第二十二話
「この、ど変態、しんでよ」
刺されながらもパパは、血のプシュプシュ零れる音や乱れて早鐘になった心臓の音を聞こうと、右手を耳にあててそばだてる。白目のひんむきよりもそちらの気色悪さに、キャサリン先生が、パパの恥ずかしいセリフを読み上げるのを待たずに、ママはパパをこと切らせた。
もう心臓は動かない。血はドピュドピュの音をはっしない。パパの愉しみはなくなった。
二人は証拠を隠すように、傘に付着した血潮をパパのフロックコートで拭った。どちらかといえば白に近い明るいグレーのフロックコートは、ピクニックを楽しむにはあんなにも不釣り合いだったのに、こうして血の失せた蒼白の死に顔にはぴったり。だから、服のコーディネートに勝手な先入観は禁物だって。
ダンゴのマイケルが耐えられないような痒みにウジウジしていたたくさんのお経のような文言は、綺麗サッパリ消えている。本当に十六歳の女の子のニキビみたいや。膿んで歪んでどろんとなったヌメヌメの塊が綺麗サッパリ抜けてもうて、イーサンとダニエルをあんな簡単の葬った女の「呪い」が、呼び名ばかりで向こうに消し飛んでるような気さえ・・・・・・
「マイケル、あんたいまはヒトではやないんやから。ボールだっていうの忘れてるんやない。ひとりブツブツなんかせーへんといて」
パパがあんな変態になったのも、キャサリン先生が教育者としてあるまじき外道に堕ちたのも、ママがこんなにもろくでなしのサイコパスになったのも、パパの変態のためにママとキャサリン先生に酷たらしく刺されて、ひぃーひぃー言いながら己れの血溜まりで溺れ死んだのも
「みんな、マイケル、あんたのせい」




