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月の華  作者: 桜華
第三章 冒険者になります!
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五歳になりました!

ルウファは少しだけ成長した……?

 

 僕の身代わりとして、母様の毛皮を泣きながら渡したあの日から、早いもので二年の月日が流れた。そのお陰もあって、僕は毎日ガイアス母様との幸せな生活が送れている。


 あれから、僕は変身していない。する必要が無いと言った方が正解かな?

 満月の幻想的な花模様も、僕が激痛と共に幼女になったあの時から見ていない。あの幻想的な花模様を見た事が体を襲った激痛の原因かは分からないけど、僕の体を激痛が襲う事は無くなったのは嬉しく思う。


 激痛の事はともかく、何も無い日常に少し退屈と感じる時もあるけれど、それは平和で幸せな事なんだとこの世界で気付く事が出来た。何も無いありふれた毎日が幸せなんて、ホント、前世では気付く事がなかったよ。幸せ、万歳!


 そんな幸せな生活の切っ掛けとなった忘れもしないあの日……僕はガイアス母様からこっぴどく叱られた。


 ……何故かって?


 ふふん! それは僕の体が臭かったからだ!


 …………。


 あの日、僕は漏らした事がバレない様に偽装工作をした。当然、バッチリだと思っていた。

 神狼に変身した時と、幼女に戻った時の二回、匂いが残っていた漏らした所を、僕は綺麗にアクアストーンの水で洗い流したのだ。

 あの時は、これでもう大丈夫だろうと確信していた。叱られる事はないだろう、と。


 その結果、その場所の匂いは完全に無くなった。無くなったのだけど、その時僕は忘れていたのだ。……母様の毛皮を取りに行った十日間、お風呂に入っていなかった事を。


 そして夜になってガイアス母様が帰って来た時、母様は十日間会えなかった事を寂しく感じていたらしく、家で出迎えた僕を目一杯抱き締めてくれたのだ。


 結果……お尻を百叩きの刑に処された。


 あの日は一日中お尻が腫れて、ホント死ぬかと思った……。

 ま、まぁ、あの日のその事件以外は二年間を幸せに暮らしていたのだから、問題ないって言えば問題ないよね。

 それに、アレ以来母様はとても優しくしてくれるし、毎日色々と遊んだり、教えてくれたりしている。

 アレからお風呂も当然毎日ちゃんと入っている。尻叩きはもうゴメンだ。


 そして、現在……僕は五歳となり、遂に母様から魔法を教えてもらえる事になった。


 本当は母様が得意とする双剣を習いたかったのだけど、僕がまだ五歳という事で体も小さく、そして体力も年相応しか無いとの事で却下された。まぁその代わり、今の僕でも使えそうな人間の魔法を習えるのだから、僕としては全く文句はない。


 そうそう、忘れる前に言っとくけど、僕の身長はこの二年間で82セルトから100セルト……つまり、1メルトにまで成長しているぞ? ふふん、参ったか!


 …………。


「ルウ? 母さんの話聞いてた?」

「は、はい、聞いてたよ!」

「じゃあ、今母さんが教えた所を復唱してみて?」

「…………」


 その後、僕はお尻を十回叩かれた。あまりの痛さに、間違いなく僕のお尻は二つに割れているであろう。え? それは元からだって? そ、そうだっけ?


「それじゃお昼も食べたし、もう一度呪文の復習から始めるわよ。いい? 良く聞いて覚えるのよ?」

「はい、母様!」


 お尻の痛みが引くまでの間にお昼を済ませ、午後も続けて魔法について教えてもらえる事になった。

 ちなみにお昼はオーク肉を使ったサンドイッチだった。当然美味しくいただいた。母様が作る料理の塩っぱさにも慣れたからね。


 お昼はともかく、本当は、午後はバール村に初めて連れて行ってもらえるはずだったんだけど、墓穴を掘ったせいで、午後も魔法の講義となってしまった。

 まぁ、バール村は逃げる訳でもないし、人間の魔法を教えてもらえるんだから、むしろその方が僕としてはありがたかったりする。呪文を唱えるカッコ良い魔法、使ってみたい。


 ……未だに厨二病は進行中である。


「まずは初歩的な魔法の呪文からね。とは言っても、呪文の言葉は初級でも上級でもほとんど同じ。違うのは、込めるマナの量とイメージする力ね。あ、禁呪と呼ばれる程の魔法はそれ専門の呪文があるわね。すっごく難しいから母さんも使えないけどね」


 母様が教えてくれる魔法の説明を僕は真剣に聞いていく。何事も初心忘るべからず、の精神だ。

 基礎をおろそかにする者は上達しない。……これは前世でも大事な心構えだったはずだからね。僕は学ぶ子なのだ。


 それはさておき、母様から教えてもらった今の話、魔法についてのとても大事な事を説明してくれていた。


 それは……人間の魔法もやはりイメージが大切だという事だ。つまり、水の槍をイメージしたり、炎が爆発するのをイメージしたり……という事である。

 これは僕を含め、恐らくほとんどの魔物が使う魔法の原理と同じだと思われる。

 魔物が魔法を使う時、呪文なんて唱えない。当然だろう、言葉を発せないのだからね。ならばどうやって魔物は魔法を唱えるかと言えば、正にそのイメージという事だ。


 例えば、人間にはヘケトと呼ばれるアクアトード。ご存知の通り牛蛙に似た魔物だ。僕が初めて食べたお肉としても有名(?)である。

 彼らは、魔法を唱える時に言葉を発しない。まぁ、鳴き声などはあげたりするけどそれはともかく、アクアトードは自然界の魔力を体に取り込み、それをイメージの力で魔法へと変えて放つ。《アクアボール》がその代表的な魔法だ。

 そしてその魔法は本能で放っていると考えられる。《アクアボール》の魔法は、彼らの魂の属性が水属性という事と、生活する場が水辺だからイメージが水球となるのだろう。


 ようするに、魔物は自らの属性を本能で理解し、その本能のイメージするままに魔法を放つという事だ。


 それに対して、僕の場合は属性を超越して魔法を放てる。とは言え、それは魂魄魔法に限られる訳だけどね。

 僕自身の属性は、神狼という事で、神狼だけの属性である雷属性の魔法を放てる。


 被害が甚大になってしまうので一度しか使った事はないけど、神滅の森のドラゴン平原から少し南下した辺りで、トロルキングを相手に雷属性の魔法を放ってみたのだ。

 その効果は、見える範囲に巨大な雷を数百本も降らすという物で、トロルキングはおろか、僕の見ている範囲の風景が消し炭と化してしまった。恐ろしい光景だった。ちなみにこの時に、自然を大事に、をモットーとした。

 それ以来、僕自身の魔法は放たない様にしているという訳だ。まぁ、その魔法は神狼形態でしか使えないけどね。


 僕の場合はともかく、人間はイメージの力もそうだけど、呪文によって色々な属性の魔法が放てるのだから、一つの属性しか魔法を放てない魔物とは違う。だからこそ、僕は人間の魔法に憧れているのだ。

 イメージと呪文さえあれば、水を出したり、炎を出したり……時には風の刃を放ち、土の壁を創る事だって出来る。凄くカッコ良いよね。


 盛大に話が逸れたがともあれ、とにかく魔法はイメージが大切だという事だ。


 次に、今の母様の話の中で気になった事を質問してみる。


「母様、禁呪って何?」


 そう、禁呪について聞いてみたのだ。

 禁呪と言えば、それはもう厨二魂にビンビンと来る物がある。ロマンと言っても過言ではないだろう。

 僕も使えるものならば、是非とも使ってみたいのが本音だ。……まぁ、禁呪なんて指定されているんだから、僕なんかが使える訳ないんだけどね。


「禁呪と言うのはね、あまりにも威力があり過ぎて使っちゃダメな魔法の事よ。でも、これには規定があって……ルウは知らないと思うけど、何年か前にテンペストドラゴンって言う魔物が永い眠りから目覚めてね、そのドラゴンに対してなら禁呪の使用も辞さないって言われてたの。つまり、人間の対処し切れない事案に対しては禁呪を使っても良いってされてるの。だからと言って、禁呪を使う為には幾つもの申請を通して、更にたくさんの魔導師が集まって初めて使えるんだけどね。ま、禁呪なんて母さんは教えられないし、ルウだってそんな危険な魔法は使いたくないでしょ? それに、今は魔法の基礎を学ぶ時だから、そこに集中しましょうね」


 うーん。使っちゃダメと言われると使いたくなるのが人の性というものだけど、母様の話を聞くに、絶対に使っちゃダメって意思が伝わってきた。

 まぁ母様も、禁呪については難しくて呪文が分からないって言ってるし、母様が難しいって思うなら、ようやく言葉をマスターしたばかりの僕には無理な話だね。

 禁呪なんて魔法もあるよって事を、僕の記憶の片隅に留めておくだけにしておこう。


「ルウは禁呪について分かったかな? 分かったなら、次は魔法の呪文について教えるわよ。良く聞いていてね? 基礎となる呪文は……〖マナよ。我が言葉に従い〇〇と化せ。〇〇〇〇となりて〇〇を〇〇せよ! 《〇〇〇〇》!〗……となって、それぞれ〇〇の中にマナを何に変えるのか、〇〇に変えたマナをどうしたいのか、となるの。そして最後に魔法名を口にすれば魔法は発動出来るって事よ。分かったかな?」

「はい! つまり……イメージを言葉に変えて、呪文として唱えるって事だよね! 分かったよ、母様!」

「さすがルウね! 一度の説明で理解するなんて、ホントお利口さん!」


 えへへ、褒められた♪


 しかし、なるほど。母様の言う通り、魔法の基礎となる呪文は簡単な様だ。まだ人間の魔法に(うと)い僕でも理解する事が出来た。

 そして、そんな母様の説明の中に聞き慣れない言葉が混ざっていた。そう、【マナ】という言葉である。


 今まで僕は魔法を放つ為に使っていたエネルギーを、ただ単に魔力と表現していた。だけど、この世界の人間達はどうやら魔力をマナと呼んでいるみたいだ。

 まぁ、マナという表現は僕が前世で読んでいたラノベのいくつかの作品で表記があったので、それ程違和感はない。むしろ、魔力と言うよりもマナと言った方がカッコ良いので、僕としては嬉しい。我が体内で荒れ狂う膨大なマナよ! ……なんてね。


「それじゃ、ルウがしっかりと学んだかどうか、さっそく実践してみようかしらね。お外に出て、母さんがいつも訓練してる場所で魔法を使ってみましょ」

「はい!」


 魔法の講義を行っていたリビングから場所を家の外……小さいながらも訓練場へと変えた。僕も母様も私服のままだ。

 戦闘訓練をする訳でもないし、ちょっと魔法を使ってみよう的な事なので、特に着替える必要もないだろうとの事である。


「それじゃ比較的簡単で、イメージもしやすいし、危なくない魔法という事で《ウォーター》の魔法を唱えてみよっか」

「《ウォーター》だね、分かった!」

「呪文はこれよ? ……〖マナよ。我が言葉に従い水と化せ。水流となりて我が手より流れ出よ! 《ウォーター》!〗……今母さんが言った呪文を唱えながら水をイメージして、そしてマナを手に集めれば発動するからね」

「はい!」


 なるほど、イメージしながらマナを出したい場所に集めて、その際に呪文を唱えるのか。あ、呪文の中に我が手って言葉があったけど、手と言葉にすれば、そこにマナを集中しやすいのか。手と言えば、当然手をイメージするもんね、納得。

 ……でも、手と言いながら股間をイメージしちゃったらどうなるんだろうか? 股間から魔法が発動されるのか?


 まぁいいや、さっそく唱えてみよう。


「〖マナよ。我が言葉に従い水と化せ。水流となりて我が手より流れ出よ! 《ウォーター》!〗」


 体内のマナを意識し、右手の手の平を前方へと向けて呪文を唱える。すると、強制的に手へとマナが集まり、次の瞬間には水を感じる冷たいものへと変わるのを感じた。

 なるほど。呪文は言霊みたいなものなのか。言葉に力が宿るらしい。そのお陰で、どうやら今の僕にも簡単に魔法を放てる様だ。


 魔法を発動した次の瞬間、僕の右手の手の平からはチョロチョロとした綺麗な水が流れ出していた。


 ……そして、僕の股間からもチョロチョロと出ていた。

お読み下さり、ありがとうございます。

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