大企業には必ず裏がある。ここテストに出ないぞ
今回の話は全体的に説明会となります
後焼肉会はやりません
回転ドアを周り本社の中へと入る。
ここへ来るのは小学校の時の社会科見学以来か、会社の隣にはどう見ても一個人が持つような家ではない家、いわば豪邸が建っている。
一応実家ではあるがいた時間は一年もない。ここにいた時、俺は落ち着かず部屋の隅でガダガタ震えていたらしい。
誕生日プレゼントに普通の家が欲しいとか言ったら本当にくれたのは確か四つの頃だったか。
今でも落ち着かないが震えるほどではない。そもそも怯えていたのは・・・いや、思い出すのはよそう、もう過ぎた話だ。
正面の受付に話をつけロビーで姉さんを待つことにする。
「そういえば村田さん、後始末って何したんだ?」
「ちょっと隠蔽工作と人助けをしたっす。明日のニュースあたりには今回の事件でてるかもしれないっすね」
「それは隠蔽出来てるのか?」
「いやー流石に起きたことまでは無理っすね。でも本当に隠さなければならない事はやっておいたっすよ」
本当に隠さなければならない事、それは今から話されることなのだろう。世間に公表できない何か、その辺りも聞いておくか。
「で、人助けの方は?」
「スライムに襲われそうになった人を安全な場所に避難させて、その後起こしただけっすよ。今回の事件は人的被害や物的被害が無かったことが幸いっすね」
俺のたこ焼きは物的被害に含まれないのか・・・
「そうか、ところで村田さん。何も聞かずに350円くれないか?」
「いいっすよ」
「いいのか?」
「時之殿が困ってるなら手助けするっすよ。自分、忍者っすから」
そのセリフは今までの人生で何度も何回も聞いた。しかしこの人の忍びという概念は世間一般のそれと大きく離れてる。忍ぶ気はさらさらないようだ。
「待たせましたね、時之」
「そうでもないよ、姉さん」
村田さんとの会話を続けていた時、姉さんがエレベーターから降りてこちらに来た。
やり手のキャリアウーマンのようにしっかりとスーツ姿かと思いきや白のワンピースという私服だった。
「少し緊張してるみたいですね。大丈夫ですよ、これから行く場所は時之が思ってるほど凝り固まった場所ではありませんから」
「そうなのか?」
「ええ、どちらかといえば秘密基地・・・と言えば聞こえは良いですかね」
「秘密基地か・・・良いじゃないか」
秘密基地とは言わば男の浪漫である。そういう物を作る経験が無かっただけに今でも少し憧れている。
エレベーター内に入り2階、4階、11階、地下4階、地下8階の順番に押していく。更に上り下りを押す。すると足元に小さくカードを入れる場所が出てきた。
カードを入れるとエレベーターの中の照明光が弱くなり、上から小型カメラが飛び出て来た。
「管理者天本優佳里、及び社員村田を確認。不明一名、認証開始・・・天本時之を認証。通過を許可します」
電子音がエレベーター内に響く。映像認証までするとは結構厳重な警備だ。どうせなら指紋認証とか眼球認証とかもっとsfチックなものも期待してたんだがどうやらなさそうだ。
「少し揺れますよ」
ゴゴゴゴゴと震度3か4くらいの揺れが響き3秒後にピタッと止まる。
扉が開くとそこは特に何の変哲も無い事務所だった。
もっとこう・・・沢山のオペレーターがいる電話サービスの場所とか、可愛いマスコットロボットが迎えに来てくれるとかそんな感じなのを想像していたが、ここは地味だ。秘密基地というのは名ばかり、存在を秘匿されてるだけの場所だ。
机が6、7台とノートパソコン、書類の山、更にはブレイブ用のカードが散乱している。
そして部屋の奥の方に30後半くらいの男の人がソファで横たわっている。
座布団を枕代わりにし、お昼と思われる弁当も食べかけでいる。
だらしなく見える男を姉さんは肩を強く揺らす。
「室長、連れて来ましたよ?早急に起きてください」
室長と呼ばれた男は起きない。いや、眠っているのではなく寝てるフリをしてるようだ。
「あはは、いつも通りっすね」
「あんなのがここの長なのか?大丈夫なのか?」
「大丈夫っすよ。実際ここの実質的リーダーは優佳里様っす」
このような状況を見せられてあの男を威厳がある、しっかりしていると見るような人はいないだろう。
「こうなると彼女の帰りを待つしかないですね」
「誰なんだ?その彼女ってのは」
「それは・・・
「聞きたいっすか?時之殿も物好きのぉ」
「いや、すまん。今ので聞きたくなくなった」
村田さんの露骨な態度に呆れ俺はそれ以上踏み込むのをやめる。しかしそんな静止を無視するように村田さんは解説を始める。
「室長の娘、来海ちゃんっす。歳は時之殿より一つ下、つまりは今年で中3っすね。
こんな父親を反面教師にしてるっすから結構キツイ性格っす。
それと上からはち・・・
あ、おかえりっす。来海ちゃん」
「何がはち?だって?」
「いやぁ、今日は上から蜂が飛んできそうって話してたっす」
「そう。・・・潰されるのと刺されるの?どっちがいい?」
「どっちもお断りっすね、はっはっは」
村田さんが上手いようで下手な言い訳をかます。先程の「はち」という発言の続きはなんとなく察しはついた。
大方スリーサイズでも言おうとしたのだろう。服の上からではよく分からないがな。
来海という子は少し大きめの黄色いパーカーを羽織り、黒のショートパンツにニーソックスと動きやすそうな格好だ。
紺色の長い髪を白いリボンでツインテールになるよう纏めている。手にはスーパーの袋らしき物が二袋ほどある。
ご丁寧にチョコレートも入っているじゃないか・・・。
「ほら時之殿、挨拶、挨拶」
後ろから肩を叩かれ、思わず前に出る。一歩進んだ後彼女は二歩下がる。
「初めまして、天本時之です。とりあえずよろしく」
俺が握手をしようと手を出すが、彼女はそれに応じず素っ気ない態度をとる。
「城ヶ崎来海。・・・よろしく」
何か怒らせるような事をした覚えは無いのだが、村田さんが言っていたようにキツイ性格ってのはこういうことか。
どこかよそよそしいというか、冷たい、そんな印象を受けた。
彼女は荷物を置いた後、何故か鑑定するように俺の周りをくるくると回る。
2週ほどした後正面に周り言い放つ。
「ふーん、ま、精々中の上ってとこね」
「なんの話ですか?」
「別に、アンタには関係ないでしょ」
関係ないと言いながらその行動は如何なものかと、捨て台詞のように城ヶ崎さんは父親の方に向かった。
「すみません来海さん、いつものをお願いします」
「スゥゥ、起きろ!このクソ親父!」
言い放つと同時に父親の頬を往復ビンタする。本気でやってるわけではなく当たる直前に力を緩めているようだ。
勢いは強く、当たりは弱くを繰り返す。
強弱をあんなに早く切り替えられるとはそうそう出来る芸当ではない。手慣れてるのが見て取れた。
「目ぇ覚めた?」
「んふ、来海ちゃんのお陰でよーく覚めたよ」
父親は起きる、無造作に伸びた髪と髭がトレードマークとなり青色のジャージ姿も相待ってこんな場所とは不相応に見えた。
ちゃんと手入れすればダンディという言葉が似合いそうな顔つきをしてるのに勿体ない。
「久しぶりだなあ、時之君」
「・・・誰ですか?俺と貴方は初対面の筈ですが」
ガクッと男は体勢を崩す。久しぶりと言われるということはそれなりに時間が経ってから言われるものだ。しかしだらしなさの塊の様なこの男は過去の記憶にない。
「時之、この人は・・・
「いいよ優佳里ちゃん。本人が忘れてるならそれなりの対応するよ。
・・・初めまして、俺がラグナルク裏組織の対ヘイルリーム室室長の城ヶ崎士だ」
「へい・・・何?」
「ヘイルリーム、それを話すには少々長くなります。よく聞いてくださいね」
「時之はパラレルワールドを信じますか?」
「その口ぶり、もうあるって言ってるようなもんじゃねえか。まあ、無くはないと思うよ」
「なるほど、ではあると確証してるわけではないのですね」
「あるかないか分からない。そう言う考えですよ、俺は」
「 成る程、つまりは無知である。そういうことですね。
過去の偉人にこんな言葉があります。
無知は罪なり
知は空虚なり
英知を持つもの英雄なり
知らなければ何も出来ない
知っていてもやらなければ意味はない
やってみて初めて英雄となれる。
しかし、私はここに一つ付け足したいと思います。
無知は罪では無く、無知であり続けることこそが本当の罪だと。
知らないままにしておくこと
見て見ぬフリを続けること
その場で満足すること
私は、進化を止めることを良しとしません。
人は進み続けるだけでいい。
その過程の栄光、没落、甲斐、後悔、それらをただ認めて次の糧にすれば良い。
それこそが私たち人間に、人間にしか出来ない事だと私は思います」
姉さんの言ってることは正直全ては理解できない。
しかしひとつだけ分かることがある。
人生とは立ち止まった時点で意味がなくなってしまうという事だ。
一歩づつでもゆっくりでも良い。
ただ進み続けることが生きてるって事なんだ。
「さて、哲学的な話はここで切って本題に入りましょう。来海ちゃん、お願いします」
頷く城ヶ崎さんは左手を払うと部屋がまるでプラネタリウムの映像化になるように景色が変わる。
全体的に荒廃した都市部が映され、無造作に生えた草木、朽ちかけの機械、白骨化した何らかの動物の骨、さまざまな物が無造作に映し出されている。
「これは・・・」
「ヘイルリーム、それは私達の世界とは違う別の世界を紡ぐ為の世界。
学園で例えるならば私達の世界を一組とするならここは二組、三組とを繋ぐ廊下の役割を担っている世界です」
「俺たちの仕事はそのヘイルリーム内に迷い込んだ人間、生物、植物・・・まあ色々と回収、もしくは撃退するのがここの役目ってわけだ」
「あのスライム退治もその一環か?」
「そうっすね。まあちょっとヘマしたっすけど」
村田さんがヘマをするとは珍しい事だ。あの人はおとぼけてるように見えて非常に状況をよく見ている。まあ、人間誰だってミスの一つや二つはある。今回はたまたまそれが大ごとになりかけたのだろう。
「その件については本来ならクビもあり得ましたが、時之の早急な対応で難なく終わりました。
なので今回は減給程度に留めておきましょう」
「そうっすか、そうっすよね。時之殿この恩は今日くらいは覚えておくっす」
そこは一生ではないのかと声に出さずツッコミつつ話の続きを聞く。
「あのスライム等の敵対生物を私達はグルーと呼んでいます。
そしてそれ以外を来訪者と呼んでいます。
彼らと接触しグルーから守るのも私達の仕事です」
「・・・正直ピンと来ませんね。何故この事を世間に公表しないんですか?」
「理由は三つある。
一つ、今日のような事件を頻発させっと住民にも被害が出る可能性がある。このグルーは放っておくと何かの拍子で俺たちの世界に来る。そうなる前に叩いておきたいって寸断だ。
出来れば不安にさせたくないんだよ。
二つ、来訪者からは色々と未知の情報が聞ける。
この情報を独占し、他社の製品よりも新次元の物を生み出すことで利益を出す。
ま、金儲けの為さ。
三つ、
・・・これは俺個人の思いだ。
俺のように興味本位でヘイルリームに行かないようにするためだ。
俺は運良く帰還できたが他の人がそうなるとは限らない。
それに、俺がついたそこは碌でもねぇところだった」
「室長は行ったことがあるんですか?別の世界ってものに?」
「ああ、彼処は元いた世界とはそこまで文明の差こそ無かったが魔法使いが忌み嫌われていてな、魔法使いってだけで罪にしてきやがった。
こちとら何も悪いことしてないのにな」
「ちょっと考えられないですね。そんな考え」
「ここの仕事にこれ以上関わるならそんな常識捨てとけ。
ヘイルリームに決まりあらずってね。何でもアリだよ」
大体の事情は飲み込めた。
ラグナルクが世界の企業トップに立ち続けていたいられたのは、ここのお陰もあるってことだ。
実のところ余り俺はラグナルクの事を知ってない。少なくともこんな裏事情は知らなくて当然だ。
「しかし来訪者ねぇ、どんな人が今まで来たんだ?」
「あたしよ」
「え?」
「だからあたしだって、二度も言わせないでよ」
城ヶ崎さんが来訪者?どういう事だ?来海さんと室長はただの親子ってわけじゃあ無さそうだな。
「詳しく聞かせてもらえますか」
「聞きたい?あんまりいい話じゃあないわよ」
「じゃあ聞きません」
「っ、聞かないの!?」
「言いたくなさそうな顔ですから。それにいい話ではないのでしょう?」
「・・・ムカついた。アンタあたしに興味ないの!?」
「ええ・・・?」
何故こう怒られているのか分からなかった。
言いたくないのか、それとも聞かせたいのか分かりにくい人だ。正直苦手かもしれない。
こういう時は素直にぶつかるのがいいだろう。
「すみません、俺が何か不手際をしたようで」
「はあ?分からないのに謝ってんの?馬鹿みたい」
「馬鹿みたいじゃなくて馬鹿っすよ。時之殿は」
「おい、仮にも主人に言う台詞かそれ?」
「はっはっはっ、自分忍者っすから」
村田さんの忍者感は相変わらずよく分からん。しかし何故か許してしまえるのがこの人の良さなんだろう。
「二人とも馬鹿よ」
馬鹿か、それが城ヶ崎さんの本音であることくらいは流石に分かる。俺はその評価を素直に受け止めるだけだ。
「・・・怒らないの?」
「怒る?何故だ?」
「アンタ馬鹿って言われてるのよ?普通は怒るでしょ」
「そうなのか、すまない、そんな事も分からないんだ」
城ヶ崎さんは怒り疲れ呆れている。
買い物袋から柚子の和菓子を取り出しかぶりつく。
怒りを食べ物で発散させるのは余り宜しくない。
そう言う時の食べ物の味は本来の美味しさを味わえないものだ。
「あ、あの城ヶ崎さん?」
「来海」
「え?」
「さっきから硬いの、やめてくれない?アンタの方が年上なんだから敬語とかおかしいでしょ」
「・・・そうか、では改めてよろしくなじょ・・・
俺が名前を言いかけた時姉さんが肩を叩く。そして耳元で囁いた後部屋を出た。
「来海ちゃん」
「なっ、いきなりそんな呼び方・・・」
「嫌だったか?」
姉さんから名前を呼ぶように言われたがあれはどういう意味か真意は掴めないが
おそらくはフレンドリーに接しろという意味なのだろう。
「べ、別に浮かれてなんかないから」
表情からは少し照れてる様子が見て取れる。名前で呼ばれるのに慣れてない・・・訳ではないか。
村田さんと俺との態度ではが明らかに違う。何かしらの心残りがあるのだろう。
「浮かれてない・・・ねぇ。そういうことにしておくよ」
「だから浮かれてなんかないってば!もういい!あたし部屋に戻る!」
そう言って来海ちゃんは自分が入ってきた部屋の扉を出ていった。
この事務所には俺たちが入ってきたエレベーターからの入り口と来海ちゃんが帰ってきた奥の方にある扉の二種類がある。
あちらは外と繋がってるのか?
そもそもここは何階だ?地下?それとも・・・
「どうしたっすか?」
「いや、ここはどういう空間なんだ?エレベーターが揺れて着いたのがここだからな。ここは地下か?」
「成る程、外出てみろよ。見たほうが早い」
室長の言葉に従い俺は奥の扉を開く。道は人二人が並んで通るのが精一杯で狭い。一本道の通路にはトイレと資料室の様な部屋。それと謎の大型機械がぽつんと一つ、・・・来海ちゃんの部屋が見当たらないな。別に入りたいって訳ではないが少し気になるな。
「この扉の先がこの世界の真実っすよ。覚悟はいいっすか?」
村田さんは不気味な笑みを浮かべながら扉を開ける。何か得体の知れないものが来るかと思ったが大したもんじゃなかった。
「なんだただのヘイルリームか」
今までの話を聞いていて合理的に考えればあの振動は大方俺たちの世界からヘイルリームに移動した時のものだろう。
先程見た光景とほぼ同じものが目の前に広がっている。
どこか寂しげな空気を醸し出すこの空間は終わりの始まり・・・
「時之、渡しておきます」
後ろから姉さんから声を掛けられ渡された物は対ヘイルリーム室会員証だった。
「姉さん、俺やるって言ってないんだけど」
「凛樹から聞きましたよ。今宵の食事代はどうするのですか?」
「くっ・・・まあそれは」
「いいではありませんか。割のいい仕事だと思ってやって下さいね」
「・・・はい」
こうして俺は焼肉代を肩に対ヘイルリーム室下っ端として雇われることになった。
時之「何でこんなタレを肉にかける!?これじゃあ肉本来の美味しさが失われて楽しめなくなる!」
真田「塩派は通ぶる事しか考えていないよなぁ!だからタレで食べると宣言したぁ!」
時之「そうやってアンタは全ての塩派を見下すのか!?先生ぇ!」
続かない
今回出てきた城ヶ崎親子にはモデルがいます。
そのモデルは最近出てきた学園モノ、二人で一人のKMNライダーの登場人物です




