第一話 プロローグ
あぁ、血が見たいな。
……ハッ! 一寸トリップしていた。
高校二年の春、一発目の授業は午前中で終わり、まぁまぁ親しい友人達と別れ、俺は帰路についていた。
俺は出来るだけ普通の高校生を心がけている。
成績は真ん中……って言いたいけど真ん中少し下、運動はまぁ平均だと思いたい。
自分の住むマンションに着き、始めにやる事はポストの確認。
中を探ると何か入っていたので、ロックを解除して封書を取り出す。
まぁ俺に来る封書なんて、どうせ勉強教材だの、塾の勧誘なんかだろうと当たりを付けながら、財布から鍵をだして部屋に入る。
そのまま玄関に座り封書を開けると、ペラりと一枚の紙が出てくる。
結局の所何が書いてあるかと言うと、まぁ挨拶は省くが。
新しいオンラインゲームがリリースされます!
そのゲームは、プレイヤーを異世界に飛ばしてデスゲームします。
でも帰りたいって言う人は、最初のチュートリアルで帰れるようになります(ただしこの機会を逃すと帰れないよ)。
でも、それだけじゃあ面白みがないので、敵側にも何人か運営の手駒としてリリース前に人を飛ばしたい。
そして飛ばした先でダンジョンを一つ任せたい!
そんでもって、そのダンジョンを任せるのに君が選ばれました!
勿論破棄しても問題なしです! その場合、二時間経つとこの手紙の事は綺麗さっぱり忘れるし、手紙の内容を書いた物やコピーも綺麗さっぱり消えますのでご安心を!
受ける場合は二時間以内にこの手紙の下に署名欄があるので、そこに名前を書いてください。
ただし、これを受けると此方の世界に帰ってこられなくなるので、此方に未練や異世界に不安がある場合はお勧めしません。
それと、プレイヤーはデスゲームですが、ダンジョンは生き返れます……と言うか、一回の討伐でダンジョン終わりとか勿体ですしね。
まぁデスペナは有りますけど、それは死んでからの御楽しみと言うことです、結局は頑張って攻略されない様にすればいいんです。
と言う事が書かれていた。
正直言って意味が分からないと言うか、手の込んだ悪戯としか思わなかった。
……でももしこれが本当だとしたら?
本当に異世界なんてそんな意味の分からないところがあって、そこと繋がってまるでアニメや小説みたいな事になったら?
その時、俺は自分の口元がにやけている事に気が付いた。
この誘いは、俺にとってはあまりにも甘美な誘いだった。
この手紙によると、どうやらこの世界にはもう戻ってこられないらしい。
それならば、俺を育ててくれた祖父母に手紙を書き、勿論PCのデータを抹消――もし悪戯だったら、きっと血の涙が流れるだろう――、そうして準備が完了した。
理性が俺に訴える、こんな物は悪戯だと。
感情が俺に囁く、これを逃せば次は無いと。
ゴクリ唾をのみ込み、俺は手紙にサインをした。