There is no rice to eat to you
「終わった終わった、帰るか」
借りていたユニフォームは先生に返し制服に着替え直した。
あの風が桃花の魔法だと気付いていたのは俺と凛樹と先生だが、凛樹はともかく先生までもが分かってて不正を見逃した。
下手にツッコミを入れて自体をややこしくしたくなかったのか、それともこれを貸しにするつもりか。その答えは凛樹から伝えられた。
「残念なお知らせだ、時之にとってはな。お前が今回の試合の礼として野球部みんなに夕飯奢ってくれると言っていた様に先生が話してたぞ?」
「は?」
状況が理解できなかった。俺が全員分奢る?あの人数?推定でも50近くいるあの人達全員?
「待ってくれ、何で俺が奢るかの様に言わされてんだ?」
「そりゃあ不正黙認の為だろ?しかもホームラン打ったことで裏の攻撃無しとかいう暴挙じみた事も言い出したからな。・・・心配すんな、俺も少しばかり出す。まぁ、自分の分くらいだけどな」
「・・・はぁ、姉さんから借りるかな・・・」
深い溜息をつき今宵の対策を考え抜いた結果それくらいの答えしか出なかった。
「ま、どうにかなるなら俺の首も安泰だな」
「首?」
「いや、こっちの話だ。それよりそろそろお昼の時間だ」
時間を確認すると11時50分。お昼にはちょっと早いが今の俺はよく動き腹を空かせていた。家に帰る前に少し軽食を取るのも良いだろう。
「凛樹、プリーズ」
「NO.There is no rice to eat to you」
「え、何て?」
「上げられる飯は無いって言ったの。これくらい分かれ」
「すまない。英語は苦手なんだ
」
「だとしてもこれくらいは分かれよ」
「善処する、善処するよ・・・」
今はとにかく腹が減った。買い食いは別に禁止されていないが今夜の事を考えるとやめておきたい。しかし我慢しすぎも問題だ。本能に従うのは悪いことじゃない。
外に出て待たせていた桃花と合流する。少しそわそわした雰囲気を醸し出しつつも笑顔で迎えてくれた。
「あ、お兄ちゃん、お疲れ様」
「ああ本当疲れたよ・・・てか疲れるよ・・・なんか食ってから帰るぞ」
少し早足になり校門を抜ける。特にこれといって食べたいものがあるわけではない。しかしできることならうまいもの食いたいものだ。
「なんか食いたいもんあるか?」
「ううん、ないよ」
桃花の態度がどことなくよそよそしい。試合で余計なことをして俺に迷惑だと思われているのだろうか?
「そうか。試合のことを気にしてるなら気にするな。俺は気にしていない」
「ふぇ?」
「あれは俺の為にやってくれたんだろ?違うか?」
「まぁ違くはないけど・・・」
「ありがとな」
俺は礼として頭を撫でてやる。しかしどこか不満気な顔だ。
「桃花?」
「お兄、撫でられるのは嬉しいんだけど、髪崩れるから・・・」
「ん、ああすまない」
形だけでも謝罪する。実際桃花は怒ってはいないだろう。やめた後の顔を見返すと物足りなさそうにも見えた。どちらかといえば照れ隠しの部分もあったのだろう。可愛いな、うん。
そんなことを考えつつもやや自宅から遠回りするようなルートで商店街に着く。この街は企業城下町だ。どの企業っかて言うのは当然・・・うちの会社だ。
「はいよ、たこ焼き一人前ね」
「一つ多いようだが?」
「おまけだよ、桃花ちゃんのね」
そう言ってたこ焼き屋のおじさんは串を二人分渡してきた。
「そっか、ありが・・・
「はいあーん」
俺が礼を言う前に食い気味に食べさせようとしてきた。口元近くに持ってこられたたこ焼きは触れていなくとも出来立て特有の熱気を帯びていた。このまま食べてしまいたい気もあるが俺は恥ずかしさから一度は断った。
しかし桃花の上目遣いにあぐね、呆れつつもたこ焼きを頬張った。作りたてのたこ焼きは舌で転がすのは厳しく、噛みながら冷ましつつよく噛んでいくのが一番いい。
「いや〜お兄をからかうのは楽しいなあ〜」
「あっはは、お二人とも相変わらず仲良いね〜」
「ん・・・別に普通でしょ」
「いやいやお二人くらい仲良い兄妹なんて少ないよ。少なくともおっちゃんはそう思うよ」
「そう言うもんか?」
「まぁ仲良いってことはいいことよ」
そう会話を続けつつ半分ほど食べたところで桃花の携帯が鳴る。
「もしもし?凛ちゃん、うんうん。分かったじゃあ午後にね〜」
「今のは凛ちゃんからか」
「うん、勉強教えて欲しいんだって」
月村凛菜、凛樹の妹で今は小学校に通っている。凛樹とは違い
どちらかといえば人に近い容姿を持った獣人だ。耳でも外れれば人と大差ない。凛樹とは年も離れてることもあって俺達ほどではないが兄妹仲は良好だ。
「そーいやいいのかい?天下の大企業、ラグナルクの御曹司が護衛も付けずこんなとこぶらついてて」
「いーのいーの、少なくともこの辺りで俺を敵に回すような奴は居ねーよ。もしいるならそいつはよっぽどの自信家かただの馬鹿だ」
大企業ラグナルク。
過去起きた戦争を終結に導いた者達が起こした企業だ。そのポリシーは「止まらない向上心と安心の生活」の二つだ。世界の三割程度の金はゆうに動かせ、この街はおろか世界で見てもトップクラスの企業だ。
進化し続ける体裁と良質な物、サービスはラグナルクのモットーであり存在意義でもある。
俺はそんな大企業の息子として恥じないよう努力は続けてきたつもりだ。尤も俺自身は金持ち特有の無駄に高いプライドとかは持ち合わせる気はなく、いわゆるボンボンじゃない。
「あと御曹司とか言うのもあんまり好きじゃないんだ。やめてくれ」
「んぅ、そうかいじゃあ時之ちゃんって呼ばせてもらうぜ」
「えぇ・・・まぁいいか」
男にちゃん付けされるのもあまり好きじゃなかったが先程よりはいいのでそのまま通した。
たこ焼きに再び手をかけようとしたその時だった。
突如別の道の路地裏から悲鳴が聞こえた。しかしその悲鳴はすぐに消え、路地裏から現れたのは五メートル程の大きさのスライムだった。
「なんだありゃ?」
俺は目の前の出来事に対してそれくらいしか言えなかった。
それと、口では説明しようがない違和感を感じた。その感覚は閉鎖感?に近いものだ。本能的にコイツは危険だと知らせた。
俺はそのスライムをよく観察する。スライムといえばゲームとかでいう雑魚キャラの部類だ。
現実で自我を持って動くわけがない、そう思っていた俺の考えはあっさり裏切られた。明確にこちらを狙って動いてきた。
しかもその動きは大きさに似合わず早く俺達は下がるしかなかった。たこ焼き屋のおじさんと商店街にいた他の人達はスライムを見て一目散に逃げていった。
下がった俺達を追いかけ来ると思いきやスライムは俺がベンチに残していたたこ焼きを飲み込んだ。
「俺の・・・たこ焼き・・・」
人の食べ物を勝手に食うとは許せない。
「桃花、下がってろ。こいつは俺がやる」
「う、うん。気をつけてね」
たこ焼きに夢中になっていたスライムを前にする。
制服の胸ポケットからカードスキャナーとカードケースを取り
ケースから一枚取りだす。
スキャナーにカードを差し込み持っていた右腕を掲げる。
「ブレイブ!」
俺の叫び声で辺りが炎に包まれる。炎の渦は演出状のものではあるが俺の意思である程度コントロールできる。
カードから放たれる光が俺の体に張り付くように包み込み、服装が制服から赤と白を基調とした戦闘用の服に変わる。所謂変身ってやつだ。
体の所々にプロテクターがつけられ、炎をイメージしたチェスターコートを身に纏う。
「火の二式、フラミィボール!」
広げた右手からソフトボール程の大きさの火球を3発放つ。目標は勿論食い物泥棒のスライムだ。食うのに夢中になっていたスライムはこちらの事など気にする様子もなく火球にモロに当たる。
一部を燃やす事に成功したが怯んだ様子はない。だがこちらに注意を向ける事には成功し、此方へと襲いかかって来る。火球を他の物に当たらないよう注意しつつ放っては逃げ、放っては逃げを繰り返し商店街から近くの河川敷まで誘導する。
「そうだ、付いて来い!俺はここだ!」
奴に耳が有るかは分からないが声で挑発していく。途中追って来る間手を伸ばすようにスライムの一部分が伸び、こんな時間にもかかわらず置いてあったゴミ袋を丸呑みにしていく。悪食か、それとも雑食か今の俺には関係ない事だがあのスライムに取り込まれればタダでは済まなそうだ。ゴミ袋を取り込み消化するスライムは火球で抉られた部分を補うように体積を増やす。
確か村田さんがやってた携帯の恋愛ゲームではスライムってのは服だけを溶かす存在だったが、こいつは服だけじゃ済みそうにない。
そんな思考を運ばせながらも河川敷へと着く。ここならば他の物を気をつける必要はない。
「そろそろ終わらせよう」
意識を集中させ魔法の素となるマナを収束させる。両腕を軽く広げ周りに炎の渦が舞う。
それははたから見れば小さい火災旋風にも見えているかもしれない。しかし再生するのであればこのくらいは必要経費だ。
「チリ一つ残らず燃え尽きろ!
ブラァーウウェイト!」
酸素が十分に混じった青い炎が六方からスライムを包み込む。竜巻の回転と炎の熱気に徐々に溶けていく。
燃える。
消える。
氷とは違うように綺麗とは行かないがスライム特有のベタベタした感じが消えるまで炎の維持は続けた。
「・・・終わったか」
消え去ったのを確認し変身を解く。魔法を使うのは基本的に大気中に存在するマナ。これを使って発動させる。
感覚的には充電式掃除機みたいに吸い取って、ゴミ箱に勢いよく捨てるような感覚だ。
掃除機の充電とは違うが、とにかく体力と気力を使う。たこ焼きを食っていなければ最後まで持たなかっただろう。
さて、帰・・・ろうとしたその時だった。水の中に身を潜ませていたスライムの一部が俺の首筋を狙ってきた。その大きさはせいぜい人の人差し指程度だが少しでも生き残っていれば吸収して大きくなれるコイツには大した問題ではない。
「しまっ・・・」
背後から迫られた俺は多少の被害を覚悟した。バランスを崩し背中から倒れる。
スライムと首筋、その距離僅か20センチ。
だがスライムはその場で宙に止まった。
村田殿コーナー
次回はこの小説の支柱となるものの説明会と用語解説が主になりそうっす
あ、グラハム復活おめでとうっす
(これでまた中村氏のネタが増えるな)
今更ナイツ&マジック見たけど中々面白かったので作者の人達もああいうサブキャラも輝けるストーリーを目指しましょう
結局多少ストーリーが雑でもキャラに魅力があれば多少は面白みが出ると思うっす
どちらも駄目ではこの界隈は生きていけても何放たれた時悪評を受けるっす
そうならないように自分も忍者として頑張っていくつもりっす




