第十八話
ゴードン、君は、歩けるようになって、走れるようになって、ボールを掴めるようになったときから、それをみんなにぶつけていたね。でも、みんながそうじゃない。ぶつけられたのが最初の記憶の子だって大勢いるんだ。その子たちにとってドッジボールは恐怖の時間なんだよ。投げる子たちの指示に従ってチームとポジションを振り分けられて、「わざと当てられに行った」って思われない程度に逃げて、頃合よくボールにぶつかりヤレヤレと安全地帯に移った外側で時間を潰す。
遠目を装いながら、誰もいなくなった教室の窓から隠れ上手の子が本当に隠れて居残っているんじゃないかって、よそよそ探りながらチャイムを待つんだ。
マイケルは口を尖らせ、細く長く一息に、ゴードンに聞かせる。いままでにこんなにも憎悪を抱いたことはなかったはずなのに。でも、憎たらしく思ってるからこそ、こんなひどいことだって、平気に出来てしまうんだ。
いつも逃げる専門のナタリー、アンソニー、シャーロットの手に順々にふわりふわり渡ったボールのゴードンは、ベンジャミンに当たり、サマンサに当たり、ケビィンに当たり、ホセに当たったところで破裂した。みんな、ボールを掴めるようになったときから投げてきた仔どもたちだった。
「ラッキー、今度は4ついっぺんに出てきたぁ」
パパとママ、それにキャサリン先生は、ぼくの活躍をどんな目して見ていてくれるかな。三人の日傘は眩しい陽の光を避けるように、ゆっくりゆっくり回ってる。
いまは正面の陽を避けるためなのか、マイケルには顔を隠している。
きっと、この校庭をビリヤードのプールに見立てて、勝負の行方を追ってくれているんだ。
パパはビリヤードが大好きだから、おじいちゃんが死んだ翌日に売れない雑貨ばかりのあの店の売れない雑貨をみんな外に放り投げて空いた真ん中にドーンとプール台を置いた。対戦相手のいないゲームでひとり相手にやっとこさ九つ玉を全てポケットに沈めたあと、いつでもそのタイミングで出来るように回転準備していたママのチェーンソーで木端微塵に砕かれたけど、そうした結末も含めてパパはひとりナインボールを覚え始めたのだと思う。




