午後の夢
双子がいた。
まだ子供だった。
男か女かよくわからない。
こちらをずっと見ている。
話しかけてみる。
「こんにちは。ぼくたちここで何してるの。」
返事がない。
子供にしては妙な点がある。
まず髪の毛がない。スキンヘッドだ。
和服を着ている。平安時代のようだ。
それに、さっきからその二人は手をつないだままだ。
怖くなった。突然、僕は走る。
その場にいるのがなぜかつらかった。
二人はついてくる。
追いかけてくる。
小さな境内へ着いた。
気づくと二人はもういない。
「よかった」
そう思った瞬間、後ろに気配を感じる。
狐だ。
こちらを見ている。
狐は、僕に、ついて来いという。
後をついていく。
周りの景色は、広告をちぎってつなげたようなつぎはぎだった。
境内もそのひとつだったのであろうか。
少しいくと、大きな橋がある。
狐は姿を消してしまった。橋を渡る。
ぎしぎしと音が鳴る。つり橋で、大分いたんでいるようだった。
橋の真ん中で、縄が切れる。落ちていく。
橋の板の一つ一つが、蝶になって空を飛ぶ。
ああ、死ぬのか。
そう思った。
目を開ける。下は雪で、僕は死なずにすんだらしい。
雪だるまをつくった。
そいつが言う。
「雪で作られていたのですね。私の体は。私の心も冷たいのでしょうか。なんだか、さびしくなります。」
雪は虹色にひかり、雪だるまを天へと運ぶ。
「ごめんなさい。そして、さようなら。」僕はつぶやく。
歩いていくと潮の香りが漂い始める。
海だ。
麦わら帽子をかぶった少年が、水平線を眺めている。
「あの少年は、そう、思い出した。僕だ。」
僕は、走って近づく。
少年は言う。
「夏は好きなんだ。もうどこへも行きたくないよ。」
僕は、尋ねる。
「君は、」
その瞬間、少年は砂になり、砂の城だけが残った。
浜の向こうに学校が見える。
高校生らしき女の子が、僕を呼んでいる。
昼休みが終わったらしい。
急いで教室に戻る。
先生も、生徒も、動かない。
僕を呼んだ女子が、言う。
「あなたは動けるのね。私、二年前に交通事故にあったの。そしたらここにいた。
みんな、ずっと、ああやって止まっているわ。ここでは時間も動かない。私は、好きよ。こういう世界。でも、あなたは戻らなきゃ。早く行きなさい。あなたは、ここの住人じゃない。」
「ありがとう。でも、僕、君と一緒にいたいよ。」
体がチュウに浮く。
手をつかもうとした。でも、彼女は手を伸ばさない。
彼女は、優しく笑っていた。
「バイバイ」
彼女が言う。
光に包まれる。
地面も、空も、雲も、太陽も。
病室のカーテンが、風に揺れる。
ほほを涙が伝う。
「夢だったのか。」
時計の針が午後3時をうった。