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月の華  作者: 桜華
第一章 生きていく為に!
8/105

魔法の訓練とギガントード

あらすじを変更しました。

ネタバレを含む内容となってますが、あらすじまでがプロローグ的なものなのでご了承下さい。

 

『──ッ! 出来……たぁ……!』


 仮の寝床へと戻ってから、寝るまでの間を魔法の訓練に費やす。昨日は感じるだけだった魔力を、今夜は体中に巡らせる事に成功した。

 昨日の今日で魔力を循環させる事まで出来るなんて、もしかしたら僕は天才かもしれない……!


『つ、疲れるけど……限界までこの状態をキープして、この感覚を体に覚えさせなきゃ……!』


 魔力を体内に巡らせた状態を維持しつつ、閉じていた瞼を開けてみる。すると、僕の体はぼんやりと光ってる様に見えた。

 モフモフ、そしてモコモコの体が光る。傍から見れば提灯みたいに見えるかもしれない。


 誰が提灯か!


『一人ボケ一人ツッコミしてないで、そろそろ魔力も限界だし、訓練を終わらせて寝るか。だけど不思議だったね、牛蛙から出た水色の光。ま、深く考えても分からないんだし、その謎は未来の僕に任せよう!』


 頑張って謎を解いてくれ、未来の僕よ!


 体力の限界まで訓練後、明日も牛蛙が見つかる事を願って、僕は眠りへと落ちていくのだった。


 ☆☆☆


 魔力を初めて感じたあの日から今日で一週間。


『ここだッ!』


 アクアトードの隙を突いて、背後からその頭付近へと噛み付く。


「ンモ”ォオオ……オォ……ォ……」


 アクアトードを呆気なく仕留める事が出来た。


『どうして昼間だと魔法を使えないかなぁ』


 仕留めたアクアトードを食べつつ、僕はその事を考えていた。

 と言うのも、実は魔法の発動に僕は成功していたのだ。ただし、夜の間だけ。

 朝を迎え陽が射すと、その途端に魔法が使えなくなるのだ。これは、魔法が使えた事が嬉しくて、ついつい徹夜をしてしまい気付いた事だ。


『魔力を循環させて身体能力が上がったのは良かったけど、やっぱり魔法で倒してみたいよね。それに、強化率もやっぱり夜の方が高いし、夜に狩りをした方が良いかもしれない』


 そう……今僕が言った様に、夜になると僕の身体能力が高くなるという事が分かったのだ。昼間に比べておよそ二倍……いや、三倍近くにまで向上した。当社比というやつだ。


 初めは些細な事だった。僕がその事に気付いたのは。


 魔力を感じる訓練を始めて三日目の事……中々アクアトードが見付からず、ようやく仕留めたのが日が暮れる頃になってからだった。その後、日が沈むのを見ながらアクアトードをその場で食べ、夕闇の中をほうれん草の寝床へと帰る時、行きと帰りの体の軽さ、そして歩く速度が明らかに違う事に気付いたのだ。

 疲れているのに歩く速度は速い。正に、狐につままれてる気分だったよ。


 あ、アクアトードと言うのはあの牛蛙の事だ。何匹目かのアクアトードを倒した時、あの魂みたいな物を僕の体が吸収した時にその名前が頭に浮かんで来たのだ。感覚的な感じで言えば、パズルのピースがハマる所にピッタリとハマった感じだった。ホントに不思議だよね。


 それはともかく、夜の間は魔法も使えるし、身体能力も高くなる。ならば、今日は夜に狩りをしてみるか。


 あ、だったら、もう少し水流を下ってみよっかな。

 魔法を使いこなして獲物を狩りつつ、人間に飼われる事を目指して旅立つならば、この先がどうなってるかの偵察も必要だろう。

 まさかアクアトードだけが棲息してる訳でもあるまいし、どんな魔物が潜んでるかも分からない。情報は必要だ。


『……あかん。水流を下るのは無理や……』


 再びの関西弁、ご容赦願いたい。

 何故ならば、チョロチョロとした水流は川へと繋がっており、その川には多数の(わに)が棲息していたのだ。

 それもただの鰐では無い。アクアトードと同じく魔法を使えるし、しかもその体は鋼の刃の鱗で包まれていたのだ。

 その鰐の魔法は水の槍を放つものであり、その魔法で獲物となる鳥を撃ち落としていた。それだけでも脅威なのに、あの刃の鱗。僕が噛み付いたとしたら、逆に僕が大ダメージを負ってしまうだろう。当然、体当たりなんてのは以ての外だ。


『僕の魔法が当たっても、アレは倒せる自信が無い……』


 今の所、夜の間だけ使える僕の魔法を使っても倒せるイメージが出来ないので、必然このルートは通れない事が確定した。

 ともあれ、水流を下って行くルートはダメだという事が分かったので、それが分かっただけでも収穫だろう。


『そろそろ日が暮れるし、もう一匹アクアトードを仕留めてから帰ろっと!』


 夕暮れのチョロチョロとした水流を、アクアトードを探しつつほうれん草の寝床へと向かって歩く。

 程なくして、一匹のアクアトードを見付ける事が出来た。……夜に狩りをするという話は忘れて欲しい。だって、見付けちゃったんだもん。

 空はまだ明るいけれど、陽は既に沈んでいる。ならば、僕の魔法も解禁だ……!


『先手必勝! 《スピリット・ウルフ》!!』


 僕の体から淡い光が溢れ出し、体長1メートルの狼のシルエットを形作る。次の瞬間、光の狼はアクアトードへ向けて凄い勢いで走り出していた。


「ゲコッ!? ゲコォオオオ……ッ……」


 僕の魔法である《スピリット・ウルフ》は瞬時にアクアトードの頭を咥え、あっさりとその頭を噛み砕いた。

 やはり魔法だと狩りが楽だ。初めて魔法でアクアトードを倒してみたけど、とにかく魔法は凄いの一言に尽きるだろう。厨二魂にビンビンと来る。

 その成果に、僕の尻尾は当然の如く激しく振られていた。……激しく振りすぎて千切れたりしないよね?


 ちなみに魔法の使い方と言うか発動の仕方は、体内を循環させている魔力を爆発する様に一気に体外へと放出し、その際、狼のシルエットを形作る様にイメージしている。

 後は簡単、出来上がった狼を動かせばいい。どういう感じで動かしてるかと言うと、これもやっぱりイメージだ。

 《スピリット・ウルフ》は僕の魔力から出来ているからか、僕のイメージ通りに動いてくれるのだ。


 《スピリット・ウルフ》の能力は僕が込めた魔力次第で上がり、持続時間も込めた魔力量に比例して長くなる。それに大きさも大きくなるね。

 例えば20パーセントの魔力を込めれば、さっきと同じ体長1メートルの狼が出来上がり、身体能力は僕のおよそ5倍程で、持続時間は10秒となる。

 それが全力で魔力を込めれば、体長は5メートルにもなり、身体能力で言えば僕のおよそ25倍、そして持続時間は約1分となる。

 恐ろしく強い魔法だけど、全力で魔力を込めれば僕は魔力切れで動く事が出来ず、もしも敵が複数いれば隙を突かれて殺されてしまうかもしれない。ここぞって時しか全力では使えないね。……夜の間だけの話だけど。


 でも、訓練次第では昼間も魔法を使える様になるだろうし、その威力も上がるだろう。ワクワクするよね!


 ……全力で《スピリット・ウルフ》を使えばさっきの鰐も倒せるだろうって?


 だから説明したじゃないか。一匹だけなら倒せるかもしれないけど、何十匹もいたら動けなくなった僕の方が殺されちゃうよ。

 まぁ、大人になったら楽勝だけどね! ……夢を見るくらい良いじゃないか。


 《スピリット・ウルフ》の命名について、お前は厨二病か!? とのご指摘もあるだろうが、どうかご容赦願いたい。

 前世での僕は何度も入退院を繰り返し、ラノベのファンタジー小説を愛読していた事でも分かる通り、見事に厨二病を発症している。拗らせていると言っても過言ではない。


 ……厨二病で何が悪い!


『さ、アクアトードも食べ終わったし、帰って魔法の訓練して寝よっと。毎日コツコツ訓練する事が成功の秘訣だってラノベでも書いてあったしね』


 厨二病はさておき、魔法が使える夜ならば、この辺りでは僕は敵無し。僕は王者の貫禄を醸し出しながら尻尾をフリフリ帰るのだった。


 ☆☆☆


 翌日、寝るのが遅かったせいか昼過ぎまで寝ていた僕は、今日も今日とてアクアトードを狩ろうと意気揚々と出掛け、そして愕然としてしまった。


『な、なにあの大きさ……! 体長2メートルはあるぞ、あのアクアトード!』


 いつもアクアトードが必ずと言っても良い程出没する辺りに、巨大なアクアトードが鎮座していたのだ。


『ま、まさか、僕がアクアトードをたくさん狩ったから、これ以上狩られない様に……いや、仇討ちの為にボスが出て来たって事!?』


 ただでさえ牛蛙の顔をしたアクアトード、巨大化すればその顔つきは醜悪を極める。瞳孔が蛙特有の横長という事もあり、思わず悪魔を想像してしまった。


「グォオオオオッ!」


 悪魔を想像させる巨大なアクアトードは、気配察知にも長けているのか、身を隠してる僕へと照準を合わせ、直径50センチの水球を放ってきた。その数、実に四個。四個の水球が砲弾の如く勢いを以て僕へと迫ってきていた。


『くっ! 全弾喰らったらヤバい!』


 咄嗟に近くの木陰へと飛び込み、四個の水球から身を隠す。いくら巨大なアクアトードの水球と言えど、幹の太さが直径1メートル程の木を破壊する事は出来ないはず。これでどうにか水球をやり過ごせるはずだ。


 しかし僕の予想は大きく外れ、一個目の水球は木の幹に当たって弾けてくれたが、二個目で幹を抉り、三個目の水球で幹を破壊……四個目の水球で倒れる木ごと、僕の体を撃ち抜いていた──。

少しだけストックが溜まったので、本日は午後に二話目を更新致します。

お読み下さり、ありがとうございます。

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