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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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商会からの報せ

とにかく急いで顔を洗う。

歯は、悩んで食後にした。

急いで食事用の部屋に向かうと、入るなりアーネスに指を差された。

「ごめんなさい、待たせてしまって。

って、なんだよ、アーネス。」

「首、首。」

「あ?あ。」

タオルを首に掛けたままだ。

「冷静なアーネスが珍しいね。何かあったの?」

「なんにもないよ、寝坊して慌てただけだって。」

待って、そこで下を向かないでディディ。

すぐ気付いたジード爺様がニヤリと笑う。

本当に匂いとかで色々わかるんじゃないのか、この爺様。


「それよりもだ、バルガス殿。

商会からはなんと?」

ドルドーニュさんに内容を問われたバルが肩を竦める。

「何か、きな臭えな。」

一言そう言って溜息を吐くと、読んでいた書状をドルドーニュさんに渡した。

ドルドーニュさんも溜息を吐いて、今度はディディに手渡す。

素早く目を通したディディは思案顔だ。


「ディディ。」

声を掛けると、難しい顔のまま俺に手渡してくれた。

「バル、読むよ?」

「ああ、お前らの意見も聞かせてくれ。」

「なになに、

『バルガス、元気か?

こっちは皆元気だ。

お前はお前で面白い事になっているようで、それはなによりだ。』

何かこう、これだけでバルのお父さんって感じだね。」

横から覗き込むようにして書状を読んでいたアーネスは、冒頭部分を声に出して読むと肩を竦めた。


続きが問題だった。

各地に派遣されていた各傭兵団が続々と帰投していて、それが偶然なのか、何か大きな依頼が出ているのかまではわからないという事だった。

国王の孫の婚約の祝賀式典の準備が、バーレスト侯が仕切って着々と進んでいるとも書いてあった。

最後の一文の意味がわからないけど。

「式典の準備は順調ね。

『今日は朝焼け雲が綺麗だったが、明日は夕焼け空だといいな。

朝焼けが続くなら家族で旅にでも行こうかと思う。

でわ。』

だって。

何、最後の?」

読み終わったアーネスが首を傾げる。


朝焼け?

夕焼け空?

「これ、暗号?暗喩?」

「どういうことさ、ジェス。」

「朝焼けの日は天気が崩れ易い。

夕焼けの翌日は晴れる。

だから、情勢が怪しくなっているけど何事も無いといいな、ヤバいようなら王都を出る、って感じ?」

「そうだ。

万が一誰かの手に渡っても、締めの話だって、突っ撥ねる事が出来る様にな。

親父がよく使うやり方だ。」

「それは、我々は知らない方がよかったのでは?」

それを聞いたドルドーニュさんは渋い顔になった。


「お前らはいいだろう、多分。

バーゼル伯とのやり取りでも似たような事をしてるらしいしな。

それにこれにヤバい事は書いてないだろ、話されて困るような事はよ。」

ドルドーニュさんに軽い感じで返したバルだったけど、ドルドーニュさんは困り顔のままだ。

「これさ、書いてないけど他にもヤバいと思う事がありそうだよね。

傭兵が王都に増えているってだけで避難までは考えないでしょ?」

アーネスの言う通りだ。

噂の域を出ない物とかで書かなかったとかもありそうだ。


「そうは言ってもじゃ、王都に行くのは止められんのならば、警戒だけはして堂々と王都入りするしかなかろう?」

いつの間に背後にいて、俺の手からスルリと書状を抜き取った爺様は、涼しい顔をしてそう言った。

「それにじゃ、侯爵という高い地位を得ておる者が、軽々に動くかね。

人は欲深なものじゃ。

じゃが、動くには、動くなりの動機が無ければならん。

大体、王都で騒乱を起こして何を成したいのかね。

継承権三位は大公じゃよ。

バーレスト侯とは縁が無いじゃろ?」

確かにそうだ。

爺様が言うように継承権三位は王弟、大公モレスターだ。

大公領を治めている、絵と音楽を愛する趣味の人って噂しか聞いた事がない。

仮に王都にいる国王と王太子殿下、王孫のカーソン殿下をまとめて弑しても、ランツ殿下に回る前にモレスター大公に継承権が回る。


「バーレスト侯家の兵力は聞いている限り、五千余りだ。

蜂起するには少なすぎる。

例え傭兵団を全てまとめ上げていたとしてもだ。」

正騎士団は二万だもんな。

「会った事もあるけど、あの大公様が野心を秘めているとは思えねえな。

本当に趣味の事しか頭に無いような人だ。

だとして傭兵団はなんの為に集めてやがるんだ。」

集結する傭兵団。

成功の目が無い、簒奪や反乱。

俺達に対する襲撃………。

いや。

まさかね、ないよな。

流石に考え過ぎだよな。


「う〜ん。」

「どうしたのさ、ジェス。何か気付いたの?」

思わず唸った俺に怪訝な表情を向けて来るアーネス。

その声に引かれて、全員の視線が俺に集まっていた。


「バルさ。」

「なんだ。」

「お父さんに調べてもらいたい事があるんだ。

俺達の謁見の時に誰が同席するのか、調べられるかな。」

「それは出来るかもしれねえが、王都のドナート卿に頼んだ方が良さそうじゃねえか?」

「ドナート卿から魔禽が帰って来てないよね。」

「あっ。」

「何を言ってるんだ、ジェスター?

何か思い当たるのか?

言ってみろ。」

ドルドーニュさんに促され、考えを話してみる事にした。

確定していない、憶測以外の何物でもない話を。


「簒奪も反乱も成功の目が無いのに、傭兵団は集結しつつあって、何故か俺達が狙われ続けてる。」

「そうだ。

だが、それはバーゼル伯への嫌がらせと言うか、貴族同士の権力闘争だろう。」

「俺達が謁見の際に、その後の会食とかでもいいのか、国王陛下が誰かに弑逆されでもしたら、誰が真っ先に疑われますかね。」

「なっ!」

「俺達は多分捕まる事無く殺されて、全部押し付けられる。

バーゼル伯も連座させられるんじゃないですかね、刺客を送り込んだとかで。

それに伴って、カーソン殿下も継承権を剥奪されてもおかしくないでしょう?」

「それは流石に………。」

絶句するドルドーニュさん。

無いと言い切れずに。

全員が全員、渋面を隠さない。

一人、アーネスを除いて。


アーネスは怒っていた。

見た目は平静に見えるけど、握り込まれた拳が震えている。


「決め付けるのは、まだ早いです。

でも考えられる、最悪の筋書きだと思います。」

「ありそうだが、俺達を襲撃する理由はなんだ。

到着しなきゃ、計画自体が吹っ飛ぶだろうよ。」

「時間稼ぎを兼ねてるんですよ、多分。

行けなきゃ行けないで、バーゼル伯の面子は丸潰れ。

協力したモレッド侯共々、最悪は失脚まであるんじゃないですか。

少なくとも大きく力を削ぐ事は出来ますよね。」

その上で来たら来たで罠に嵌めて、さらなる結果を得ようとしてるんだろう。


「絶対に逃げ出せないような、罠を作ってるんでしょうね。

かと言って、今更引き返せない。

引き返したとしても、やっぱりバーゼル伯とモレッド侯の面子はボロボロですからね。」

もう引くに引けない。

だけど、見えている罠にみすみす突っ込むのはどうなんだ。

何か策は無いんだろうか。

せめてドナート卿に連絡が付けばいいんだけどな。


「帰還用の珠は今お持ちですか、トゥーレ。」

「はい。こちらです。」

ディディの問いかけに、トゥーレは慌てる様子は見せずに懐から珠を取り出した。

「どうやら、魔禽自体は無事です。

子爵様に問題が無ければ、必ず返事が来るはずです。

待ちましょう。」

なんでわかるんだ?


「確かに。

色が消えていない。

外されたり、魔禽が死ぬと色が無くなるし、別の魔禽に付け替えたりすると色が変わるからな。

休ませているのかもしれない。」

ドルドーニュさんはホッとした表情を浮かべると、俺達を見てそう教えてくれた。

俺が持たされている珠を取り出して見てみたけど、透明なガラス玉のようになっていた。

元の色は蒼だった。

こういう事か。


「取り敢えず、家にもう一度魔禽を送るか?

至急返事を寄越すように一言添えて。

どこまで書くかだが、事が事だからこちらの見立ては全部書いてしまいたいけどな。」

「では、

『雛鳥を親にするのに、雄鶏が動いた。

俺の育ててる雛の二羽は、その雄鶏に喰われるかもしれない。

雄鶏達の主と俺の雛が集まる時に、そこに集まる雄鶏と雌鳥がわからない。

そっちでわからないか?』

と書くのはどうでしょうか。」

顎先を摘むような仕草をして、思案気な顔のままディディが提案した。


「なるほどな。

先のヤツを読んでるなら、それで伝わるだろう。」

「ディディ、凄いよ。

そんなのスッて出てくるなんて、カッコいい〜。」

いや、お前は怒ってたんじゃないのかよ。

全く。

凄いのはお前もだよ、アーネス。


「よし、では直ぐに準備だトゥーレ。

書状を書くのはクラウディアに任せるぞ。

時を置かずにもう一羽戻るだろう。

また二羽飛ばすから二通用意しておいてくれ。

それとターナー、お前もドナート様に書状を書いてくれ。

二通だぞ。

こちらも同様に暗号文にしておいてくれるか。」

「了解です、班長。」

「俺は伯爵様に宛てて書く。

あくまで予想の範囲だと伝えるのを忘れるなよ。」

ディディとターナーさんが頷くと動き出していたトゥーレから、筆記具を受け取って駆け出して行った。


「しかし、頭が回りよるわい。

ところで魔禽はまだおるのかのう、トゥーレや。」

「あと二羽、連れて来ています。

ジードちゃんもお手紙出すのですか?」

「ちゃん」ってなんだよ。

「これこれ、皆の前ではよさんか。

そうじゃよ、王都の大聖堂に儂の孫弟子がおる。

問い合わせてみるとしよう。」

「ジード殿、それは神官としての弟子ですか?

それともモンクとしての弟子でしょうか。」

「両方じゃ。

儂が稽古を付けてやった事もあるぞ。

なかなかの腕じゃよ、モンクとしても治癒術師としてものう。

今は大聖堂で神官長をしておるハズじゃ。」

はっ?

大聖堂の神官長?

「金眼のジャスミン、ジャスミン・メイヤー大神官長様の事ですか!?」

「おいおい、あのおばちゃん、爺さんの孫弟子かよ!流石に驚いたわ。」

俺とアーネスは当然知らないから、キョトンとするしか無い。


「誰、それ。

肩書は凄い人みたいだけど。

ジェス、知ってる?」

知ってる訳が無いだろうよ。

「ああ、お前達は知らないのか。

王都の大聖堂のトップで、この国全体の神官長でもある、おっかねぇおばちゃんだ。

治癒魔法を使う時に瞳の色が金になるから、金眼の聖女とか言われてる凄腕の治癒術師で、とにかくおっかねぇおばちゃんだ。

クラウディアより、怒らせたらヤバい。」

おっかないんだ。

いや、今の話で何故キラキラになれるのよ、アーネス。

あとディディを引き合いに出すのは止めて下さい。

今、ここに居なくてよかった。


「そうなのですか、ジードちゃん?

私は慈愛の金聖女って二つ名しか聞いた事がないですよ。」

カレンさん、だからちゃんて何?

「あれも昔は美人でのう。

金氷の聖女とか言われて天狗になっておったが、儂が一撃で伸してから、アヤツの師匠共々可愛いがってやったわい。

そのおかげかどうかはわからんが、すっかり丸くなったんじゃ。」

爺様まさか。

「喰ってるな。間違いなく。」

堂々と言うなよ、バル。

「はいどうぞ、ジードちゃん、筆記具。

それとも私が代筆しますか?」

「ありがとう、トゥーレ。

どれ、儂が直々に書くとしよう。」

いや、なんで誰もちゃん付けに突っ込まないの?


ともかく、新たな情報を得る為に俺達は動き出した。

とは言え、これほど間違っていて欲しい予想も無い。

何がなんでも、王都行きを断っておけばよかったと、今更ながらに後悔していた。


もう遅いけど。

うん、キャラが増え過ぎて、名前の管理に一苦労しています

(^_^;)


徐々に敵方の目論見が見えて来ましたが、果たして!


次回は多分、船を降ります

多分ですが………


最後に、お読みくださった方々、ありがとうございます

モチベにつながるので、ブックマークを是非お願いします

感想を、こうポチッと評価やイイネで表して頂けたら幸いです


「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら、切ってくださって結構ですので………


次回 東へ

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