episode2ー契約
半年も空いて申し訳ない、少しずつ書いていきます、他の作品も
酷い気分だった、彼女との記憶があちこちにちらついて、その度に不快な気持ちが増していく。
世界の全てを拒絶したくなるような気持ちのなか、世界の全てから逃げるように布団を引きかぶり、いつしかそのまま眠っていた。
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寝起きは最悪だった、気分こそ多少マシになすったものの帰ってそのまま布団に入ったので全身が気持ち悪く、おまけに空腹でたまらなかった。
私服での登校を許可されているのを幸いと着ていたものを全て洗濯機に放り込み、頭から一気にシャワーを浴びる、寝汗と一緒に体にまとわりついた嫌な気持ちまでも流されていく気がして、少しだけ気分が上向いた。
頭を拭きながら壁に掛けられた時計を見やれば未だ午前5時30分、寝直す気も起きなかったのでまだ暗いベランダに布団を出して洗濯機のスイッチを入れる、簡単に朝食を作ってたまには弁当を持っていこうか。
簡単に今日の用意を済ませて家を出る、徒歩15分程の道のりはイヤホンと共に、今日は何を聞こうか。
◆◇◆◇◆◇
午前8時、教室に着くとまっすぐ自分の席へ、誰も話しかけては来ないし話しかけようとも思わない、目標は卒業1ヶ月で全員の記憶から消えること、コンセプトは静かに平凡に。
教師から何も言われない程度に授業を受け、午前の4コマをやり過ごす。こうした些細な事を意外と覚えていたりするものだから。
昼休みになるとさっさと自分の弁当を持って教室を出る、普段教室に居ないのだからいつもと違うことはしない方が良い、日頃誰かが座っているかも知れないから。
教室を出た後弁当片手にふらりとさ迷う、誰も居ない所となると……やっぱりあそこかな。
迷いない足取りで向かうのは『第五防音室』、職員室に鍵が無いことから『開かずの教室』などと言われているそうだがなんのことはない、昨年から俺が鍵を預かっており、1人で使っているだけのこと。
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「うん、普通」
もそもそと弁当を頬張りながら独りごちる、いくら気分が沈んでいようと多少の時間をおいて好みの料理を口にすれば多少は気分が上回ろうというもの、ここで何か起きればリバウンドよろしくさらに叩き落とされると…ころ……
「やっぱり居たネクロ君!探したよもうっ!」
やはりフラグだったかとため息をつき、かろうじて間に合った覚悟により心に致命傷を受けることだけは避ける、だがそれでも、なにかとてつもなくいやな予感がするのはなぜなのか……
「ねえネクロ君、君昨日すっごく上手だったよね!私とバンド組もうよ!」
「断る、俺はお前を知らないしバンドは組まない主義なんだ」
「即答!?ちょっと位考慮してくれたっていいじゃん、わたしこれでも結構人気あると思ってたんだけどなぁっ」
「知らん、帰れ、人気者なら人気者らしくお仲間とよろしくやってろ、俺に関わるな」
すげなく答えながらも食べ終わった弁当箱を手早く片付けていく、面倒事は視界に入れない、入れたくはない。
実際、その言葉を耳にするまではそのまま出ていくつもりだった。
「うーん、じゃあこうしようよ!私はネクロ君が楽器上手なの黙っててあげる、だからネクロ君は私とバンド組んで!」
それは最早脅迫に等しかった。