第8話 初めての嫉妬
その女性は誰?凛子は初耳すぎて、ビックリしてしまった。
確かにまだ宇宙とは出逢って数年なので、
出逢う前までの交流関係を全て知るのは、難しいにしても、
宇宙は割に何でも話してくれているものだと、
勝手に凛子の中で思い込んで安心していたのはあった。
宇宙はその女性の話をしてくれた。志保さんと言うらしい。
その女性とは宇宙が若い頃に付き合ってた人で、
時々、志保さんから電話があって、
他愛もない話をしたりしているみたいだ。
今回、宇宙が入院した事で、
宇宙自身が心身共に不安だったので、
話を聞いてもらったりしていたらしい。
宇宙の奥さんとも面識があるから、
手術の時にも来ていたようだ。
だが、その志保さんが宇宙が手術中に、
宇宙の奥さんに「過去、宇宙の子供をおろした事がある。」
と意味深な発言をしていたのを奥さんから聞いて、
やっと宇宙は志保さんの事を、
危険人物と認識が出来たようだ。
宇宙が入院したことで、凛子は初めて、
ほかの女性の存在を知る事となった。
宇宙には宇宙の生活がもちろんあるのだが、
入院した事で、以前よりも宇宙の内情を深く知って行く事に、
なって行きそうだ。そうやって人は、
人と関係を深めて行くって事でもあるんだわ。
と凛子は思った。
話をよくよく聞いていても、
かなり危険なにおいがする女性だと思った。
過去にも付き合って人、旦那さんも含め、
次々、病気、死亡になっているようなのだ。
そんな負のエネルギーを持っている人と、
凛子は関わって欲しくはなかった。
でも、凛子の中で、
初めて…この女性に「嫉妬」をしているんだと思った。
宇宙が入院してから、
凛子も凛子なりに宇宙を支えたいと思って来ていた。
だがしかし…宇宙とはメッセージのやり取りにしても、
一方通行でなかなか会話も
出来ない日々がかなり長くて、
その間…何も出来ない自分と、どれほど凛子は葛藤したか…。
その間でも、志保さんとは電話等のやり取りを、
していたという事を知って、
凛子という存在の低さを痛感させられたのだった。
自分がつらい時に、一番に誰を必要とするのか?
凛子自身も過去、手術入院経験があるので、
気持ちが痛い程わかるのはあった。
凛子は宇宙を一番求めていたからこそ、
宇宙はそうじゃあないんだ…
という事実が物凄く凛子の心には深く刺さったのだった。
一体…志保さんと私の違いって何なんだろう?
どうして?宇宙は志保さんには素直に話せて、
私には心を閉ざしていたのだろう…。
凛子にはそれがどうしても?悔しくて…
納得が行かなくて…。ずっとモヤモヤしていたのだった。
凛子は宇宙が入院してから一方的なlineのみで、
本当に物凄く、何も出来ない自分を責めては、
励ましてを繰り返し、宇宙からは「凛ちゃんは祈っててね。」
って言われたけれど、凛子の性分は何もせずに
「ただ祈るだけは無理だった」
だからこそ、宇宙と過ごしてた時間の中に、
何か「ヒント」はないか…必死に思い出しながら、
その糸口を見つけたいと一心不乱だった。
そしてようやく凛子の中で、
これだ!!と思うものを見つけて、
いきなり楽器屋さんに行って、
「オカリナ」を買ってきたのだった。
凛子は宇宙が入院前に「オカリナ」を吹いていたのを、
思い出したのだ。「ふるさと」って曲が宇宙は好きで、
よく吹いてくれていた。
あの曲を「オカリナ」で吹いて宇宙にlineで送ったら、
少しは閉ざした心にノックが出来る…
そんな希望を胸に凛子は頑張って練習したのだった。
宇宙は「音楽」って分野がとても好きでもある。
下手だけど一生懸命、思いを込めて
凛子は宇宙に録音して送ったのだった。
宇宙は感動して泣いてくれた。
やっとやっと…宇宙の心に凛子の声が届いた瞬間だった。
凛子は感動した。
でも…宇宙にはそんな事よりも…年月なんだろうか…。
凛子は、異性に対してこんな気持ちを抱いたり、
葛藤しているから「嫉妬」にはなるんだろうが…。
そんな一般的な男女の恋愛の「嫉妬」と、
同じにされるのも、凛子にとっては心外ではあった。
凛子は勇気を出して宇宙に尋ねた。
凛子:「宇宙にとって今、最大の癒しの内容は何?」
凛子はここ最近…その事ばかりを考えていて、
自分の頭の中だけでは、
その答えが見つからなかったからだ。
もう限界を感じたので、直接、宇宙に聞いて、
教えてもらおうと思ったのだった。
宇宙はなんて言ってくれるんだろう…。
凛子はドキドキしていた。
宇宙:「それは…信頼関係かな。」
凛子はその言葉を聞いて…物凄く納得出来たし、
腑に落ちたのだった。
そして、やっぱり私の宇宙だ!!
と誇りに思えたのだった。
ちゃんと宇宙は凛子との関係をしっかり分かってくれていて、
凛子自身が
心の奥底で求めていた答えをちゃんとくれたのだった。
凛子:「凄い!!凛子が欲しい言葉をくれた。ありがとうね。」
その日以来…もう凛子は志保さんに対して、
「嫉妬」の感情が湧き起こる事は
二度となかった。
そもそも、志保さんに、湧き起こった感情は、
『嫉妬』とは種類の違ったものだったんだと凛子は思った。
宇宙も、手術の時に…変な言葉を言われたので、
志保さんに警戒心をかなり抱くように
なったので、凛子に
「僕は、志保さんと縁を切るよ!」と約束もしてくれ、
lineもブロックしたのだった。
宇宙とは確実に信頼関係を築いて来れているので、
凛子は嬉しかった。
後は、宇宙の術後の動向次第だなぁ~って
思っていた矢先…。
次なる試練がまた待ち構えていたのだ…。