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月の華  作者: 桜華
第二章 人間の姿にはなったけれど……
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三歳になりました!

ブクマの件数が40件を超えました!

ありがとうございます!

 

 ガイアス母様の養子になってから一年あまりが経ち、僕は三歳になった。今では、難しい言葉以外は話す事も出来る様になっている。

 身長も、二歳になったばかりの時は80センチだったけど、今ではなんと……82センチにまで伸びている。

 あ、センチと分かりやすく言っているけど、この世界ではセンチではなくセルトって言うらしい。1センチは1セルトで、1メートルは1メルトとの事だ。

 ちなみに重さの単位は1キロは1セキ、1グラムは1テキらしい。あ、1000セキは1トンで、トンというのは元の世界と同じだった。


 それはともかく、僕の身長が一年で2セルトも伸びたのだ。自分で言うのもアレだが、これはかなり伸びたのではないだろうか? 我ながら凄いの一言である。


 …………。


 ……ツッコミは受け付けない。


 文字などにしても一生懸命に勉強してるので、それなりには覚えたのではなかろうか。書く事もそこそこ出来ると自負している。

 まぁ、ことわざの様なものや慣用句は難しいのでいまいち理解し難いのだけど、それも覚えるのは時間の問題だと思っている。エッチな言葉や文字を真っ先に覚えたのは内緒だ。


 ちなみに、今は母様の持つ本を読み漁る事に夢中である。


 母様の書棚にある本はそのほとんどが魔物関連で、次いで魔法関連、後は雑学やちょっとした料理本、それと、この国……ラディアス王国の成り立ちについての歴史本だ。あ、薬草図鑑などもあったね。


「ねぇ、母様、この草は薬草なの?」


 今開いてる本は薬草図鑑。その中に、僕がこの世界に転生してから初めて食べたほうれん草に似た草の絵が載っていた。その下にはこの草についての蘊蓄(うんちく)がびっしりと書かれているが、先にも述べた通り、難しい言葉が連ねられていて意味が分からなかった。なので、母様に聞いてみたのだ。


「この草はねテトロキシ草と言って、毒薬に使われる草よ。ルウは見掛けても絶対に触っちゃダメよ? この草は触っただけでも皮膚が爛れちゃうからね。あ、食べるなんてもっての(ほか)よ? この草の葉っぱが一枚でもあれば、人間なんて百人は殺せる毒薬が出来るんだから」


 …………。


 ……よく死ななかったな、僕。


 しかし、知識は本当に大事な事だと良く分かった。知識がなければ命を失う可能性が飛躍的に高まってしまう。

 僕がこの草を食べて死ななかったのは、恐らく神狼としての能力だったのだろう。まぁ、お腹は壊したけどね。

 だけど、アレは卑怯だと思う。だって、あんなに美味しそうな甘い匂いがしてたんだからね。誰だって毒草だと知らなければ食べるはずだよ。


「あ、そうだ! 母さんね、明日から十日間は家を空けるからそのつもりでね。食べ物はいつもの所に置いておくから、【ヒートストーン】を使って良く焼いてから食べるのよ? 分かった?」

「はい、母様。所で、どうして十日間も家を空けるの?」

「それはね、ようやく母さんの申請が通ったからよ。【リック】……あ、リカルドの事ね。リカルドもやっと重い腰を上げてくれたからね。今日まで一年間、ワーウルフの捜索を一人で続けてきたけど、やっぱり一人だと探しきれなかったの。でも、母さんが以前所属していた第一守護軍の騎士達がたくさん来てくれたから、今度は必ず見付けて排除してやるわ! だからルウも安心してね? もうワーウルフに怯えなくて済むようになるから」


 ん? リカルド? この国の王様の名前が確かそんな名前だった気がするけど……?

 まぁ、この国にはたくさんの人が住んでるって話らしいから、母様の知り合いに国王の名前と同じ人がいたって変じゃないよね。リックって愛称で呼んでるみたいだし。

 国王を愛称で呼ぶなんて、母様はいったいどんな立場なんだよってなるよね。


 それはさておき、母様がこの一年間、毎日午後になると森に入っていたのはそういう事だったのか。何日かに一回、オークを一体狩って来てたから、てっきり食料をとりに行ってたのかと思ってたよ。

 しかし、そんな苦労をしてた母様には申し訳ない気持ちでいっぱいだ。そのワーウルフ……僕だもの。

 そして、今回の守護軍とやらで行う大捜索も、きっと無駄足となるだろう。ご愁傷さまです、と言いそうになった。


 いや、待てよ? 確か……僕が生まれたあの巣穴の中にそれらしき毛皮が置いてあった気がするぞ?

 その毛色も僕と同じ白銀色だったし、それがあれば母様も守護軍の皆さんも満足するんじゃないか?

 その毛皮があれば、ワーウルフは既に死んでいたって事にもなるし、僕の正体がワーウルフだってバレる心配も完全になくなる。


 しかし、十日間か。それだけあれば毛皮を取って戻って来られるか?

 だけど、チャレンジしてみる価値はあるだろう。

 何せ……これからの僕の生活において、何の憂いも無くなるのだから。


「それじゃ母さんは晩ご飯の用意をするから、ルウはお風呂の準備をしてね」

「うん、分かった!」


 母様が言っていた守護軍やワーウルフ、それに僕の憂いについて考えていたら、母様にお風呂の用意を頼まれた。

 僕はご飯の用意をさせてもらえない。……と言うか、普段は母様がやりたがるので任せている、が正解だ。

 以前、お手伝いで僕がご飯の用意をした時、オークの肉を焼くだけで味付けも何もしなかった。

 匂いはとても美味しそうだったし、僕は美味しく食べられたんだけど、母様は味がしないって嘆いていた。

 それからというもの、今回の様に母様が家を空ける時以外はご飯の用意を僕には許してくれなくなったのだ。

 僕としては、素材の味が活かされるから焼くだけの方が良いんだけどね。……母様の作るご飯は少ししょっぱいとはとても言えない。


 ともあれ、僕は母様に言われた通り、お風呂にお湯を入れに行く。

 お風呂にお湯を入れるのには、【アクアストーン】と【ヒートストーン】の両方を使う。

 アクアストーンとはいわゆる魔石と呼ばれる鉱石で、魔力を込めれば綺麗な水を出してくれるという物だ。その水は飲み水や料理などにも使われる。

 ヒートストーンはアクアストーンと同じく魔石の一つで、こっちはアクアストーンが水を出すのとは違い、ただ熱を発してくれる物だ。フライパンで肉を焼くのも、シチューなどの煮物に火を通すのも、ヒートストーンがあれば簡単に出来る。もちろん、浴槽にアクアストーンで注いだ水をお湯にする事もヒートストーンの力があって出来る事だ。

 ちなみに、灯りは【ライトストーン】を使っている。え? 予想してたって? ナンノコトカナ。


 お風呂場に行き、アクアストーンに魔力を込めて浴槽に水を張る。アクアストーンからは勢いよく水が溢れ出した。

 浴槽に程よく水が溜まった所で、次はヒートストーンに魔力を込めて、それを浴槽に張った水の中へと浸す。その際、ヒートストーンから手を離す。じゃないと、僕の手が火傷しちゃうからね。

 それから、時間にして10分程だろうか。浴槽に張った水から湯気が出始める。僕は浴槽の中のヒートストーンを取り出した。うん、魔力を込める量は丁度良かったみたいだね。


 お風呂の用意をするのも、初めはやはり上手く出来なかった。アクアストーンで水を出すのはともかく、ヒートストーンに込める魔力量が分からず、浴槽の中の水を沸騰させてしまったのだ。母様には当然叱られた。

 それでも何回かやってる内に段々と込める魔力量が分かってきて、今では丁度良い湯加減に出来る様になった。母様にも褒められる程である。


「うん、丁度良い湯加減だね! 母様ぁ! お風呂の用意出来たよー!」

「ありがとう、ルウ! ご飯もすぐに出来るから、テーブルで待ってて!」


 お風呂の用意が出来たので、母様に声を掛けた。すると、母様も僕の声にキッチンから応えてくれる。僕と母様のいつものやり取りだ。

 父様は居ないけど、母様との平和な家族の日常のワンシーン。それを心から幸せに感じる。

 体の弱かった前世では入院ばかりで、こういった事はほとんど出来なかった。僕が何かお手伝いをしようとすると、僕の体を心配した両親がそれをやらせてはくれなかったのだ。


 だから、僕は今すごく幸せを感じている。


 例え血が繋がってなくても、ガイアス母様は僕のお母さんだと胸を張って言える。ガイアス母様には本当に感謝しかない。

 もしも母様に大変な事が起きた時、僕は自らの正体がバレたとしても母様を助けたい。その結果、母様と離れなければならなくなっても。


 ちょっとしんみりしちゃったけど、とにかく、今は母様の娘として精一杯生きていくつもりだ。

 その為にも、母様がいない十日間の間に巣穴へと戻り、そして、あの毛皮を必ず取って来なくちゃ。

 密かにそう決意をし、僕は母様に言われた通りにテーブルに着いた。


 僕にはまだ大きい椅子へとよいしょと座る。そのまま少しだけ待つと、母様がキッチンから鍋を持ってきた。お皿などの食器や主食となるパンは既にテーブルの上に用意されている。


「お待ちどうさま! 今夜はルウの好きなミノタウルスシチューよ! おかわりはたくさんあるからお腹いっぱい食べてね!」

「わーい! 今夜はご馳走だね! ありがと、母様! 明日からの母様のお仕事、頑張ってね! 僕もお利口さんでお留守番してるね!」

「ありがとう、ルウ〜♪ 母さん、元気百倍だし、勇気百倍よ! それじゃ、冷めない内に食べましょ!」


 明日からの十日間、僕にご飯の用意をする事が出来ないのを申し訳なく思っているのか、今夜は母様の料理の中で僕の一番好きなミノタウルスシチューだった。

 母様はそれをお皿へとよそる。ミノタウルスのお肉とお野菜がゴロゴロと入ったとても美味しそうな出来栄えだ。思わず喉がゴクリと鳴りそうになった。


「「いただきます!」」


 全ての用意が整った所で、母様と僕の声がハモった。そんな些細な事にも幸せを感じる。

 僕はその幸せを噛み締める様に、大好きなミノタウルスシチューのお肉を食べていくのだった。

お読み下さり、ありがとうございます。

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