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異世界に持ち込んだのは幻想生物の肉体だった件。  作者: 青髭
第一章【異世界転生者達】
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はじまりの日 3

 そして、俺は四歳になった。

 言葉も喋れるし走って掴んで遊ぶこともできるようになった。

 近所の他の子供達と既に遊び尽くす毎日だった。

 ここには学校は無いがアカーシャがある程度の勉強を、リアドが剣術や体術を教えてくれている。

 もう少し成長して七、八歳ぐらいになったらどうやら俺は辺境伯の屋敷に連れられて教育を受けることになっているようだ。

 このことは三歳ぐらいから既に言われていた。

 まあ別にわかっていたけどね。ちょっと寂しいかな。


 それはそれとして今現在の俺の友達を三人紹介しようと思う。

 年が二個上、短い黒髪に黒い瞳の俺らのまとめ役的存在の少年レイトン。同い年、赤茶の髪でくせっ毛のせいかツンツンしている黄色い瞳のキース。一個下で俺らの妹的存在、明るい茶髪のボブカットにデカリボンがお嬢様っぽいクレア。因みに村長の娘である。

 この三人がこの村に居る全若者である。この世界では歳が二桁になると子供扱いされないようだ。


 俺たちは毎日一緒に遊んだ。

 村の探索から始まり森、川など色々見て回った。

 最初は最年長のレイトンが去年俺とキースを案内するということで始まった探検だったが今年の初めにクレアが加わり再度村から探索し直ししている。

 今ではクレアもこの村のいたるところを知っていると思っている。


 こうも自由に遊んではいるが遊ぶ時間は日が暮れるまでと決めている。

 流石にまだ危ないことはできない。適正や特異体質はあってもまだあるだけだ。

 そこに力が感じられるが発現には至っていなかった。

 そんなこともあってかモンスター、いわゆる魔物が出るという森には入ってはダメだと村の大人たちに言われていた。

 その森は村から少し離れた国境の真上にあるようで非常に危険なのだと。


 ある日のことだった。

 いつものようにもう片方、村の真横にある森のちょっとした広間に集まっていた時だった。

 キースがおもむろにこう言ったのだ。


「なぁ、あっちの森に入ってみない?」

「だ、ダメだよあっちは!怖い魔物がうじゃうじゃいるんだぞ?」


 当然のように最年長のレイトンはキースを止めた。因みにキースは最近はよくそう言っていた。

 見ろクレアを、魔物の森に入る前に既に顔が真っ青になってるじゃないか。


「怖くない怖くない、いつものキースの馬鹿が出ただけだから、ね?」


 そう言ってクレアの頭を撫でてなだめる。

 好感度高いぜ俺!将来期待できるぜ俺!


「なんだよ二人共ー、最近つまんねーよー。あっちの森だって定期的に騎士団が入って魔物が外に出ないようにしてくれてるし大丈夫だってー」

「ならキースのお父さんに言いつけちゃおっと」


 不貞腐れながらブーブー言うキースを見て俺がそう言いながら村に帰ろうとすると慌てた様子で手を捕まえて引き止める。


「ままま待てって!知ってるだろ俺の父ちゃん起こるとマジで怖いんだから!!」


 キースのお父さん、グラードが怖いのなんて知っている。

 怒られたことあるからな。あれは下手するとトラウマものである。

 この殺し文句を言えばキースは大抵引き下がるので扱いやすい。


「じゃあ今日は川で魚でも釣って帰ろうぜ」

「お魚…しゅき!」

「じゃあ釣り道具持って川に行こうか」

「どっちが大物釣れるか勝負だアルト!」

「はっ!受けて立つぜキース!」

「どうしぇ…レイトンがかちゅ」

「まあな!」


 こんな感じでまた一日が過ぎていった。

 はずだった。

 食卓には今日釣った川魚が料理に変身して並び両親に褒められて喜び、アカーシャから勉強を教わって寝たのだ。


 就寝中の我が家の静寂を覚ましたのは激しいノックの音だった。

 ただ事ではないその音に家族三人とも目が覚めた。


「リアドさん!リアドさん!」


 一度は盗賊か何かかと警戒して剣を持ったリアドだったがその声の主がキースの父グラードのものだったので急いで扉を開けた。

 そこには血相を変えて膝をつくグラードがいた。


「キ、キースが!これを!!」


 グラードの手には一枚の書置きが握られていた。

 それを見てアルトは全てを理解した。

 その瞬間体が動いていた。分かりきっている。その書置きになにが書いてあるのか。

 魔物のいる森に行ったのだ。あいつは俺と同い年で魔法魔術適正がある。

 しかも俺と違ってC、これはかなりのものらしい。いわゆるエリート的なものである。

 しかも既に独学で初歩の火系が使えるのだ。


「あのバカッ!」

「アルト!」


 自分の力に過信しやがって!

 きっとまだ間に合うはずだ、俺は特異体質の影響で身体能力が同い年に比べてかなり高い。

 アルトは全速力で魔物の住む森で国境の上にあるバロード森林に向かった。

 場所はわかっている。俺だって興味があって入口の近くまでは行ったことがあるからだ。

 けど入らなかった。この腕から伝わってきたからだ、危険と。

 分不相応であると。つまり今入れば死ぬ。間違いなく。


 けど、だけど今はそんなことに構ってはいられない。

 友達の命が掛かっているからだ。

 村から出て北西に向かうとそれは現れる。


 バロード森林、樹木が赤黒い見るからに禍々しい森だ。

 アルトは必死に走った。

 そしてその森の入口についたのだった。

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