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凄えよミカは

「やれやれ、ギリギリっすね時之殿」

「村田さん!」

スライムの動きを止めたのは一本のナイフだった。

すぐ横を通り過ぎたナイフは貫通し、岩場の間に突き刺さる。その先にはスライムの影があった。

「影縫いの術、成功っすね。後はこれをこうして・・・ほいっと」

村田さんはこちらに来て手に無色透明なカードを手にし、カードに何かしらの操作を行う。すると強力な掃除機のようになったカードに小さくなったスライムは吸い込まれカードが色づいていく。スライムの写真が映されたカードを静かにしまい込む。

「時之殿、色々と聞きたいことがあるかもしれないと思うっすが、あえて言っとくっす。時之殿には関係ない事っす、忘れてください」

先に釘を刺される。しかしここで引けるほど臆病ではない。

「村田さん、俺がこんな状況で引けない性格なのは分かってるだろ?それに、一歩間違えば顔がぐしゃぐしゃになっていたかもしれないんだ。関係なくはないだろ?」

「だからこそ言ってるっすよ?これ以上関わるなって」

村田さんの声はいつもの冗長的なものではなく真剣なものだ。

「でも、時之殿の言い分にも一理あるっすね」

「話してくれるか?」

「この事なら自分よりも優佳里殿の方が詳しいっすよ」

「姉さんが?」

意外な人物を出される。姉さんは俺と同じか学生で他のことをしてる様子は無かったはずだ。それに生徒会にも所属していて雑務等にも追われている身だ。時間的にも他のことやれる身ではないと思えるのだが・・・

「色々と知らないところでやってるっすよ、自分も、優佳里殿も」

俺の知らない二人の秘密。村田さんの言い分では知ってしまえば今日みたいな危険と隣り合わせになるのだろう。だが俺は好奇心の方が勝り、ただ知りたくなってしまった。

「詳しく聞くなら本社の方に来るっす。自分も同行するっすよ」

「分かった。すぐにでも・・・

その時腹の虫が鳴る。間の悪い音は緊張感を台無しにした。

「飯を食おう。腹が減っては何とやらだ」

「そうっすね。きっと兄の事も待ってる事っす」





「お兄ちゃん、大丈夫?」

「平気平気、何の問題もなくやっつけてきたぜ」

「いやー凄かったっす。時之殿の魔法、まさに大河の如く勝利だったっす」

村田さんが空気を呼んでくれて気の効いたことを言ってくれる。景気良く見栄を張ったがそう上手くはいかなかった。

「でも左手に傷が」

指摘され左手を見てみると薬指に軽い切り傷があった。血も殆ど出てないような軽い傷で気づかなかった。

「ああ、これくらい放っといても・・・

「癒しの風よ、吹けい、ザジレーニィヴィエーチル」

俺が拒否する前に既に術を発動する。切り傷はみるみると治癒され消えていく。

「別にいいのに」

「いいの、私がしたいんだから」

そう言って治癒を続ける。柔らかな手から感じる暖かさ、実家のような安心感を感じる。違う言い方なら1日断食した後の食事、もしくは凍えた身体に炬燵と言ったところか。

「はい終わり。傷の具合はどう?」

「元通りいや、寧ろそれ以上かな。ありがとな」

「どういたしまして、さ、帰ろ」

「あーー自分ちょっと後始末あるから後から戻るっす」

村田さんはそう言ってスライムが現れたであろう路地裏へと向かった。

「時之殿、本社で」

「ああ」

すれ違いざまでアイコンタクトを取りつつ約束を取り付ける。

後始末と言ったか、大方スライムの件だろう。今俺が出来ることは何もない。ただ飽くなき欲望を満たすのみだ。




「おかえりなさいませ。ご主人様、お嬢様」

迎えに来てくれたのはミカさんだった。姉さんの姿はない。

「ただいま、姉さんは?」

「優佳里様は只今本社に外出中です。先程帰宅するとの連絡がありましたので、お昼が仕上がった辺りには帰宅するでしょう」

「そうか・・・姉さんが何してるか、教えてくれないか?」

「その件は本人に聞いた方がよろしいでしょう。スライムとの戦闘も行なってお疲れでしょう?」

「何で知ってるんだ?ミカさん」

「知りたいですか?では教えましょう。ご主人様と桃花様の制服には合計で22の盗撮機と32の盗聴器を仕組んでますからね。全てお見通しです」

「・・・マジで?」

「冗談です、流石にそんな大量にはつけてませんよ」

「何だよ・・・ん?って事はあるにはあるのか」

「冗談です、制服には一つもついてませんよ」

「何だよ・・・ってじゃあどこにあるんだ?」

「聞きたいですか?手のひらの親指と人差し指の間のicチップが全てを教えてくれました」

「なっ!?そんなものがいつの間に」

俺は焦り手を何度も押し確認する。しかしそれらしいものはなかった。

「ふふ、冗談ですよ、秘密です

よ」

これ以上踏み飲むのも野暮、というかただ煽られてるだけな気がした。

「ところでお昼なのですがパスタにしようと思っています。味付けにお好みはありますか?」

「ぺぺ」

「カルボ」

「「ん?」」


ペペロンチーノとカルボナーラの抗争が今ここに幕を開けた。

「桃花、ここはペペロンチーノの領土だ。カルボナーラは今は控えろ」

「お兄はペペに騙されてるんだよ?カルボの方が絶対美味しいって」

「たとえカルボといえど、ぺぺの乳化したあの極上オイルには敵わない」

「卵とチーズの香ばしさに勝てると思うの?お兄は?」

「くっ・・・カルボめ、強力な手札を使ってきたじゃないか。だが・・・

「そこまでにしなさい。これ以上続けるようなら作りませんよ?」

ミカさんに釘を刺され、二人で謝る。

確かにカルボも悪くない。だが今はぺぺの気分だった。食事に関してはどんな状況下であろうと譲る気持ちはない。

まあ相手が腹ペコで倒れそうというと状況下なら話は別だが、

腹が減っては何とやら、腹空かしてる人を見るとこっちまで減る気分になる。そういうのは見たくはない。


少し時間を待ち、出てきたのはペペロンチーノとカルボナーラの複合料理だった。

「お二人のご要望に合わせた料理。ぺぺたま、御賞味下さい」

一口目は正直不安だった。しかし口にくわえた途端にくる衝撃は美味しいという一言だけだ。

「何だよ、結構美味しいじゃないか」

二口三口と頬張る。味わうごとに素材の良さが口の中に中に広がる。クロスされたぺぺはカルボと双方の良さを引き出し新しい料理の扉を俺に開かせた。

そのまま俺はぺぺたまを平らげた。

「お口に合いましたか?」

「ああ、こんな料理もありなんだな。ありがとミカさん」

「お粗末様でした」

「うんうん。ご馳走さま」

満腹感を味わい、ソファに寄りかかり面白くもないテレビをつける。こうダラダラと食休みするのも悪くない。

・・・何か忘れてるような。そう思った矢先姉さんから電話が来る。

「取り敢えず本社に来なさい。話は村田さんから伺っています」

姉さんが帰ってこなかったのはその方が都合がいいのか、はたまた会社の方じゃないとできないのか。

ここからだと車でおよそ15分程度、ラグナルク本社はこの街のシンボル的存在だ。日本、世界からして見ても建物の大きさはトップクラスのものだ。

ここからでもてっぺんあたりは霞んで見える。改めて俺の家族は凄い人だと思った。




軽く支度を整えて村田さんが乗るオートバイに跨る。

「いつもこんな方法ですまないな」

「いえいえ、昔っからの付き合いっすから。もう慣れたっすよ。・・・まだ乗れないっすか?」

「ああ、俺は自分が思ってる以上に車に恐怖してるのかもな。・・・辛気臭くなったな、さっさと行こう」

「了解っす、一応安全運転で行くっすよ」

エンジンをかけアクセルを回していく。このオートバイ自体は村田さんの私物で色々と改造が施されている。市販のものとは加速も最高速も桁違いだ。

・・・着く前にこれまでの事件を少し振り返って見るか。


「ブレイブについて」

blowup

reign

effectively

boost

通称ブレイブ

ラグナルクが開発した世界統治の為に効率的に人の身体能力を向上させる為作られたシステム。

爆発的に普及した為blowupが後に付けられた。


元々は魔法を犯罪目的に使うもの達の対抗力として軍事、警備目的で作られたシステム。

仕組みとしては大気中にある魔法の素マナをスキャナーがダ○ソンの様に掻き集め、それを服を着るように纏うものだ。


本来マナは厳しい修行を得て自分の中で少しづつ操れるものだが、これはバリアのように貼るものなので下手な話どんな馬鹿でも魔法が使える代物だ。


効力は身体能力向上、魔法術の感覚拡大、更に自らの魂を具現化した武器「レイブ」を出す事が出来る。


カードキーは個人認証用で厳しい審査を受け、国と企業の二段構えで配布されるものだ。これがなければ使用もできず、また使用中は行動が監視されている。


仮に犯罪目的でブレイブを使用しようとすれば緊急停止及び拘束魔法として金縛りがかかるらしい。


何故こんな物を俺が持ってるのかというと時代の流れか、これを娯楽に使い、金儲けしようとした組織が山ほどいたからだ。


ブレイブを使用した総合格闘技「ブレイブソウル」

数十年前に開始されたその催しは元々はより良い人物育成の為の軍事訓練だった。


他者より強く、他者より先へ、他者より上へ、人が持つ闘争本能は食事によく似ている。

(何言ってるっすか時之殿?)


今やスポーツ感覚で行われるブレイブソウルは全国大会も開催されるほどの人気がある。

今日使ったのは競技用の物でリミッターがかけられてる。



「スライムについて」

見たところなんでも溶かすってわけではなく特定の物を選んで溶かし吸収する。人のもん食って荒らすとは食い意地が悪い。

なんか他人?の気がしなくもないがとにかく厄介な相手だったことに変わりはない。


「姉さんについて」

姉さんはここ一年くらい前から本社の方によく行くようになっていた。

大方その頃から色々と事件に関与してるのだろう。兎に角今は情報が足らなすぎる。色々と聞きたいものだ。

村田さんやミカさんの口ぶりからすると少なくとも上の立場にいることは推測できる。




「着いたっすよ時之殿」

今ならまだ引き返せるかもしれない。しかしその扉が危険なものだと分かっていても、開かずにはいられなかった。


ぺぺたまは実際美味しいので一度食べて見るといいっす

なんか寝ぼけながら書いてたから色々と文章がおかしい気もするが、割とデフォだから

あとひと段落したら三ヶ月くらい休んで別サイトで2次創作作品をやる予定。

タイトル候補に「我ながらヤバイ扉開けちゃうかな」や「ミートソース君の憂鬱」などがあったがどちらも意味不明なので単純にこうした

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