天才音楽家が早死にする理由
その日、ラリーはいつも通り自宅で音楽を作っていた。
まだ22歳でありながら、すでに幾人ものヒットシンガーやロックバンドに曲を提供していた彼は、次はどのような曲を作ろうかと試行錯誤を重ねていた。
すると、「ピンポーン」と玄関のチャイムが鳴った。
はて、郵便だろうか。実家の両親がまた自作のジャムでも送ってくれたのだろうか。
多少の疑問がありながらも、ラリーは玄関に到着し、ドアを開けた。
「おはようございます。いい朝ですね。」
ドアの前に立っていたのは、黒づくめの男性だった。背は高く、180センチほど。ニット帽を装着し、ビジネスマンのような服を着ており、それが黒く染まっていたのだ。顔を見てみたが、記憶にはない。誰だろうか。
「えっと…」
「突然すみません。あの、ロバート・W・ラリーさんでしょうか?」
「そうですが・・・」
そう言った瞬間、男は懐に手を入れると、何かをバッと取り出した。
それは鉄の塊だった。だが、信じられない形状をしている。その形は拳銃そのものだ。
「な、なんですか、それは」
「何も言うな。両手を挙げて、リビングまで歩け。」
反抗したいが、銃が相手にある以上、従う他ない。ラリーは頷くと、言われた通りリビングまで彼を通し、恐る恐る声を上げた。
「何が目的ですか。金ですか?食料ですか?それとも僕のサインが欲しくて、ここまで来ちゃったんですか?」
「生憎、そんなものに興味はない。」
男は銃をラリーに向けたまま言葉を紡ぐ。
「俺の目的はただ一つ。お前をここで殺すことだ。」
「な、なんで殺すんですか?あなたはもしかして殺し屋なんですか?」
「殺し屋…いや、違うな。俺はあんたと同じミュージシャンだ。だがら、アンタを殺しに来た。」
「ミュージシャン?なら、なおさらこんなことをする必要はないはずでしょう。ミュージシャンは音楽を作って歌ったりするのが仕事ですよ?」
「俺もそうだったさ。だが、俺はアンタのせいで破滅したんだ。」
「…どういうこと?」
「俺は幼い頃から音楽が好きだった。だから、自然と学校も音大に進んだし、必死に作曲や歌の勉強もした。一生懸命色んなところで汗を流して、パン一枚で食いつなぐ日があっても、苦にせずに音楽を続けて来た。」
次の瞬間、男の顔が阿修羅へと豹変する。
「だがなぁ!そんな中でやっとできた俺の、俺が一から作り上げた曲がさぁ!?発表するやいなやアンタのパクリだとネットで大炎上したんだよ!俺はアンタの曲なんて一ミリも知らねえのさぁ!?」
「ね、ねっと?」
「他もそうだった。あんただけじゃねぇ。最初の曲を削除して、別名義で出してみも、どんな曲を投稿しても、すでに似たリズムの曲があるし、オリジナリティがないと何度も指摘された!全く、キリがない!挙句の果てに昔のアルバムも住所も晒された!」
銃を持つ手が、怒りと悲しみによって震える。
「おかげで俺は完全にパクリ野郎認定だ!俺のアイデアのはずなのにだ!これも全部、お前やお前とよく似た天才たちが曲を作ったせいだ!」
「お前たちはもうすでにいくつもヒット曲を作って!金も十分稼いで!一生分の成功を得ているにもかかわらず、後の世代の若い芽を摘もうとする!」
「だから、ここでお前も、別の音楽家諸共に殺す。一人だけでは終わらねぇ。それが、俺が未来で成功するための唯一の方法なんだ。」
そう言うと、男は銃口をラリーの額にピッタリと合わせる。
「ま、待ってくれ!?話の内容が全然分からない。未来?ねっと?何をさっきから言っているんだ?」
「黙れ。アンタが知る必要はない。アンタはこれから撃たれて死ぬ。けど、この銃は少々特殊でなぁ。この銃を撃つとその対象物の死因が銃によるものではなく、心臓発作に変換される仕組みになっている。アンタ殺した後は、俺はタイムマシンに乗って未来に帰るだけ。そうすればアンタは不摂生な生活が原因で死んだ悲劇の天才となり、俺は犯人として捕まることはない。」
「本当に待ってほしい。君はさっきから何をべらべらと…」
「言葉通りさ。さて、だいぶ喋ったんだし、もういいだろ」
男は引き金に手を掛ける。
「バイバイ、天才。あんたの死は無駄にしないぜ」
「ちょ、ま、待て、話を__」
その瞬間、辺りには一発の銃声が響いた。
~
「そうですか。オリコン一位ですか。ありがとうございます。いえいえ、こちらこそ。では」
「ふぅ、やっぱり俺は正しかったな。あいつらがいなけりゃ正真正銘の俺の曲なんだ。さて、今度はどんな曲を作ろうか…」
「ん?ああ、宅配便か…」




