表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

午後の夢

作者: 夏猫

双子がいた。

まだ子供だった。

男か女かよくわからない。

こちらをずっと見ている。

話しかけてみる。

「こんにちは。ぼくたちここで何してるの。」

返事がない。

子供にしては妙な点がある。

まず髪の毛がない。スキンヘッドだ。

和服を着ている。平安時代のようだ。

それに、さっきからその二人は手をつないだままだ。


怖くなった。突然、僕は走る。

その場にいるのがなぜかつらかった。

二人はついてくる。

追いかけてくる。

小さな境内へ着いた。

気づくと二人はもういない。

「よかった」

そう思った瞬間、後ろに気配を感じる。

狐だ。

こちらを見ている。

狐は、僕に、ついて来いという。

後をついていく。

周りの景色は、広告をちぎってつなげたようなつぎはぎだった。

境内もそのひとつだったのであろうか。

少しいくと、大きな橋がある。

狐は姿を消してしまった。橋を渡る。

ぎしぎしと音が鳴る。つり橋で、大分いたんでいるようだった。

橋の真ん中で、縄が切れる。落ちていく。

橋の板の一つ一つが、蝶になって空を飛ぶ。

ああ、死ぬのか。

そう思った。


目を開ける。下は雪で、僕は死なずにすんだらしい。

雪だるまをつくった。

そいつが言う。

「雪で作られていたのですね。私の体は。私の心も冷たいのでしょうか。なんだか、さびしくなります。」

雪は虹色にひかり、雪だるまを天へと運ぶ。



「ごめんなさい。そして、さようなら。」僕はつぶやく。

歩いていくと潮の香りが漂い始める。

海だ。

麦わら帽子をかぶった少年が、水平線を眺めている。

「あの少年は、そう、思い出した。僕だ。」

僕は、走って近づく。

少年は言う。

「夏は好きなんだ。もうどこへも行きたくないよ。」

僕は、尋ねる。

「君は、」

その瞬間、少年は砂になり、砂の城だけが残った。

浜の向こうに学校が見える。

高校生らしき女の子が、僕を呼んでいる。

昼休みが終わったらしい。

急いで教室に戻る。

先生も、生徒も、動かない。

僕を呼んだ女子が、言う。

「あなたは動けるのね。私、二年前に交通事故にあったの。そしたらここにいた。

みんな、ずっと、ああやって止まっているわ。ここでは時間も動かない。私は、好きよ。こういう世界。でも、あなたは戻らなきゃ。早く行きなさい。あなたは、ここの住人じゃない。」

「ありがとう。でも、僕、君と一緒にいたいよ。」

体がチュウに浮く。

手をつかもうとした。でも、彼女は手を伸ばさない。

彼女は、優しく笑っていた。

「バイバイ」

彼女が言う。

光に包まれる。

地面も、空も、雲も、太陽も。




病室のカーテンが、風に揺れる。

ほほを涙が伝う。

「夢だったのか。」

時計の針が午後3時をうった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ