パーティ名は猛き白狼
ついに……!
ついにブクマが100件の大台に乗りました!
これも読んで下さる皆さんのお陰です!
これからも面白いと思ってもらえるよう頑張ります!
「この番号の依頼をお願いします、エリスさん!」
十個の窓口がある依頼受付カウンターの内の一つの列に並んで順番を待ち、僕達の前にいた冒険者が依頼申請を終えた後、ライムはエリスさんにそう言いながら【青銅級―1】と書かれた木札を渡す。
僕達の初めてとなる依頼申請だ、独特の雰囲気に僕の緊張も高まる。ちゃんと受理してもらえるだろうか?
「あら、ライムちゃんにルウファちゃん、それにガルバ君じゃない。こんにちわ」
エリスさんはライムが提出した木札を受け取りながら、にこやかな表情で挨拶をしてくれた。
「エリスさん、こんにちわ!」
「こんにちわ」
エリスさんの挨拶に僕とガルバは挨拶を返す。もちろん笑顔は基本だ。親しき仲にも礼儀ありじゃないけど、挨拶は全ての基本である。母様にも挨拶はしっかりしなさいと言われている。あれ? 礼儀に始まり礼儀に終わる、だっけ?
「こんにちわ……じゃないでしょ!? 二人とも、ライム達は依頼を受けに来たのよ! もっと冒険者らしく、何かこう……えっと……やってやるぜ! 的な言葉は無いの!?」
エリスさんに挨拶を返した僕とガルバに、ライムはケチを付けてくる。
エリスさんが挨拶したから僕とガルバは挨拶を返しただけなのに、ライムは何を言ってるのだろうか。もっとお姉さんであるレイラさんを見習って欲しい所である。
レイラさんは例え嫌なお客さんにもにこやかに挨拶をするというのに、そのレイラさんと同じ血を受け継いでいるライムが挨拶くらい普通に返せないでどうするって話だ。挨拶くらい普通に返せと言いたい。
「あら? 三人で依頼を受けに来たのね。でも……鉄級ランクの依頼を選んだ方が良いんじゃない? 薬草採取とか。いくらパーティを組めば一つ上の青銅級ランクの依頼を受けられると言っても、あなた達じゃゴブリン五体を相手にするのはまだ早いと思うな、このエリス姉さんは」
他愛もない僕達のやり取りを無視し、カウンターの上に重くもない胸を無理やり乗せたエリスさんは、僕達にはゴブリン五体はまだ早いと諭してくる。
しかしエリスさん、胸が無いのにある様に見せるのはやめた方が良いと思います。見ていてこっちが悲しくなってきますよ?
その貧乳なエリスさん、実は僕が冒険者登録をした時の受付嬢でもある。母様と僕のやり取りを見て、気まずそうにしながらも笑っていたあの時の人だ。
エリスさん、あの時の事は今でも僕はハッキリと覚えてますよ? エリスさんが何か失敗をしたら母様に報告しておきますね!
そんなエリスさん。歳は21歳で、貧乳だからなのか、それともギルドの業務が忙しいからなのか、未だに彼氏の一人も出来ないと嘆く猫耳がキュートな猫の獣人さんだ。猫の獣人らしく、顔はとても可愛らしい。
可愛いのに彼氏が出来ないのは、エリスさんが貧乳だからだと僕は睨んでいる。
エリスさんはいつも一生懸命に出来る女性を演じようとしているらしく、ビシッとした態度でビシッとしたギルドの制服に身を包んでいる。
だけど、暇な時はでれっとしていてだらしなく見えるのは公然の秘密である。
ちなみにだけど、エリスさんは猫の獣人と言っても、猫耳と腰の辺りでユラユラと揺れる尻尾以外は普通の人間と変わらない。人間寄りの獣人って感じだね。
あ、僕達がギルド内をチョロチョロしてるといつも相手をしてくれる人でもあるよ。
僕のエリスさんの感想をよそに会話は進む。
「大丈夫よ! ライムは騎士志望の若手ナンバーワン冒険者と呼び声高いし、ガルバは魔法が得意で精霊魔法も使えるし、ルウはとっても可愛いんだからゴブリンの五体や十体なんてけちょんけちょんのパーよ!」
何が大丈夫なのか分からないけど、ねぇライム……さりげなく僕の事ディスってない? 可愛いと言われるのは嬉しいけど……。
「そうですね、私もこのメンバーならば大丈夫だと思いますよ。ライムが大剣を使い前衛で牽制してくれれば、私が後方から魔法で仕留められますし、そこをルウが頑張れって応援してくれれば問題ないと思います」
…………。
……ガルバ?
「そこまで言うなら分かったわ。あ、そうそう、所であなた達のパーティ名はどうするの? ギルドカードに記録される依頼の事は問題ないけど、依頼をパーティで受けるんなら、ギルド内での書類作成の問題上パーティ名が必要よ?」
…………。
貧乳エリ……ひぃッ!? ギロって睨まれた!?
「それなら既に考えてあるわ! ズバリ! 【ライムと素敵な下僕たち】で決まりよ!」
「却下します。と言うか、それならば私にもアイデアがあります。【ガルバとゆかいな仲間たち】なんてどうでしょう?」
…………。
「うーん……あなた達のセンスの無さに脱帽だわ……」
…………。
もしかして僕……ボッチにされてるんだろうか。僕を抜かして話がどんどん進んでいく。
しかしパーティ名か。
ライムの案は当然却下として、ガルバの案は色々と不味そうな響きがある。となれば、ここはネーミングセンスに定評のある僕の出番だ。カッコ良いパーティ名を付けてみせよう。
「パーティ名なら僕にも案があるよ! 【猛き白狼】っていうのはどう?」
悩める子羊……もとい、パーティ名に悩めるライム達に僕の案を告げてみる。
僕としては、カッコ良い神狼形態の僕を表す感じで非常に良いと思うんだけど、どうなのかな? 二人は認めてくれるかな?
……本当は漆黒の魔狼とか、宵闇の堕天使の方がカッコ良いとは思うけど、さすがに僕の趣味を押し付ける訳にもいかないよね。
「猛き白狼……かぁ。うん、良いんじゃない? ライムは気に入ったよ!」
「確かにライムの案や私の案よりも良さそうな響きですね……! それに、古い伝説に出てくる神の名を冠した狼の色は白いともありますし、そんな狼の様な志で依頼をこなす私たち。良いですね……うん、それにしましょう」
どうやらライムもガルバも認めてくれたみたいだ。
だけどガルバ、神狼は白色じゃなくて白銀色だからね? ……実物を見てないから知らないと思うけど。
「分かったわ。パーティ名【猛き白狼】での依頼を受理します。この依頼は期限が設定されていないけど、今日から一週間の間に達成報告がなされない場合は失敗とみなします。違約金などのペナルティは無いけど、失敗したら他の冒険者の方達に笑われるから注意してね? それじゃ、三人ともギルドカードを出して」
エリスさんも僕の案を採用し、猛き白狼のパーティ名で受理してくれたみたいだ。ふふん、カッコ良いパーティ名だから当然だね。
ともあれ、エリスさんは出来る受付嬢の雰囲気を醸し出し、依頼の規定を僕達三人へと述べる。その後、僕達のギルドカードの提出を求めた。
「じゃ、はいこれ!」
僕とガルバはライムにギルドカードを渡し、ライムが三人分をまとめてエリスさんへと渡す。
渡されたギルドカードをエリスさんは何か箱の様な物へと順番に差し込み、差し込み終えた順に僕達に返してくれた。どうやらあの箱がギルドカードに記録したりする魔道具になってるらしい。
恐らくだけど、あの箱にギルドカードを通して依頼の仮記録をし、依頼達成後にもう一度通す事によって正式な記録としてカード内に登録されるんだろう。
初めて見たけど、前世のカードリーダーを見てる様な気分にさせられたよ。カードリーダーを開発した人は逆異世界転生者かもしれないね。
「それじゃ、依頼が達成出来る様に頑張って下さいね!」
「「「はい!」」」
カードリーダーはともかく、僕達三人はエリスさんの言葉に元気よく返事を返した。そうしてギルドを後にする僕達。行き先はもちろん神滅の森だ。
「村を出る前に、持ち物の確認をするわよ!」
おっちょこちょいだけど、さすがに初めての依頼だからか、ライムが守衛のバルデスさんが門番を務める門を前にしてそんな事を言い出した。やはり騎士を目指しているだけの事はあるね。ライムの表情は遊んでる時とは違って真剣なものとなっている。
僕達は人通りの邪魔にならない様に門前広場の端に行き、そこで背嚢を下ろして荷物の確認を始めた。
「まず、一人用のテントに、携帯食料。怪我した時に傷口を縛る為の布や体を拭く為の布、それと……替えの下着ね!」
「ライム、ポーションは高いからともかくとしても、薬草を用意しないと危険なのでは?」
持ち物のチェック中、ガルバはライムの持ち物の中に薬草が無い事に気付いた。ガルバが言う様に、確かにポーションは値が張る。あ、ポーションってのは回復薬の事ね。
ちょっとした怪我なら安いポーションでも治るけど、その安いポーションでも一瓶につき金貨1枚はする。
内蔵が飛び出てしまう程の傷を治すポーションだと白金貨1枚。欠損部位を治すポーションともなると、何と光金貨1枚以上もするらしい。
ちなみにだけど、日本の価値に換算すると金貨一枚で1万円となる。それ以上の貨幣を言うと、大金貨1枚で10万円、白金貨1枚で100万円、光金貨1枚で1000万円、母様が僕の身代金として用意していた虹金貨になると1枚につき何と1億円の価値にもなる。つまり僕の身代金は100億円だったって事だね。凄い金額だ。
その他にも細かい貨幣があり、鉄貨1枚が1円、小銅貨1枚が10円、銅貨1枚が100円、大銅貨1枚が500円、銀貨1枚が1000円、大銀貨1枚が5000円となる。
貨幣の価値については前世の知識と現在の物品を目の当たりにしての僕の価値観から判断してるけど、まず間違いはないはずだ。現に、ギルド酒場のランチの値段が大銅貨1枚から2枚となっていたんだから、日本の価値にすれば500円から1000円となる。それを考慮すれば、僕の説明する事にも納得がいくはずだ。
話が逸れたから戻すけど、つまり安いポーションでも1万円。最高級ポーションになると、1000万円以上もするという事だ。僕達みたいな鉄級ランクにはとても買えない金額だね。
今回受けたゴブリン五体の討伐の報酬が金貨1枚だから、どれだけ回復薬が高級品か分かるというものだ。
「今更買いに行くのもどうかと思うし、僕は森の中で現地調達をしながらゴブリンを探せば良いと思うよ?」
だから僕は二人にそう提案した。神滅の森の中には探せば薬草類もたくさん生えている。わざわざバール村でお金を出して買う事もないだろう。
「それよ! ルウの言う通り、ライムもそう思っていたのよ! それに、ガルバの治癒魔法もあるんだし、ゴブリン相手ならそんなに大怪我なんてしないはずよ!」
「……私の治癒魔法は未熟ですよ? あまりアテにされても困りますね。いざとなれば例えマナが尽きても治癒魔法を唱え続けるつもりですが、それでも薬草が有ると無いとじゃ生存率や依頼達成率が大きく変わってきます。森に入ったら、まずは薬草採取をする事が必須ですね」
僕の提案を快く承諾した二人。まぁ、当然だよね。僕達はまだ子供だ。お小遣いを貰っているとは言え、それは微々たるものだ。
だからこそこれからは自分達で稼ぎ、回復薬などの足りない物を三人で相談しながら買っていけばいい。当然、武器や防具なんかもね。そんな苦労も冒険者の醍醐味ってやつだ。
薬草を用意するのは忘れていたけど、ともあれようやくこれで出発だ。
僕達は荷物をしまった大きな背嚢を背負い、バルデスさんが門番を務める門へと進む。そんな僕達……猛き白狼は、初めてとなる依頼を達成するべく、誰もが自信に満ちた表情を浮かべていた。
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