第十七話
そんなビビりとは真逆に、模様替えは幸せな日常を連れてくる。
鉛色の曇天に塩辛い風がピューピューを立てて通り過ぎ、此処にすむ人々はいつも背中を丸め、うつむいてで始まるいつもの導入ではない。
外を出ると、まぶたを突っつく日の光にいったんは閉口しても、すぐにいつもの微笑みに変わっていく。
「今朝も、眩しくて綺麗な青空」
そんな背景の中にマイケルがしる全ての人々が納まっていた。
パパもママもむろん、その中に入っている。パパはママの顔色をソワソワ見ていないし、ママはパパの陰口なんか言ってこない。手なんか繋いで、楽しむためだけの散歩を楽しんでいるって感じだが。勿論その中にマイケルは入っている。学校の休み時間には校庭で遊んだり、友達とはしゃいでキャサリン先生に注意されたり、他の子どもたちと何ら変わらない日常を過ごしている。
そう、マイケルはまだ子どもなのだ。ピチピチの半ズボンなんか履いて。ダニエルもイーサンも、あれっキャサリン先生まで、少し小さな服に身体を納めてるみたい、それとも身体のほうが少し膨らんでるのかな、顔も腹も腿もラグビーボールに張り付いたみたいにみんな丸みを帯びている。
すぽーん
あれっ、誰かひとりが減ったみたい。みんな好き勝手に動いてドッチボールしてるんで、減っていくのは分かっても、誰がどこにいてどこで誰が減っているかは分からない、見当がつかない。
「マイケルっ、そんな風にいつまでも持ってないで。早う投げてよー」
呼ばれている声で、自分がボールを持っていることゲームに参加していることに気づき、急いで離した。ボールは意地悪で目立ちたがり屋のゴードンの手の中に入いり、まだそれに気づいていないぼんやりのエマに狙いが定まる。
ドーン
すると、ユマとボールが瞬時に消えた。
「二つ一緒だ、ついてるぅー、ラッキー」
ゴードンの解説でさっき手離すように投げたボールの正体が分かった。あれは空気を膨らましたボールなんかじゃない。一年生で一番ちっちゃなエディだ。こねくり丸められ、まん丸になってるけど、こうなるお終いまで見えてたはず。
「今度はマイケルがボール役だ」
殊勲のゴードンには次を命じる権利があるらしい。なければ、すぐに作って決めて言い放つだろう。だって、意地悪で目立ちたがりやだから。
ちょっと目を離した隙にゲームは進み、参加している人数はかなり減ってきている。ゴードンが残ってるマイケルに目を付けるわけだ。ダニエルもイーサンもいない。キャサリン先生はトーテムポールの立っている丘からパパとママと一緒に此方を見物している。
そう思うと勇気が出てくる。いいとこ見せたい気分が湧いてくるって、もん。
「いやだよ、ボールなんて。ぼくはまだ投げたいんや。殊勲をあげたいんうや。最後の一人になるまで残ってチームに貢献したいんや」
言い返してくるなんて少しも予想してなかったから、ゴードンはびっくりした、慌てた。アワアワアワばかりで、次の命令のカードが出てこない。チャンスだ。
「ゴードン、次は君がやれよ。君は今まで一度もボールなんてやったことがなかったんだろう。一度くらいボールを賜ってみろよ、君が」
居残ったメンバー全員がマイケルの側に立っていた。ゴードンはしぶしぶチームの意に従いマイケルの手の中に納まるまで小さく丸くなった。




