終え、学校を終え直ぐに家に帰ってゲームにログインした。

 そして、俺は1人のプレイヤーに出会った。


 フィールドを探索していると急に決闘を挑んできた。もちろん返り討ちにしたが、そいつは俺の事を師匠と言い出し付き纏うようになった。


『師匠!!今日はどこへ狩りに!?』


『なんで着いてくるんだよ。自分の好きなことしろよ。せっかくのゲームなのに』


『僕は師匠と一緒に冒険したいんです!』


『あっそ』


 物好きなやつも居るもんだ。こいつの名前は"ハル"。ジョブはガンナーでリボルバーを使用している。

 接近武器である日本刀を扱う俺にリボルバーなら余裕だと思い勝負を挑んできたのだ。だが、俺のキャラコンに圧倒されボコボコにやられた。


『師匠は他のゲームとかやらないんです?このゲーム結構古いですよ?』


『祖父と父親がやってたゲームを引っ張り出してやってるだけだ。機会があれば他のゲームもやってみたいけど』


『僕も似たような感じです!最近はフルダイブが主流みたいですよ!』


『フルダイブかぁ』


 ハルとゲームするのは楽しかった。プレイヤーとしても実力はあったし、なにより俺を慕ってくれるハルは唯一のオンラインゲームでのフレンドだった。


 しかし、数週間後、ハルはこのゲームにログインしなくなった。


「まぁ、30年前のゲームだ。こういう事もあるだろ」


 オンラインゲームってのは1度フレンドとの冒険を楽しむとソロになった途端味気が無くなるものだ。

 ただ、無言で黙々とゲームすること数時間後、誰かからメッセージが届いた。

 ハルからだ。


『師匠!実は僕面白いゲームを見つけまして!フルダイブのゲームなんですけどやばいですよ!師匠も絶対ハマるはずです!先に行って頑張っときます!!師匠も早くこっちに来てくださいね!また会いましょう!』


 なんとも端的なメッセージだ。ゲーム名を言わずに待ってますって……。どうしようもないだろ。

 まぁ、俺がハマるゲームがあればもしかしたそこにハルもいるかもな。


 そして、さらに数日後、『Amateras Online』のサービス終了が発表され、30年前に一世を風靡した名作はその長い歴史に終止符を打った。


 ◇◇◇


 とあるゲームのとある街。


 〔バンッ!!バンッ!!〕


「ぐあぁ……」


 銃弾を額にくらいプレイヤーは粒子となって消えた。


「懸賞金が掛かってたプレイヤーはこれだけか?」


 リボルバーを腰にしまい、プレイヤーはそう言った。


「これだけだ!リーダーのリボルバーは最強だぜ!」


「最強か……ふっ……」


「どうしたんで?」


「あの人がこの世界に来れば、僕は最強なんて呼ばれないだろうさ」


 そう言い腰のリボルバーにそっと手を置いた。


「あの人ですかい?」


「ああ、天狗になっていた僕の鼻っ柱をへし折ってくれた人さ」


 そのプレイヤー懐かしむように話している。


「ところでリーダーは知ってますかい?」


「なにがだ?」


「なんでも恐ろしく強い"日本刀使い"と"弓使い"が現れたらしいですぜ」


「へー……日本刀。不遇武器なのに凄いな」


「ですよね!今はシアレストに居るって噂なんで、会えるかも知れませんよ!」


 日本刀使い。それだけでその人と判断するのは早計だとそのプレイヤーは自分に言い聞かせる。


「早く会いたいよ、師匠」


 黒髪でショートカットの女性プレイヤーはまだ見えぬ師に想いを馳せていた。


ご閲覧ありがとうございます!


今回は閑話でした!


次回をお楽しみに!

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