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前半戦

遅くなってしまった。

だが私は謝らない

反省はする、週一でできるなどと思い上がっていた事を

「プレイボー」

ここはグラウンドと言うよりはスタジアム。甲子園、高校球児の夢、それをモデルに作られたのがこの場所だ。

一回の表はこちらからの攻撃だ。俺は二番を任され、とりあえず当てるだけでも頑張ってこいと言われた。

しかし桃花からのコールはホームランときた、無茶を言う。

一番のバッターはよく見て四球になった。140キロ前後といったところか。いつものバッティングセンターで打ってる球と大体同じくらいか。変化球はまず打てないだろうし、狙うならストレートか?

そんな事を思いながら右打席に立つ。

「舐めた口しやがって」

「別に舐めたつもりはないですよ。ただ事実を述べた・・・

「それが舐めてるって言ってんだ、よ!」

相手の投手から放たれたボールは先ほどよりも早く、鋭く、そして重かった。

特に何も珍しいことがなかったかのようにストライクコールが鳴り、ボールはピッチャーの元に返される。

俺はバットを下げ軽く深呼吸した後再び構える。冗談じゃない。あんな球打てるか。しかし振らなければ当たらないのは分かりきってる事だ。

狙いは正確にはつけられない。二球目はバットが空を切り再びストライクコールが鳴る。

冗談じゃない。このまま三振して帰ってきては笑われ者だ。どうにかして当てなければ・・・

「次、ストレートで三振にしてやんよ」

「まだまだ、野球はツーストライクから粘るもんでしょ?」

内心かなり焦ってるが平静を演じつつバットを構え直す。漫画とかではここでファールボールを続けてその後ホームランを打つのが王道だっけか?しかし俺にそんな技術はない。

当てることすら厳しいんだから、まず当てる策を講じる。

相手のピッチャーの渾身のストレートを俺はバントで返した。

狙いはサード前、線沿いに流れてくるボールを何故かサードは取らず俺は図らずともセーフティーバントに成功した。

あの勢いのボールなら普通に取って最低でも送りバント程度にはなったはずだ。なんで取らなかったんだ?

「お兄、何やって・・・

「何やってんだぁ時之ぉ!!お前には男のプライドがねえのかぁ!?」

「プライドじゃ塁出れないでしょ」

「あのなぁ・・・よしルール追加だ。お前はホームラン以外は全部アウトだ。さっさと帰ってこい!」

「えぇ・・・」

理不尽なアウトに反論する気もなくし俺は渋々ベンチに戻っていった。

「なぁ凛樹、やっぱりバントはやめておいた方が良かったのか?」

「うーん、そもそもあの場面でバントすること自体がルール上あり得ないな。野球にはツーストライクからバントしてファールボールになったら三振扱いになるんだ」

「そんなルールがあったのか。知らなかったな」

「ま、知っておいて損はないよ。それと次は左で打ってみたらどうだ?見えてくるものが変わるかも知れないぞ?」

普段右打ちしている俺に左打ちを進めるのは一応俺が両利きである事を知っているからだ。

左打ちはやった事ないんだが、このまま右で打てる保証もない。打てる手は打っておくべきだろう。

三番の小波がライトにヒットを打ち、四番の凛樹が犠牲フライで一点を取ったものの続く五番バッターは凡打に打ち取られ一点でこの回は終わった。




「さて時之。守備なんだが無理せずとにかく後ろにボールを出さないように心がけてくれ。最悪フライはワンバンで拾ってもいい」

「いいのか?」

「いい。兎に角必要以上のミスをしない事。これが今の畤之の最善の手だ」

「・・・ああ。分かったよ凛樹」

凛樹からのアドバイスを貰い俺はライト方向へ向かう。

「おい!そっちはレフトだぞー?」

「・・・え?ああこっちがレフトか」

ライト方向だと思っていたのが実はレフトと訂正を受け今度は正しい位置についた。丁度凛樹の背中が見える場所だ。

まあ一番いいのは飛んでこないことなんだが敵チームの雰囲気から察するに明らかにこっちを狙って来そうだ。

その頃マウントにて・・・

「それでどれくらいで行く?」

「いつも通り、行けるか?」

天谷と小波が投球の力配分について話している。一点リードしているせいか、その顔には緊張は見られずリラックスしているように見える。

「いつも通りとはいかないかな〜?」

「・・・デビュー戦だ、いつも通りとは難しいものか。・・・気楽に行け」

「うん。そうだねー気楽にいこうかー」

天谷のテンションは特に代わり映えないように見える。小波も同様だ。小波は天谷が緊張してるかと思っていたがいらぬ心配だったようだ。

大きく振りかぶり今一球目が右腕から放たれる。手始めにストレートを放りストライクゾーンの再確認をする。ストライクゾーンギリギリを狙いその球は見事ストライクコールを審判に言わせてみせた。

天谷の投球はいつも通り行けないと言う割には、むしろいつもよりも球持ちが良く伸びもあった。小波は顔にこそ出ないが内心ガッツポーズをしていた。

ただ一つのストライクコールで場の雰囲気が変わり守備陣に一層気合が入った。彼一人を除いて。


「あー、絶対こっち狙ってるよ。来ませんように、来ませんように」

俺はとりあえず初球から打たれなかったことに安堵し首を軽く回す。遠目から見てる分には先程のブルペンの投球と変わらないように見える。俺がバントしてた球とそこまで変わらないように見えるがバッターにとっては違うものに見えていたのか。三球三振三連続と好調な滑り出しを見せ一回の守備は終わった。


そして二回裏・・・

「あー、入っちゃったか」

深いライトフライを追っていったと思いきや既にそこには壁しかなくボールはスタンドへと入っていった。二回のこちらの攻撃は特に何もなく終わり、相手の攻撃、四番打者にストレートを完璧に捉えられホームランという結果に終わる。

これでせっかくとった一点もパァだ。しかし悔しいという気持ち以上に見惚れていた。綺麗なホームランだった。

「あんなのを打たなきゃ認めてくれねぇのかな」

しかしこれで目標というのがハッキリした。打てるかどうかは別としてアレを再現すればいいんだ。

やれるのか、ではない。

やらなきゃこの試合に勝ったとしても真田先生は納得しないだろう、俺も納得しない。




その回の攻撃はズルズルと嫌なムードが続きホームラン含む6失点に終わる。

五点差という大きな失点以上にこちらのムードは重い。いつも明るい桃花も今は声をかけにくそうに見ている。

ここは俺が仕切り直したいところだ。

そして三回のこちらの攻撃に入る

「出番か」

ツーアウト取られた所で打順が回ってくる。俺は前言われた通り左に立ちバットの先をスタンドに向ける。所謂予告ホームランというやつだ。どうせホームラン以外はアウト扱いなんだ。

こんくらいの事しとかないとやっていけない。

相手投手は俺の行動に睨みを利かせストレートを放ってくる。

多少は目も慣れたのか前よりハッキリ見えたボールを俺はフルスイングする。

音を聞いた瞬間確信した。明らかに遠くに飛んだ音だ。ボールをよく確認もせず俺は一塁を周り二塁へと走る。しかし二塁を踏んだ辺りで俺は違和感を覚えた。

未だホームランと言われてない。ボールの位置を確認するとボールは高く舞い上がっただけで飛距離はほぼ出ていない。場所を確認してすぐに投手にフライを取られ、無慈悲のスリーアウトコールが出る。

相手守備陣からは少しばかり笑われる。俺もそれにつられ苦笑する。

今の俺は試合の笑い物だ。あれだけデカイ態度を示しておいて結果がこれとは最悪だ。

「時之・・・」

「凛樹、何も言うな。こういう時は笑い飛ばしてくれ。うん、頼むから」

「アッハハハハ!」

桃花が笑い飛ばしてくる。最早兄の尊厳など微塵もない。いや、もともとそんなないか。

「さ、みんな守備終わらして点取り返してこー!」

「しかし桃花、そう簡単には・・・

「なーに言ってんの?五点差あるなら五点取り返せばいいんだよ?あっちに出来てこっちに出来ない訳ないじゃない」

「そうか、そうだよな」

「そうだな。桃花ちゃんの言う通りだ。あっちに出来てこっちに出来ない通りはない。

後の一点は時之がやってくれるだろうし俺達は同点まで追いつく!その勢いで行くぞ!」

「もし重い空気になったらさっきの俺を思い出して笑い飛ばしてくれて構わない。寧ろ笑い飛ばして緊張をほぐしてくれ、俺の・・・いや自分達の実力を見せてレギュラー陣を見返してやろうぜ」

俺の発言に誰か始めかは分からないがベンチ内全員が笑いに溢れる。守備が終わった後の重い空気が嘘の様に消え、凛樹が号令をかける。

「さあ行こうか、試合はこれからだ!」

気合いを入れ直し全員が守備に着く。しかしバッターボックスに入ったのは意外な人物だった。





村田殿は只今ドグマの研究をしています。嘘です


超能力の事をアストラルって呼んでる世界で教員やってます。嘘です


国の極秘施設からの仕事をこなしてます。本当です


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