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月の華  作者: 桜華
第一章 生きていく為に!
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哀しき事故だった

ストックがまた少し溜まったので本日は二話更新します!

本日一話目です。

 

 くっ……! 誰がこの悲劇を予想しえたであろうか。いや、誰も予想しえまい。


『ま、まさか魔法の見せ合いで仲良くなるつもりがあんな事になるなんて……!』


 僕の目の前にはあちこち骨が砕けたバラバラの白骨死体が横たわっている。身に纏っていたボロボロのローブは細切れになって散ってしまっていた。


『あ、意外と脳は美味しいかも。干し柿みたいな味がするよ』


 リッチの砕けた頭骨の中には、唯一食べられそうな脳があったのだ。ならば、食べねばなるまい。命を奪うという事はそういう事である。……アンデッドに命があるかは分からないけど。

 いや、リッチの体から灰色の魂が浮かんできたので、命があると言えばあるのだろう。しっかりと吸収させてもらったけど。


 しかし、せっかく知的な魔物と仲良くなれるチャンスだったのにこんな結果になろうとは──


 ☆☆☆


 ──およそ30分前。


「何を言っておるのか分からんが、さっさと楽になるが良い。〖マナよ。我が言葉に従い風と化せ。鋭き刃となりて敵を切れ! 《ウィンドスラッシュ》!〗」


 リッチは何やらブツブツと呟き、右手の大きな杖の先端を僕へと向ける。見れば杖の先端には魔力らしきものが集まり、次の瞬間には風が発生した。


 もしかして、僕が魔法に憧れる厨二病だという事を察し、それを見せてくれようとしてるのだろうか。


 だとしたら、さすがはリッチ……いや、腐ってもやはりリッチといった所か。干からびてはいるけど。

 その高度な知識と圧倒的な魔力で僕の魂を分析し、友好的に接してくれようとしているのだ。


 ここは黙って見学するしかあるまい。


 リッチの魔法をワクワクしながら黙って見学する。魔力の集まった杖から放たれた風の行方を見定めていく。風の魔法として放たれた魔力は見えない刃と化し、僕の纏うドラゴンローブ(もどき)の表面に当たってあっさりと消えた。


 やはり僕の為に威力を落とし、魔法の速度も落として見やすい様にしてくれたみたいだ。


「な、何だと!? ワシの魔力を高密度に圧縮して放った《ウィンドスラッシュ》を……風の最高位魔法があっさり弾かれるだと……! もしやあの魔物の皮……ドラゴンに似た魔物の皮かと思っておったら本物のドラゴンか! くっ……! だが、それ以外ならば無防備と見える。ならばそこを狙えば良いだけの話よ!」


 何を言ってるのか分からないけど、きっと次はお前の番だから、お前の魔法を見せてみなさいって言ってるんだろう。見た目はともかく、やはりこのリッチは良いリッチなんだろうな。


『じゃあ、お言葉に甘えて、僕もお見せします! まぁ、自信はないですけどね。《ソウルウルフ・ヴァーユ》!』


 リッチ……いや、敬意を込めてリッチさんと呼ぼう。リッチさんが風の魔法を見せてくれたんだから、僕も風属性の魂魄魔法人狼バージョンを見せてあげよう。

 という事で、さっそく半透明な人狼魂魄体を作り出し、風属性を纏わせる。その体からは高密度の風が噴き出し、なおかつ、それを体の表面に留めている。

 今回は見せるだけという事でそれ程魔力を込めていないので、万が一リッチさんに当たってしまっても大丈夫だろう。

 ちなみにヴァーユという名前は、どこかの風の神様の名前だった気がする。響きがカッコ良かったので拝借した。


「な、何だ、この魔力量は!? 馬鹿な! ワシよりも強力なリッチロードでもあるまいし、たかが人狼にかような魔法を扱える訳がない! ──ッ!! ギャアアアアアア……ァァ……ァ……ァ……」


 …………。


 リッチさん……?


 ヴァーユが軽く触れただけでリッチさんはバラバラになってしまった。もしかしたらアンデッドジョークというやつかもしれない。

 それにしては細部まで拘っている。砕けた手骨に尺骨、それに頭骨なんて半分に割れてるよ。あ、干し柿みたいな脳が見えてる!


『あの、リッチさん……? そろそろ起きて欲しいんですけど? ……リッチさん?』


 ……彼はそのまま帰らぬ人(?)となってしまった。


 ☆☆☆


 ──そして現在、僕はリッチさんの脳ミソを美味しくいただいている最中である。


『いやぁ、アレはきっとリッチじゃなくてスケルトンメイジだね。リッチだったら、さすがにドラゴンよりは弱いだろうけど、それでもかなり強いはずだよ。うん、そうだ、そうに違いない!』


 悲しい事故だったけど、あれはスケルトンメイジだったという事で人の為に魔物を討伐したのだからコレで良かったのだろうと思う事にする。


 そう気持ちを改め、僕は哀しき現場を後にした。


 ☆☆☆


『あのスケルトンメイジは幸運の使者だったのかな? いや、使者と言うよりかは死者と言った方が正しいけど』


 スケルトンメイジの悲しい事故からもうすぐ一年が経とうとしている。月日が経つのはあっという間の出来事で、僕ももうすぐ二歳を迎えようとしていた。


「ブキィーッ!? ……ッ……!」


 ドラゴンの牙で首を切断し、オークの息の根を止める。先程の僕の言葉はこのオークが現れた時のものだ。


 ちなみにオークとはラノベに良く登場する魔物の一種である。ご存知の通り、豚頭人身の魔物の事だ。ラノベの作品によっては獣人として描かれている事もあるけど、この世界ではどうやら魔物みたいだ。

 その肉質は柔らかく、たくさんの脂肪が乗っているけどしつこくないのでとても美味しい。前世の豚肉と比べても、間違いなくオークの肉の方が美味しいと言えるだろう。


『スケルトンメイジからこっち、どんどん魔物が弱くなって来てるよね。という事は、今度こそ森の出口が近付いてる証拠かも』


 オークの肉を《ソウルウルフ・アグニ》の炎で焼き、それを食しながらの言葉である。

 あの後から現れる様になった魔物はトロルキングに始まり、普通のトロル、オーガキングとその一党、オークキングとその配下、ゴブリンキングと愉快な仲間たちだった。


 あれ? グリフォン、見なかったな。ファンタジーと言えば定番なのに……。ま、その内会えるだろう。


 変わり種と言えば、自らを真祖と名乗っていたヴァンパイアだろうか。だけど、アレはどう見てもレッサーヴァンパイア……吸血鬼の従属種といった所だろう。

 だって、僕に噛み付いて勝手に消滅していったんだからね。


『ハッ!? もしかしたら僕の勇者としての聖なる血の力で消滅したのかも!』


 勇者の聖なる血って……最高にカッコ良い響きだ。胸にキュンキュン来る。


 ともあれ、あのドラゴン以来、僕の命を脅かす存在は現れず、人間に出会う旅はとても順調である。


『さ、オークも食べ終わったし、今日はこの辺りで野宿としますかね』


 オークの骨に付いてる最後の肉を食べ終え、骨をその辺に投げ捨てそう独り言ちる。骨はバラバラに投げ捨てたからアンデッド化はしないはずだ。


 しかし、この世界で転生してからというもの、独り言の癖がスッカリ身に付いてしまった。


 もしもこの先、出会った人間達と生きていくのであれば、この癖を直さないと恥ずかしい思いをしたり、諍いの原因にもなる事があると思うので気を付けないといけない。

 まぁ、それよりも、僕の人狼としての姿が受け入れられるかの方が問題だろうけどね。言葉の問題もあるし。


『人間の言葉……喋れる様になるかなぁ……』


 木の根元に横になり、月夜を見上げながら呟く。実際の所、今の言葉でさえもワフワフ、ガウガウとしか発音出来ていないのだ。


『明日は満月かぁ。という事は、僕は明日で二歳だね。誕生日プレゼントという事で、この森から出して欲しいなぁ』


 一歳最後の夜をその言葉で締め括り、僕は夢の彼方へと旅立っていった。


 ☆☆☆


 明くる日、朝日と共に目覚めた僕は今日の獲物を求めながらも森の出口を目指して歩き始める。今日は僕の二歳の誕生日だ。何か良い事が起きそうな予感がする。


 歩き始めて小一時間程。近くの木の根元付近に、木漏れ日を受けてキラキラと光を反射した何かを発見した。


『こ、これは! 遂に見付けた! やっとだ、やっと見付けたんだ! やっぱりこの世界には人間がいたんだ!!』


 スケルトンがいたのだから、人間もいるとは思っていた。だけど、人間の痕跡らしき物を見た事がなかったので、もしかしたら人間はいないんじゃないかと半ば諦めてもいた。

 しかし、やっとその痕跡を見付けたのだ。これ程嬉しい事はない。


 そこで僕が見付けた物……それは人間だけが使用する物の残骸であった。

 それぞれ壊れてはいるけど、大きな箱や小さな箱だった物、それにボロボロに破れた衣服なども散乱している。恐らくこの近くに住むゴブリン達が人間を襲い、食料や武器防具などを持ち去った残りがこれらの物なのだろう。


 そしてその中にキラキラと光る物がある。僕の目に止まったのはこれだ。それは、小さいながらも僕が探してやまなかった物である鏡だった。

 鏡は丸いタイプの物で、その大きさは直径20センチ程。それが木枠にハマり片手で持つ様に取っ手が付いている。手鏡だ。女性が使うという事なのだろうか、木の取っ手には蔦が彫られていて、鏡の背面部には薔薇が彫られていた。


『これが……僕? 体毛が白銀色だって事は分かっていたけど、前頭部に真っ黒な体毛が生えてるなんて知らなかった』


 空腹も忘れ、さっそく小さな鏡を覗き込む。そこに映るは、とてもカッコ良い人狼のシュッとした切れ長の顔。瞳の色は金色だ。そして額から前頭部に掛けて、黒い体毛が生えているのが目に映った。

 その黒い体毛の形は炎の様でもあり、ドラゴンの顔のシルエットの様でもある。


 額にドラゴンの形をした黒い体毛。ゾクゾクする程にカッコ良くて、思わず見惚れてしまっていた。


『やっぱり良い事があったよ♪ 元の持ち主には悪いけど、この鏡は誕生日プレゼントって事で貰っておこう!』


 残骸たちに軽く手を合わせた後、手鏡を腰のロープへと固定した。これで落ちる事はないだろう。

 その後、森の出口が近付いてる予感に尻尾を揺らしつつ、僕は足早に歩くのだった。

お読み下さり、ありがとうございます。

午後にももう一話更新するので、よろしくお願いします。


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