5:鏡花水月
カテゴリ変えました。それにともないサブタイトルの付け方も変えました。書いた順番+人物名です。
冷たいつみき、温かいつみき。
脆いつみきに燃えているつみきまで。
すべてここにある、私の周りに円を成して、うずたかく。
さぁ、何を作りましょう?
喜んでいるつみきに土くれのつみき、それに解けかけた雪のつみき。
手招きするとさらさらと集まって、春の庭を造りました。
月光のつみき、星明かりのつみき、夜色のふかふかしたつみき。
ベットの形に積みました。
――栗鼠。
栗鼠が来ました。ベットに乗り、数える間もなく瞼を閉じました。
栗鼠は丸くなって眠ります。枕元に、夢のつみきを置いてあげましょう。
つみき達は私の手足のように、私の考えるまま集まり、崩れて、何処かへ。
あつまり、あそんで、あきれて、あくびして。
退屈な一本の草もない荒野の中、忘却という永い時の前から続く暇潰し。大きな「施設」の中で、私は遊び続けます。独りきり、滅んだ世界に取り残されて生き続けています。
滅んだ世界の中で、自分だけの世界を作る。つみきで、つくって、つぶします。
見渡す限りのつみきの中、私はときどき自分というものを見失います。散逸する世界の欠片達の中に、自分というものが埋没していくのを感じる。
私は誰ですか?
疑問は積み重ねられる。言葉も集めて使うことで思いを語ることができる。
しかし、こんな無為を繰り返しても答えには届きません。まるでバベルの塔のように。
書物の形をした記憶のが層を成す図書館で、私はその物語を知りました。天に焦がれて、神の御前へ進むことを欲した遙か昔の人間達が建てた塔の物語。塔は天につく前に形を変えた言葉達によって崩されてしまった。
私の疑問もその通り、いえ、それすらにも及びません。向かう天を捕らえられない私の身が、懼れることなく蒼穹を仰ぎ続けたバビロンの市民と同じはずもありませんから。
――今、箱庭の水面に波を作ったのは塔の形につんだつみきでしょうか?
水面につまれた月の影は手ですくうことができません。
そんな風に、私は私というものを掴むことができません。