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二段目:過去視

 瞼を刺激する光。

 眠りの海を突き抜けて、私を目覚めさせる。


 何故でしょう?


 私の閨はいつも暗闇に閉ざされるようになっているのに。ネガイが間違って明かり取りを明けてしまったのでしょうか。

 ネガイ。

 彼女の名を呼ぶ。しかし答えがない。いつも私に尽くしてくれる彼女らしくありません。

 仕方ないので私が自ら窓を閉めることにします。視力に障害がある故のぼんやりとした視界の中、転ばないように周囲の気配を探りながら明かりの方へ動きます。

 ――あら? 硝子窓。

 そういえば慣れ親しんだ閨とは造りが違うような気がします。私の閨は二畳ほどの狭い場所のはずなのに、ここはとっても広い。


 あぁ、そういえば。


 ようやく思い出しました。私は架夜さんから招待の手紙を貰い、ネガイに内緒でここ夢囃子学園に来たのでした。

 そうで――そうそう。

 いっぱいの人の気配で満ちた空気に気分が浮かれてしまい、一人でうろうろしていたら眠くなってきてこの部屋に来たんですね。ここは納屋のような空気がします。


 それで、ここは何処ですか?


 鉄の扉の向こうに人の気配は希薄。おそらく、差し込む太陽の光が赤みを帯びていることから今は夕刻。みなさん帰ってしまわれたのでしょう。




 急に視界が鮮明になってくる。〈幻視〉がはじまるのですね。

 〈幻視〉とは〈先視〉、未来視に近い能力です。申し遅れましたが私の名は、サキ。この名の由来は私自身知らないのですが、おそらく先視から来ているのでしょう。

 幻視の舞台は石らしき私の知らない素材の床。斜陽がスポットライトのように照らした場所に幻が形を成して立ち上がる。

 人型の、崩れ続けているのに形を失わない矛盾した性の影。

 つみきでこしらえられた巨人。

 指を、人差し指で彼を突いた。私に触れられた幻は壊れましたが、すぐさま元の形に立ち直る。


 そういえば。


 ツミさんがいなくなる前に言ってましたね。かつて私達と暮らしていた男性ですが。

 「この世界はもう積み直せないかも知れない。人間がどんなに力を合わせても。――人間が力を合わせることを覚えていればの話だけどね」

 不自由な目の代わりに鋭くなった耳に、今初めて世界の崩れる音が聞こえました。

 ツミさんはずっとこれを聞いていたのでしょうか。

 だとしたら、彼は今何をしようとしているのでしょうか。



 彼は今どちらにいらっしゃるのでしょうか。




 その前に。

 私は今どこにいるのでしょうか。

 彼のことを考えていたら身体が火照ってきてしまいました。

 そう言うわけで、皆様私をしばらく一人にして下さいますね?

 では御機嫌よう。

十九個目のつみきです。

最後にちょっと含みを持たせてしまったのは、この間言いました次回作「my moon」、彼女達の物語をどういう風に語ろうかと迷っている故なのです。

十五禁小説、私には少し浅はかでしょうか?

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