繰り返す世界と狂った科学者
誰もが普通に生活できる権利があり、その権利が守られる現実世界。「常識」と「ルール」があって、その檻の中でしか動けない退屈な世界。
そこで思い付いたのは「異世界へ行こう!」という考え。
今私が居るのは退屈な現実世界の中の、もっと退屈な刑務所の中。「人を殺してはいけない」というルールに背いて、そしてここにいる。
先程何やら格好良い服を着た人が来て「お前の死刑の日が決まった」とか言っていたのだが、気にすることも無い。だって、もうすぐ行けるのだから。常識の向こうの世界に。
ようやく檻から抜け出せるのだから、先程から胸の高鳴りが抑えられない。
「常識」と「ルール」に縛られない世界。これで何でも出来る。
ガチャンと言う音と共に私の手を縛っていた手錠が外れ、鉄格子の鍵も外れる。
久しぶりに房の外に出た。だけどまだ私を縛るものはある。
「うわああぁぁぁあああああああぁぁあ!!!」
「ギャアアアァァアアァァァァアァァア!!!」
気持ちいい。悲鳴が、血が。消えゆく魂を捕まえて、常識の向こうへ送るのが。
血塗れのナイフを持ってまた房に戻る。実は、看守達にバレないように常識の向こうの世界に行くためのコンソールを作っていたのだ。かなり大変だったので、失敗したら泣いてやる。
壁を作るひび割れたコンクリートに出来るだけ隠せるように、同じコンクリートで形を作って、コンソールを置く場所の壁と同じようにひびを入れたので、外からはきっと普通の壁のように見えているはずだ。だが部屋の中から見ると、しっかりと立体になっているため、どこにコンソールがあるのかはわかる。
私はコンソールに手を掛け、ゆっくりとそこに寝転がる。
そして期待に胸を預けて転移したのだが___________
「私だけ能力が無いんだけど!!!」