第三守護軍将軍ガーランド
連日の猛暑で思う様に執筆が進まないのは公然の秘密です(´•ω•`)
シュナイデルさんが本軍に戻ってからおよそ半日後、ほぼ無人のセイル村へとラディアス王国第三守護軍が到着した。軍の全てが騎馬隊で構成されていて、軍馬には馬鎧も付けられていた。
初夏の陽射しを浴びる第三守護軍はその軍馬の馬鎧もあって、眩しいくらいに輝いて見える。
キラキラと輝いて見えるその軍勢は、まるで悪魔を討伐する神の軍勢の様にも僕には感じられた。
その第三守護軍が到着するまで僕達は何をしていたかと言うと、二度寝から起きた後はギルドにて色々と話し合いなどを行っていた。
「なるほど……! つまり、我々ギルドの職員以外は全ての村人が肉のスライムに変えられていたって事か……」
「ええ、そうです【ドナルド】さん。肉のスライムという魔物に変わってしまった彼らは既に人間としての意識が無かったのか、私たちに牙を向いたので討伐した訳です」
ドナルドさんへと説明しているのは我らがご意見番のガルバである。一番上手く説明出来るから当然だね。
そんな、冒険者ギルドセイル村支部の支部長であるドナルドさん。
彼はマイキーさんと同じくドワーフでありながらも、かつては冒険者として活動していたらしく、冒険者活動を引退後はその経験と功績を買われて支部長としてスカウトされたのだとか。
歳は驚きの百歳で、ドレッドヘアの髪の毛も、もみあげから繋がる立派な髭も、全てが白髪である。
そんなドナルドさん、実はマイキーさんとは兄弟らしい。マイキーさんがお兄さんで、ドナルドさんが弟さんとの事だ。
それにしてはドナルドさんは非常に常識的なドワーフだ。積極的に話にも加わってくるし。是非とも、どこかの人見知りツンデレ老ドワーフにも見習っていただきたい所である。
僕のドナルドさんの感想はともかく、ガルバとドナルドさんの話は続いている。
「つまり……そのアリオクって奴はバアルゼブブって奴の分体で、そいつが村人を喰って自分たちと同じ化け物の仲間にしちまった訳か……。くそぅ、何で俺は気付かなかった!?」
──バキィッ!!
「ぐはぁっ!!」
余程今回の件の自分の至らなさに腹が立ったのか、ドナルドさんは自らの頬を力一杯殴った。その勢いで席から転げ落ちるドナルドさんの口からは、一雫の血が流れていた。……歯、折れなかったのだろうか。
そのドナルドさんをアリエスさんが介抱し始めるが、他のギルド職員はまるで近付かない。普段のドナルドさんは余程恐ろしいのかな?
それはさておき、今回の件でギルド職員の家族がどうなったのかを聞いてみた所、ギルド支部に勤める職員は全員がバール村から派遣されているらしく、このセイル村には単身赴任の様な感じでギルドが用意した寮で暮らしていたらしい。
家族が被害に遭わなくて良かったねって気持ちも湧いてくるけど、本人達も襲われなくて良かったねって気持ちでいっぱいだ。
でも、元凶のバアルゼブブを殺さない限り、このセイル村の様な被害は更に広がっていくだろう。早く何とかしないと……!
「大丈夫ですか、ドナルドさん? それで、手紙を届ける相手が被害に遭われて居なくなってしまった件についてはどうなりますか?」
何とかアリエスさんに支えられて席に戻ったドナルドさんに、ガルバは更に話を続ける。ある意味惨事が起きたというのに、それに動じないガルバはさすがとしか言い様がない。うん、さすがだ。
「手紙の件については、ギルドで整理してから、手紙の送り主に対して今回の件と弔辞を付け加えて送り返す。さすがに賠償なんぞはギルドの管轄外だからな」
「なるほど、分かりました。送り主の方は悲しむでしょうが、そればかりは仕方ありませんからね」
手紙の事に関しては、やっぱりそうなるよね。後はラディアス王国の役人さんが色々と手を打つんだろう。
「おい! ようやく来たぞ!」
「一応門の所で待ってもらってるけど、早くしないと怒り出すわよ、あの人。それでなんだけど、この村の村長が居なくなっちゃったから、支部長に軍の対応をお願いしたいんだけど……」
今回の件や今後の事についてドナルドさんと話し合う僕達へと報せてくれたのは、喋り方でも分かる通りジャッシュさんとアニーさんだ。話し合いが暇だと言って、セイル村の門と、アリオクに破壊された城壁を魔物や野盗に襲われない様に巡回していたのだ。
え? ライムはどうしたのかって?
……ソンナヒトハシリマセン。
冗談はさておき、そのライムはと言うと、ギルドや門から離れた所に建つ無人になったセイル村の牛舎を訪れている。理由は、人狼や狼に変身する訓練らしい。
僕の眷属になった昨夜、ライムも変身する時の痛みでやっぱり漏らしたらしく、そうならない為に痛みに慣れる訓練をするって飛び出していった。僕みたいに人前で絶対に漏らしたくないんだって。……僕の覚悟を返せと言いたい。
ちなみにアリエスさんも漏らしたらしい。それとは別の物も漏れたとか何とか言っていたけど、おしっこ以外に漏れるのは大っきい方くらいしか僕は知らないから訊き返したら、「ルウちゃんも大人になれば分かるよぉ♡」と言われた。何が大人になれば分かるのだろうか。僕は首を傾げる事しか出来なかった。
あ、ガルバは漏らさなかったみたい。やっぱり男の子だから我慢する力も強いのかな?
「分かった、俺が対応しよう。それじゃあ、正式に面会を求められたルウファちゃんも一緒に来てくれ。ガルバ君もだぞ? それじゃあ行くか……って……お前も来るのか、アリエス?」
「もちろんですよぉ! せっかく痩せられたんですからぁ、イケメン彼氏候補を見つけるんですぅ……!」
…………。
……この、むっつりエロ受付嬢め。昨夜の事をドナルドさんにバラすよ?
ともあれ、ライムを除く僕達は第三守護軍が待つというセイル村の門へと向かった。メンバーは、僕、ガルバ、ジャッシュさん、アニーさん、ドナルドさん、アリエスさんの六人だ。
そうして向かったセイル村の門だけど、第三守護軍の騎士達は村の外ではなく、村の中に入った所で馬上待機していた。
その時の光景を見ての、神の軍勢に感じられたとの僕の感想である。
「うわぁ……凄いね、守護軍って! 僕、こんなに多くの騎士や軍馬を見た事がなかったから感動するよ!」
「ルウはガイアスさんに連れられて王都に行った事はないのですか? 王都に行けば、たまに野外訓練で見る事が出来るはずですが。ちなみに私は一度だけあります。その時は私も感動しましたね」
守護軍を見ての僕の感想に、ガルバがそう返してきた。
「そうだな。確かに王都に行けば運が良ければ見れるな」
「そうね。ルウちゃんはガイアスさんの娘なのに王都に行った事なかったんだ。でも分かるなぁ、ガイアスさんの気持ち。だってルウちゃん、すっごく可愛いもんね♪」
「…………」
ガルバに続けて、ジャッシュさんとアニーさんも口を開いた。
……可愛いと言われると嬉しいけど、人前で、しかも面と向かって可愛いと言われると恥ずかしい。思わず赤面して俯いてしまった。
そんな会話をする僕達をよそに、守護軍の中から二人の騎士が軍馬に乗ったままこちらへと進んできた。
一人は顔が分かるようにフェイスガードを上げているので、シュナイデルさんだと分かった。
となると、もう一人の騎士が将軍のガーランド様かな?
そう考えると、確かにそう見える。他の軍馬よりも一際立派な体躯の軍馬に跨り、鎧もシュナイデルさんの鈍色の鎧とは違い漆黒色の鎧を纏っている。しかもその鎧、所々に金の縁取りがされているし、胸にある竜に対峙した騎士の紋章の刻印も金で出来ている。如何にも将軍っぽい鎧だ。
あ、漆黒の鎧の騎士だけ白いマントを付けてるね。うん、この人が将軍のガーランド様で間違いなさそうだ。
「これはルウファどの! 今朝のご協力の件、真にありがとうございました。こちらに居られる方が我らが第三守護軍の将軍であるガーランド様だ。……ガーランド様、あちらの少女がガイアスさんの娘のルウファどのです」
僕達がいる場所の5メルト程離れた所で二人は軍馬を止め、シュナイデルさんが互いを紹介する形でそう声を上げる。やっぱり漆黒の騎士がガーランド様だったみたいだ。僕の予想通りだね! ……誰でも分かるって苦情は受け付けない。
それよりも挨拶しなくちゃ。
「あ、僕が母様……ガイアス母様の娘のルウファです! よろしくお願いします!」
そう挨拶し、僕は思いっきり頭を下げる。勢いよく頭を下げすぎて倒れそうになったけど、何とか耐えた。
さすがに偉い人の前で転んだら失礼だもんね。
「…………」
あれ? 僕の挨拶に応えてくれないけど、僕、何かやらかしたかな?
「ん、まぁー! かっわいいじゃないのー! あのガサツなガイアスの娘って言うからもっとオーガみたいな娘を想像してたけど、こんなに可愛いだなんて思わなかったわ! あ、初めましてルウちゃん。あたいがガーランドよ、よろしくね♪」
「よ、よろしくお願いします……!」
お、驚いた……!
ビックリさせないでよね、もう! 何かをやらかしたかと思ったよ……! お陰でよろしくって二回も言っちゃったし。
「挨拶も済んだし、そろそろこんな暑っつい鎧は脱いでも大丈夫ね! それじゃ後でね、ルウちゃん。事のあらましはその時に聞かせてちょうだい! ああ、そうだわ。セイル村の東の外れに守護軍が駐留する建物があるから、後で……そうねぇ、鐘が二つ鳴ったら訪ねて来てね♪」
「は、はい!」
……って、え? それだけ?
村の代表として来たドナルドさんとは挨拶しないの!? そ、そんな事ってあるの!?
た、確かに僕一人だったらすっごく緊張したと思うけど、それにしてもドナルドさんに挨拶しないなんて失礼な人だね、ガーランド様って……!
「わははは、相変わらずだなガーランド! 俺みたいなロートルはもう相手にもせんか!」
「……うっさいわね! 昔は世話になったけど、今やあたいの方が強いんだから、あんたは大人しく引退してなさい!」
「まぁ今回は仕方ないだろう? とにかく俺も後でルウファちゃん達と軍の施設に行くから、詳しくはその時だ」
「分かってるわよ! それじゃ行くわよ、シュナイデル!」
「はっ! それではルウファどの、また後ほど……!」
な、なんだ、ドナルドさんとは旧知の仲だったのか。
それならそうと早く言ってよね、ドナルドさんも! 危なく突っかかる所だったよ……礼儀知らずって。
ともあれ、ガーランド様と何だか騒がしい挨拶を交わしたその後、そのガーランド様はシュナイデルさん以下第三守護軍を連れてセイル村の東にある軍の施設へと向かっていった。統率の取れた人馬一体の進軍に、守護軍の練度の高さが窺えた。
それを見送っていた僕達だけど、その時ガルバが僕だけに聞こえる様に小声で話し掛けてきた。
「しかし、不思議な人でしたね、ガーランド様は。あの人の周りにたくさんの精霊が集まってるのを感じました。その事から推察するに、やはり将軍の名は伊達じゃないって事なのでしょう。ともあれ、また後ほど会えるんです。私たちも失礼のない様に、宿に戻って体を拭いたり身だしなみを整えたりしなければなりませんね。……特にルウ、あなたは今着ているコートとローブは洗わないとダメでしょう。その…………色々と匂ってますよ?」
ッ!?
「そ、そんなに匂ってるかなぁ……?」
「ええ。私もルウの眷属になったからなのか、以前より嗅覚が鋭くなりました。あえて何がとは言いませんが、昨夜ルウが出してしまった匂いが染み付いてますよ」
ッ!?!?
「うぅ……なんで早く言ってくれないのさ、ガルバぁ……恥ずかしいよぉ……」
こうしてガーランド将軍との初顔合わせを済ました訳だけど、まさかのガルバの忠告に、宿に戻るまで赤面しっぱなしの僕だった……
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