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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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王都の空気

高い。

そしてデカい。

王都の防壁を間近で見た印象はこの二つに尽きた。

下三分の一は石組みで、その上に煉瓦で組まれた防壁がドドンと二段に分かれて、見上げると首が直角に曲がるほどの高さで積み上げられていた。

横はほぼ真っ直ぐに見えるほど、左右を見ても視界に収まらないほど先まで伸びている。

この防壁、建てるのにどれだけの人と時間が使われたのか。

考えると気が遠くなりそうだった。


王都に入る行列もまた異常だった。

門に辿り着つくまで、列の後ろに付いてから楽に二時間は待たされた。

到着間際という事で昼を取らなかったのが裏目に出て、干し肉を齧って紛らせた。

その間にマローダさんが懐から書状を取り出し、バルに渡していた。

「今のは?」

「ああ、はいバーゼル伯より預かっていた、通行証です。

昨夜、ドルドーニュ殿とも改めて相談したのですが、どのみち直ぐにどこかに漏れるだろうと。

ですので事前に用意していた物を使おうとなりました。」

「改めて」と言っているので、ドルドーニュさんも知っていたけど、今回のあれこれで使う使わないを相談したって事だろう。

俺とアーネスは一向に進まない列にジリジリしながら待った。

バルは王都出身だからか、御者台で鼻歌を歌っていた。

この行列に慣れてるのだろうか。

この場所だけで門は大小四つあって、大きな門は馬車が、小さな門は徒歩や馬に乗った者が通っていた。

市街に入るのに使われていた門は右手の二つだったのが、俺達が通される少し前から全てが使われる様になった。

出て来る人が途切れたからだろう。

先頭を行くドルドーニュさんがバルから渡されたらしい通行証を、門を警護しているお仕着せっぽい格好の剣を吊るした人に見せると、二言三言言葉を交わして通された。

暇に飽かせて外に出て見てたけど、他の人は書類を書いたりもっと話したりしていたので、通行証の効果はあったんだろう。

いざ通されると、その防壁の分厚さにまた驚いた。

俺とアーネスは風景が気になって門に通される前から馬車を降りていた。

馬は二列縦隊だったけど、俺達の列の他に前を行く前後に護衛が付いた馬車がいて、俺達が全員門から入ってもまだ前が壁を超えてなかった。

こっちにあるかは知らないけど、アイツの知識で言えばトンネルのようだった。

結局、門を抜けたのは日が傾いてからだった。


夕べ遠景で見た時に思ったけど、とにかくデカい街だった。

中心に建っているのが見えた、恐らく王城と思われるお城は、この門を抜けた辺りからは建物に遮られほぼ見えない。

かろうじて、細く伸びる一番高い部分がちょっとだけ、低くなり始めた日の光に照らされて鈍く輝いていた。

門の前は横にやや広い広場になっていて、広場という言葉に恥じない広さがあった。

ここ、もしかすると蒼槍城位なら建つんじゃないか?

広場の中央にはデカい噴水があり、七大神の一柱、ダリンカンザの両手を広げた精巧な彫像の足元から、水が流れ出していた。

広場に面して商店が立ち並び、その建物も背が高い。

建物に使われている色も多彩でクラクラしそうだった。

露店等も無数に出ていて、呼び込みの声がやかましいほどだった。

赤っぽい石と白っぽい石が交互に敷かれた、今まで通って来た街や街道のどの道よりも広い道が、正面からズレて奥へ二本と伸びていた。

同じ幅の道が壁に沿って左右にも伸びている。

道の脇には街灯が建っている。

今はまだ灯されていないけど、夜はどれくらいの明るさなんだろうか。


門の前で馬車を降りてキラキラになり、待ち疲れて馬車の中で無の表情になって干し肉を噛り、門を通る時にまたキラキラになっていたアーネスは、今は目を見開き口を開け、

「ホア〜。」

とか言ってキョロキョロしていた。

わかるよ。

わかるけども、お登り丸出しは近くにいて流石に恥ずかしいぞ。


人が多いのでマローダさんを除いた全員が、徒歩で正面右手の道に進み、中心に向けて歩き出した。

日の光は建物に遮られ、左側から影を作っている。

この道のかなり先に王都に入る時よりは少し低く見える壁が見えた。

通りに入って少しは見えるようになっていた王城をその壁が遮り、無数に伸びる尖塔の屋根と最も高い中心の建物の一部しか望めなかった。

しかも王城は壁のかなり向こうにある。

なんだあの壁?

「ねえディディ。あの壁って何?」

「あちらの壁は通称貴族街と、こちらも通称ですが市民街を隔てる壁ですね。

隔てると言っても、普段は門が開放されています。

大聖堂や一部の役所等もあちら側にありますので。」

アーネスの振り返りながらした質問に、微笑みながら答えたディディは道の先を指差した。

「あちらの門が見えるでしょうか。

開いているでしょう?

門衛はおりますが、通るだけなら特に誰何も無く通れるのです。」

「へぇ~、何か凄いな。」

人混みの先に確かに大きな門が見える。

小路などもあるが綺麗に区画分けされた市街をその門に向かって歩く。

アイツの国の雑踏ほどではないが、それでもこれほど多くの人が行き交う光景は見たことがない。

市街に入ってから見る並び建つ建物は全て石造りで、それでいてどの建物も高い。

低い建物で三階まであって、高い低いの感覚がおかしくなりそうだ。


そう思っていたら右手の一区画が、通りから少し奥に入っていた。

そこは二つの建物で埋められていた。

「あれがこの国の協会本部だ。」

そう言ってバルが指差した。

他と比べて二階までで高さはなかったが、左右に間口が広かった。

裏手にも同じような大きさの建物があった。

こちらが正面のものは、三つの建物を繋いだような造りをしていて、どれもに両開きのドアがあり外に向かって開いていた。

シルエット的には、アイツの国の議会場が似ている。

ただそれと大きく違うのは、飾り気は無く無骨な雰囲気な事だった。

「中央が受注受付、右が買い取り、左が完了報告何かの冒険者達の受付だ。

まあ、よその大きな支部と違って、だいたい空いてるがな。」

依頼は多くないって、バーゼル伯も言ってたもんな。

それでも出入りはちらほら見える。

その誰もが立派な装備を身に着けていた。

すげぇな。

鎧も下げてる剣の鞘もピカピカだし、魔術師が持つ杖も付いてる魔石のデカさが半端じゃない。

アレ、殴った方が早そうに見えるな。

「裏手は傭兵の協会本部だ。

中央の建物が中で繋がってる。」

アーネスのキラキラが止まらない。喋る時以外は口が開きっぱなしだし。

協会の周りは他の街なら酒場や宿があったけど、この辺りは普通の商店すら無く、大店の商会が集まっていた。

アイツの知識で言うならオフィス街って感じだ。もっとも、スーツ姿の人等は当たり前だがおらず、身なりの良い、商人やそのお付の人が行き交うばかりだったけど。


その時、遠くで鐘が三回鳴った。

それもあちこちから。

空はまだ明るさを残していたが、日没を告げる教会の鐘だ。

こういうのは何処の街でも変わらないらしい。

ただ、こうもあちこちから聞こえるのは初めてだ。

そこらの屋根に止まっていた小鳥やカラスが一斉に飛び立った。

こういうのも一緒で少しホッとした。


鐘が止むと、区画の角と中間に等間隔で立つ街灯に一斉に光が灯った。

これ全部、魔道具の灯りだ。

どんだけ金が掛かってるんだよ。

「街灯は日の出の鐘が鳴るまで、ずっと灯されているんです。」

ディディの言葉にまた驚かされた。

すげぇな。魔石か人力か知らないけど、どんだけの魔力を使うんだか。

イヤ、すげぇな王都。

歩く事一時間余り。

四区画毎に広場が設けられ、それぞれに意匠の違う噴水が水を湧かせ続けていた。

街灯がある所為か、日没を迎えても一向に人の数が減らない。

とは言っても、人々の向かう先は北から東西へと変わりつつあった。

人の流れが交差するようになって、むしろ歩き難くなったほどだった。


そんな中を抜けて、ようやく貴族街への門へと辿り着いた。

壁は王都に入った時の物よりは高さも厚さもなかったけれど、金属製の巨大な門はあっちよりも大きい位だった。

しかも蔦が這ったような模様が彫られ、本来なら補強の為の縦柱は剣を模した造りになっていた。

これまた、すげぇな。

てかこの門の開閉どうやってするんだよ。まさかの人力か。

ヤベえな。


門の先は流石に人通りが少くなっていた。

大小はあったけど屋敷と言うより城のような建物が、区画毎に建っている。

しかも先に行けば行くほどデカくなっている。

「大聖堂や役所何かは一本向こうの通りに当たるんだ。

しかも王城の向こうだから、今日は見れないな。」

バルがそんな事を言ったけど、俺とアーネスは雰囲気に圧倒されていた。

街灯の数も区画の通りに面して三本から四本に増えていて、高い建物が作る影を消している。

俺達はドルドーニュさんに促され馬車に乗った。

窓は開けていいと言われたので、景色を見たくて全開にした。

護衛が増えたからかロックス伯領の森を抜けてから、少し顔色が良くなっていたマローダさんが苦笑いしていた。

立ち並ぶ貴族の屋敷はこれほどあるのに一つとして同じ物は無く、無骨な物から豪華なものまで様々だった。

「これらのお屋敷は王家から下賜された物で、維持はそれぞれの貴族家で賄っています。

王家からの俸禄をここの維持費で殆ど使ってしまう家もあるそうです。」

ありそうな話だな。

てか、こんな屋敷の維持費ってどんだけ掛かるんだか、想像も出来ない。

それよりアーネス、そろそろ口を閉じない?

虫が入っても知らないぞ。

通りの先に王城を囲む堀が見えてきた。

馬車からの視点が少し高いからか、夕焼けに照らされて赤くなった水面がちょっとだけ見える。

堀の一つ手前の区画で馬車が止まった。

先が矢のような形になっている鉄柵が巡らされた、中央に同じく鉄製の格子状に組まれた門があった。

奥の建物は蒼槍城と同じ色の屋根をしていた。

建物の造り自体も、城壁の内側にあった洋館ととてもよく似ている。

前庭はそれほど広くなかったけど、手入れされているのは、高さの揃った植え込みや、咲いた花に枯れた物が見えないことからわかった。

主になる建物が建つ位置的に裏庭とかもありそうだ。

横道から見えた造りからいくと、裏にも建物があったけど。

庭の両側にはこちらは窓は多いので部屋数があるのはわかるが、無骨な造りの二階建てがあり、中央の建物から何やら真剣に話しながら向かう騎士さんの姿もちらほら見えた。

門の両脇には警備の騎士が立ち、馬車を止めた俺達に誰何の声を掛ける為か、ゆっくりと近付いてきた。

俺達が乗る馬車に後方から、こちらから派遣された騎士さん達が近付き、一人が門番をしていた騎士に声をかけた。

「我等だ。今帰投した。通してくれ。」

騎士の礼を取りながら言ったのはドワルドさんだった。

サッと騎士の礼を返し、もう一人の騎士に合図を送ると駆けていって、少しだけ音を立てて内に門を開いた。

開ききってから、門を開けた一人が館へと走って行った。

正面脇の小さな扉から中に入って行き、本の少しして直ぐにまた走って戻って来た。

それを待ってからようやく通されると、街中とは違いドワルドさん達、ドナート卿からの派遣組が先頭で入って行った。

馬車寄せは魔道具のランプで明るくなっている。

空はまだ少し明るさを残していたけど、ランプが無ければ庇になっている馬車寄せは薄暗かっただろう。

俺達が馬車から降りるのとほぼ同時に、中からゾロゾロと人が出て来た。

その先頭にはまるでバーゼル伯がそのまま若返ったかのような、鷲鼻と鋭い目付きが特徴的な人だった。

多分、この人がドナート卿なんだろう。


俺達は戦いの場になるだろう王都へと、ようやく、ようやく辿り着いた。

王都の景色を見ることで頭の隅に追いやっていた、憂鬱さや緊張感が戻って来て、小さく溜息を吐いた。

横に立つアーネスと一緒に。

到着!

やっと王都に到着です!


イヤ〜、長い道中でした(汗)

湖畔の別邸を出てから三十話

数えてびっくりでした(・・;)


王都では何が待ち受けているのか、この面子の活躍にご期待、ご期待?

余りせずにお待ち下さい(滝汗)


王都での話しが終わりましたら1章完結です

それに先だって、次とSSを投稿したら1週間程、お休みさせていただきます。

ストック不足解消と1章のクライマックスに向けて、ちょっと充電させて下さい

m(_ _)m


最後に、お読みくださった方々、ありがとうございます

モチベにつながるので、ブックマークを是非お願いします

感想を、こうポチッと評価やイイネで表して頂けたら幸いです


「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら、切ってくださって結構ですので………


次回 謁見

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― 新着の感想 ―
[良い点] 王都到着お疲れ様です!これからの展開を楽しみにしています!
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