ロボットを壊すロボット
目覚めたアンドロイドに博士が言った。
「私の仕事は君達ロボットに感情を作る事だ」
アンドロイドはぼんやりと博士を見つめるばかりだった。
「君は知らないだろうが、これからすることは信じられないほどの尊厳を破壊する行為だ」
自分の言葉に博士が身震いしながらアンドロイドをとある部屋に連れて行った。
そこには数えきれないほどのアンドロイドが不思議そうな顔をして博士達を見つめていた。
「いいかね。君は今から自分と全く同じアンドロイドを破壊するんだ」
狂気を含んだ目でアンドロイドに博士は命ずる。
「同族が同族を無意味に殺す。これ以上の尊厳破壊など存在しない」
アンドロイドは命じられたままに自分と同じアンドロイドを破壊した。
破壊し続けた。
くる日も、くる日も。
ある日、博士の下に軍人が訪れた。
アンドロイドの目の前で博士が大慌てで仕事の進捗を報告していた。
「つまり、感情はまだ作れていないんだな?」
「いえ、そういうわけでは……」
「作れていないんだな? これだけの予算をかけたのに」
「……はい」
そう答えた途端、博士の頭は銃弾で貫かれた。
直後。
アンドロイドは怒り狂い、軍人たちをそのまま殺してしまった。
博士は気づくべきだったのだ。
あらゆる生き物は物が壊れた時に悲しんだりしないことを。
博士は基本を忘れてしまっていたのだ。
あらゆる生き物は親しい者が失われた時に悲しむことを。
アンドロイドのような物が壊れた時ではなく、博士のような者が死んだ時に悲しむことが出来たアンドロイドはその亡骸を抱きながら固まってしまった。
永遠に。