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神々のスターダスト  作者: フィルワーズ
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「道具の世界」エピローグ

 心地よい朝の陽気を全身に感じる。冬は終わり、そして、春に差しかかる頃だ。


 家から飛び出す一人の女性の姿を見る。玄関先には、ツーサイドアップの茶髪の少女が待っていた。

 栗毛色の長髪が、アネモネが動く度に纏まって自然に流れる。それに加えて、化粧をしている彼女は大人びて見えた。明るいピンク系のスカートを履いて家を出ていく。ナナシが言うには、これから大学に行くとのこと。天文学を勉強しているらしい。


 あたしみたいなロケットペンダントは、あのアネモネの首元には似合わないんだろうな。なんせボロボロだから。


 ナナシの首元に、あたしはいる。そして、ナナシは少し高い建物の屋根の上で、アネモネが家を出ていく姿をあたしと一緒に見ていた。


『ねぇ、イテムって神様はもう現れないのよね?』

 エニグマが現れて、人類が全滅した世界。ナナシの力でそれはなかったことになった。だけど、そうだとすると、イテムを倒したことにならないのではないかという素朴な疑問だった。


 ナナシは空を見上げながら答えた。

「イテムはボクが殺したです。もう二度と現れないように、殺し方を工夫したですよ。それが彼の望みでもありましたし」


 であれば、もうエニグマのような存在が出てきてアネモネ達をめちゃくちゃすることはなさそうだ。今はこのナナシの言葉を信じる他ない。

 何より、彼女は約束は破らないだろうから、そういう嘘はつかないと思うけど。


 ふともう一つ疑問が思い浮かぶ。

『……そういえば、どうしてナナシはお姉さんが未来にいるって知っているの?』

 ナナシのことは万能の神様だと思っている。だけど、お姉さんに会うための手段が未来に行くことではっきりしているのはなぜなんだろう。


 あー、と口からやる気が削がれるような声を出した後に、ナナシは話し始めた。

「……それは、ボクは完全な神様じゃないからですよ」

『はぁ?』

 素っ頓狂な言葉だ。


「ボクは半分なんです。ボクは運命を司る神の半分。もう半分はお姉様が持ってるです」

 運命を司る神、の半分。世界が辿っていた過去をひっくり返してるのに、これで半分だっていうの……。


「過去を一通り見ましたけど……お姉様はいませんでした。なら、いるのは未来しかないです」

 そう言われてみれば納得できるけど。思った以上に単純に理由だった。


 ナナシは立ち上がる。それに合わせてあたしの視点も高くなる。

「それじゃ、次の世界に行くですよ」

『……うん。大丈夫。アネモネはあたしがいなくても幸せだってことが分かったし、準備は出来ているわ』


 ちょっと寂しいけどね。


 ナナシはグレーの迷彩服のポケットから、時計のようなものを取り出す。知らない文字と、よく分からない針が色んな方向に伸びている。これは多分、ナナシの世界のモノなのだろう。


 その時計のようなものの指針をナナシが動かすと、目の前の空間に人一人が通れる程度の穴が開いた。

 色々な色が動き、色々な点が回り、色々な線が変わっていく。なんとも形容しがたい不思議な穴。無理に言うならば、宇宙にある銀河をめちゃくちゃに配置したようなトンネル。


「約束は守ってもらうですよ」

 ナナシが軽く笑って言う。

『……はいはい。あたしはもう願いを叶えてもらったわ。だから、その恩を返さないとね』


 実に都合が良い結果だ。こうなるなんて思わなかったけど。アネモネは生きているし、世界も滅びの運命からは遠ざかった。何より、夢を叶えようとしているアネモネの姿を見ることが出来たのは素直に嬉しかった。


 だけど、ナナシだけは都合の良い結果になっていない。

 だからあたしは。


「ナナシの願いを叶えるために協力するわ。どこまでも」


 神に願いを。ナナシの願いが叶いますように。

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