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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

私は彼の特別だと思ってたら全然違った件

作者: 伊藤@


 自分は彼の特別だと思っていたら、全然そんな訳なくて1線どころか3重線くらい引かれてたのに、今日気がついたんだけど、これって勝手にショック受けてる自分がアレですか?


 どうも、勘違い女です。


 この間、異世界呼ばれてしまった、その他です。都合上B子(仮名)とでもしましょう。いわゆる巻き込まれたってやつです。

 まあ、お約束だと巻き込まれた方が、実は聖女か?なんてありますけど、全然これっぽっちも本当ただの人です。

 逆にこの世界の偉い人からしたら困るスキルを1つ持ってるだけで、この世界の何の役にも立ちません。内緒にしてるけどね。


 女子高校生のあかりちゃんは正真正銘の聖女で、とっくの昔に魔王討伐の旅に出ましたよ。凄いよね、本当偉い。


 で、私はと言うとお城の片隅で入力仕事のパートタイマーしてます。

 え?何で召喚されたところで何やってるの?って思うよね、私も思います。まぁ色々あって今は召喚された先で聖女あかりちゃんの帰りを待ってます。


 何かと異世界で困ってるだろうと、優しく目を掛けて貰っていた騎士様と実は両思いかな!

 なんて昨日まで思ってました。


 過去に召喚された人達が、この世界の通信が余りにも不便だ!とキレてから、魔導通信ネットワーク『MN』の普及が進んで、異世界も個人の簡単な日記や呟きなんかもMNで簡単に配信出来るようになって、いま自分何処にいるっけ?と思うくらい便利です。


 さっき騎士様のアカウント見ていたら、気がついたんです。


 あ、自分その他大勢だわ。


 何気なく見てた魔王討伐前の飲み会で写された魔導画。

 私とのタグが『知り合いと一緒に唐揚げ屋ゴン太にて』知り合いだ、間違いはない。それに対して『聖女あかりちゃんと一緒』にだって。


 察し。



 うん、勘違いしてゴメンナサイ。

 なんか目から鼻水出てましたけど、鼻水だから、本当、うん。


 そうだよなあ、私は騎士様より年上だし。

 気がついて良かった。

 皆にバレる前で本当ギリセーフだよね。

 つい昨日までは、もしかして私だけこの世界に残る事になるかも、なんて考えていた自分に裏拳炸裂させたい。


 それくらい、私の理想と言うかツボと言うか。

 爽やかに笑い、困っているとそっと手を差し伸べてくれて、下品な冗談なんかも言わないし、私のまわりにいた野郎共と真逆だった。

 女扱いされた事なかったから余計…。


 気づかれる前で良かった。

 もし自分の好きがバレてたら、布団をグルグルグルグルって巻き付けてバタバタするくらい恥ずかしい訳で、何だかよく自分でもわからなくなったけど、ほんと早く帰りたい。頑張ってあかりちゃん。


 あー、明日からどうしようかな。なんか色々頑張ってたんだけどどうでもよくなっちゃったかな。

 こんな時は唐揚げゴン太行って美味しい物でも食べよ。



 泣きっ面に蜂って諺知ってます?泣いてる所に追い打ちかけられるんですよ?いつも行く食堂に苦手な奴が居ましたよ。帰ろうかな。

 宰相の馬鹿息子、いつも薄ら笑いをして私をからかう嫌な奴。


「B子さんじゃないですか!折角だし一緒に食べましょう」


 他にもお客さんがいるのに、態と大声を出すの私嫌いなんだよね。


「あ、いいえ。今日はテイクアウトにしますから」


 うふふふとやんわり断る。


「なら、僕もテイクアウトにしようかな。お城で一緒に食べるのもいいですね」


 何故、嫌いな君と一緒に食べなければ?というか今日もしつこいな。


「ほんっとうにゴメンナサイー。見たい水晶放送があるので、部屋で頂きますー。あ、大将!ゴルの唐揚げ3人前テイクアウトで」

「あいよ!」


 唐揚げが出来上がるまでは、一緒の空間くらい我慢するかと思った矢先に馬鹿が爆弾発言をする。


「いやぁつれないなぁ、そんなだからモテないんですよ、もう少し聖女様みたく可愛く…」


 ブチッ。


「…五月蝿い」

「え?」

「五月蝿いって言ったんだよ、宰相のドラ息子」

「ドラ息子…」


 シンと食堂が凍りつき、私の地を這う声が食堂に響き渡る。


「つれないから何?何か困るの?ねぇ?答えて?」


 青筋を立てた私がドラ息子の席へ行き、ドラ息子の襟首を片手で持ち上げる。


「え?いや」

「人がモテない姿見るのが楽しい?楽しいのよねぇ?モテない女の顔が見たくて、ワザワザここに来たんでしょ?」

「そんなつもりじゃない!」


 まだ反論するか、この野郎。馬鹿息子に怒鳴りつける。


「じゃあ、何なんだよ!言ってみな!それと聖女様みたく可愛くなくて迷惑でもかけたか?人を比べるんじゃねーよ!あんまり下らない事言ってると、ぶっ飛ばすぞ!この野郎っ」


 そこに良いタイミングで大将が声を掛けた。


「ハイヨ!なんだっけ、向こうの世界だと元れでいーす総長のB子姐さん。唐揚げお待ち!」


 唐揚げきたー!ポイッとドラ息子を投げ捨てる。

 投げられた時に頭が椅子にぶつかったようで悶絶して転がってる、ざまぁ。


「大将悪い、次穴埋めするから」

「気にしなさんな!そいつは二度と出入りさせないからな!また来てくれよ!」

「うん、ありがとうまた来るわ」


 流石大将、落としどころが分かってる。大将に免じてこの辺にしとくか。

 私はB子、今も昔も腕っぷしと度胸だけは負けない。これでも大分丸くなったけど。

 帰って唐揚げヤケ食いしよ。そうしよ、そうしよ。


 しっかし、宰相の馬鹿息子め。あんまり五月蝿いなら国王に圧かけて黙らそうかな。





 □□□□



「魔王討伐隊の皆様がお戻りになられました!!」

「おお!それは真か、皆無事か!」

「はい!皆様全員のご帰還でございます」


 王侯貴族が歓喜に沸いたその日、旅から戻ったあかりちゃんは真っ直ぐ私の職場にやって来て、いきなりドアを蹴破り、ボロボロに薄汚れたあかりちゃんが部屋に入ってきた。

 何やら城全体が騒がしい。


「B子さん!今戻りましたっ!」

「あかりちゃん!」


 1年ぶりの再会で両手を広げ私に飛び込んできたあかりちゃんを思い切りハグする。


「うおーー!良くやった!良く無事に帰ってきたよう」

「B子さあああん!」

「よしよし頑張ったね。あかりちゃんどうするか決めた?」

「はい!最初から決まってます」

「待てっ!待ってくれアカリ!」


 ドヤドヤと魔王討伐隊のメンバーや王様やら宰相や大神官も一斉に部屋になだれ込んできた。あぁ、あかりちゃん皆に帰るって伝えたんだね。そりゃあいつら慌てるよな。


「お願いだ!帰らないでくれ」

「どうかこの世界に!」

「見捨てないでくれっ」


 私に抱きついたまま、皆を睨んであかりちゃんは言う。


「嫌です」

「何故だ!僕の事を好きじゃないのか!」


 討伐隊のメンバーのひとり、この国の第3王子が叫ぶとあかりちゃんは鼻で嗤って。


「は?好きなんて気持ちこれっぽっちもないです。むしろ大嫌い。いきなり召喚して、何も知らない私を隷属させて何言ってるの?人攫い」

「ひ、人攫い」


 王子が崩れ落ちると、横から出てきた仲間の魔道士が叫ぶ。


「名前で君の真の自由を縛ったのは謝る!しかし世界が滅ぶ瀬戸際だったんだ」

「もう、平和でしょう?

 貴方達から勝手に言われた使命は果たしたんだから。だから隷属の術式は解けた。

 私の術式が解けないと帰れないから、命令に従っただけよ!B子さんはひとりでも帰れるのに、態々私を待っていてくれたんだから!

 それに貴方達は、なんでそんなに偉そうに私達の上から目線で物を言ってくるの?謝るじゃなくて、謝らせて下さいじゃないの?」

「あ、謝らせて下さい!」

「言い直したらなんとかなるとでも?

 聖女だから純潔がどうとかで襲われなくてすんだけど、やたらベタベタしてきて、あんた達全員キモい!

 出発する時にB子さんが、絶対に帰れるから諦めないでって言ってくれなかったら私どうにかなってた!」


 この1年よっぽど精神面にキテたようだ、あかりちゃんの心の支えになれて良かった。


「あかりちゃんっ!」

「あ、ヴォルさん」


 あ、血相変えて騎士様が来た。

 城の警護の為、泣く泣く残ったんだっけそう言えば。

 あかりちゃんと騎士様お互い名前呼びかぁ、ちょっとだけ胸の奥がチクチクするけど平気だ。


「帰るってどういう事!?え?ならB子さんも帰るって事?」


 騎士様が私を睨む。いつもと違ってなんか怖いなあ、どうしたんだろう。


「はい、言ってませんでしたけど、元の世界へ戻れるスキル持ってるんです」

「な!なんでスキル持ってる事を俺に言わないんだ!なんの為に今迄監視してたと思ってんだ!それにB子と名を縛った筈なのに何故勝手に帰る事が出来るんだ!」

「え?やだなあB子なんて仮名に決まってるじゃないですか。あかりちゃんの名前目の前で取られたのに素直に教える馬鹿いませんよ」

「こ、このババア調子に乗りやがって…お前は聖女が逃げ出さない為だけに生かされたのに!」


 王様や偉い人達がやめろ!ややこしくするな出ていけ!なんて言って慌ててあいつを外に叩き出したけど。


 引くわ。これが素なんだ。

 優しかったのは王命で私の事監視してたんだ。そっか、そんな理由だったんだ。

 あれだけいいなと思っていた好感度はいまや地の底も底。追いかけて一発ぶん殴ってやろうかと動き出そうとする私をあかりちゃんが止めた。


「B子さん、もう帰ろう?この人達、駄目だよ全然分かってないもん。もういいよ」


 その通りだ、頭が冷えた。

 あかりちゃんの決意は固い。私も異論はない。

 ひとつ良い事を思いついたのであかりちゃんに耳打ちをする、あかりちゃんは了解とばかりに微笑んだ。


 そして私達はふたり同時に叫ぶ。


「「いっせっーの」」

「この国の王侯貴族の男は全員禿げろ!」

「スキル『帰還』発動!」


 私とあかりちゃんはその場からかき消えた。


 消える瞬間、男達の絶叫が聞えたがそんなのどうでもいい。

 聖女の呪いだ、むしろ禿げくらいですんで良かったと思ってもらいたい。






 その王国は、代々召喚を行い他国に魔王がいると言っては侵略を繰り返して領土を広げてきた。


 カラウ暦1087年、グリュンナード王国の王侯貴族の男性がひとり残らず奇病に掛かった。


 MNの拡散により、近隣諸国は奇病をいち早く確認し拡大を恐れ、一致団結し王国へ攻め入った。

 原因とされる王侯貴族は捕らえられ平民に落とされた。


 300年以上続いたグリュンナード王国は地図から消え領土は近隣諸国に吸収された。


 不思議な事に平民になると奇病は治り元の姿になったとか。




 これにより、この世界で召喚は大禁忌とされ、二度と召喚される事は無くなったという。






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