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16:キズオト

今回は劇風に書いてみました。量が増えて、記号を多用していたら手が痛くなりました。情けないです。

 石造りの部屋。冷たい空気が立ち籠めている。一人の女性が机を前にした椅子に納まっている。その机だけ蝋燭の明かりがあり、周りは暗い。ここは〈支配者〉である彼女の執務室。タイトなドレスに身を包んだ彼女は一言も発せず書類に目を通し、署名していく。

 蝋燭の明かりが揺れる。

 そこに一人の幼い少女・キズオトが入ってくる。闇の向こうから、不意に現れる。

 登場の瞬間、少しの間だけ怯えたように周りを見回すが、奥に座る〈支配者〉を目にとめると臆することなく彼女の方へ走り寄っていく。


 キズオト:「ねぇ、〈支配者〉さん。怪我が治る時にゴミが入ったままになっちゃったらえぐり出さないと駄目なのかな」

 〈支配者〉:「何故、そんなことを聞くんだ? その前にどこから入ってきた?」

 キ:「(二つめの質問は聞かなかったように振る舞う)えっとね、それはあたしが良く怪我をするからなんだけど」

 支:「……知るか。そんなことは〈医療者〉にでも聞くが良い」

 キ:「そっか。じゃあね」


 キズオト、去る。

 (暗転)






 穏やかで優しい森の中の小屋。こぢんまりとした小屋の中は主である女性によって一部の無駄なく利用されている。

 主、〈医療者〉は壁を埋め尽くす棚の一つから、薄いカルテと思われる書類の束を手に取る。長身に芥子色の薄地のコートを纏っている。

 扉が開く。強い風が吹き込み、〈医療者〉の手にしたカルテの束が吹き散らかる。唖然とする彼女の前に、椅子を蹴飛ばしてキズオトが駆け寄る。


 キ:「ねぇねぇ〈医療者〉さん。聞きたいことがあるんだけど」

 医:「(暫く口を開けたまま沈黙している。それから初めて、目線の下に立つキズオトに気付く)あの、どちらから……」

 キ:「(〈医療者〉の様子に構わず質問をはじめる)あのね、体質で傷がすぐ治っても、血の量はすぐには回復しないって本当?」

 医:「え……、そんな…………。(おろおろしながら本の棚に行こうとし、転ぶ)」

 キ:「(怒ったように)もう……。わからないんだったら誰に聞いたらいいか教えてよ」

 医:「(立ち上がって答えようとし、棚に手をかけるとその棚の上から酒瓶が降る。立ち上がることを断念し、まず質問に答える)……では、〈不死者〉さんに聞いて下さい」

 キ:「(短く)そ。じゃね」


 再び扉が開き、またもや強い風が吹き込んで棚が激しく振動する。〈医療者〉は戦慄するが、何事もなく扉は閉じ風は収まる。


 医:「(床に這いつくばったまま)何だったのでしょう……」


 (暗転)







 次の舞台もまた森の中。しかし先程の森と違い、ここは枯れた木が並ぶ赤茶けた森。照明も暗い。不穏な森の中、少し広まったところに若い女性と、それより若い少女。それぞれ隣り合う枯れ木の幹に身体をあずけ休んでいる。

 女性は、赤い髪をまるでマリー・アントワネットの様な大袈裟な結わえ方をしているのが特徴的だ。〈不死者〉とは彼女のことだ。

 少女の方は顔がやせて骨張っており、質素な衣類を身につけていることにより身体の方も痩せているのがわかる。

 ひゅう、と甲高い音を立てる冷たい風。少女が震え、それをみた女性が少女の横に座り抱き寄せる。

 枯れ葉を踏む音。キズオトが現れる。


 キ:「あれ、二人いる。〈不死者〉さんはどちら?(道化て)」

 不:「(身を起こして)私のことよ」

 キ:「じゃあ、〈不死者〉さん。質問だけど、お部屋を片付けていて間違ってよく使うものを置くにしまっちゃったらやり直さないといけないのかな?」

 不:「……さぁ」

 キ:「ねぇねぇわからないの? だったら誰に聞いたらいいか教えてよ」

 不:「何で私が……。(少女が〈不死者〉の服の裾を引き注意を惹く)何? 〈改革者ミナ〉?」


 〈不死者〉、しばらく少女の顔を見つめ、そしてキズオトに向き直る。


 不:「――あんた、あちこちの私の同類(ワルキューレ)にちょっかいかけているの?」

 キ:「(あからさまにとぼけて)え? そんなこと……」

 不:「(立ち上がって)得体の知れない人間め。覚悟しなさい!」

 キ:「(逃げ出しながら)うひゃー、逃げろー」


 キズオト退場。舞台の中心で〈不死者〉立つ。


 不:「(腰に手を当てながら)ち、逃げられたか……」


 (暗転)












 古い日本家屋。夕暮れの光が当たる縁側、一人の女性が微笑みながら座っている。

 女性の服装は青の強い朝顔模様の着物。青く長い髪がゆったりと背中に這っている。


 キズオト登場。(舞台袖から気負いなく現れる)ササヤキの前に立ち止まる。


 キ:「ただいまー、ササヤキ」

 サ:「お帰りなさい。今日は何処まで行っていたのですか?」

 キ:「何か血なまぐさい世界」

 サ:「そうですか。あんまり余所の物語の人に迷惑をかけてはいけませんよ。皆さん、自分たちのつみきを積むので一生懸命なのですから」

 キ:「ちぇーお説教か。(ササヤキの横に腰を下ろす)ねぇ、しりとりしよ」

 サ:「もう少しでご飯ですから、ちょっとだけですよ」

 キ:「うん。じゃ、【つみき】」

 サ:「【きんか】」

 キ:「【かんき】」

 サ:「【きゅーす】」

 キ:「【すまき】」

 (暗くなり始める)

 サ:「【ぎんし】」

 キ:「【しき】」

 サ:「(少し考える)【きじ】」

 キ:「【じき】」

 サ:「【きのう】」

 キ:「【うわき】」

 サ:「【きゅうこうれっしゃ】」

 キ:「【やしき】」

 サ:「(長く考える)【きみどり】」

 キ:「【りんき】」

 サ:「…………」


 (真っ暗。幕が閉じる)

冬休みが終わったらこの子達で小説を書こうかな、とか考えています。そうなった時のタイトルは『my moon』になると思います。

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