第二十四話
いまのマイケルは、ボールなのだ。手脚も顔も中に包まれこんだボール。ピカピカの泥団子でなくたって、かつてヒトであった身体の一部の肉であったって、ボールだったら皆んなに投げてもらえるんだ。
でも、いったい、誰が投げてくれるんだろう。
意地悪なゴードン、ベンジャミン、サマンサ、ケヴィンはいない。にわかにイジメっ子になった弱虫たちは、ボールをもった途端、怖くなって気持ち悪くなって、泣き叫びたくなる怯えから逃れるため、禁じ手の「自分投げ」をして、次々にばたばた居なくなる。お友達は、もう誰もいないはず。
「わたしがいるじゃない。どんなに最後になってもちゃーんと残っててあげる」
赤毛のあの仔を筆頭に、既に消えてしまった女の子やママとキャサリン先生も含めたマイケルの知っている女の子たちが一斉に丘を駆け下りてくる。あの娘は、いくつ持ってたのかしれないほどたくさんのスペアの赤毛を順々に手渡しながら、たくさんの成りすましを拵える。
きっと、いつものドッジボールじゃないんだ。彼女たちが楽しめる、赤毛の子たちが楽しめるドッジボールなんだ。
順々にボールを回し始める。みんな唇の両端を蝶結びしたみたいなニコニコ顔だ。もちろん赤毛のツインテールに合わせるため、顔にはソバカスをふってる。それに、坂の途中のどこで着替えたのか、黒と黄色のギンガムチェックのワンピースにそろえている。足くびまで隠れる長いやつで、やせた寸胴の身体を、より細長い長方形へと強調させる。きっと、隠れて見えない足元は、緋色の混じったオーガニックコットンの白靴下と蝶々結びの出来ない女の子の履く先の丸まったワンプッシュのホック留めの短靴に違いない。
みんな、あの仔のなりに揃えている、あの仔のかたちを真似してる、あの仔になりたがっている。欲しがっている。
今度はそのまま食べられてしまったんだろうか。あの仔はいない。その代わり、食べたほかの女の子がみんな、あの仔に成りすましている。キャサリン先生も、ママも・・・・もう何処にママが、誰がママかも見分けがつかなくなった。




