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第一話

 ハドソン湾にかかる雲は、薄くきれぎれになっていく老婆の(くし)のよう。

 竹櫛ですいた穂先の筋が、鍵のついた細い(はがね)に変わって、そこに住まう者を海へと(いざな)い、連れていく。みんな乾いた塩辛いだけの海で髪を撫で付けるのだから、なめてみても、いつも塩辛く乾いた味しかしない。

 何処(いずこ)の海からも陸からも隔絶された土地と波。そこに住まう者は、生まれる前からそのことを知っている。祖先が愛しんできた英語と仏語は此処よりほか通用しない。伴に辺境の言葉としてひとくくりにされるのを知っているから、お互いは(いが)み合うよりほかしょうがない。

 そして、その矛先は赤毛の女の元へ収斂(しゅうれん)される。

 英語を使うものたちは元々の忌み嫌う習慣から、仏語を使うものたちは赤い巻髪から。その赤く揺れる巻髪がノルマンを連れてくるから、黒い馬車と馭者を使って轢きに行くのだ。


 ずっと小糠雨に濡れている様子が、立ち続いている。春からの雨に濡れたその白い肌は暖かそうなのに、沁み込んだ先の骨太の芯は冷たく固まり、時間だけは、えんえんと、続いていく。

 これからも。


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