セイル村・3
何やら昨日は更新が反映されない不具合があったのだとか。
よくは分かりませんが、今日も更新しますよ?
「なんかあの牛……異常にヨダレを垂らしてない?」
セイル村を堪能すると言えばやはり牛舎だろうという結論に至りその牛舎に僕達は訪れた訳だけど、ライムの言う通り、何故だか異常な程に牛はヨダレを垂らしていた。口角には泡がたち、目を白黒させて興奮もしている。
「やはり私たちがよそ者だと分かっているのでしょうね、牛も。それよりもルウ、私は匂いで鼻が利かなくなりました。他の所を見に行きましょう」
布で鼻をおさえながらガルバは言う。ちなみに、臭さに負けたライムはさっきのセリフの後に外へと避難している。
……確かに臭い。嗅覚が麻痺した僕でさえ、その麻痺を乗り越えて臭さを感じる程だ。
特に臭いのは、先程から興奮した牛がするゲップの匂いだ。最近下水路の掃除をしたけど、その時の人間の排泄物よりも牛のゲップは臭い。
「……ソウダネ、ホカニイコウカ」
鼻声で僕はガルバに了承した。目には涙が浮かんでいるのは言うまでもない。
その後は羊の放牧を見たり、鶏の様子を見たりしながらセイル村を歩き、セイル村の特産品を扱う店を見付けたのでそこに寄る事にした。
「いらっしゃい。あいにく品物は全て切らしてるから、またのご来店を……ジュル……」
しかし、店に入るなり店主にそう言われてしまった。
店の中を見渡せば、確かに何一つ品物が置いてなかった。特産品を扱うお店なのに、その特産品はおろか本当に何も置いてないとか、このお店は大丈夫だろうか? そんな疑問が湧いてくる。
ともあれ、
「何もないなら仕方ないか。それじゃそろそろ夕暮れ時だし、『長閑な田舎亭』に戻ろっか」
「うん、ライムもそう言おうとしてた」
「奇遇ですね、私もそう提案しようとしてました」
特産品を扱う店を出た僕達は『長閑な田舎亭』へと戻る道を歩く。セイル村を堪能出来たとは言えないけど、まぁそれなりには楽しめた。……匂いとか。
特産品が品切れだったのは残念だけど、それはまた今度来た時にでも見てみよう。
そう思いながら『長閑な田舎亭』へと歩いていると、二人組の冒険者らしき男達が僕らに近付き、そして話し掛けてきた。
一人は淡い赤色の髪をした痩せた男で、もう一人はオレンジ色の髪をしたぽっちゃりした男だ。どちらも使い古した革鎧を身に纏っている。
「おやおや、これはこれは。なるほど、なるほど。確かにあの方が気に掛けるだけはある様だな。おっとそうだった。この村は気に入ってくれたかな? 今夜は祭りがあるから、楽しんでくれると俺としても嬉しい」
話し掛けてきたのは淡い赤色髪の痩せた男だ。ボソボソと小声で話すから聞き辛かったけど、最後の祭りがあるという言葉は聞き取れた。
祭り、だって?
もしかして特産品がお店に無かったのは、その祭りがあるからではないだろうか。
なるほど、村を挙げた祭りともなれば、特産品も盛大に持ち出すよね。
「デニス、話は終わったか? 俺は早く喰いたくて仕方ねぇ……! 初めての獣人だぜ? 祭りなんてどうでも良いから、早く喰おうぜ!」
祭りという言葉にワクワクとした気持ちになった僕だけど、もう一人の男……オレンジ色の髪をしたぽっちゃり男が何かを早く食いたいと呟いている。
やはり祭りと言えばご馳走的な物が出てくるのだろう。
ジャッシュさんが『長閑な田舎亭』の名物料理としてオーク肉のミルク煮を勧めていたけど、それよりも祭りに出るご馳走を食べてみたい。
「ジャニス、楽しみは夜まで待て。……お嬢ちゃん達も祭りを楽しみにしてるんだぞ? なんと言ってもご馳走だからな……ジュル……」
「ああ、分かってるともデニス……ジュル……」
二人組の男は互いにブツブツと何かを話した後、僕達に背を向けて去っていった。
「変な二人組ですね……。それよりも、ルウは祭りを見に行くのですか? ライムは……聞かなくても分かりました」
「ちょっとガルバ? 何でライムに聞かなくても分かったのよ!? そりゃあライムも祭りに興味があるけど……ブツブツ……」
二人組の男じゃないけど、ブツブツ呟くライムに思わず笑う。うん、いつも通りの反応だね。
ライムはさておき、僕も祭りは気になる。ならば、選択肢は一つしかないよね……!
「祭りがあるならもちろん参加でしょ! 祭りとなれば、セイル村の美味しい物がたくさん出るんじゃないかな? やっぱりその土地ならではの美味しい料理を食べてみたいよね……!」
「ルウもやっぱりそう思いますか……! 実は私もです。意味としての祭りは知ってますが、やはり実際に経験した事がないのでとても楽しみです」
僕達の結論として、全員一致で祭りに参加する事に決まった。最後までライムがブツブツ言っていたけど、僕とガルバがリーダーとして参加して欲しいと言ったらライムは快く了承してくれた。チョロい。
ともあれ、祭りが始まるまでに、色々とやる事がある。体を拭いたり、ジャッシュさんとアニーさんを祭りに誘ってみたり、祭りで食べ過ぎない様に『長閑な田舎亭』でちゃんとオーク肉のミルク煮を食べたり。
何時くらいから祭りが始まるのか分からないけど、とにかく色々と急がなくちゃね。
「祭り? そんなのあったか、この村に……?」
「わたし達だってしょっちゅう来てる訳じゃないから知らないけど、祭りくらいあるんじゃない? 豊作祭りとか」
『長閑な田舎亭』の部屋に戻って体を拭き、僕達三人が食堂に集まった所でジャッシュさん達が戻って来た。なので、さっそく祭りに行こうと誘ってみた。祭りがある事を訝しんでるけど、僕達はあると聞いたんだから仕方ない。
しかしジャッシュさんはともかく、アニーさんは結構物知りだね。豊作祭りなんて農業に携わる人達くらいしか知らないと思ってた。
僕はもちろん前世の知識だ。実際にはそんな祭りに参加した事はない。
「ライム達は祭りに行くって決めたから、ジャッシュさん達も行こうよ!」
「うーん……そうだな。アイツらの様子がおかしかったのも、もしかしたら祭りがあるからかもしんねぇからな。分かった、俺らも祭りに行ってみるか!」
「それでなのかしらね、妙によそよそしかったのは。そう考えると、わたし達を驚かせようとしたのかもしれないわね。ふふふ、驚かす前にわたし達が祭りを知ってたらどんな顔をするかしら。楽しみね♪」
という事で、僕達は全員で祭りに行く事になった。
この世界の祭り……凄く楽しみだよね。どんな祭りで、どんな料理があるのか。
セイル村を本当の意味で堪能するのは祭りをおいて他にはないよね!
「……祭り? ああ、それでしたら、夜半過ぎに村の中央で行われるので、その時間帯に行けば大丈夫です。あ、それと祭りですので、武器の類は持ち込まない様にお願いします。冒険者の方達に暴れられたら危険ですからね……ジュル……」
食堂で、宿自慢の料理というオーク肉のミルク煮を食べ終えた僕達は、女将さんに祭りについて聞いてみた。一瞬だけ僅かな間があったけど、宿を営む女将さんならば忙しくて忘れてる事もあるよね。日付けを勘違いなんてのは宿屋あるあるだ。
「分かった。夜半過ぎだな、女将? よし、じゃお前ら時間になったら行くから準備しとけよ? それと祭りに武器を持ってくなんてナンセンスらしいから、忘れずに置いてこい」
「……ジャッシュ。ルウちゃん達だって女将さんから話を聞いてたんだから、わざわざ言わなくても分かってるわよ……」
「ね、念には念を入れてだな……! それに、俺は確認の大事さが分かってるからこそコイツらに言ってるんだよ!」
「はいはい、それは分かったから、とりあえず時間まで部屋にいましょ。じゃまた後でねジャッシュ」
アニーさんの言葉で一旦解散となり、それぞれ部屋へと戻る。三人部屋の『羊の間』には僕達女子チームが、二人部屋の『鶏の間』にはジャッシュさんとガルバの男子チームだ。
「オーク肉のミルク煮……甘くて美味しかったね♪」
三人部屋の『羊の間』へと入り、僕は開口一番に感想を述べる。
「うん、ライムも美味しかったよ♪」
ライムも味を思い出してるのだろう、満面の笑顔で答える。
「でしょ? 甘さの中に少々の塩気があって、それがより一層ミルクの上品な甘さを引き立てるのよ……!」
僕とライムの言葉にドヤ顔を披露するアニーさん。まるで自分が褒められたかの様な表情である。
オーク肉のミルク煮は確かに美味しかった。当初ホワイトシチューを想像してた僕だけど、そのレベルを遥かに超えていた。
オーク肉がホロホロで、一緒に煮込まれてる野菜の甘さがミルクの甘さを引き立て、ミルクの甘さが野菜の甘さを引き立てる。
その甘さが、塩で下味を付けられたオーク肉の味をより上品に、かつワンランク上の味へと押し上げていたのだ。
更に、付け合せとして出された黒パンをオーク肉のミルク煮のトロっとしたスープに付けて食べると……僕のほっぺは見事に落ちました。
「白パンじゃなくて黒パンだからこその味よね、オーク肉のミルク煮。黒パンの仄かな酸味がまた後を引くのよね……♪ さて、この話は終わりにしましょ!」
アニーさんは幸せな表情を浮かべながらも、パンと手を一つ叩いて食事の感想を終わりにする。
オーク肉のミルク煮の想像以上だった味に、僕達の口からは次から次へと言葉が溢れてくるけど、そろそろ祭りの時間だ。お喋りしてたからか、お腹の具合も良い感じで落ち着いてきた。祭り……美味しい物がたくさんあれば良いね♪
部屋から出ると、ジャッシュさんとガルバも丁度部屋から出てきた所だった。
「確か村の中央だったよな? どんな祭りがやってるか楽しみだな……♪」
「……何だかんだ言って、ジャッシュさんが一番楽しみにしてるじゃないですか……。おや、ルウ達も丁度出てきたのですね。それでは行きましょうか」
うん、ジャッシュさんとガルバは上手くやってる様だね。ガルバがツッコミ役になってるのが妙に板についている。男同士の友情的なものが芽生えてきたのかな?
ま、いっか。打ち解けて仲良くなったんだから、それに越した事はないよね。
「いってらっしゃいませ。私も後片付けをしたら祭りに顔を出しますので、その時はよしなに……ジュル……」
女将さんに見送られ、僕達は祭りが行われるという村の中央を目指して夜道を歩く。先頭を歩くジャッシュさんの手には、もちろんライトストーンが使われた灯の魔道具がある。女将さんから借りたのだ。
その魔道具の幻想的な光に照らされる夜道を見ながら歩き、小一時間程で祭りが行われるというセイル村の中央付近に着いた。
「既に篝火が焚かれてるな。それに人も集まってる」
ジャッシュさんがそう呟く。
村の中央付近は牛や羊を放牧させる為の牧草地となっているから、篝火を焚いても大丈夫だね。見れば、延焼防止の為に牧草が一定の範囲で刈り取られている。
篝火に近付くにつれ、かなりの人数が集まってる事が分かった。もしかしたら、セイル村の住人がほとんど集まってるんじゃないかな?
やはり村を挙げての祭りなんだろうね。まだ祭りは始まってないみたいだけど、盛大な祭りの予感に僕の胸も期待に膨らむ。
さぁ、祭りを楽しもう!
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