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月の華  作者: 桜華
第一章 生きていく為に!
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人狼形態の能力

とりあえずの目標ブクマ20件を達成出来ました!

ありがとうございます!

 

『さすがに毎日だと飽きてくるね……』


 ドラゴンを倒してから、今日で一ヶ月と少々。遂にドラゴンの肉を完食した。言葉にした様に、さすがに毎日だと飽きてしまった。

 たまにその辺の草などを食べてはみたけど、それでもやっぱり飽きる。贅沢な事だとは分かっているけど、しばらくはドラゴンの肉は見たくないや。まぁ、そんなすぐに出会える存在じゃないと思うけど。


『でも、よく腐らずに保ったよね、この肉。もしかしたらアレかな? 魔力を多く含んだ肉は鮮度を保つっていうアレ。ラノベを読んでる時は嘘だと思っていたけど、実際に自分が経験すればホントの事だったんだって実感するよね』


 しかし凄いよね、ラノベのファンタジー物を書いていた作家さん達は。想像だけでここまで正確に異世界の事を描けるんだから。


 ──ッ!? まさか!?


 もしかしたらファンタジー物のラノベを書いていた作家さん達は、異世界から地球に転生した人間だったのかもしれない! 逆異世界転生ってやつかも……!


『ま、ホントの所はどうなのかは分からないけどね。さて、と。今日からは再び森の出口を目指しての旅の再開だ。……さらば、ドラゴンよ! 僕に食を提供してくれたお前は正しく強敵(とも)だった!』


 骨だけになったドラゴンに別れを告げ、僕は森の出口を目指して出発した。


 ……放置したらドラゴンゾンビとして復活するだろうって?


 その点は抜かりない。しっかりとエイプの炎で浄化しておいた。


 これもラノベの知識だけど、骨までしっかりと炎で焼けばアンデッド化しないというのも本当の事だった。

 現に、《スピリット・エイプ》の力を得るまでは何回かはアンデッド化した。生前よりも多少力が増す程度だったから事なきを得たけど、倒したはずなのにまた戦わなくてはならないというのは正直面倒くさかった。

 しかしエイプの力を得て炎で骨まで焼いたらアンデッド化する事はなくなったので、それからはしっかりと炎で焼く……まぁ、浄化する様にしてるのだ。


 ともあれ、今度こそ森の出口を目指して出発だ。


 おっと、そうだった。この一ヶ月で人狼について分かった事の説明がまだだったね。歩きながら説明するよ。

 人狼形態の体長……身長と言った方が分かりやすいかな? 身長は2・5メートル程で全体に筋肉質。一応メスのはずなのに、胸は膨らんでいない。なのにシンボルが無いとはこれ如何に……。


 コホン。その人狼形態の能力だけど、神狼の時よりも劣ってしまった。何より、《炎神(カグツチ)》などの強力な魂魄魔法が使用出来なくなってしまったのだ。

 代わりと言ってはなんだけど、魂魄魔法亜種とでも言うべきものは使える様になっている。それは、雷を除くそれぞれ四つの属性を身に宿す四体の半透明の人狼だ。《ソウルウルフ》と命名した。

 ちなみに、《ソウルウルフ》の力は僕の半分程しか出せないらしい。魔法関連で言えばそんな所かな。


 次に僕自身の人狼としての力を説明する。

 神狼の時と比べて魔法は劣ってしまったけれど、人狼形態になって上がったものもある。それは筋力と回復力だ。


 筋力は軽く握っただけで大木の幹を粉砕出来る上に、本気で力を込めれば尋常じゃない硬さのドラゴンの骨でさえも握り潰せた。推定だけど、握力は1トンを超えるのではなかろうか。恐ろしい程の筋力である。


 回復力は筋力よりも更に凄い事になっている。

 神狼の時は《スピリット・ウルフ》でしか傷などの回復が出来なかったのに、人狼形態では何もしなくても瞬く間に回復するのだ。

 つい先日、それを証明する出来事が起こった。それはドラゴンの牙を使ってドラゴンの皮と鱗を切っている時の事だ。

 ドラゴンの鱗も皮も人狼形態の僕の牙や爪ではまるで歯が立たず、ならばと人狼形態の力任せにドラゴンの牙を抜き、それを使って鱗や皮を丁度良い大きさに切ろうとしたのだ。ドラゴンの牙は全てを貫通させるってラノベにも書いてあったし、それを実践してみようってね。


 しかしその際、誤って自分の手首を切り落としてしまった。


 いや、驚いたね。僕の手首をスッパリと切り落とせるドラゴンの牙の鋭さもそうだけど、あの激痛と言ったら……思わずおしっこを全漏らしする程だったよ。あ、負け犬みたいにキャインキャインとも吠えたね。負け狼かな?

 いや、そうじゃない、その後の事だ。

 あまりの激痛に泣きながらも、出来ればくっついてくれないかと切り落としてしまった手首を傷口に当てた時だ。瞬く間に骨と神経が繋がり、次いで肉や皮膚、それに体毛までもが元通りに回復したのだ。驚き過ぎて、手首が治ったのに尻尾を振るのを忘れていた程だった。


 そして好奇心が湧いた。もしも切り落としたままの状態ならばどうなるのか、と。


 自分でも驚きだったけど、僕はそれを試してしまった。ただし、試したのは手首じゃなくて右手の小指だ。

 万が一回復しなかったら手首だと大変だ。だけど、小指ならば無くなっても生きてく上で大した障害は残らないと判断したのだ。

 結果は……もの凄く痛かった。もう一回漏らしてしまったよ。だけど試した甲斐もあってその事が確認出来た。

 何と、僕の右手の小指は小一時間程で新しく生えて来たのだ。

 そんな大怪我を負ってしまったら出血多量で死ぬ事も考えられたが、人狼としての能力なのか、出血は微々たるものだった。もはや回復力と言うよりも、再生力と言った方が適切かもしれないね。


 とまぁ、人狼形態の能力の説明はこんな所かな。


 ……強力な魂魄魔法を使えなくなったんじゃ、エイプの炎でドラゴンの骨の浄化は出来ないだろうって?


 それを説明するのを忘れてたね。

 この一ヶ月の間、僕は激しい痛みに耐え、人狼形態と神狼形態の変身を自由に行える様になったのさ。人狼形態の力が安定した今となっては、変身の際の痛みも無くなったよ。


 ただ、ここからの旅は神狼形態は封印だ。何故ならば、ドラゴンの鱗が付いたままの皮をローブの様に体に纏い、木の皮を剥ぎ、それを噛んで柔らかくして捩って作ったロープで縛った腰には、ドラゴンの角を二本と牙を十本帯びているからだ。

 とは言っても、鱗付きの皮はローブの様に見える様に羽織ってるだけだけどね。まぁ、見た目がそれっぽく見えると思うので、人間に出会ってもただの人狼として怖がられず、珍しい人狼という感じで見られるはずだ。恐らくだけど、この格好ならば間違っても討伐対象とはならないだろう。……と思いたい。


 それに、自分で言うのもなんだけど、今の僕ってかなりカッコ良いのではなかろうか。


 ただでさえカッコ良い狼の顔だ。それだけでもカッコ良いと思うのに、更にドラゴンローブ(もどき)を身に纏い、ドラゴンの角で作った(頭から抜いて適当な大きさに折っただけ)双剣にドラゴンの牙で作った(手首を切り落とさない様に気を付けろ!)ナイフを装備しているのだ。気分は伝説の勇者そのものといった所である。

 雷属性の魔法も使えるし(人狼形態では雷を体表に纏うだけ)、僕はまさか勇者だったのではなかろうか!?


 そうとなれば、早い所この森を脱出して、世界を魔王の手から守ってやらねば!


 そんな気持ちを胸に秘め、ご機嫌に尻尾を振りつつ(ドラゴンローブに尻尾の為の穴を開けた)森を歩くのだった。


 ☆☆☆


 うーむ。お腹が空いた。

 ドラゴンを倒した平原……ドラゴン平原(勝手に命名)を出発してから二日間、獲物らしい獲物に出会ってない。その間口にしたのはリンゴの様な果物を少々と、ゴボウに似た植物の根だけだ。

 リンゴはともかく、ゴボウに似た植物を食べた後は例の如くお腹を壊してしまったので、結果的に余計にお腹が空いてしまった。……果物だけで我慢すれば良かった。


『やっぱりあのドラゴンの縄張りだからだな、獲物がいないのは……』


 辺りを見回し、落胆した気分のまま呟く。見えるのは森の木々ばかりである。僕の尻尾も主の気持ちを察して力なく垂れている。

 あぁ、骨でも良いから、何か口に入れるものが現れないかなぁ。


「ふむ。あの恐ろしいドラゴンの魔力が消えたので様子を見に来てみれば、なんとも珍しき白銀色の人狼と出会えるとは。しかも、ドラゴンに似た魔物の皮を被っておる。実に興味深い。これは天の思し召しか? ワシの研究意欲がふつふつと湧いてくるぞ」


 まさか……これをフラグと言うのか?


 空腹の僕の目の前に、何やら意味が分からない言葉を話す骨が現れた。いや、きっと魔物だろう。右手には大きな杖を持ち、その体はボロボロの大きなワンピース……ボロボロのローブを纏っている。

 杖を持つ手は骨だけであり、ローブのフードから見える顔は髑髏そのものである。魔物の証なのか、それとも魔力によるものか、窪んだ眼窩の奥には仄暗い紅い光が宿って見えた。


 そんな骨の魔物を目にして疑問に思う。筋肉も無いのにどうやって杖を持っているのか、と。


 僕の予想が間違いなければ、目の前の骨は恐らくリッチという魔物だろう。骨だけで杖を持てるのは、恐らくその強大な魔力の為せるものだと思われる。

 ちなみに、ラノベで培った知識の中でリッチとは、魔術や魔法の探究の為に自らの体をアンデッドとした存在であり、その姿が生前に近ければ近い程魔力が高く、より恐ろしい存在なのだとあった。

 その知識を引用すれば、目の前のリッチはリッチの中でも下の下だろう。だからだろうか、干からびた髑髏はどこか哀愁が漂っている様にも見える。


 それでも、ドラゴン以来の知的な魔物だ。礼儀正しく挨拶すれば色々と親切に教えてくれるかもしれない。誰かが言っていた。挨拶は仲良くなる為の最も簡単な方法だ、と。


 ならば、こう言葉にするのが正しいだろう。


「わふぅ、わふわふ……わぉおーん(どうも、はじめまして……ルウファって言います)」


 さぁ、どうだ?


「何を言っておるのか分からんが、珍しい素体だ。殺した後で直ぐに血を抜き、ワシの研究所で詳しく調べてやろう」


 あ……言葉が通じない事を忘れていた。

お読み下さり、ありがとうございます。

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