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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

個人企画に参加してみた ①と②それと③ +バンダナコミック01作品

お嬢ロボがイク!!

作者: モモル24号

 202※年5月のある日の事でした。ゴールデンウィークを利用して、わたしはアメリカへと渡る予定だったのです。大学の研究チームにスカウトされたお母様に、顔を見せに行くために。


 お母様は光の届かない世界における生命体の研究者なのです。火星移住計画が本格的に動き出す中で、お母様をはじめ世界中の研究者がアメリカ某所へと集められていました。


 ……本来なら私の小学生卒業式の前に、日本へ戻って来るはずでしたの。私の晴れ姿を見せて、お父様とお母様がまた仲良く暮らす姿を見たい……そう思ったのです。


 しかし私を乗せた飛行機がアメリカへ到着する事はありませんでした。無情にも飛行機は撃墜されたのです。


 ────冥王星の衛星カロンからやって来た宇宙生命体プルトメーカーズによって……。


 地球の知的生命体である人間達が、人同士で争っている間に、宇宙の生命体は火星にまで侵略の手を伸ばしていたのです。


 地獄の創造者達(プルトメーカーズ)の次の標的は……地球。文明レベルが退化し始めていた地球は本来なら後回しになる予定だったそうです。


 しかし急速に宇宙事業の開発と、火星侵攻計画が湧き起きたため、強行偵察部隊による奇襲が行われたのでした。


 私は……火星移住計画チームへの見せしめに狙われたようです。もちろん宇宙の侵略者たちに、私が関係者の娘などと知られているはずがありません。


 開発チームはアメリカにいる。昔から宇宙事業の分野において嘘と隠し事ばかりの国であるのは周知の事実です。


 おっと、口が過ぎましたね。お母様を人質に取られたようないまの私にアメリカ様の悪口はご法度でした。


 ◇


 ダダダダダダ……────!!


「貴女は飛行機が墜落して、死んだのではないのか」


 ──えぇ、死にました。太平洋の海の藻屑となるはずでした。親切な金魚人たちに、海中に沈んだ遺体が浮腫む前に拾われて「お嬢ロボ・ガイク」として生き返ることが出来たのです。


 ガイクとは鎧躯……硬い身体から来たようです。育成の意味も兼ねているそうですね。


「たった今、銃撃を受けて死んだように思いますね」


「──何を言ってるのかわからない」


 こちらも貴方がたが、何を聞きたいのかわからないのでお互い様ですね。


 ちなみに翻訳機能もついているので、地球内言語と金魚人語ならば全て話し、聞くことが出来ますのよ。


 私の最初の任務はお母様の奪還。アメリカの大学の研究施設にいるなんて、大嘘。生体データを追跡してやって来たのは、機密に守られた軍事施設だもの。


 穏便に話を通そうとしたのです。ゲート前で管理職員という名前の武装したガードマン達に蜂の巣にされた後に……友好的な会話が始まりました。普通ならこの銃乱射で死んでましたわよ。


「私は……お母様に会わせてほしいのです」


 彼らが話を聞いてくれたのは、銃撃が効かなかったので、有効な手立てを探る時間稼ぎに過ぎないのです。


 それに私の事を知っていた。裏切りものは、この組織全てと見て良いのかもしれませんね。


『ぶっかけますか?』


 私に内蔵された、危機管理システムが対応を求めて来ました。ぶっかけとは、お相撲さんのぶちかましから来たお嬢ロボ・ガイク専用の強襲用語です。


「もちろんYesですわ。お礼は大事です」


 『了解────スラムショットモードに移行します』


 叩きつけるように射る……つまり銃の乱射のお出迎えのお返しですね。


 今頃報告を受けた別の仲間が、お母様を連れて逃げ出す用意をしているはずですから。


 カチャッ────ドババババババババッババババババババッ……プシューッ


 手首に内包されたガトリング・ガン。戦車の装甲くらい軽く打ち破る威力を前に、防弾服など紙切れ同然です。きっちり私に向かって撃たれた182発分を、彼らにも撃ち返しました。全員無事にブッ殺し……死亡が確認出来ました。


『こましますか?』


 初めはバラしますか、という用語だったらしいのです。言葉のイメージが良くないとの事で、お肉繋がりから選ばれたようです。


『────フレイム・ランサーで消去(デリート)します』


 カチッ──シュゴォォォォォォ……


 対プルトメーカーズ用に開発された炎の槍は、私の左右の手の親指の付け根から飛び出す。人体なら3秒程で炭化させます。牛さんや豚さんなら上手にこんがり焼いてくれます。


 映像は私の身体から発する強力な電磁ノイズにより、映像も音声も破損状態になっています。彼らの確認作業が遅れているのは、そのせいでしょう。


『のぞきますか?』


 これはわかりやすい用語でしたね。私の左の目に浮かぶレーダー機能が発動開始します。


『────サーチ・アイ発動。対象の位置を確認しました』


 ────ピンッピンッ……


 お母様の囚われている建物の構造と、敵対者達の生命反応が浮かび上がりました。スケルトン・モードと併用する事で、隠し持つ武装まで覗く事が出来るそうです。


 ────わかっています。中学生になって間もない私には、どうしてこのようなモードがあるのか、理由を感じていました。


「────郁子!! どうしてここに? 私は貴女が乗った飛行機が墜落したと聞かされたのよ」


「こんなの……お母様ではありません」


『いかせますか?』


 ────Yes! 


 聞かれるまでもなく、私は逝かせる事を選択する。お母様はすでに肉体を地獄の創造者達(プルトメーカーズ)に乗っ取られていたようです。


 そう──すでに宇宙生命体による地球への侵略は始まっていたのです。飛行機の事故もアメリカ大学の研究チームの裏切りもののせいなどではありませんでした。


 地獄の創造者達(プルトメーカーズ)に寄生されて、動かされたものによる指示だったのです。


「お母様大好きです────いってらっしゃいませ」


 別名『絶頂モード』による、全武装解放モード。研究施設は不幸な爆発事故で壊滅した。


 お母様の身体は無事に取り戻しました。寄生していた地獄の創造者達(プルトメーカーズ)が、危険を察知して逃げ出した所をぶちかましてやりましたから。


 お母様は留まるものを放出し、意識を失ったままです。


「──急いで戻らねばなりません」


 燃え盛る炎と煙の立ち込める中、私はお母様を抱えて研究施設を後にしました。


『飛ばしますか?』


 これもシンプルに飛ぶ機能の用語です。どうして飛びますか、ではなく飛ばしますか? なのかはわかりませんが。


「Yesに決まってます」


 私の背中から翼がニョキッと飛び出しました。フライト・モードに移行したようです。


「お母様……私にしっかり掴まっていて下さいね」


 中学生1年生で亡くなった私は、身長が142センチしかありません。ガイクのおかげで運ぶ力はあるのですよ。


 落ちないように運ぶために、自分の手足でお母様にしがみつく形になるのはバランス的にベストでした。


 お母様を抱えて飛ぶため、最高速度はマッハ1に抑えました。お母様は意識を取り戻した気がしますが、白目を剥いて口から泡を吐いていました。


 眼鏡は何故かズリ落ちませんでしたが、雲の水気で白く濁ってしまいました。


 ◇ ◇


「ただいま戻りました。お母様はこの通り無事です」


 海上を飛んで来たため、お母様が濡れてしまいました。私はお嬢ロボ・ガイクなので平気なのですが、お母様には寒かったのか震えていました。


「お母様に黄金水を飲ませて下さい」


「ひぃぃ~〜〜っ」


 意識を御自分で取り戻すのは流石お母様です。何故か怯えていますが、黄金水とは金魚人たちの造る金魚ビールなので、弱った身体に染みますよ。


「おかえりなさいませ、郁子お嬢様。お母様はさっそくお預かりして、身体に異常がないかお調べします」


「ありがとう瀬橋様。お父様にも連絡をお願いしますわ」


「かしこまりました」


 瀬橋様は私を救って下さった金魚ビール工場の工場長様なのです。私の身体が海中で傷む事がなかったのは、空港で試飲した金魚ビールのおかげかもしれません。



 地獄の創造者達(プルトメーカーズ)は乗っ取った身体に卵を産み付け子供を産ませます。


 そうして少しずつ他の生命体を使い、地獄の創造者達(プルトメーカーズ)を増やすのです。


 彼らは金魚ビールに含まれるマグアメタルの力を嫌います。お母様は嫌がるかと思いますが、遠慮なく黄金水をぶっかけてあげて下さいませ。


 お母様にはしばらく静養が必要です。精神の疲れが癒され次第、真守グルーブでの研究に加わり、力を貸していただきたいと思います。


『いじりますか?』


「全身お願いしますね」


 お母様を助けるために、少し張り切り過ぎたかもしれません。いじりますか、とはガイク用語でボディ・メンテナンスの事です。


 全身を隅々まで弄ってもらう事で、このお嬢ロボの身体は維持出来るわけです。


『────メンテナンス・モード終了。異常はありませんでした』


 地獄の創造者達(プルトメーカーズ)は有機生命体にしか寄生出来ないのです。だから私の身体に取り付いて、好きに使われる心配がないのが強味なのです。


『次の交渉はいかがしますか?』


 交渉……つまり任務の事です。私の身体はお嬢様ロボの為、休息は必要ないのですが、任務がなければ自由に出来ます。


 依頼データから私に出来る任務を探すのです。急いで向かわねばならない相手が見つかりました。


「お父様も危険に晒されているようです」


『了解しました。デート・プランを実行に移します』


 瀬橋様にお母様は任せて、私は再び海上を飛ぶ。


『被りますか?』


 これはスケルトン・モードの逆で、私に対レーダー反応から身を隠すステルス・モードの事だ。隠れ蓑の意味から来てるそうです。


 昔の言葉なので、私には隠れ蓑がどういうものか知らないのが残念です。


 ステルス・モードを了承して、私は高度を下げる。海中を進むと見つかりにくくなるのですが、速度が落ちてしまいますから。


「────東京湾沿いの工場が怪しいのです」


『のぞきますか?』


 ────Yes。


 ピンッピンッ──っとアンテナが立ち、私はお父様の捜索範囲を絞り込む。


「あの黒い煙突のある、丸いタンクの近くが怪しいのです。突入します!」


 お父様の生体情報を絞った結果、黒い大きな煙突の下に反応がありました。丸い燃料タンクが二つあり、その近くの小さな建物にいると思うのです。


 お母様を連れ出した時に、こちらに潜む地獄の創造者達(プルトメーカーズ)に指示が飛んだようです。


 工場地帯を選んだのは、私が暴れてしまうとこの地域一帯に被害が及ぶからでしょう。


 ズルい奴らなのです。敵意を向けられたからと言って、無関係な人々を巻き込むことは許されません。


『罵倒しますか?』


 これは冷却装置を作動させて、建物を凍らせ延焼を防ぐ提案です。


「──これは、Noなのです」


 液体窒素並みの冷却で被害を抑えるどころか、金属疲労であちらこちらの建物が崩壊しかねません。


 何よりお父様が凍ってしまいます。瀬橋様は私には優しいのですが、大人の方には液体窒素より冷たいのです。


 きっとお嬢ロボは子供専用で、大人は生き返らせる事が出来ないからなのでしょう。


『叫びますか?』


 ────Yes


『コーラス・アタックの照準を合わせます』


 私は音波による集中攻撃を行いました。別名破壊の歌声(ソニック・ボイス)と呼ばれる必殺技です。


 私がまだ死ぬ前から使えた技で、照準を絞り、音で破壊するのです。お父様には通じません。


 私はそれを知っているのです。学校のお友達がみんな耳を塞ぐ中で、お父様だけは喜んで聞いてくれました。


 お嬢ロボ・ガイクとなってもお父様はきっと私のお歌を褒めて下さいます。


 お父様のいる小さな建物から六人の大人の男の人が出て来ました。耳から血を噴き出し、目から血の涙を流しています。


「敵の方まで喜ばせてしまうとは、失態です。ですが……いまならぶっかけられます!」


 私は飛行したまま、スラムショットモードに移行しぶっかけました。


 ────ドババババババババッドババババババババッ……プシューッ


「制圧完了です。お父様は生体反応あり──無事です」


 私の歌声で半壊している建物から、お父様を見つけた。 ……気づくのが遅れて申し訳ありません。


「い、郁子なのか? 耳がやられて何も聞こえん」


 お父様も目や耳か血を流し、再会の喜びに震えています。酷い目に遭わされたようで、私の姿をかろうじて確認し気を失ってしまいました。


『飛ばしますか?』


 お母様と同じように、瀬橋様の所へ運びます。お父様もお母様も、きっと喜ぶはずです。


 私はフライト・モードに移行するとお父様にしがみつきます。お母様の眼鏡と違って、お父様の大切な帽子は風に飛ばされやすいので、私が外して持つことにしました。


 瀬橋様の所までお父様を運んで、任務は完了となりました。随分時間が掛かってしまいましたが、ようやく家族三人で顔を合わす事が出来ました。


 私の目に狂いはなかったのです。だって、回復したばかりのお母様があんなにも大きな声で笑うのは久しぶりですもの。瀬橋様もいつもより楽しそうでした。


 残念ながらお父様はまだ耳がやられていて、お母様たちの声は聞こえていないみたいです。でも楽しそうなお母様の顔を見て、幸せそうに頷いていました。


 お嬢ロボ・ガイクとして、私の任務はこれからも続きます。お父様やお母様のように窮地に陥った人たちを沢山助けたいと思います。



 あっ、いけませんわ。私としたことが、お父様の大切な帽子を返すのを忘れていました────




  ────終わりです。


 お読みいただきありがとうございます。バンダナコミック01用の二作品目の投稿となります。


 お父様とお母様を愛する純粋な少女の物語となります。


 あらすじにも書きましたが、決して邪な思いで読まないようにお願いします。

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