オーク一体の討伐・1
いつの間にか文字数が二十万文字を超えてました!
あっという間ですねぇ……。
という訳で、これからも頑張って書きます!
ゴブリン五体の討伐依頼を終えた次の日の夜、母様は予定よりも早く帰ってきた。その日一日を母様の畑仕事のお手伝いとして雑草を抜いたりしていた僕は、母様にきっと褒めてもらえるぞとワクワクしていたものだ。しかしそんな僕へと理不尽な出来事が起こる。
……問答無用にお尻を百叩きに処されたのだ。
見事にお尻が二つに割れた。それはもう綺麗に割れた。真っ赤に腫れて、まるで桃の様だった。
あまりの痛さに僕の股間からはとめどなく仄かに匂う水が漏れ出してしまっていた。当然涙も止まらなかった。
「本当にゴメンなさい! そうよね……ルウは優しいんだから、母さんにわざと黙ってたなんて事はないわよね……。本当に悪かったわ、反省してる……だから母さんを許して? そろそろお部屋から出てきて、母さんにルウの可愛い顔を見せてちょうだい?」
僕の部屋の前で母様はひたすら謝る。天の岩戸じゃないけど、僕は抗議のつもりで自分の部屋に閉じこもっていたのだ。それも丸一日。
尻叩きの後に部屋へと飛び込んだ為、僕の下半身は露出したままだし、汚れたままだ。一応綺麗に拭きはしたけどね。
……トイレは母様の隙を突いてちゃんと行っていたよ? それと抗議である為に下着はあえて付けてない。
なので、季節は初夏を迎えているとは言え少し股間がスースーする。他人には決して見せられない姿だよね。
「……母様、本当に反省してる?」
ともあれ、僕は部屋の外にいる母様にそう尋ねた。
僕も子供じゃないんだし、いい加減母様を許して部屋から出ようと思う。お腹もさすがに減ったしね。
育ち盛りの僕が一日食を抜くというのはやっぱり辛い。それに、こんな事をしていては胸が育たなくなってしまう。……貧乳猫獣人ことエリスさんの様にはなりたくない。
…………。
……子供じゃないって事に関して文句は受け付けない。
「もちろんよ! 母さん、心から反省してるわ! だから出てきてくれるわよね?」
部屋の外から聞こえる母様の声には確かに反省の色が滲んでいた。
僕はそっと扉を開き、一日ぶりに母様と顔を合わせる。扉の外の母様は心の底から申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
そんな切ない表情を浮かべる母様へと、僕は今回の件について話し掛ける。
「フォレストスライムが甘くて美味しいのを黙ってたつもりはないけど、まさか母様がフォレストスライムを食べるなんて思わなかったよ、僕……」
「ゴメンねルウ。ルウがフォレストスライムの事を黙ってたのを変に誤解しちゃって……。ルウに聞かなかった母さんの早とちりだったわよね。今度狩りに行く時はフォレストスライムを持って帰って来るから、お家で母さんと一緒に食べましょうね! 母さん見つけたのよ……! スイーツパラダイスを!」
「……スイーツパラダイス?」
母様を許した途端、母様は訳の分からない事をおっしゃった。
フォレストスライムを持ち帰るまでは理解出来る。しかし今回、母様はトロルを狩りに出ていたはずだ。それもドラゴン平原に。あそこにフォレストスライムは出没しないはずだ。
それなのに、フォレストスライムじゃなくてスイーツパラダイス? バール村などの人間の街でもないのに、森の中にそんな所があるはずがない。ましてや、前世であったスイーツを食べ放題のビュッフェじゃあるまいし、母様は一体何をおっしゃっておられるのか。
それに、スイーツパラダイスからフォレストスライムを持ち帰るって意味が分からない。母様は僕の眷属となって脳筋になってしまったのか……!?
……いや、待てよ? フォレストスライムの事で誤解されて尻叩きになったんだよな、僕。
となると、スイーツパラダイスとはフォレストスライムの棲息地の事ではないだろうか。性格が軽い母様だけに、そう言った可能性も考えられる。
いやいや、まさかまさか。いくら母様の性格が軽い上に僕の眷属になったにしても、フォレストスライムをスイーツ呼ばわりするとは思えない。
と言うか、母様は森の浅い所をうろちょろしてたのか。人間に見つかったら大変な事になるって言ったのに……。
ま、まぁ母様なら見付からないだろうし、もし見付かっても上手い事逃げるだろう。
もしも誰かに見付かって討伐依頼が出されてしまったら……その時は僕も母様と一緒に人間と戦うしかない。そして森の奥で暮らせばいいさ。
と、そう言えばフォレストスライムのスイーツ疑惑の事だったね。……まさかそんな事ないよね?
「フォレストスライムがたっくさんいたのよ、そこ! 正にスイーツパラダイスだったわ♪」
……そのまさかでした。
「だから森の浅い所にまでフォレストスライムが出没してたのか。ビックリしたよ、僕……3メルトものおっきなフォレストスライムも現れたしさ」
しかし、納得した。森の浅い所までフォレストスライムが出没するというのは、母様がスイーツパラダイスと言う程に繁殖していたからだろう。
だからこそ3メルトを誇る大きさのフォレストスライムが現れたのだ。もしかしたら、近々ギルドで依頼が出されるかもね。
「大きくなると味はどうなの?」
「うん、大きくなればなる程甘さが増して凄く美味しくなるよ!」
「……より大きい方が美味しいのね。分かったわ、母さん今度は大きな個体を狙ってみるわ!」
「うん、頑張ってね!」
そんな、神狼とその眷属らしい会話で仲直りした僕達母娘は、今日は仲良くお風呂に入った。仲直りしたんだから一緒に入るのは当然だ。
そして、匂いに敏感な母様によって、僕は当然の様に隅々まで洗われる結果となったのは言うまでもない。十歳に成長したからか、少し変な気分になったのは内緒だ。
☆☆☆
仲直りからのほのぼのとした夜を過ごし、明くる日の朝、僕はフェンリルコートやドラゴンローブなどの冒険者装備に身を包み家を出る。
昨夜は母様と一緒に寝たお陰で心も快晴、天気も快晴だ。正に絶好の依頼日和(?)である。
「頑張ってね、ルウ!」
「もちろんだよ、母様! 僕だってもう一人でお金を稼げる様になったんだから、今回もしっかりと依頼を頑張って、それでいつかは母様に美味しい物を食べさせてあげるからね!」
「ルウ……! 母さん、その時を楽しみにしてるわね♪ それじゃ、行ってらっしゃい!」
「行ってきます!」
家の前で母様とそんな会話をし、走ってバール村へと向かう。今日は寝坊しなかったから、前回みたいに遅刻ギリギリという事もないだろう。
「はぁ、はぁ、はぁ……! 人間形態はやっぱり体力がもたないなぁ……。でも、30分くらいで村まで着いたんだから上出来だよね」
30分後、僕はバール村の門の前に到着した。走って来て疲れた為、中腰で膝に手をつき呼吸は荒い。呼吸が落ち着いた所で、額の汗を手の甲で拭いながら僕はそう呟いた。
しかし、十歳児としては中々凄いのではなかろうか。何せ、30分も走り続けていたんだからね。
いくら年相応の力しか出せないと言っても、やはりこの世界と前世では同じ十歳児でも体力にかなりの差があるんだろう。
前世の僕と比べても、まず間違いなく今の方が体力があると思われる。そもそも前世では病弱だったけどね。
「お! ルウファちゃん、おはよう!」
「おはようございます、バルデスさん! はい、僕のギルドカードです!」
「どれ、うんオッケーだ。……今日も一人って事は、また依頼を受けるんだね。いくらガイアスさんの娘とは言え、ルウファちゃんはまだ十歳なんだから十分に気を付けるんだよ?」
「頼れるガルバとライムと一緒だから大丈夫だよ、バルデスさん。僕だって自分の力が頼りないのは分かってるんだからさ」
「ははは、それが分かってるなら大丈夫だね。それでは入村を許可します。ようこそバール村へ! それじゃまた後で会うだろうけど、頑張ってねルウファちゃん」
「はい! バルデスさん、またね!」
バール村の門にて、強面の髭面なのにいつも一本だけ飛び出た鼻毛がチャーミングなバルデスさんとそんなやり取りをし、僕は冒険者ギルドの併設酒場へと急ぐ。ライム、今日こそは文句は言わせないぞ?
ギルドのウエスタンな扉を抜け、そのまま奥へと進む。ギルド併設酒場入口には既にガルバが来ていた。
「おはよう、ガルバ!」
「ルウ、おはようございます。ライムなら既に掲示板コーナーで依頼を物色してますよ?」
「そ、そうなんだ……」
今日こそは一番乗りだと思ってたのに……!
「それでは私たちも掲示板コーナーに行きましょうか」
「そうだね……ライムだけに選ばせるととんでもないのを選びそうだし……」
「ははは、確かに」
ガルバと二人でライムについて話しながら、掲示板コーナーの鉄球ランク掲示板へ向かう。ギルド併設酒場の中からは冒険者たちの賑わう声が聞こえている。
朝食を摂っているのか、それとも徹夜で飲んでいたのか、楽しそうで何よりだ。
「やっと来たわね、ルウ! 依頼なら既に選んでおいたわよ!」
掲示板に着くなり、僕たちに向かってそう言うライム。少しぽっちゃりした体を仰け反らし、その顔はどこか誇らしげである。
……と言うか、結局小言を言われてるし、僕。文句じゃないだけマシかな?
「選んでおいたって……もしかしてまた青銅級の依頼?」
「ライムならその可能性は高いですね……。とにかく聞いてみましょう」
僕とガルバは嫌な予感を抱きつつもライムへと問い掛ける。
「これよ! 【オーク一体の討伐】! ゴブリンの時と同じで期限は無し! しかもゴブリンみたいに五体も討伐しなくて済むから断然楽よ!」
…………。
……ライム、それって……ゴブリン五体を同時に相手するのと同じレベルって事だよ?
「ゴブリン五体を同時に相手する様なものですね……。でも、まぁ良いでしょう。私たちもずっと鉄級で留まっている訳にもいかないでしょうし、いずれは必ず戦う相手です。ライムの選んだオークの討伐を受けましょう」
「さっすがガルバね! ライムの言いたい事はそういう事よ! ……ルウも文句はないわよね?」
……はい、ありません。
「うん、ガルバが言ってる通りだと僕も思うし、オークくらい簡単に討伐出来ない様じゃ強くなんてなれないよね。僕もオッケーだよ!」
「それじゃ決まりね! さっそくエリスさんの所で申請しましょ!」
既にこうなる事を予想していたライムは【青銅級―2】と記された木札を持っていた。さすが行動派のライム、こういった時の要領が良い。抜かりないとも言う。
ともあれ、僕達のパーティ猛き白狼は全員の意見が一致したのでオーク一体の討伐に挑む事になった。
前回……初めての依頼でゴブリン五体の討伐を成功したんだし、今回もきっと上手くいくだろう。
懸念があるとすればライムのオークに対する知識不足が挙げられるけど、そこは僕とガルバでフォローすれば良い。
そんな気持ちで依頼申請カウンターへと向かう僕だった。
お読み下さり、ありがとうございます。
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