To Be Continued? 3
扉を潜り中に足を踏み入れるとそこは先ほどのプラネタリウム風空間とは一変していた。
部屋の大きさはおおよそ十二畳、真ん中に大きな机、壁一面には窓は無く、本棚や不思議なものが置かれている棚で埋め尽くされていた。
これはアトリエとか工房とかいうものではなかろうか。
明人の率直な感想である。後ろを向くと扉は閉じておりティオが入ってきた様子はなかった。
一歩前に出て机の上に置かれている地球とは大陸の形状が異なる地球儀を回す。
特に意味はなくなんとなくだ。
と、机の反対側、丁度明人の真反対に置かれていた巨大なオブジェのような物が回った。
それがこちらを向いた時、明人はそれの正体に気づいた。
椅子だ、ちょっと値の張る椅子だ。
形状としては揺り篭に近いだろうか。戦闘民族の方が地球に来る際に乗っていたポッドから扉を取って椅子の脚をつければこんな感じだろうか。
兎も角、それは椅子だった。
必然それが椅子ならばそこには誰かが座っている。
それはこの部屋の主で間違いないだろう。
奇抜、奇妙、奇天烈、奇怪。もう変だった。
貴族風の服+装飾過多、コスプレでももっと軽装かもしれない程凝った衣服を身に纏い、金髪の頭にはシルクハットにゴーグルが二つ、そのゴーグル部分をかぶらないように懐中時計がシルクハットの周りをぐるりと囲っていた。
重くないのだろうか…。
「こんにちわ、そしてようこそ。僕は君を歓迎するよ」
ビシッと手に持っていたステッキをこちらに指す。
こちらを見つめるワインレッドの瞳がキラリと光る。
「それじゃあ始めようか、君はなにがお望みかな?腕、脚、頭、細かく分類するなら指、目、脳、爪なんでもござれだ」
「え、あ、えーっと…急に言われましても。こちらも心の準備というものが…」
「そうか、時間が惜しいか。それは僕も一緒さ、では腕を。最初から全部与えたんじゃ産まれて直ぐに塵になっちゃうから最低レベルね。それじゃ良き旅路を」
「え、ちょまっ!!」
最後まで口を開くまもなく明人の意識は暗転した。
もうこの空間に明人の姿は残っていなかった。
扉がガチャリと開きティオが入ってくる。
男はというと別段ティオが入ってきたことを気にする様子もなく椅子に揺られていた。
「行きましたか?」
「やあティオ、うん行ったよ。彼はあの世界にどんな影響を与えてくれるかな?僕はそれが楽しみでならないよ。もうあと数回でこの遊びも打ち止めにしよう」
遊びとは転生のことだろとティオは思った。
「飽きたのですか?」
「待つことに、ね?僕も行くよ」
「本気ですか?」
「ゲームってのはさ、見てるのも楽しいけど、やっぱり自分でやってこそだからね。ティオも行くかい?」
「私に決定権はありません」
「ハハッ、出た、これだから道具というものは…せっかく感情と意識を与えたのに持ち主にはどこまでも平坦でつまらない。先程君が彼に見せた驚きを一度でも僕に見せてくれたらなぁ…」
「それが命令であれば」
その返答に興が削がれたのか男は黙り目を瞑る。
しばらくして寝息をたて始める。
どうやら寝てしまったようだった。