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路地裏の勿怪

作者: 石動 友

 とある小さな町にある、不景気ですっかり寂れてしまった商店街。日中は開いている2/3のお店もシャッターを閉め、もう人が通ることもないはずの真夜中に、街灯に照らされる人影が、1つ。

 両手に食べ物で一杯になった袋を下げた青年が、小走りで灯の下を通り抜けていく。

 やがて青年は、もう何年もシャッターが閉まったままの店に挟まれた細い隙間の前で止まり、周りに誰もいないことを確認すると、するりと隙間へと入っていった。

 月は雲に隠され、真っ暗で何も見えない隙間を進んでいくと、やがて広めの路地裏に出た。

 不意に、雲に隠れていた月が顔を出し、青年の顔を照らしだす。そこには2つあるはずの眼が1つしかなかった。中央に寄った大きなまなこが瞬きをする。

「おーーい、出てこい。食い物を買ってきたぞ」

 一つ目の青年が路地裏の闇に向かって声をかけると、月明かりで生まれた影がグニャリと動き、中から人でも獣でも無い“モノ”達の這い出してきた。

「おお、ありがたい。ありがたい」

 人に化けれないその“モノ”達は青年が買ってきた食べ物をモシャモシャと食べ始めた。

「おい、猫。お前の分もあるぞ」

 一つ目の声に反応して、闇の中で2つの眼が光った。

「あたいは別に、施しなんていらないよ」

 先ほどの“モノ”達のように影に隠れていたわけではない。2つの尻尾を持った黒い黒い牝猫が、闇に溶けていたのだ。

「そう意地をはるな。お前、この間も仙人の誘いを断ったんだってな。俺達はもう助け合わないと生きていけないのだ。お前もそれは解っているはずだろう」

「フン」

 返事の変わりに鼻を鳴らすと、黒猫は貪り食う“モノ”達の横をすり抜けて、路地裏から出ていった。

「あの猫が喰わないなら、俺が代わりに喰ってやるよ」

 黒猫が消えた方を呆れ顔で見ていた一つ目の手から、生魚が抜き取られた。



 まだ世の中に闇と自然が多かった頃、日本のいたる所に妖怪・物ノ怪・あやかしといった物達がいた。しかし人が増え、自然が減り、闇が追いやられた現代、妖怪達の居場所は無くなってしまった。

 では、彼らはもう此処にはいないのだろうか?

 そんな事は無い。

 姿を変え、住処を変え、彼らは今も此処にいるのではある。そう、例えば町の路地裏に。

 これは、そんな路地裏の勿怪のお話。



 その商店街の路地裏には黒い黒い牝猫がいる。一見何処にでもいそうなその黒猫には、実はもう一本のしっぽが隠されている。そう、彼女は化け猫なのだ。

 猫が気まぐれであるように、この化け猫もまた気まぐれであった。

 居場所を失った妖怪達は、人に化けれるモノが化けれないモノに食べ物をあげたりしながら、助け合って町中で暮らしている。

 しかし、猫としても人としても問題なく町で暮らせる彼女は、飼い主が亡くなって以来、他の妖怪達と群れようとはせず、特に仲間を作ることもなく、いつも1人で自由気ままに過ごしてきた。

 そんな彼女がエサを探して歩いていると、地面に落ちているウサギのぬいぐるみを見付けた。持ち主に捨てられた、というよりも落としてしまったという様子である。

「おやおや、可哀想に」

 ぬいぐるみといえど、長い年月を生きれば魂も宿る。このぬいぐるみが魂を宿す事なく朽ちていくことを多少なりとも気の毒に思いながら、彼女はその横を通り過ぎようとした。

 その時、ぬいぐるみが言葉を発した。

「リエちゃん、何処にいるの? リエちゃん……」

 本来聞こえるはずのないその声に、彼女の足が止まる。

「ふ~ん、君は……」

 それは、彼女のただの気まぐれだった。


 人目を盗み、路地を奇妙な者達が行進していた。

「やれやれ、まったく最近は仲間を探すのが一苦労だわ」

 ブツブツ文句を言いながら先頭を歩くのは、なんと日本人形だ。

「仕方ないよ。近頃はゴミの捨て方が厳しいから」

「大きな物は回収車が持って行っちゃうから、手を出しづらいしね」

「カンカラコロン カランコロン」

 そしてその日本人形の後ろを茶碗と、本と、下駄が並んで歩いている。彼らはみんな付喪神だ。

「はん、身勝手なものさね」

 バッテンの付いた赤い紙が貼られたテレビを見ながら、日本人形はぼやいた。

 彼らは時々町を練り歩いて、ゴミとして捨てられてしまった仲間を探している。そして仲間がゴミ収集車に持って行かれる前に助けてあげるのだ。

 しかしゴミ捨てが厳しくなって以来、仲間を探すのが難しくなっていた。その為、姉御気取りの日本人形はすっかり機嫌が悪くなっている。

「まったく、最近の人間は物を大切にしないのだから」

 ぷりぷりして歩く日本人形のあとを、茶碗と下駄と本が戦々恐々としながら付いていく。元の持ち主の性格が影響したのか、日本人形は気性が荒く、たまに彼らは八つ当たりを受けるのだ。

 そんな彼らの前に、少女がやってきた。

「ようやく見付けた」

「あら、化け猫さんじゃない。こんにちは。人の姿をしているなんて、珍しいわね」

 少女はさっきの黒猫が化けた姿だった。

「猫の姿じゃ、この子を運べなかったのよ」

 そう言って化け猫は手に持っていたウサギのぬいぐるみを突き出した。

「あら、そのぬいぐるみ、微かだけど魂が宿りはじめているわね」

「リエちゃん、何処にいるの? リエちゃん……」

 ウサギのぬいぐるみは、先ほどと同じ言葉を繰り返している。

「でも意思の疎通ができないの。あんた達なら解るんじゃいないかと思って連れてきたわ」

 化け猫がぬいぐるみを地面に置くと、付喪神達はそれを囲んで調べだした。

「ずいぶん若いじゃないか。まだ造られて10年も経ってないんじゃないか?」

「それなのに、もう魂が宿りだしているなんて」

「それだけ、持ち主が愛情を注いでいるって事よ」

 一般的に物に魂が宿るには100年かかると言われているが、実際はその持ち主がどれだけその物に情を注いでいるかで、付喪神になるまで年月が決まる。情が注がれれば、例え造られて間もない物であっても魂が宿る。子供向けの人形などは、特にそれが多い。

「どれ、ちょっとこの子の記憶を読み取ってみましょう」

 ウサギのぬいぐるみの魂はまだ不完全で、付喪神達でも会話をすることができないようだった。しかし、ぬいぐるみには今まで注がれた愛情の記憶が詰まっている。日本人形はその詰まっている記憶を覗いて、ぬいぐるみの事を調べることにした。

 日本人形はぬいぐるみに触れて、若いウサギのぬいぐるみの記憶を覗き込む。

 工場で作られ、出荷され、おもちゃ屋に並べられ、そしてリエちゃんという少女の最初の誕生日に、彼は彼女の最初の友達になった。リエちゃんの両親は、彼に「ピョンちゃん」という名前を付けてあげた。

 それ以来、彼はいつも彼女の側にいた。よだれを垂らされ、耳をくわえられ、腕を破られもした。それでも彼はリエちゃんの事が大好きで、彼女もピョンちゃんの事が大好きだった。

 彼女は何処に行くにもピョンちゃんを連れて行った。最近は手が塞がれないように、リュックに入れて背負っていた。出かける時、リエちゃんは自分からピョンちゃんをリュックに入れていた。

 しかし、今日は慌てて出かけた為、リエちゃんはリュックのチャックを閉め忘れていたのだ。そして歩いている内に、ピョンちゃんはリュックから落ちてしまった。しかしリエちゃん親子はその事に気付かないまま、歩いていってしまったのだ。

「リエちゃん、何処にいるの? リエちゃん……」

「なるほど、ね」

 日本人形は、皆にこの経由を説明した。それを聞いて茶碗・本・下駄は、オイオイ泣き出した。

「な……なんて可哀想なんだ」

「きっと今頃、リエちゃんも泣いているに違いない」

「カンカラコロン カランコロン」

 離れ離れになった2人を、付喪神達はとても同情した。情によって生まれた彼等には、2人の悲しみが痛いほど解るのだ。

「そうね。このピョンちゃんの為にも、リエちゃんの為にも、2人を再会させてあげなきゃ!」

 異様に盛り上げる付喪神達に、少し温度差を感じながら、化け猫は率直な意見をぶつけた。

「でも、どうやってそのリエちゃんを探すのよ?」

「人海戦術よ。町中の付喪神にこの事を知らせるわ。さぁ本、言霊を吐いておくれ」

「へいへい」

 日本人形に言われて、本が閉じていたその身体を開くと、ページに印刷さていた文字がパラパラとこぼれ落ちた。そしてそのこぼれ落ちた文字達は、四方八方へ飛んでいってしまった。

「これで、町中の付喪神達に伝わる。さぁ、私達も探しに行くわよ」

「「おーーー!!」」

「カンカラコロン カランコロン!!」

 鼻息も荒く、付喪神はリエちゃんを探しに出発した。その場には、ピョンちゃんを片手に持った化け猫が残された。

「あたいはどうしよう」

 あとは意気揚々と飛び出していった付喪神達に任せておけばいい。わざわざ付喪神達の所まで連れてきてやったのだ。これ以上あたいが協力してあげる義理はない。

 …………。

 そうは思った物の、このままジッと待っていてもつまらない。でも、だからといって闇雲に探すなんて無駄なこともしたくはない……。

「あ、そうだ。あたいも猫達に協力させよう」

 閃いた化け猫は、早速近くの塀の上で日向ぼっこをしている野良猫に声をかけた。

「ねぇあんた、ちょっと人間の女の子を探しているんだけど、協力してよ」

「面倒くさいから、嫌にゃ」

 野良猫はそう言うと、我関せずといった風でさっさと向こうへ行ってしまった。猫は気まぐれなのである。

 これでは、一緒に探してくれる猫を探している内に、リエちゃんが見つかってしまいそうだ。

「仕方ない、髭爺に訊きに行ってみるか……」

 化け猫は猫に頼むのを諦め、近くの駅へと駆けていった。


 駅前で、立派な髭を生やした老人のホームレスが、ビックイシューを売っていた。

 老人の髭はそれはそれは立派なもので、ホームレス仲間から「仙人様」と呼ばれ慕われ、町のホームレスのまとめ役となっている。

 そして「仙人様」という呼び名は、あながち間違っていない。実際、彼は古くからこの土地に住んでいる妖怪で、土地神にも顔が利き、町の妖怪からも慕われているのだ。

 そんな「仙人様」の所へ、化け猫が走ってきた。

「おぅ、化け猫か。人の姿をしているとは珍しいな」

「ちょっと事情があってね」

 化け猫は「仙人様」--彼女は髭爺と呼んでいる--にピョンちゃんとリエちゃんの話をした。

「ねぇ、髭爺。このピョンちゃんを抱いた女の子を見なかった?」

「さぁてのう。仮にこの辺りで見たとしても、どこに住んでいるかまでは解らんよ」

 髭爺は髭を撫でながら、そう答えた。

「そっか。そうだよねぇ」

 それを聞いて、化け猫はションボリしてしまった。いつもこの駅前にいる髭爺なら何か知っているかもしれないと来てみたのでが、どうやら当てが外れてしまったようだ。

「しかし、お前が“モノ”助けなんて、珍しいな」

「え!? まぁ、何て言うか、乗りかかった船というか……。ただの気まぐれよ。」

 化け猫は何故かきまりが悪そうに言うと、髭爺から顔をそらした。

 そんな化け猫を見て、髭爺は彼女の頭をポンと叩いた。

「どれ、儂には解らんが、奴らなら解るかもしれんな」

 そう言うと、髭爺は突然「ッカーー、ッカーー」とカラスの鳴き真似をした。するとたちまちたくさんのカラスが、髭爺の元へと集まってきたではないか。

 呆気に取られている化け猫の前で、髭爺はなおも「カーカー」言いながら、何事かカラスに説明した。やがてカラス達も「カーカー」と鳴いて、一斉に飛び立っていった。

「カラス達に、捜し物をしている様子の少女がいないか探すよう頼んだよ。もしそのリエちゃんが外でピョンちゃんを探しているのなら、きっとすぐに見つかるだろう」

 そう言って髭爺はにこやかに微笑んだ。髭爺が一声かければ、妖怪とは無関係な鳥さえ従うのだ。

「や……やっぱりスゴイや、髭爺は」

「ん? まあな。ハッハッハッ」

 髭爺は得意げに笑うと、化け猫の頭をポンポン叩いた。

 それから化け猫も1人で探してみることにした。


 化け猫はピョンちゃんを片手に、住宅街の路地を少し寂しそうに歩いていた。付喪神には仲間がいる。髭爺にも慕ってくる者がたくさんいる。でも、自分には誰もいない。

 以前髭爺に、野良猫の統率をすればいいと勧められた時も、「面倒くさいから、嫌だ」と答えた。このピョンちゃんを拾ったのだって、単なる気まぐれでしかない。

 アタシにはピョンちゃんみたいに大切に想う相手もいないし、仲間もいないんだ。

 普段はそんな事を考えもしない化け猫だったが、ピョンちゃんのリエちゃんへの強い想いにあてられて、なんだか自分が惨めな気がしてしまっていた。

「あ……」

 俯きながらそんな事を考えていると、不意に前の方から声が聞こえた。足を止め顔を上げると、そこには子供を抱いた母親がいた。

「そのぬいぐるみ」

 母親のその言葉に、顔を埋めていた子供が反応した。子供の顔が化け猫の方に向けられる。子供の目は真っ赤に腫れ上がっていた。

「リエちゃん!」

 化け猫の手の中で、ピョンちゃんの声が発した。

「ピョンちゃん!!」

 子供、いやリエちゃんは、母親の腕から落ちてしまいそうな程前に乗り出した。母親が慌ててリエちゃんを降ろすと、転びそうな勢いで化け猫へと走って来る。

「ピョンちゃん!!」

 化け猫が手渡すよりも速く、リエちゃんは泣きながらピョンちゃんを抱きしめた。

「ごめんね、ピョンちゃん。寂しかったよね。ごめんね」

「リエちゃん」

 ピョンちゃんは、リエちゃんに聞こえない声で、その名を呼ぶ続けた。

「ごめんなさいね。ビックリしちゃったでしょ」

 リエちゃんの母親が、少し恥ずかしそうに化け猫に駆け寄った。

「いえ、アタシも持ち主が見つかって良かったです」

「何処でなくしたか解らなかったんで、困っていたのよ。どうもありがとう。ほら、あなたもちゃんとお姉ちゃんにお礼を言いなさい」

 母親に涙と鼻水を拭かれ、リエちゃんは涙声で化け猫にお礼を言った。

「ありがどう。お姉ぢゃん」

 化け猫はリエちゃんと同じ視線になるよう屈み込むと、優しく頭を撫でてあげた。

「もうピョンちゃんを落としたらダメだよ。リエちゃん」

「? お姉ちゃん、なんでリエの名前知ってるの?」

 リエちゃんはキョトンとした顔で訊いてきた。

「ん? それはね……」

 化け猫は、一度ピョンちゃんに視線を移してから、こう答えた。

「ピョンちゃんはね、ずぅっと大好きなリエちゃんに会いたいよーーって言ってたんだよ」

 それを聞いて、リエちゃんの顔がパァッと明るくなる。

「お姉ちゃん、お人形さんの言葉が解るの?!」

 ようやくリエちゃんが笑顔になった。

「ふふふ」

 化け猫は答える代わりに、悪戯っぽく笑った。

「じゃあ、本当にありがとう。ほら、行くわよリエ」

 リエちゃんの母親は、少し困惑したような顔しながら、リエちゃんの手を取った。

「バイバイ、お姉ちゃん」

 リエちゃんはピョンちゃんを抱えた腕で、できる限り大きく手を振った。その時、ピョンちゃんの声がした。

「ありがとう」

 化け猫も手を振りながらリエちゃん親子を見送った。

「バイバイ、リエちゃん。バイバイ、ピョンちゃん。よかったね」

 親子の姿が見えなくなってから、化け猫も踵を返した。すると、そこにはたくさんの付喪神と、カラスがいた。

「まさか、あなたが真っ先に見付けるとはね」

 日本人形は明らかに不服そうだった。

「そうね。それだけ仲間を集めたのに見付けられなかったとは、ずいぶん情けない話ね」

「なんですってーー!!」

 からかう化け猫に挑みかかろうとする日本人形を、茶碗達が必死に押さえ込む。

「まぁまぁ。無事にリエちゃんが見つかって良かったじゃないですか」

「ふん。今回はピョンちゃんに免じて許してあげるわ。それに、あなたは猫だけど、付喪神でもあるのだから、私達の仲間だしね」

「え……」

 日本人形が言った“仲間”という言葉が、化け猫の身体に染み込んでいった。化け猫は長く生きた猫がなる妖怪。元々魂が無かった物と有った物との違いはあるが、彼女もまた付喪神なのである。

「それじゃあ、私達も解散するわよ」

 日本人形の解散の声で、集まった付喪神達はワラワラと各々の居場所へ帰っていった。カラスも散り散りに飛んでいく。

「あ、そうそう。仲間がお髭爺さんからあなたへ伝言をもらっていたんだわ」

 帰ろうとした日本人形が化け猫へ振り向いた。

「美味しい物を頂いたから、無事リエちゃんを見付けたら来いって言っていたそうよ」

「髭爺が……」

 化け猫が突っぱねているだけで、本当は髭爺は彼女の事をとても気にかけている。彼は妖怪でさえも、もう独りでは生きられない時代なのだと知っているのだ。

「じゃあ、確かに伝えたわよ」

 今度こそ帰ろうと歩き出した日本人形に、化け猫が言った。

「次にピョンちゃんと会う時は、付喪神になっていると良いね」

「なっているに決まってるじゃない」

 振り向く事なく、日本人形は答える。当たり前の事を聞くなと言うように。

「……うん」

「それじゃ、ごきげんよう」

「じゃあね~」

「バイバイ」

「カンカラコロン カランコロン」

 茶碗と本と下駄が化け猫に向かって手を振る。日本人形も振り返りこそしないが、後ろ手に手を振った。化け猫も、そんな彼等につられて手を振った。

 どうやら、本人が気付いていなかっただけで、化け猫はけして独りぼっちではなかったようだ。

 彼女は、なんだかとっても良い気分だった。

「さて、ごはんごはん」

 そして彼女は猫の姿に戻ると、いそいそと髭爺の元へと向かっていったのだ。



 人々が信じなくなっても、たとえ忘れ去られてしまっても、彼等は今日も此処にいるのである。

 これはそんな路地裏の勿怪とその仲間達の、或る日のお話。



おしまい

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