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月の華  作者: 桜華
第四章 七大罪篇其ノ壱 暴食
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友達も出来ました!

新キャラが登場します。

 

 バール村の門番の守衛を務めるバルデスさんに入村を許可された後、僕は待ち合わせの冒険者ギルドの併設酒場へと急ぐ。時間はギリギリだ。きっと間に合うはず……!


「遅いわよ、ルウ! 何やってたのよ!?」


 ……怒鳴られた。


 ギリギリ待ち合わせの時間に間に合った僕へと怒声を上げたのは、青い髪が似合う少しぽっちゃりとした少女……【ライム】だ。

 青い髪で気付いたかもしれないけど、ライムはバール村で服飾店を営むレイラさんの歳の離れた妹である。顔付きはやはりレイラさんに似ている。

 身長145セルトの全身を包むその格好は、黒い革製の軽鎧を身に纏い、背中には歳に似合わぬ大剣を背負っている。


「えー、ギリギリ間に合ってるよー」

「文句は無しよ! 【ガルバ】はもう来てたんだから!」

「まあまあ、ルウも間に合ったんだからライムも落ち着いて下さい」


 ライムから僕を庇ってくれた痩せ細った男の子はガルバと言って、白い髪が特徴で灰色のローブに身を包む魔法が得意な男の子だ。手には、先端に赤い宝石の様な物を取り付けた大きな杖を持っている。

 身長は160セルトと歳にしては高く、それでいて痩せ細っているから病弱なイメージだ。ミイラに似ているとはとても言えない。

 あ、歳にしてはと言ったけど、二人とも僕と同じで十歳だよ。


「しかしルウ……君は女の子なのにそんな格好で良いのですか?」

「だって母様が用意してくれたし……それに、マイキーさんに造ってもらった物だから大事にしてるし……カッコ良いし……」


 ガルバにそんな格好と言われてしまった僕の格好はと言うと、人狼の時に身に纏っていたあのドラゴンローブ擬きからマイキーさんが色々と手を加えてより強化して造られた本物と呼べるドラゴンローブだ。色は渋みのある艶消しダークグリーンとなっている。


 このドラゴンローブ、何と魔法が付与されているらしく、僕が人狼や神狼に変身しても体にジャストフィットする特別製なんだとか。凄い性能だよね。

 その代わり、僕自身下着を付ける事が出来なくなっている。いや、下着を着れない事はない。着ちゃダメだと母様から言われている。そもそも、僕が変身すれば下着類は破けてしまうだろうとの母様の意見でそういう事になってしまったのだ。

 確かにその通りだと僕も思う。僕が変身すれば、間違いなく下着類は破れるだろう。神狼形態なんて体長5メルトだもんね、納得。


 しかし懸念もある。下手したら、大事な所が丸見えになるんじゃないかと。


 お風呂以外で、決して人前でドラゴンローブを脱ぐ事は無いとは思うけど、もしもドラゴンローブの裾が捲れたらと思うと…………うん、考えない様にしよう。考えただけで顔が赤くなってくる。

 しかしあの人見知りツンデレ老ドワーフ、実に良い仕事をするよね。最近になってようやく僕一人でも話をしてくれる様になったよ。


 そのドラゴンローブの腰の部分は革製のベルトを通せる様になっていて、その腰ベルトの両側のホルダーにはドラゴンの角から造り出された双剣が差してある。銘は〈双竜剣〉と僕が名付けた。ふふん、カッコ良いでしょ?

 刀身に炎属性とかの付与はされてないけど、刃毀(はこぼ)れしても自己再生するらしい。それに、凄い斬れ味だとか。マイキーさん曰く「国を丸ごと買えるぞい!」との事だ。……盗まれないか心配だ。


 あ、母様からの最初のプレゼントであるドラゴンナイフもローブの左胸のホルダーにちゃんと差してある。魔物の素材回収には必要不可欠だし、僕の魔法を一人前の威力として放つのにも必要だ。このナイフが無いと僕の魔法は切ない程にヘロヘロとなってしまう。双竜剣と共に、依頼を受ける時には必需品だ。


 最後となるけど、白銀色の袖無しの外套をドラゴンローブの上から重ね着している。フェンリルコートと名付けた。これは神狼の母様のあの毛皮で造らている物だ。性能は、炎耐性、氷耐性となっていて、つまり暑さ寒さから身を守ってくれるらしい。ありがとう、神狼の母様!

 ……他の装備と同じくマイキーさんが仕立てた外套だけど、今回僕が感謝するのは神狼の母様だ。マイキーさんにはさっき感謝したからね。ん? 褒めたんだっけ?


 ちなみに……僕の装備を仕立てた費用は全て母様持ちだ。あの事件でギルドから得た報酬が全て無くなったと言っていた。母様の青ざめた表情がとても印象的でした……。


「男の子みたいな格好じゃせっかくの可愛い顔が台無しじゃない! はぁ……とにかく早く依頼をうけましょ!」

「まあまあ、落ち着いて下さいライム。ルウが問題ないと言ってるんだから、問題ないのでしょう。ねぇ、ルウ?」

「……なんだか僕ばかりが悪者みたいじゃないか……。所でライム、どんな依頼を受けるか決めたの?」


 僕の装備はともかく、今の会話でも分かる通り、僕はライムとガルバの友達三人でパーティを組み、そして今回初めてとなる依頼を受ける事となった。

 実は前々から約束していたのだ、三人とも十歳になったらギルドで依頼を一緒に受けようって。

 先日、三人の中で最後となる僕が十歳を迎えた事で、ようやくその約束が実現したという訳だ。


 そんな約束を交わしていた二人と僕が出会ったのは、今から二年程前の事となる。出会いはもちろんこのバール村だった。


 ライムと出会ったのは、もちろんレイラさんの服飾店だ。

 元々レイラさん達は、王都ラディアスに店を構える服飾店の大店らしいのだけど、レイラさんは親友である母様が生まれ故郷のバール村へ帰るという話を聞いて、それで自分の経営者としての腕を磨きたいと理由を付けてバール村に店を出したらしい。

 ちなみに服飾店の名前は【レイラの秘密♡】と言う。名前からして怪しげな服飾店だ。


 店の名前はともかく、どうしてライムがレイラさんの店に来ていたのかと言うと、ライムは将来王国守護軍に所属する騎士になりたいからだとか。

 守護軍に所属する為にはやはり一定以上の実力が必要らしく、それならばと、両親が小さい内から冒険者として戦闘の腕が磨けるバール村へとライムを送り出したそうだ。

 ちょうどバール村には姉であるレイラさんも住んでるし、戦闘の腕も磨けるとの事で一石二鳥なんだとか。さすが大店を経営する両親だよね、考え方に無駄がない。


 そうしてライムがレイラさんの店に来ていた時、僕と母様が僕の服を買いにレイラさんの店へと赴き、そこで出会った訳だ。

 初めは互いにオドオドしていたけど、僕の夢が冒険者として強くなり世界を見て回りたいという事を知ったライムが、それなら私も強くなりたいのは一緒ね、と意気投合した事が友達として付き合う事になった切っ掛けだ。

 レイラさんに似て気の強いライムと、人に流されやすい僕との相性はバッチリで、親友になるまで時間は掛からなかった。

 あ、ライムが自分を呼ぶ呼称は「ライムはね、〜したい」と、名前呼びだ。守護軍に所属する前には直した方が良いと僕は思うけど、こればかりは本人の癖だからどうしようもない。その時になったらライムも気付いて直すだろう。


 とまぁ、これがライムとの出会いの話だ。次はガルバとの出会いについてだね。


 僕がライムと遊ぶ様になったある日、ガルバはふらっとバール村にやって来た。やって来たのは良いけど、その見た目に気弱そうな風貌も相まって、バール村のガキ大将的な奴にさっそく虐められる事となった。


 まぁふらっとやって来たとは言ったけど、当然ご両親とバール村に移住している。そのガルバの両親は父親が人間で、母親がエルフだ。つまりガルバはハーフエルフという事になる。耳も少し尖っているね。

 それならば風貌は整うはずなのだけど、神のいたずらなのか、両親の悪い所だけを受け継いで生まれたらしい。悪い所と言っても、その見た目だけの話だけどね。

 魔法の才能はやはり親譲りらしく、どの魔法もドラゴンナイフを装備した僕よりも威力は高く、更には魂魄魔法にも似た【精霊魔法】も使える。


 精霊魔法は何回か見せてもらったけど、やはりファンタジー溢れる魔法だった。

 半透明な小さな姿の風を宿した少女のシルフ、全身全てが炎で出来たトカゲのサラマンダー、透き通る清らかな水の体を持つ水の乙女ウンディーネ、そしてどこから見てもオッサンな坊やの土の体を持つノームと、その姿は様々だけど、それぞれが属性に特化した能力を誇る力を発揮していた。

 精霊魔法は僕には使えない魔法だけど、やっぱりファンタジー溢れる魔法だから憧れるよね。ホント、ガルバには勿体ない魔法だ。


 精霊魔法を使えるんだったら、ガキ大将に虐められる事も無いと思うかもしれないけど、ガルバは優しいのだ。臆病だとも言う。

 つまりガキ大将はおろか、その取り巻き連中にさえガルバは言い返す事が出来ずにいたのだ。

 たまたまその場面に遭遇した僕とライムは見事ガルバを助け、ガルバの感謝と共に友達としての付き合いが始まったという訳だ。


 一応言っておくけど、ガルバを助けたのは主にライムだ。人間形態の僕は年相応の力しか出ない上に、昼間は魔法媒体となるドラゴンナイフが無ければ魔法すらまともに使えない。

 そうなると、騎士になる為に普段から訓練していたライムの出番だ。既に大人顔負けの体力を誇るライムが力任せにガキ大将をねじ伏せ、二度とガルバや僕達には近付くなと言い聞かせたのだ。凄いおてんば娘だよね、ライムって。


 ともあれ、以上が僕とライム、それにガルバとの出会いの話だ。


 さて、話を現在に戻そう。


「そうねぇ……やっぱりゴブリンを五体討伐ってのがライムは良いと思うわよ?」

「ライム、そこは普通薬草採取から始めるべきだと私は思うのですけど?」

「僕は……ライムに従うよ。ライムって……我を通すからね」


 僕達は現在、ギルド内の掲示板コーナーにて、鉄級(アイアン)ランクの掲示板の前にいる。僕達が友達同士でパーティを組んで初めての依頼を受ける為だ。

 そうして意見を交わしている訳だけど……うん、ライムはライムらしい依頼を選んだね。

 でもライム……その依頼は確か青銅級(ブロンズ)ランクの依頼のはずだよね?

 まぁ、僕達個人のランクが鉄級ランクでも、パーティを組めば青銅級の依頼を受けても良いとされているんだからそのランクの依頼を受けるのは構わないけど、初めての依頼なんだからせめて確実に成功するのを選ぶのは常道だと思うよ、ライム。

 ライムに従うと言った手前、僕はライムに従わざるを得ないけどね。


「じゃあ決まりね! そうと決まったら、さっそく【エリス】さんの所で依頼を受理してもらいましょ!」

「……ライムはやはり強引ですねぇ。まぁ、もう慣れましたけどね。ルウは……聞かなくても分かりました」

「ガルバ! ちょっとそれどういう意味!? 無理なら無理って、僕だって言う時は言うよ!? ……ライムの言う事にはほとんど従うけど……」

「何を言い合ってるのよ! さっさと行くわよ!」


「「はーい……」」


 ……これが僕達のいつもの光景だ。

 こんな感じでゴブリン討伐依頼も軽く済めば良いんだけどね。ライムは気が強い上におっちょこちょいだから、僕とガルバでフォローしないと何かしらやらかしそうな予感がする。


 ともあれ、ゴブリンを五体討伐というのが僕達パーティが初めて受ける依頼だ。お金を稼ぐ以上、依頼には真摯に向き合い、そして結果を出していこうと思う。

 これが僕の本当の意味での冒険者デビューだ、精一杯頑張ってみせる!

お読み下さり、ありがとうございます。

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