第24話:亜無限大の財産
「セレスティナ、コレ見てよ」
「何かしら、アルト?」
アルトは、大金貨一枚を用意して、セレスティナに見せた。
「……大金貨一枚?」
「うん。コレをコピーする」
「……コピー?」
「そう。そうして、ペーストする」
大金貨が二枚になる。ただそれだけのことだが、セレスティナは驚いた。
「ハワァッ!大金貨が増えた!」
「そう。コレを二枚重ねてコピーする」
「すると?」
「ペーストすると、四枚になる」
大金貨二枚の山が二つになった。
「凄いッ!」
「あと3回ペーストする」
大金貨二枚の山が五つになった。
「……へ?」
「屁じゃないよ?コレを重ねる」
大金貨十枚の山が出来た。
「コレをコピーする」
「うんうん!」
「9回ペーストする」
「……ん?」
大金貨十枚の山が十個出来た。
「ハァ……」
「この十山をコピーする」
「……で?」
「9回ペーストする」
「……何がしたいの?」
「人を100人ばかり買いたくてね!」
「人を買う?奴隷をってこと?」
「奴隷でもいいね。でも、町民にしたいんだ。
でも、セレスティナにちょっかい掛けられないように、女性100人を買う予定」
「……一世代で終わる街を作りたいの?」
セレスティナは呆れ果ててそう言った。
「うン?子供を産ませた方が良い?」
「女性だけで子供は産めない。アナタの子だとしても、その次の世代が近親相姦になる」
そう言ってから、セレスティナは首を横に振った。
「ソレ以前の問題ね。
いい、アルト?人を売り買いしちゃダメ!」
「何故?!人を創造しているのは、物語の中では、お金すら掛からないのに。どうしてお金で創造するのはダメなの?個性だって、人それぞれにあるのに」
「じゃあ、アルト。お金を使わないで創造してみて」
「……セレスティナが産んでくれるの?100人も?」
「流石に100人も産むのは無理だわ。10人なら、頑張れば或いは……」
「簡単だよ。ちょっとお金が掛かるけど、人を産むスキルを大金貨1,000枚で買って、セレスティナに与えれば──」
「ちょっと。勝手に与えないでよね!」
「チェッ。折角買ったのに。いいよ、俺が産む!」
「男に子供を産む能力は無いでしょう?」
「ソレを可能にするのが魔法だよ」
アルトが手を翳すと、光の繭が生まれ、ソコから一人の裸の女性が姿を現した。アルトは急いで服を購入して与える。女性は黙ってその服を着た。歳の頃は18歳前後に見える。
「もう、何かさぁ。俺、何でも出来ちゃいそうでツマラナインだよねぇ……。
何か、こう……さぁ。俺に出来ない事って無いかなぁ……あ、でも、世界的な難問は何も出来ないかぁ……。
何か俺、創造神を超えちゃった?
なら、創造神を超えたなりの偉業を成し遂げたいところなんだけど、何か無いかなぁ……」
アルトはニヤリと嗤うと、こう言い出した。
「そうだ、世界の全てのレベルをサクリファイスしよう!」
そう言って、アルトは『レベルサクリファイス』の範囲を『世界の全て』に切り替えた。
「フハハハハッ。良い、良いぞ!世界中の経験値が流れ込んでくる!」
それでもアルトは、2000をとうに超えたレベルから、然程早いレベルアップを見ることが出来なかった。その為、『レベルサクリファイス』の範囲を、世界の外側まで拡大した。ソレは神界まで及び、神々のレベルを生贄にし続けた。
すると、その領域が主神にまで及んだ時。
レベルが、次々と上がる。ソレこそ、LV.10,000まで及ぼうとするまで。
すると、LV.10,000のレベルキャップを外そうとする時。ソレは、何かが詰まったかのように、中々外せない。苛ついたアルトは、『レベルサクリファイス』の速度を無理矢理に上げた。
『ほぅ……ソコまでして、儂のレベルを喰らいたいか!』
主神パクス・エルクエンティアは、送り込む経験値の速度と圧力を上げた。
スポンッと、何かが抜けるように、レベルはサクリファイスされ続ける。だが。
「おい、もういいよ。コレ以上レベルが上がったら……」
LV.20,000を軽く超える。ソレを超えた辺りから、アルトの肉体に変化が現れてゆく。
成長し過ぎた肉体は、やがて老いを迎え、そして……。
「あ、ああ……身体が、老化していく……」
アルトへの、フォルトゥ・ブレサの加護は、三つ目の未練を晴らしていないことから、完全では無かった。故に、『長寿』の加護も完全では無い。
「あ、ああああああぁぁぁぁぁぁ……ハ、ハハハ、ハハハハハハ……はぁ……」
肉体の老化したアルトは、呆気なく、地面に座り込んだ。二度と立ち上がれないとばかりに。
「あ、アルト……?」
アルトの精神は、余りの多くの経験値を喰ってしまったが故に、何十・何百億年もの孤独に囚われた。
それが最後、アルトは人から『柱』になった。
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広い草原に建つ一軒の小屋のような家。
アルトは、そこでセレスティナの看護を受けながら、暮らしていた。
「あら。アルト、虹が見えるわ」
「あー……」
ロッキングチェアで横たわるアルト。
そこに、かつての英雄としての勇姿は見られない。
「あー……」
精神の根幹まで年老いてしまったアルト。
その最後は、ロッキングチェアに揺られながら、セレスティナが気付くまで、誰にも悟られることも無くただ穏やかに、眠るように死を迎えると云うものであった。
その瞬間、アルトが蓄えていた経験値が、穏やかにゆっくりとだが、元の持ち主へと還るのだった。




