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えーえふぶらっど  作者: いちろくに
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第三話 下準備と災厄の魔女1




 本を読んでみて、かなりの事が分かった。

 例えば、今俺がいる場所、このアパートみたいな場所は、まだダンジョンとして活動が開始していない卵の状態と言う事だ。


 ダンジョンが開通してからしばらくはこのアパートの一室を好きに使えるが、それ以降はポイントを使って維持拡大が必要であると言う事が書かれていた。

 因みに、此処は誰も攻めてこない。

 俺は死ぬと此処に戻って来る事になる、つまり絶対に必要な場所である。

 ノホホンとしていれば、復活する場所が無くなり、それは本当の死を意味する事となる。

 まぁ、ダンジョンとして臆さずに機能させるために造られた措置だろう。


 因みに、よく小説などで見かける、ダンジョンコアを壊すとダンジョンが死ぬことや、ダンジョンコアを持ち帰る、等は一般的なダンジョンでは可能だが、このダンジョンではいかなるスキルを使おうとも不可能と言う事らしい。


 なんでも、この世界の神とあっちの世界の下っ端の神の合作らしい。

 ……暇なのかね? まぁいいんだけどね、俺としては助かるし。


 このダンジョンの場合、ダンジョンコアの破壊と共にボス部屋に宝箱が召喚されると言う物で、攻略した人は宝箱の中身を取ると、強制的に地上へと転移される。

 そんでもって、ダンジョンコアは修復に入り、その間ボス部屋への侵入は出来ない。

 つまり、ボスのリポップまでのラグと考えれば分かり易いだろう……まぁボスはどうやら俺のようだけど。


 とりあえず、いきなりこのアパートに押しかけられて暴れられる心配はない。

 ここはダンジョンとは違う次元に存在するらしいので、ダンジョンを攻略しても此処は変わらずと言う事だ。


 そして、先ずはダンジョンを開通し、付近の様子を探る事が必要だと言うのが俺の考えだ。

 此処が一体何処で、どの程度大陸の中央から離れているのか、それは本には書いていなかったので、一番気になる所だ。


 ……一番は言い過ぎかな、何せやっぱり気になるのは、これだ。


「『ステータス』」



『ステータス』


名前:ロルフ

性別:男

種族:堕天使

スキル:『槍術』・『黒魔術』・『鮮血衝動』

称号:【ダンジョンマスター】



 これである。

 ステータス、こんなゲームみたいなものが、マジで見られる日が来ようとは思わなかった。

 しかし、ステータスと言う分には少々物足りない感じはする。

 筋力とか、知力とか、レベルとか。

 だがそう考えると、つまり自分で感覚を掴めと言う思し召しでは無いかと思う。

 筋力がどれくらいで、魔力がどれくらいかなんて体で覚えろっていう、スパルタ教育。


 ……スキルが見られるだけでも儲けものだと思うか。


 因みに、『槍術』と『黒魔術』はまんまそんな感じである。

 槍術は槍を構えると体が上手く動くとか、黒魔術は闇系の属性と呪いみたいな魔術の総称らしい。

 これらは多分元の持ち主のスキルだろうと踏んでいる。

 体が覚えてるって状態なんじゃないかな、あとは俺がスキルに振り回されない様に、体を動かすって事ね。


 最後の『鮮血衝動』は地味にエグイスキルで、俺との戦闘中に俺が付けた傷は塞がらない……ポーションだの回復魔術なんかじゃ直らなくなるってスキルらしい。

 勿論戦闘が終われば治る……まぁその時は俺って言うかダンジョン攻略されて、少しの間眠りにつくんだろうけどね。

 このスキルは俺のせいだね、確実に。

 称号の【ダンジョンマスター】はその名の通り、このダンジョンを運営出来ますよーってやつだった。


 とまぁ読んだ事を思い出しながら、朝かどうか分からないけどパッチリ目を覚ますと、本で読んだダンジョンコアを抱えて寝てた。

 占い師が使う水晶みたいなののデカいバージョンみたいなそれを、テーブルに置くと、ゴッ! と言う鈍い音がする。


 その水晶は徐々に洞窟のような場所を映し出す。

 どうやら、そこが俺のダンジョンの最奥のようだ。

 最奥と言っても、今はただの洞窟らしいから、そこまで深くは無いんだろうけど。


 俺は水晶を抱えて、洞窟に意識を集中する。

 すると、ふわりと一瞬の浮遊感と共に、先程見ていた洞窟の最奥に立っていた。


 二度目の転移に少しテンションが上がりながらも、辺りを見渡す。

 洞窟の中には光る鉱石があり、それが淡く光っているため真っ暗では無い。

 だが何とも言えない怪しい光で、薄暗い程度である。


 次に、この水晶を洞窟の一番奥の壁に埋め込めば、ダンジョンの初期段階――まだ開通はしない――になるはずなのだが……。


 ここで問題が発生した。

 第一段階から問題とか、勘弁してほしい。

 

 何があったかと言うと、水晶があった。

 そう、既に水晶を埋める所に俺の物では無い水晶が埋め込まれていた。


 つまり此処はダンジョンと言う事になるのかと身構えてみたものの、何が起きる事も無い。

 本による説明では、水晶を最奥に設置する事で、ダンジョンとして洞窟が組み替えられると言う事なので、この水晶もダンジョンの不随として組み替えられたらいいな、と言う思いで水晶の埋め込まれている場所に水晶を押し付けてみた。


 目の前が黒に染まる。


「ほへ?」


 それは只の黒では無く、まるで川の様に押し寄せる黒い何かが俺を突きぬけていると言う感覚である。

 

 辛うじて光る二つの水晶に、ヒクリと口元が動く。


 ただただ激しさを増す黒い力の本流に俺は耐えられなくなり、水晶を離してしまい空に投げ出される。

 なんとか羽を動かして空に留まると、洞窟の奥から流れ込んでいる黒い霧のような物が下に溜まっていくのが見て取れた。


「あー、いや、俺のせいだけど、俺のせいじゃ無いよ?」


 誰に言う訳でも無く弁解してみる、見るからになんかやらかした感が半端ない。

 それともこれが組み替える為に必要な物なのだろうか。

 それにしても、禍々しいと言うかなんと言うか。


 更に激しさを増して流れ出すその起点に変化が起きる。

 

「光が……」


 黒い本流の起点、と言うか俺のダンジョンコアの光が強くなる。

 次いで黒い何かが流れ出るのが止まり、二つ光り輝く水晶が露わになる。

 瞬間、両者が両者を喰らうように形を変えてうねり一つになる。

 完全に一体化したそれは、先程の本流を繰り返すでもなく、ただただ怪しく点滅し始める。

 

(まるで俺を誘ってるようだ……)


 心の中そう呟きながらも、体は自然とそちらに向く。

 羽をゆっくりと動かし、水晶の前まで行き、本に書いてあった様に右手を水晶に押し付けてみる。

 すると目の前に文字が飛び出してくる。


『災厄の魔女の封印を解きますか? Yes/No』


「は?」


 どうやらこの水晶は壊れてしまったようだ。




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