第二十七話
スルタンのサーベルを持ちこんで、カウンターの裏に貼り付けたのはパパだけど、あのひとは一度としてそれを振ったりはしない。ママに切り刻まれて、瓶の中に大人しく納まる日がくるのがわかってあそこに置いたのよ。切り刻むのはあなた、マイケル。ママを切り刻んだのも、あの娘を、赤毛の愛しいわたしの宝ものを切り刻んだのもあなた、マイケル。
ママは死んでいやしない。今でもパパと離した瓶の中にで大人しく暮らしている。
マーマレードの瓶 あんずジャムの瓶 ハチミツの瓶
節ばったところ、ゴツゴツしたところはみんな削り取って、真ん丸にひっくり返した肉塊って、本当に最後に残ってるピンクのガムボールみたい。甘い瓶のなかを順々に巡って、いってるのね。ドロドロだけど甘くて僅かな光に縁取られた生活。あなたにあげた娘もおだんごにしたあの娘もちゃーんとピーナッツバターの瓶の中でこれから素敵な生活がはじまるのね。
ー キャサリン先生、この店に戻ってくるのに、娘に仕立てた赤毛の女の子をあんな風に使ったり、たまたまカウンターので一緒に1パイントビールを飲んだだけのイーサンとダニエルをあんな風に巻き込んだり、パパやママやともだち達の大昔まで引きずり込んで、あまりにも大仰が過ぎるんじゃないー
大仰? マイケル、あなたがそれを言うの。あなたが、スルタンのサーベルをずっとあのままカウンターの裏に貼り付けてなかったら、あの日のイーサンとダニエルのためだけにジョゼッペさんに頼んでビールサーバーを置いたりしなかったら・・・・ジョゼッペさん、あの日はリヤカーがサーバーしか乗っけられなくて2回村を回らなきゃいけなかったの、知らなかったでしょう、マイケル。それと、そうそう、あなたが赤毛の女が好きじゃなかったら、わたしもあの娘も赤毛なんかならなかった。そばかすなんて生やさなかった。みんな、マイケル、あなたが仕掛けたことじゃない。
キャサリン先生は、まだ畳み掛ける。久しぶりに店に戻ってきたというのに、あまりに露骨で身勝手なものの言い様だと思った・この分では、あの赤毛の女の子はママだと、あなたの大好きなママが成りすましたんだとでも言いかねない勢いだ。
そうよ、あの娘はママ、あなたの大好きなママよ。嘘だと思うんなら、ママを入れていたアンズの瓶を開けてみなさいよ。ピンク色したおダンゴなんてひとつとして入っていないから。
聞かなくたって分かるよ。先生の言うことはいつも正しい。すべてがそのとおりになっていくんだから。パパが変態になったのも、ママが残虐にパパを切り刻んだのも、ぼくが愛しすぎてママを刻んだのも、そのすべてがぼくから引き起こされたものと決めつけてることも、みんなみんな正しい。
そしてマイケル、あんたは赤毛が好き、や。
そうだ、ぼくは赤毛が好きだ。そばかすのある女の子が好きだ。だから大好きなママが瓶からこっそり跳び出して、赤毛のかつらとソバカスの化粧までして、キャサリン先生の娘になって、この店に舞い戻ってくれたのだ。再び切り刻まれて、お団子になるために。きっと、あのピーナッツバターの瓶の中に入っている。お使いで持って帰れずにレジの脇に置きっぱなしのピーナッツバターの小瓶の中に。




